僕とシロ

マネキネコ

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5. ダンジョン

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 そして、迎えた次の日。

 魔物討伐隊とうばつたいは日の出とともに、オリゴン大山脈に向けて町の門を発っていった。

 事情を知っている僕は、今日も変わらず庭で胡椒こしょうの様子をみたり、エマちゃんとシロでボール遊びをしたりして過ごしていた。

 もっとも、エレノア母様は気が気ではない様子で、1日中そわそわしていたようだが。

 僕もそんな母様を見るにつけ、

 「お父様もお兄様もとっても強いので、心配いりませんよ」 とは言ってみたものの、所詮しょせんは子供の戯言ざれごと

 気休めにもならないようであった。 大丈夫なのに……。

 まあ、天気も良いようだし、順調に討伐が進めば5~6日内には元気な顔がおがめるだろうよ。

 しかし余りにも、エレノア母様が心配しているので。

 それを見かねた僕は、今夜もシロを連れて様子を見に行くことに決めたのであった。





 そして、その日の夜。

 僕は再びシロを連れモンスター討伐の現場へ転移してきた。

 しかし、そこにはアルバートお父様達の姿は無かった。

 そこで、シロにまたがって付近を探索たんさくしたところ。どうやら、まだここまで到達していないようなのだ。

 僕達はモンスターの足跡を追って町方面に進むと、すぐにアルバートお父様達を発見する事が出来た。

 野営している人たちの数をあたったが、どうやら皆無事のようだ。

 僕は、ほっと一安心して肩の力を抜いていた。

 それから、しばらくの間、シロが周りの警戒と確認をしてくれていた。

 この辺りは討伐が終わっているようで、魔獣も大きな獣もいないということだ。





 今夜は、移動や戦闘もしていないので、まだ十分時間に余裕がある。

 そこで僕とシロは、ここから少々離れてはいるが、オリゴン大山脈のふもとを探索することにした。

 途中、点々とある小さな村への小道を確認していくが、村に向かった形跡けいせきはないみたいだ。

 さらに、オークやオーガの足跡を辿たどって進んでいった。

 すると、山脈麓の密林を少し入ったところに……。

 それは存在した。「ダンジョン前広場」 である。

 ……やはり、在ったなダンジョン。

 新しいダンジョンであるならば、王国では約500年ぶりという事になる。

 まあ、場所は王国の外になるのだが。

 この位置なら、道を整備すれば馬車で4~5日で届く距離だから割と管理しやすいだろう。

 僕はシロから降りると、犬サイズに戻ったシロを引き連れてダンジョン前広場を、奥の階段に向かって進んでいく。

 そして、階段を下りきり1階層に足を踏み入れた……。

 んっ、いつも聞こえてくる、ピーン 時空間魔法じくうかんまほう(U)により~ 
なんちゃらとか言うガイダンスは聞えて来ない。

 ……当然である。今の僕は、時空間魔法(U)を所持していないのだ。

 そこで、隣に居るシロに視線をやると、シロは僕の顔を見やり盛大に尻尾を振っていた。

 どうやらシロが、このダンジョンの「管理者権限かんりしゃけんげん」を取得したようである。





 そうして、ダンジョンである確認も取れたことだし、無事管理下に置くこともできた。

 今日のところは深夜だし、屋敷に戻ることにしようと表に向かって歩きだした。

 その間にシロや、このダンジョンに念話を送りつつ、今後についての打ち合わせを行っていった。

 ここから程近い、「ダンジョン・ディレク」 とのリンクを組む件や、アストレアの町と地脈ちみゃくの位置関係の確認。

 そして、なんと言っても温泉の掘削くっさく作業だな。これ絶対!

 この場所は麓から少し登ったところにあるので、露天風呂をつくったら景色は良いし最高だろう。

 ついでに、僕たち用の「地下基地」の建設もだな。

 まあ、ここの管理者はシロなので、お願いする形になるのだが。

 以前もやってきた事なので、うまくダンジョンに伝える事はできるだろう。

 それで、このダンジョンの名前なんだが。

 シロと検討けんとうした結果、”スパンク” が良いそうな。

 そうかそうか。シロがそう言うんじゃしかたがない。

 しかし 愛子はいないぞ。(笑)

 僕 個人的には ”ジョン” にして欲しかったのだが……。(残念)

 それにより、ここの名称は晴れて、「ダンジョン・スパンク」 と命名されたのであった。





 しかし、よくよく考えてみると、屋敷のあるアストレアの町からオリゴン大山脈のふもとまでは馬車で4日の距離にある。

 それから、少し登った所にダンジョン・スパンクの ”ダンジョン前広場” は存在しているわけだが。

 距離にしておよそ250km。 

 いくら最寄りの町がアストレアだとしても離れ過ぎているし、もっともここは、クルーガー王国の外である。

 発見したからと、ダンジョンの領有権りょうゆうけんを主張出来るのだろうか?

 飛び地で町を起こすにしても、かなりの兵力がアストレアの町と、ここに必要になるだろう。

 とりあえずはダンジョンに認識阻害にんしきそがいの結界をかけさせ。

 後日、アルバートお父様が帰ってから、ゆっくり打ち合わせをすることにした。




     ▽




 町を発った討伐隊は散開さんかいしているモンスターを1頭、また1頭と倒して行き当初の発見現場を目指し進行していた。

 そして一晩野営やえいを行ない、さらに追撃するべく出発準備を整えていた。

 「アルバート様。斥候せっこうに出していた猟師の5人が戻って参りました」

 「それで、モンスターは居たのか?」

 「それなのですが、モンスターは ここよりしばらく奥に入った所で、争ったような痕跡が見つかりました」
 「しかしながらモンスターは見当たらず、足跡はほとんどがそこでついえております」

 「我々が狩ったモンスター以外は、居ないと言う事で良いのだな。して、ダンジョンの方はどうであった?」

 「はい。痕跡の有った場所から さらに、追跡させております。山脈までとなると、今しばらく時間を要するかと思われます」 

 …………。

 討伐隊を率いているアルバートはしばし熟考じゅくこうした上で、

 「よし、その争った痕跡の有る場所を皆で確認。問題が無ければ町に戻ることにしよう」

 それから4日後。夜空に双月ふたつきが昇る頃、討伐隊は全員がアストレアの町へ無事帰還きかんしたのであった。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――
やはりダンジョンでした~。温泉! 温泉! Σ(・ω・ノ)ノ!えっ、まだなの?

わかりました。待ちましょう。(ワクワクテカテカ

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