僕とシロ

マネキネコ

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6. 発展する町

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 その日の晩。 

 アルバートお父様ととアンソニー兄様はそろって無事屋敷へ帰ってきた。

 食事を取った後、湯浴みゆあみを行ない遠征での疲れをいやす。

 そして、リビングで魔物討伐とうばつの話をみんなで聞いていた。

 今回の討伐遠征は、軽傷者が数名でただけで、大きな被害や損失も出なかったそうである。

 まあ、僕とシロが頑張ったからね。

 それと、ダンジョンの情報については、日を改めたのち、落ち着いてから話そうと思う。

 なんでも、ダンジョンの位置調査をするのに、3人程オリゴン大山脈のふもとまで偵察に出しているようだしね。





 それから10日。僕らの生活は今までどおりに戻っていた。

 この生活でも なんら不満は無いのであるが、そろそろ爆弾(ダンジョンの情報)を投下するべきかと考えている。

 まあ、それにより目の色を変えるような人間は、この家にはいないと思うが、生活はガラリと変わってしまうことだろう。

 そして、各ダンジョン間に地脈リンクが張ってあるので、転移陣さえ設置すれば王都はおろか、ダンジョン間にある様々な町や村へ、自由に移動することが可能になるのだ。

 問題はそれらをどこまで開示して、どう使うかなのである。

 やろうと思えば経済を牛耳ぎゅうじったり、王国の転覆てんぷくさえも出来てしまう力なのだから。




 だからこそ、”僕とシロ” なのだろう。




 要は、『上手く、舵取かじとりを頼みますよ』 と、女神さまからの願いなのかもしれない。




     ▽




 あれから50日が過ぎ、季節はもうじき秋の気配だ。

 アストレアの町もにわかに活気づいてきた。

 どうやら、ダンジョンの周りに町を作っていくよう、王国から打診があったようだ。 

 それに合わせて、最前線基地である、このアストレアもどんどん発展している。

 まず、商業ギルドや冒険者ギルドは出張所にかわり、建物も新たに各ギルド長を置く正式なものへとランクアップしている。

 そして、ダンジョンまでの転移陣設置により、人がどんどん集まって来ている。

 あの閑散かんさんとしていたメインストリートも各ギルドを始め、商店、旅館、武器屋、食堂などが立ち並んでいき、昔の面影おもかげはどこにもない。

 一本入った裏通りでも、たくさんの屋台や露店が肩を並べ、市場を形成して盛り上がっている。





 もちろん、この町を納めるアルバートお父様も大忙しだ。

 ダンジョン発見の功績により、近々、子爵ししゃくへと陞爵しょうしゃくする事が決まっている。

 そして、この間のことになるが。

 クルーガー王国の宰相さいそう様と、ここ ”ガルバド伯爵はくしゃく領” の領主様が、アストレアの町とダンジョンを視察しに訪れた。

 この領全体を取り仕切るガルバド伯爵は、

 「先日、王様より おめの言葉をたまわった」 と、すこぶる上機嫌。

 『確り努力し、確実な物にせよ』 との、”王様のお言葉” をアルバートお父様に伝え帰っていかれた。





 一方で、僕が育てた胡椒こしょうや唐辛子も順調に収穫を終え。

 来季からは、町全体で本格的に栽培さいばいしていく事になっている。 

 あと、芋類もだな。 

 ジャガイモ、サツマイモあたりはどんどん作って行くべきだろう。

 それから、うちの館はこの町の北側に位置しているのだが。 

 嬉しいことに、ダンジョン同士が結ぶ ”地脈の範囲内” に有るようだ。

 お陰で、ダンジョン間の移動やダンジョン物資の調達など。

 家周りの畑の地熱調整、土壌どじょう改善かいぜんなどが思いのままなのだ。

 また、温泉のボーリング作業なんかも行うことが可能だ。

 まあ、この辺はおいおいやっていくつもりだよ。 

 一気にやってしまうと悪目立ちしそうだしね。





 僕の身体レベルもかなり上昇した。


 カルロ・アストレア  Lv.18

 年齢    10
 状態    通常
【従魔】   シロ(フェンリル)
 HP   48/48
 MP   47/47
 筋力    40
 防御    37
 魔防    41
 敏捷    38
 器用    22
 知力    45

【特殊スキル】  インベントリー(U)

【スキル】    鑑定(5) 魔法適性(全) 魔力操作(6)

         剣術(1) 槍術(2)

【魔法】     風魔法(5) 結界魔法(4) 氷魔法(2)

         雷魔法(2) 聖魔法(2) 回復魔法(4)

         身体強化(3)

【称号】     転生者、シロの契約者、

【加護】     ユカリーナ・サーメクス


 まあ、僕もそこそこ頑張ったけど。

 やっぱりね、シロがね、レベル上げとかないと心配だからって。

 ほんと、過保護かほごだよ! 文句はないんだけどね。

 例のユニークスキル ”時空間魔法(U)” は、そのままシロが保持している。

 女神さまに会えたら、なんとかしてもらおうと考えているんだけど、まだ一度もお会いしていない。

 それから、今は ”アース” には行けなくなっているようだ。

 それもまあ、行けたとしても僕がいた時代から500年は経っているので、いろいろ複雑ではある。

 科学の発展が少ないこちら世界で、のんびりスローライフが僕には合っているような気がするんだよね。





 そして、僕は近々王都に向かう。 

 アルバートお父様やエレノアお母さまと共に、クルーガー王国の王都バースに行くことになっている。

 お父様たちは、子爵に陞爵するため王城へ参内さんだいするようだが。

 僕は王都にある、”貴族学校” に入るための ”お受験” である。

 まあ、初級科のみなので3年通えば良いらしいのだが。 

 今更、学校に行くんですか~。

 うちが子爵に上がるわけで、対面もあるみたいなんだよね。

 ……貴族社会だから仕方ないのだけどね。 

 学校出たら気楽に冒険者にでもなって、シロとのんびり旅にでも行きたいよな。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――
カルロくん、なんだか王都の学校に行っちゃうみたいですね~。えっ、温泉はどーなったのか? ……すいません、もうしばらく先になりそうです。ワクテカでお待ちの皆さん、とりあえず、下着は付けときましょう。風邪ひきますんで……。――あーっ、ものを投げないで~。(汗) 大丈夫です。そのうち…… そのうちですよ。



・地脈の範囲内 
 この物語でいう地脈とは、近いダンジョン同士を結ぶ魔力のラインの事です。
 このラインより10㎞の範囲はダンジョンの力が及びます。(物質の転移、ダンジョンとの通信他)

・時空間魔法(U)
 この魔法はユニークだけに用途の幅が広く、転移魔法はもちろん。各ダンジョンの使用者権限の取得などもできてしまうのです。


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