僕とシロ

マネキネコ

文字の大きさ
上 下
32 / 137

30. セーラ

しおりを挟む
 僕は息も荒くで苦しそうにしている、け付けてきたメイドへセーラと呼ばれている幼女を引き渡した。

 隣りで、幼女の顔の汗をぬぐったり、乱れた衣服を直したりとメイドが世話をしている。

 しかし、この苦しみ方は異常だ。

 そこで僕は、メイドにどういう事なのか聞いてみることにした。

 「お助けいただいた方に、不義理ふぎりはできませんので申しますが…………」

 と、セーラを介抱かいほうしながら、簡単にではあるが病気の事を語ってくれた。

 セーラはもともとが病弱であったが、昨年の秋口より心臓病をもわずらってしまい、このような状態が長く続いているという。

 そうか~。心臓病では運動はおろか、遊ぶことすら制限されてしまうだろう。

 「まだ小さいのに、大変なものを背負しょっているのだなぁ」

 幼女を抱えて去っていく、メイドの背中を見送りながら、僕は小さくつぶやいていた。





 この出来事をきっかけに、夕食後のわずかな時間であるがセーラとこうして遊んでやっているわけだ。

 セーラはここクルーガー王国の第4王女である。

 お人形のような金髪碧眼きんぱつへきがんである。

 ロイヤル・グリーンではなかったが、さほど気にならない。

 長い王国の治世ちせいにおいては、王族といえども色んな血が混じるだろうし、今更いまさら、王族に肩入れする気もない。

 世代が三つ違えば他人である。

 であるから、ここの王宮で血生臭い惨劇さんげきがあろうと、部下の謀反むほんでクーデターが起きていようとも、今の僕にはなんら関係ないのだ。

 『あっしには関わりねぇことでござんす』

 まさに、これだ。紋次郎いいことを言う。そうでなければ、『人類みなきょうだい』になってしまうしな。

 だが、関わり合えば話は別だ。

 実際、このような笑顔をどうして無視できようか。無理だろっ。

 生かしてあげたいだろ、遊んであげたいだろ、見守ってあげたくなるだろう。





 食事のあとは、少し休憩をいれる。

 うちのシロの背にまたがってお馬さんごっこをしたり、ぷよんぷよんのポンタに腰掛けたり、ピーチャンとたわむれたりしてあそぶ。

 僕とシロがついている以上、疲れもいやせるし発作ほっさの心配もない。

 実に、楽しい時間であった。

 「ワンちゃんも鳥さんもまたね~。バイバーイ!」

 一生懸命けんめいに手をふるセーラ。その横で深々と腰を折っているメイド。

 明日、また会う約束をして笑顔で去っていった。





 「そこは右から切り上げて! うん、いいけど気を抜かない!」

 僕たちは今、難所と言われる8階層を攻略している。

 ただ、レベルを上げれば良いという問題でもないのだ。実戦においてはレベル差など、軽くひっくり返されるのだ。

 油断すれば、死ぬ。そうなってから後悔こうかいしても、どうにもならない。

 だから、剣技も磨く。基礎さえつかんでいれば、そう遅れはとらないのだ。

 後はレベル押しと魔法で勝負だ! とはいえ、相手が決まっている訳ではないのだが。

 王城での滞在期間は明日まで。

 つまり、ダンジョンでのレベル上げも、剣の指南しなんも今夜が最後になるのだ。

 そんな中、僕がアンリエッタに課せた最終課題さいしゅうかだいは……。

 みなさま、よくご存じのウサコロ。そう、「ホーンラビット・コロシアム」である。





 意を決したアンリエッタは使い魔のモコモコをつれて、ひとりコロシアムに突入していく。

 コロシアム内のホーンラビットは50匹。それが前後左右、たまに頭上からもおそい掛かってくるのだ。

 まさに、難所と呼ぶに相応ふさわしいところである。ただ、どうしても通り抜けないと先に進めない訳ではない。

 しっかり脇道も存在するので、自信のない者は避けて通れるのだ。

 他のフロアボス同様、6人まで同時にいどむことができる。

 だが、人数が多すぎると、ホーンラビットは戦わず散ってしまうし、1人でもクリアしたものがいると同じく消えてしまう。

 そして、クリアすれば「銀の宝箱」がもれなく出現するのだ。

 と、こんな感じの「ホーンラビット・コロシアム」であるが、単独で挑む者はなかなかいない。

 下手したら、ハチの巣にされるのだ。

 ”魔法が使えれば” と考えてしまうが、そもそも魔法を使えるものが少ないのだ。

 このクルーガー王国では100人に1人の割合である。

 その中でも戦闘に際し実用的に使える者は極僅ごくわずかで、そのほとんどが貴族なのだから。

 そんな事情で単独挑戦者は少ないのであるが、これは最後の試練である。

 アンリエッタはモコモコと共にウサコロに臨むのであった。





 まあ、長々と説明したのだが、戦い自体は至って単調におわった。

 やっぱり魔法は、ス ゴ イ デ ス ネ~。(所さん風にどうぞ)

 アンリエッタも属性は風であり、コロシアムに突入した直後に広範囲のエア・ハンマーが炸裂する。

 モコモコと組んでのツープラトン攻撃により、8割がたのホーンラビットは戦わずして、魔石へと変わった。

 そうなれば、残りは10匹。

 アンリエッタの剣技と頭の上にいるモコちゃんの魔法で、あっという間にケリがついてしまった。

 まあ、こんなものだろう。僕はパチパチ手を叩きながら、アンリエッタの方に進んでいく。

 「流石です、アンリエッタ様。魔法も剣技も素晴らしいものでした」

 「いえいえ、カルロ師匠ししょうとシロ様に比べれば、私の魔法や剣技など稚子ちごもいいところ。お恥ずかしいかぎりです」

 「あとは帰られて、しっかり研鑽けんさんかさねていけばよろしいでしょう」

 そして、僕らは最後の仕事として、みんなで魔石を拾っていくのだった。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アンリエッタやりました! 見事、ウサコロ制覇です。えっ、レベル? ……知らない、わからない、覚えてない。それよりも、気になる宝箱(銀)の中味は? ああ、セーラちゃんが! 気になる次回、どうぞお楽しみに~!
(∪^ω^)めんどくさいお!    違わい!(大汗!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

料理を作って異世界改革

高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」 目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。 「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」 記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。 いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか? まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。 そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。 善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。 神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。 しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。 現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...