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74. 会談
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そして週明けの月曜日。
俺と茂さんは静かに昼食をすませた。
あ、そうそう誤解のないようにいっておくと、神職である茂さんや神社の子である紗月は食事中の会話は基本的にしないのだ。
『食事中は私語を慎む』
王国の貴族においても殆どがそうであるため、俺自身たいした違和感はない。
二人でいる時はお互いもくもくと食べるだけなので食事の時間は割と短かかったりするのだ。
昼食のあと、居間でお茶を啜りながら談笑していると、
――ピンポーン!
玄関から呼び鈴の音が聞えてきた。
「あ、みえたようだね」
茂さんは立ちあがると、いそいそと玄関の方へ向かっていった。
今日の茂さんは白衣に薄い紋が入った紫の袴、神職でいうところの平服姿である。
時計を見ると午後1時を少しまわったところだ。
茂さんの案内により居間へ入ってきたのは3人。男性が二人に女性が一人。
その内の一人は俺たちもよく知る人物、坂井隊長であった。
それぞれに座布団を配り、まずは自己紹介。
男性の方は坂井隊長直属の上官で、
陸上自衛隊ダンジョン対策小隊、小隊長の笹井2等陸尉。
年の頃は20代半ばで迷彩服を着用している。
女性の方は内閣府からおみえの渡住佳奈子さん。
こちらは20代後半といったこころかな。
丸首ブラウスの上に紺のパンツスーツ。
髪は高めのお団子ヘアーで、かっちりした印象をうける。
いかにもデキる女性という感じかな。
内閣府では、この度【ダンジョン調査室】なるものが新設されており、現地調査のため、こちらに派遣されてきたそうだ。
ペットボトルに入ったお茶かミネラルウォーター、お好きな方をどうぞと全員に配っていく。
まあ、どのみち話は長くなりそうだからね。
飲み物が行き渡ったことを確認した俺は、一呼吸おいてから話しはじめた。
「初めてみえる方もいらっしゃいますので、改めてダンジョンのあらましや役割についてご説明させて頂きます。なお質問される際は話が終ってから順にお願いいたします」
なぜダンジョンが出現したのか?
どうしてダンジョンが必要なのか?
噛み砕いてゆっくり説明していった。
予備知識のある自衛隊の方は真摯に聞いておられたが、
内閣府からみえられた渡住さんはというと、
『まるで異世界での出来事のようだわ』
『そんな非科学的なことが本当に?』
『婚約破棄する王子さまはいないのかしら?』
にわかに信じられないといった面持ちで、ブツブツと独り言を連発していた。
さらにはダンジョンが力を及ぼせる範囲のことや、魔素の放出によって、これから起こるであろう魔獣の出現などについても注意を促していく。
そしてこれらの現象は日本だけにとどまらず、近い未来この地球全体で起こってくることも言及しておいた。
ある程度の受け答えを終えたとここで、
それぞれに頭を整理する時間がいるだろうと、一旦休憩を挟むことにした。
するといつ入ってきたのかメイド服を着たタマとキロがあらわれ、
コーヒーか紅茶かを各自に尋ねた後、その場でポットからカップへ注いで渡していく。
うん、洗練されたいつもの所作だね。
えっ、畳の上だけど足元はどうなっているのか?
そこは……、ご想像におまかせいたします。
だけど、みなさん目を丸くして固まってますね。
ツーハイム邸ではごくありふれた光景ではあるのだけれど、こちらではメイドを目にすることも珍しいからね。
ピロリロリン♪ ピロリロリン♪
あっ 若干一名、スマホで撮影してる人がいる。
でも、すぐにタマがスマホを没収、ダメダメと顔をよこに振っているぞ。
あ~ぁ、消去させられちゃったよ。
まぁ無断撮影はマナー違反ですよね。メイド喫茶でやったら一発退場ものです。
コーヒー飲みながらみんなで雑談をしていると、
「このまえ教えて頂いたダンジョン鉄ですが、昨日ようやく試作品である銃剣が届きまして。使ってみたら、ものすごい切れ味でしたよ」
「そうですか、お役に立てたようで良かったです。要は魔力を帯びた鉄が必要だということです。これがミスリル合金にまでなると、あの台詞が口から出ますよ」
――今宵の斬鉄剣はひと味違うぞ――
しばし休憩を挟んだ後、俺は話を再開させた。
いよいよレベルアップについての話だ。
これに関しては早くスタートが切れる日本がかなり有利になってくるはずだ。
まぁそのうちアメリカあたりが嗅ぎつけて、『俺達も入れろ』と圧力をかけてくるかもしれないけど。
レベルの概念や数値表示について説明していく。
スキルの出現は実際にダンジョンに入って探索しながら確認していくしかない。
【剣術】や【槍術】などの戦闘系スキル、【採掘】や【栽培】といった生産系スキル、さらには【鑑定】や【魔力操作】といった重要なスキルもあるけど、これらはダンジョンに入らないと出現しないのだ。
せっかくなので坂井隊長のステータスを覗いてみることにしよう。――鑑定!
ジロウ・サカイ Lv.2
年齢 23
状態 通常
HP 36/36
MP 4/4
筋力 16
防御 12
魔防 4
敏捷 13
器用 13
知力 4
【スキル】 槍術(1)鑑定(1)
元々自衛隊で体を鍛えてきたからだろうか、基礎値はやや高めだな。
MPは低いけど、これからの努力次第ということで。
ダンジョン探索がメインになるなら、【身体強化】につながる【魔力操作】のスキルは是非ともほしいところだけど。
【槍術】のスキルがあるのは……、
銃剣術は槍術の延長ということなのだろうか?
さらに【鑑定】スキルが出現している。
これは帰りにでも鑑定のやり方について教えてあげないとな。
ここからはダンジョンで手に入るドロップ品についての話をしよう。
ドロップ品のトップはやはり魔石ということになるのだろうか。
魔石からエネルギーを取り出すにしても、魔道具の原料として使うにしても、これからの研究次第ということになる。
よって、魔石がどのくらいの価値をもつのか、現時点ではわからない。
あとはメジャーなところでいうとポーション類があげられる。
ヒールポーション・ハイヒールポーションは外傷に効果をもたらすが、脳出血や動脈瘤といった一部の疾患にも効果があったりするのだ。
つまり、体内の血管を正常化させる作用があるのだ。
これを発表すると医学会がひっくり返るな。
どうするかは日本政府に任せるが、慎重にやらないと全世界が日本のダンジョンをロックオンすることになる。
おや渡住さん。 スマホを持ってどこかへ行っちゃったよ。トイレかな?
次は鉱物資源についてだな。
ダンジョンのフィールド内では鉄を中心に様々な鉱石が採れる。
ここでいう鉄とはもちろん【ダンジョン・スチール (迷宮鉄) 】のことであるが、運が良ければコロンと宝石やミスリルが採れたりもするのだ。まさに宝の山だね。
【採掘】スキルが出現した人は鉱石を積極的に狙っていくのもありかもしれない。
そして【宝箱】。
これについては説明はいらないと思うけど。
中身の一例をあげるなら、
各種ポーション・剣や盾といった武具類・金やミスリルのインゴット・宝石や装飾品・能力を伸ばすアイテム・マジックバッグ・単発魔法の使い捨てスクロールなどなど、楽しみいっぱい夢いっぱいの仕様になっている。
「私は魔法のスクロールとやらを使ってみたいですね」
「能力を伸ばすアイテムとは魅力的です」
「サービス、サービスぅ♪」
なに言ってるのかわからない人がいますねぇ。トイレからはいつ戻ってきたのでしょう?
それから罠付きの宝箱も1割ほどあるので注意してほしいです。
特に毒ガスなんかはみんなを巻き込んでしまいますからね。
その他は……、
そうそう、転移魔法陣とボス部屋のある階層の説明もいるな。
1パーティーが6人制であることなど一通り説明していく。
そして最後に、
【魔力操作】の訓練について説明をおこなった。
地道に毎日続けることの重要性をといていく。
『では実際にやってみましょう』というこになり、
坂井隊長を相手に、まずは魔力感知から試してもらう。
魔力感知ができたら、瞑想してもらいながら訓練のやり方を指導していく。
「これを行うことで何が変わったりするんですか?」
坂井隊長からの問いかけに、
「まず【魔力操作】のスキルを得ることで魔法に対する防御力が上がります。それに頑張って【身体強化】のスキルまで取れれば戦闘力が飛躍的に向上しますよ。上の階層を目指していくなら必須ですね」
「私たちも頑張ればス〇パーサイヤ人になれるということですね」
「MPを使用するので無限というわけではありませんけど」
渡住さんの言葉に、ニッコリ笑って返しておく。
これで話は大方終わった訳だが。
あっ、……それ聞きますよねぇ。
【赤いヤツ】の話。
まあ、すでに目星もついてるようだし。
んん~、どうすっかな……。
よし、ここはすっぱりと言ってしまおう!
「実をいいますと彼は【勇者】なんですよね」
「はっ?」
「えっ!」
「勇者さま♪」
渡住さんはこういうの大好物なんだね。
今はほっといて話を続けますよ。
「本当です。彼は女神から選ばれたこの世界の【勇者】なのです」
「女神……ですか」
「伊耶那美命とか?」
「ああっ女神さまっ」
(おお、坂井隊長はなかなかいい線いってる。イザナミも創造神だからね。 渡住さんは……うん、すこし黙ろうか)
「まぁ女神とかが出てくるとどうしても胡散臭くはなってしまいますけど……。 しかし考えてもみてください。地表にはダンジョンが現れ、人々にはスキルが備わるような異常事態です。これらを鑑みれば、そう ”ありえない話” でもないでしょう」
「…………」
「…………」
「…………」
「まあ、ですから、彼を保護するといいますか。こんな世の中ですので、晒されないよう気を配ってあげてください」
一度お会いしたいということなので、本人の意向も踏まえて近々セッティングすることになった。
「わかってあるとは思いますが、これまでお話したことは内々の話しとして留め、情報漏洩には十分なご配慮をお願いいたします」
茂さんは言葉を述べたあとに頭をさげる。
まわりの者も、それに合わせるように一礼して今回の会談は終了した。
10月5日 (月曜日)
次の満月は10月26日
ダンジョン覚醒まで31日
俺と茂さんは静かに昼食をすませた。
あ、そうそう誤解のないようにいっておくと、神職である茂さんや神社の子である紗月は食事中の会話は基本的にしないのだ。
『食事中は私語を慎む』
王国の貴族においても殆どがそうであるため、俺自身たいした違和感はない。
二人でいる時はお互いもくもくと食べるだけなので食事の時間は割と短かかったりするのだ。
昼食のあと、居間でお茶を啜りながら談笑していると、
――ピンポーン!
玄関から呼び鈴の音が聞えてきた。
「あ、みえたようだね」
茂さんは立ちあがると、いそいそと玄関の方へ向かっていった。
今日の茂さんは白衣に薄い紋が入った紫の袴、神職でいうところの平服姿である。
時計を見ると午後1時を少しまわったところだ。
茂さんの案内により居間へ入ってきたのは3人。男性が二人に女性が一人。
その内の一人は俺たちもよく知る人物、坂井隊長であった。
それぞれに座布団を配り、まずは自己紹介。
男性の方は坂井隊長直属の上官で、
陸上自衛隊ダンジョン対策小隊、小隊長の笹井2等陸尉。
年の頃は20代半ばで迷彩服を着用している。
女性の方は内閣府からおみえの渡住佳奈子さん。
こちらは20代後半といったこころかな。
丸首ブラウスの上に紺のパンツスーツ。
髪は高めのお団子ヘアーで、かっちりした印象をうける。
いかにもデキる女性という感じかな。
内閣府では、この度【ダンジョン調査室】なるものが新設されており、現地調査のため、こちらに派遣されてきたそうだ。
ペットボトルに入ったお茶かミネラルウォーター、お好きな方をどうぞと全員に配っていく。
まあ、どのみち話は長くなりそうだからね。
飲み物が行き渡ったことを確認した俺は、一呼吸おいてから話しはじめた。
「初めてみえる方もいらっしゃいますので、改めてダンジョンのあらましや役割についてご説明させて頂きます。なお質問される際は話が終ってから順にお願いいたします」
なぜダンジョンが出現したのか?
どうしてダンジョンが必要なのか?
噛み砕いてゆっくり説明していった。
予備知識のある自衛隊の方は真摯に聞いておられたが、
内閣府からみえられた渡住さんはというと、
『まるで異世界での出来事のようだわ』
『そんな非科学的なことが本当に?』
『婚約破棄する王子さまはいないのかしら?』
にわかに信じられないといった面持ちで、ブツブツと独り言を連発していた。
さらにはダンジョンが力を及ぼせる範囲のことや、魔素の放出によって、これから起こるであろう魔獣の出現などについても注意を促していく。
そしてこれらの現象は日本だけにとどまらず、近い未来この地球全体で起こってくることも言及しておいた。
ある程度の受け答えを終えたとここで、
それぞれに頭を整理する時間がいるだろうと、一旦休憩を挟むことにした。
するといつ入ってきたのかメイド服を着たタマとキロがあらわれ、
コーヒーか紅茶かを各自に尋ねた後、その場でポットからカップへ注いで渡していく。
うん、洗練されたいつもの所作だね。
えっ、畳の上だけど足元はどうなっているのか?
そこは……、ご想像におまかせいたします。
だけど、みなさん目を丸くして固まってますね。
ツーハイム邸ではごくありふれた光景ではあるのだけれど、こちらではメイドを目にすることも珍しいからね。
ピロリロリン♪ ピロリロリン♪
あっ 若干一名、スマホで撮影してる人がいる。
でも、すぐにタマがスマホを没収、ダメダメと顔をよこに振っているぞ。
あ~ぁ、消去させられちゃったよ。
まぁ無断撮影はマナー違反ですよね。メイド喫茶でやったら一発退場ものです。
コーヒー飲みながらみんなで雑談をしていると、
「このまえ教えて頂いたダンジョン鉄ですが、昨日ようやく試作品である銃剣が届きまして。使ってみたら、ものすごい切れ味でしたよ」
「そうですか、お役に立てたようで良かったです。要は魔力を帯びた鉄が必要だということです。これがミスリル合金にまでなると、あの台詞が口から出ますよ」
――今宵の斬鉄剣はひと味違うぞ――
しばし休憩を挟んだ後、俺は話を再開させた。
いよいよレベルアップについての話だ。
これに関しては早くスタートが切れる日本がかなり有利になってくるはずだ。
まぁそのうちアメリカあたりが嗅ぎつけて、『俺達も入れろ』と圧力をかけてくるかもしれないけど。
レベルの概念や数値表示について説明していく。
スキルの出現は実際にダンジョンに入って探索しながら確認していくしかない。
【剣術】や【槍術】などの戦闘系スキル、【採掘】や【栽培】といった生産系スキル、さらには【鑑定】や【魔力操作】といった重要なスキルもあるけど、これらはダンジョンに入らないと出現しないのだ。
せっかくなので坂井隊長のステータスを覗いてみることにしよう。――鑑定!
ジロウ・サカイ Lv.2
年齢 23
状態 通常
HP 36/36
MP 4/4
筋力 16
防御 12
魔防 4
敏捷 13
器用 13
知力 4
【スキル】 槍術(1)鑑定(1)
元々自衛隊で体を鍛えてきたからだろうか、基礎値はやや高めだな。
MPは低いけど、これからの努力次第ということで。
ダンジョン探索がメインになるなら、【身体強化】につながる【魔力操作】のスキルは是非ともほしいところだけど。
【槍術】のスキルがあるのは……、
銃剣術は槍術の延長ということなのだろうか?
さらに【鑑定】スキルが出現している。
これは帰りにでも鑑定のやり方について教えてあげないとな。
ここからはダンジョンで手に入るドロップ品についての話をしよう。
ドロップ品のトップはやはり魔石ということになるのだろうか。
魔石からエネルギーを取り出すにしても、魔道具の原料として使うにしても、これからの研究次第ということになる。
よって、魔石がどのくらいの価値をもつのか、現時点ではわからない。
あとはメジャーなところでいうとポーション類があげられる。
ヒールポーション・ハイヒールポーションは外傷に効果をもたらすが、脳出血や動脈瘤といった一部の疾患にも効果があったりするのだ。
つまり、体内の血管を正常化させる作用があるのだ。
これを発表すると医学会がひっくり返るな。
どうするかは日本政府に任せるが、慎重にやらないと全世界が日本のダンジョンをロックオンすることになる。
おや渡住さん。 スマホを持ってどこかへ行っちゃったよ。トイレかな?
次は鉱物資源についてだな。
ダンジョンのフィールド内では鉄を中心に様々な鉱石が採れる。
ここでいう鉄とはもちろん【ダンジョン・スチール (迷宮鉄) 】のことであるが、運が良ければコロンと宝石やミスリルが採れたりもするのだ。まさに宝の山だね。
【採掘】スキルが出現した人は鉱石を積極的に狙っていくのもありかもしれない。
そして【宝箱】。
これについては説明はいらないと思うけど。
中身の一例をあげるなら、
各種ポーション・剣や盾といった武具類・金やミスリルのインゴット・宝石や装飾品・能力を伸ばすアイテム・マジックバッグ・単発魔法の使い捨てスクロールなどなど、楽しみいっぱい夢いっぱいの仕様になっている。
「私は魔法のスクロールとやらを使ってみたいですね」
「能力を伸ばすアイテムとは魅力的です」
「サービス、サービスぅ♪」
なに言ってるのかわからない人がいますねぇ。トイレからはいつ戻ってきたのでしょう?
それから罠付きの宝箱も1割ほどあるので注意してほしいです。
特に毒ガスなんかはみんなを巻き込んでしまいますからね。
その他は……、
そうそう、転移魔法陣とボス部屋のある階層の説明もいるな。
1パーティーが6人制であることなど一通り説明していく。
そして最後に、
【魔力操作】の訓練について説明をおこなった。
地道に毎日続けることの重要性をといていく。
『では実際にやってみましょう』というこになり、
坂井隊長を相手に、まずは魔力感知から試してもらう。
魔力感知ができたら、瞑想してもらいながら訓練のやり方を指導していく。
「これを行うことで何が変わったりするんですか?」
坂井隊長からの問いかけに、
「まず【魔力操作】のスキルを得ることで魔法に対する防御力が上がります。それに頑張って【身体強化】のスキルまで取れれば戦闘力が飛躍的に向上しますよ。上の階層を目指していくなら必須ですね」
「私たちも頑張ればス〇パーサイヤ人になれるということですね」
「MPを使用するので無限というわけではありませんけど」
渡住さんの言葉に、ニッコリ笑って返しておく。
これで話は大方終わった訳だが。
あっ、……それ聞きますよねぇ。
【赤いヤツ】の話。
まあ、すでに目星もついてるようだし。
んん~、どうすっかな……。
よし、ここはすっぱりと言ってしまおう!
「実をいいますと彼は【勇者】なんですよね」
「はっ?」
「えっ!」
「勇者さま♪」
渡住さんはこういうの大好物なんだね。
今はほっといて話を続けますよ。
「本当です。彼は女神から選ばれたこの世界の【勇者】なのです」
「女神……ですか」
「伊耶那美命とか?」
「ああっ女神さまっ」
(おお、坂井隊長はなかなかいい線いってる。イザナミも創造神だからね。 渡住さんは……うん、すこし黙ろうか)
「まぁ女神とかが出てくるとどうしても胡散臭くはなってしまいますけど……。 しかし考えてもみてください。地表にはダンジョンが現れ、人々にはスキルが備わるような異常事態です。これらを鑑みれば、そう ”ありえない話” でもないでしょう」
「…………」
「…………」
「…………」
「まあ、ですから、彼を保護するといいますか。こんな世の中ですので、晒されないよう気を配ってあげてください」
一度お会いしたいということなので、本人の意向も踏まえて近々セッティングすることになった。
「わかってあるとは思いますが、これまでお話したことは内々の話しとして留め、情報漏洩には十分なご配慮をお願いいたします」
茂さんは言葉を述べたあとに頭をさげる。
まわりの者も、それに合わせるように一礼して今回の会談は終了した。
10月5日 (月曜日)
次の満月は10月26日
ダンジョン覚醒まで31日
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