僕とシロ

マネキネコ

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63. 通常の3倍

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 ガルーダ大森林。

 ガルーダ大森林は本大陸の東側に位置し、北から南へと続く大きな森林地帯である。その総面積はクルーガー王国の2/3にあたいするほど広大で、北端ほくたんは我がクルーガー王国と接触している。また、北部はローザン王国に、南部はサンタクレス大帝国に大きく接しており、周りにある5ヶ国にはおおきな影響えいきょうを及ぼしている。そして、森林の中には多くのけもの魔獣まじゅうが生息しており、時折出てくる魔獣の対応にどの国も苦慮くりょしているという。

 僕らはモンソロからリマへと続く街道をゆっくり南下していた。

 「……森行く……」

 コリノさんである。まもなくリマのとりでが見えてくるから、さっさと森林に入ろうということらしい。

 「了解です。シロはピーチャンと先行、続いてコリノさん道案内をお願いします」

 「……了……」

 コリノさんは短く了承りょうしょうの意を伝えてくる。――ギャル語ではない。

 森林に突入すると、樹木じゅもくといろいろな草で鬱蒼うっそうとしている。

 そこを草の少ない獣道けものみちを見分けながら進んでいくのだ。

 それに、いつ接敵してもおかしくない状況の中での偵察行動ていさつこうどう。普通の冒険者では すぐに疲弊ひへいしてしまうだろう。

 しかし、僕らはその森林の中を ”通常の3倍の速度” で移動しているのだ。

 せまい獣道の中を僕らは1列になり進んで行く。

 隊列はピーチャンを頭にドッキングさせたシロが先頭。

 続いては案内役のコリノさん。そして、クロナが僕の前を行っており、殿しんがり白狐びゃっこのヤカンがつとめている。





 ここで、お稲荷様おいなりさまであった白狐の野干(ヤカン)についても触れておこう。

 ヤカンはよわい1500年の ”もののけ狐” である。
 守っていた ”伏見ふしみのお山” が開かれたゆえ めでたくお役御免おやくごめんとあいなった。
 そんな折に、カルロの前身であるゲンと出会い 従魔じゅうまとして迎えられたのである。


 ヤカン  Lv.18

 年齢    ー
【契約者】 カルロ・アストレア
 HP   163/163
 MP   296/296
 筋力    116
 防御    108
 魔防    160
 敏捷    152
 器用    72
 知力    112

【特殊スキル】  状態異常耐性  感覚共有

【スキル】    鑑定 (6)  魔法適性(全)  魔力操作(8)

【魔法】     聖魔法(6)  炎魔法 (5)   氷魔法 (5)

         水魔法(3)  結界魔法(5)   身体強化(4)

【加護】     ユカリーナ・サーメクス


 お稲荷様としての力はそれなりであった。

 そこに、女神さまに加護をさずかったお陰で とんでもなく強くなった。

 体の強靭きょうじんさに加え多彩たさいな魔法。そして、心ねの優しさからも『聖獣』と呼んで差し支えないものと思っている。





 そんな陣形で鬱蒼としたガルーダ大森林の中を突き進んでいるのだが、シロが闇雲やみくもにガンガンやっている訳ではない。

 目の前の突き出た枝や雑草などは、ピーチャンのウインドカッターにより排除はいじょされていく。

 もちろん、シロにもこの魔法は使えるのであるが……。

 シロがやると、極力抑きょくりょくおさえた魔力で使用しても、スッキリさわやか何もない空間が広がってしまうのだ。

 これでは、逆に目立ってしまい調査どころではなくなるだろう。

 その点ピーチャンは、体が小さいのでウインドカッターの範囲はんいも狭く、実にいい塩梅あんばいになるのだ。

 それに、ドッキング状態のピーチャンは魔力切れの心配もないからね。

 途中でおやつ休憩をはさみながら、この日は日没にちぼつまでがんばって行動した。

 そして僕らは、浜辺はまべにある ”海の家” にて休息きゅうそくし 食事の準備などをおこなっている。

 ふぇっ?

 ――いい反応である。

 何を隠そう、ここは ダンジョン・サラ 内部にある ”ダンジョン・リビング” なのだ。

 シロは転移が使えるのだから、休むときには当然 安全な場所へ移動する。

 あんな鬱蒼としたジャングルで一夜を明かす気など毛頭もうとうない。

 それに疲れた時は ”甘いもの” に限るよね。

 そこで、一番近くにある ダンジョン・サラ へ寄ったというわけだ。





 シロとヤカンは砂浜を駆け回り、クロナは波打ち際でおっかなびっくり 波を相手に行ったり来たりしている。

 クロナのかっこは|全裸ではなく、貫頭衣かんとういを一枚かぶせている。ここは温泉施設おんせんしせつではないのだ。

 ピーチャンは上空でピーヒャラ鳴きながら気持ち良さげに飛びまわっている。ここにはモンスターも出ないので気楽なものだ。

 コリノさんは海の家にある丸テーブルに座り込み、サラの特製 ”チョコレートパフェ” を堪能たんのうしている。

 そして僕は、炭火すみびをおこした網の上でトウモロコシを転がし焼いている。

 夕食は、こっちの鉄板で ”焼きそば” といきたいところなんだが、目の前の海は 本物の海ではないので魚介類ぎょかいるいが手に入らない。

 ――仕方がない。

 肉と野菜は豊富ほうふにあるので、今日は ”お好み焼き” をつくろう。

 夕食の後は備え付けそなえつけの ”ジャグジーバス” に入り、身も心もリフレッシュ! 睡眠すいみんも確りとって次の日に備えた。





 そして次の日。

 この日も目的地に向けどんどん進んでいく。

 ん、魔獣? 

 前から来るヤツは、ピーチャンのウインドカッターで草や枝と一緒に刈り取ってしまう。

 横から不意に襲われても結界にはばまれ、あとは各個撃破かっこげきはしていくだけなのでまったく問題ない。

 そうして、今日もサクサク森の中を進んでいると、

 「……もうすぐ……」

 と、夕刻近くになってコリノさんからお知らせがあった。

 そうか、もう着いたのかぁ。

 しかし、まもなく夜になる。

 僕らは明日の朝コミュニティを訪ねることにして、再び ダンジョン・サラ へ転移して戻った。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ガルーダ大森林に入りましたが、入っただけの外縁部です。そして奥に行くほど森も深くなり、出る魔獣も大きく強くなる傾向にあるようです。今回訪ねるエルフのコミュニティも外縁部沿いの比較的浅い所になります。
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