僕とシロ

マネキネコ

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2. 賄い分

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 僕は今、1階の食堂で家族みんなと朝食を取っていた。

 メニューは、舌触したざわりの悪いモソモソのライ麦パン。

 芋? 芋づるとベーコンの成れの果てのような物が浮いた塩気の薄~いスープ。

 そして水だ。

 紅茶だとか贅沢品ぜいたくひんたぐいはこの家……

 いや、この村(町です)には無いのだろう。

 ハァ~、ここまでなのか?

 まさに極貧ごくひん生活。領主の家でこれなのだ、町の人々の暮らしなんかは言わずもがな……。





 僕はまだ良い、シロがいろいろ取り置いてくれたのだ。

 その中でも、牛丼弁当はとてもありがたかった。

 どのくらい有るのか聞いた所、まだ600食は保持しているそうだ。

 もちろん、そればかりではない。

 調味料やお菓子、デザートに至るまで満遍まんべんなくキープしている。

 生前に保有していた物に加えて、ダンジョン産の鉱物や大魔石。

 そして……。

 なんでこんなにお金持っているの?

 それも色んな国の貨幣かへいを。

 「……そうかー。かせいだのかー」

 そう言いながら、シロは僕に冒険者カードを見せてきた。 

 「おおっ、Aランクかー凄いじゃないか」

 「ふむふむ、人とのしがらみが嫌で、あっちこっち渡り歩いていたんだな」

 ……そうだろうな。長く居れば利用しようとするヤツ。騙そうとするヤツ。さまざまであっただろう。

 何処に居ても、どの時代においても人間の本質は変わらない。そう言うことだよな。





 話を戻すが、僕はまだ良いのだが。

 やはり可愛いエマちゃん。そして、いつもほがらかなエレノア母さんには、このような生活は長くさせたくはない。

 なーに、やりようはいくらでもある。

 まあ、自分のレベルを上げていきつつ、ボチボチやって行きましょうかね。

 僕はまだ10歳なのだから。





 それから30日。

 僕の身体レベルは Lv.5 まで上がった。

 パラメーター的には、この世界で20歳の一般男性とほぼ同じレベルだな。

 だが、僕がダンジョンに入ったり、魔物を倒したりした訳ではないのだ。

 そう、全てが従魔じゅうまになったシロの恩恵おんけいによるものなのだ。

 僕は 早くダンジョンに入って暴れたいところなのだが……。

 シロが許可してくれないのだ。

 確かに、この身体には ”身体頑強がんきょう” や ”状態異常耐性じょうたいいじょうたいせい” は無い。

 だからって過保護かほごすぎやしませんかね~? シロさん。 

 まあ、気持ちは分かるし急いでいる訳でもないので、今のところしたがってはいるのだがな……。




     ▽




 そろそろ、この生活にも慣れてきた。そこで、

 「エレノア母様。お話が有ります」

 と、庭で遊ぶエマを見守っていた、僕の母親であるエレノアに声を掛けた。 

 「あら、どうしたのカルロ。おやつの時間はまだ後よ」 と、いつものニコニコ顔だ。

 ほんと、いくつになっても朗らかで可愛いお人だ。

 家の中に居てくれるだけで、周りはすごくいやされるのだ。

 そして、今はエマちゃんも居るので、二人で癒し効果も2倍になっているところだね。

 「はい。おやつも気になりますが、今日は僕の相棒あいぼうを紹介したいと思います」 

 「あら、あら、お友達が出来たのね~。いいわよ、連れていらっしゃい」

 「それでは、さっそく」

 僕は後ろを振り返り、右手の指で輪っかをつくり、口にあてて口笛をならした。

 すると、シロは2m程ある垣根かきねをピョンと飛び越えると、素早く僕の隣に付きお座りをした。

 「エレノア母様。紹介します。今回、僕の従魔になってくれた ”シロ” です」
 「とても頭の良い犬なので、他の人に危害を加える事はありません」

 「まあ、まあ、そうなの。かしこそうなワンちゃんみたいね~。これからよろしくね。シロちゃん」 

 すると、シロは尻尾をブンブン振りつつ、「ワンッ!」 と大きく一吠ひとほえした。

 すると、微笑んでいるエレノア母様の後ろ。顔を半分出した状態で、エマちゃんが恐々おそるおそるとシロを覗いている。

 僕はシロに ”せ” をさせるとシロの頭を撫でながら、

 「エマもおいで。シロは撫でてあげると、すごく喜ぶんだよぉ」

 「さわっていいの?」 と聞くエマに僕は大きく頷いてあげた。

 そうするとエマは、ニカッと笑いテテテっと近づいて来ると。

 シロの首に抱き付いてモフリはじめたのだった。





 次の日から、シロは自分のまかない分として食料を確保してくるようになった。

 猪や鹿などのけものをはじめ。 

 たまにハイウルフやワイバーンといった魔獣まで、夜のうちに狩りをして、朝に家裏の勝手口の前に
置いておくようになったのだ。

 これには、家族はもちろん。

 家で雇っている家人や下男までもが、みんな喜んでくれている。

 このシロの行動により、日々の食事がかなり改善されたのだから。 

 まぁ当然である。

 一方でシロの方も、みんなと一緒に食事が出来るようになって楽しいのか、割とご機嫌な様子で過ごしているようだ。 




     ▽




 そして30日が過ぎ、僕の身体レベルも Lv.8 に上った。

 魔法も風魔法、結界魔法けっかいまほうを何とか使えるレベルまで上げることができた。

 魔法は前世で使っていたこともあり、魔力操作や魔法の発動イメージなどがすでに固まっているため、スムーズに使えているのだろう。

 そして、前世の僕が亡くなってから、およそ200年の月日が流れているみたいだ。

 これはいろんな人との話で推測すいそくしたもので、こよみなどが有る訳ではないのだが。

 だいたい紙自体もまだ普及ふきゅうしていないようだし、文明があまり進んでいない。

 ここが田舎いなかだからであろうか? 今度、ディレクの町や王都にも行って見たいものだ。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 シロ、過保護すぎ! まあ、10歳だと仕方ないのか……
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