俺とシロ(second)

マネキネコ

文字の大きさ
上 下
27 / 82

23. 自衛隊さん

しおりを挟む
 じつのところ、かなり心配していたのだ。

 年配者でもレベルをあげてパワーアップできるのだろうかと。

 年を取ってから危険なダンジョンにいどもうなどという者は、向こうの世界にもいなかったからね。

 まあ、その前に冒険者ギルドで止められるだろうけど。

 それにしても良かった……。

 これで慶子けいこは、もっと元気になれるだろう。

 よいよいで、しょぼくれてる姿なんて見たくないものなぁ。 

 よし、気合が入ってきたぞー。

 それから慶子は、夕方までしっかりとダンジョン探索をおこない帰っていった。

 この調子なら明日もスキップしながら来るんじゃないか。

 レベルがポンポン上がっていく今の時期が一番楽しいんだよね。

 ………………

 さて、夕食を済ませたら、カンゾー (ダンジョン) と打ち合わせの続きだな。

 問題点はまだまだ沢山あるのだ。

 低階層のドロップ品は何がいいかなぁ。

 向こう (デレク) のようにサラダ油やミルクなんかでは喜ばないだろうし。

 ……悩むところだよな。

 それに、こちら (地球) ならではの問題もあるんだよね。

 科学にしても工業製品にしても、向こうよりかなり進んでいるから。

 銃火器の使用は禁止するとして、車両の持ち込みやドローン、無線機の使用やWi-Fiルーターの設置をどの辺まで許可するかなどだね。

 ダンジョン探索をネットでリアル配信なんて、すごく楽しそうだよね。

 さっさと情報公開して、広くみんなから意見をもらった方がいいような気もするんだよな。





 今日の晩ごはんは日本のソールフードの一つである ”おでん” である。

 10年ぶりの ”おでん” は楽しみだな。

 真領路しんりょうじ家みなさんには時期外じきはずれにもかかわらず、お付き合いいただき申し訳ないのだが、夏場でもきっと美味しいよね。

 冬場におこたに入ってアイス食べるのと一緒だよね。(違うわ!)

 んっ、何か聞こえたような気がしますが……。まっ、いっかー。

 ふぅふぅ、ほくほく、あちあち。

 ふぅふぅ、ほくほく、あちあち。

 シロもおいしそうに食べています。

 「つぎは何にする? ちくわ、たまご、だいこんね。この黄色いのどうする? あ~、やっぱりいらないか~」

 さすがのシロちゃんも和辛子わがらしは苦手なようです。

 だよねー。くしゃみ出ちゃうもんねー。

 「ごちそうさまでした!」

 ――いや~旨かった~!

 エアコンと扇風機を回しながらの ”おでん” は最高でしたわ。

 ………………

 残しておいた ”よもぎ餅” を、お風呂あがりに美味しそうに食べている紗月さつき

 「魔力操作まりょくそうさの訓練は続けてる?」

 「はい、訓練は毎日するようにしています」

 「そっか。で、どんな感じ?」

 「えっと、まだまだですね。僅かに動くようにはなってきたんですけど……」

 「おお、もう動いているのかー、それは凄い!」

 「えへへ、それほどでも……。でも、すっごく疲れちゃうんですよね」

 「それはれるまでは仕方ないね。あんまり無理しないようにね、毎日少しずつだよ」

 「はい。でも魔法を早く使いたいんで頑張っちゃいますよ!」

 魔力感知で自分の中にも魔力があると実感してからというもの、その魔力を扱えることが楽しくてしかたないみたいだ。

 学校でも魔力操作の訓練はやっているようで、夢中になってトイレにこもっていたら、『お腹が痛いの? 大丈夫?』と友達に心配されたそうだ。

 そりゃあトイレで『うぅ~ん、うぅ~ん』と長いことうなっていたら誰だって心配するだろうね。





 心配していた学校の期末テストも終わり、またたに一週間が過ぎた、7月21日。

 赤点補習のなかった紗月はいよいよ夏休みに突入である。

 片や続いている地震の方なのだが、

 頻度ひんどは若干上向き傾向けいこうではあるものの、規模きぼ幾分いくぶんおさえられてきたようにおもう。

 ただし、被害ひがいは確実に増えており、早急な対策たいさくが必要だろう。

 そして俺は慶子の頑張りに驚いた!

 5階層かいそうのフロアボスにゴブリンジェネラルが居たんだけど、それすら一刀両断いっとうりょうだんに斬り捨てていたからね。

 剣や刀じゃないんだよ、あの土木スコップでだよ! なんなのあれ、スパーってすごすぎるでしょ!  

 叩いて良し、切って良し、突きなんかスコップのハンドルを握ってひねりながらいれていたからね。

 相手はもうぐっちゃぐちゃ。土木スコップ恐るべし!

 多数のモンスターに囲まれても、しっかりシロとの連携れんけいもとれているようで申し分ない。

 レベルもあがって今はLv.7。

 まさか、ここまでやるとは思ってなかった。もう参りましたって感じだなぁ。

 向こうにいるけ出しの冒険者が、ここまでレベルを上げるためにはゆうに1年はかかるだろう。

 ――レベルはね。

 さらに言えば、同じLv.7であってもレベルアップ時における身体パラメーターの伸びが格段に違ってくるのだ。

 まあ、加護を持っているということは、それだけでチートなんだよね。

 それで、魔法もあるのだからWチート。一般人では逆立ちしても勝てないということだね。

 そして今日からいよいよ夏休み。紗月もダンジョンアタックに参戦ということになる。

 向こうの世界 (サーメクス) に帰るまで残すところ8日。

 準備や買い出しもあるので正味しょうみ6日というところか。

 慶子同様、紗月にも頑張ってほしいところだ。





 あと、変わったところでは……。

 ようやく自衛隊じえいたいさんとつなぎがとれたようで、さっそく動いてくれるみたいだ。

 博多駅の近くに住○神社という大きな神社があって、そこの神職の一人が茂さんが行っていた大学の同期なんだそうな。

 今回はそちらの伝手つてを頼ってのことだという。

 先方の自衛隊さんも地震の影響えいきょうで、あちらこちらに引っ張りだされて、忙しくしているみたいだけど、何とか時間を作ってくれるそうだ。

 ………………

 「さっそくだけど、このローブを羽織はおってみてくれるか?」

 朝食を済ませ、あと片付けを終えた紗月にワイバーン・ローブを渡した。

 ローブを着た紗月の動きをしばらく確認したのち、

 「グローブはとりあえずコレを使ってみて」

 グローブはそこのホームセンターで見つけてきた PU (ポリウレタン) グローブだ。

 伸縮性しんしゅくせいに優れ、良く馴染なじむしすべらない。

 おまけに、カラーバリエーションが豊富ほうふだ。

 俺と慶子はすでに10組づつ購入している。

 両手にグローブをはめ、てにひらをグーパーグーパーしている紗月。

 そんな様子を心配そうに見つめる茂さん。

 紗月がダンジョンへ入ることについて、初めは難色なんしょくしめしていた。

 大切なひとり娘なのだ、親としては当然のことだろう。

 ところがである。

 日々変わっていく慶子をの当たりにして、少しずつ考え方も変わってきたようにおもう。

 慶子と紗月がふたりして、茂さんを毎日説得し続けたことがこうそうしたともいえるのだが。

 この神社はダンジョンのすぐ側にある。鍛えておいて損はないだろう。

 モンスーターへの警戒けいかいは勿論だが、同時に人間にも気をくばる必要が出てくるからだ。

 これから、いろんな人達がダンジョンへ出入りすることになるだろう。

 そういった人間の方が脅威きょういとなる可能性かのうせいが高いのだ。

 できれば、茂さんにも鍛えてもらいたいところなんだけど……。

 それは帰ってきてから考えることにしよう。





 それから3日経った、7月24日。

 陸上自衛隊の方が今日の午後からこちらに見えるらしいのだ。

 朝食を済ませたあと、

 「今日の探索はどうする?」

 紗月に尋ねたところ、彼女はササッとスマホを操作するとすぐに、

 「慶子さんが午前中だけでも入ろうかだって。私も行きたいなぁ。早く強くなりたいし」

 「そうか了解。では、すぐ準備してくれ。時間がないぞ」

 「うん、やったー!」

 だよねー。

 3m程ある天井に垂直飛すいちょくとびで、もう少しで手が届きそうだからな。

 今の紗月はLv.3。楽しいさかりだよねー。

 学校の宿題も忘れるなー。

 ………………

 俺たちは昼前までダンジョンに入って探索をおこなった。

 昼食をとったあとは、慶子と紗月は一緒に買い物へ出かけていった。

 最近、益々もって親子のような二人である。

 そして午後2時すぎ。

 やってきたのはスーツ姿の男女2名。

 「地方協○本部の鈴木です」

 「同じく、佐藤です」

 お互いの挨拶から始まり、紹介者しょうかいしゃの話などでなごやかに会談は進んでいく。

 そして俺はというと、ここのところの地震についてや【ダンジョンの起動きどう】についてなど丁寧ていねいに説明していった。

 そうして、スタンピードが起こる可能性のところまで話が進んだところで、

 「ああ、なるほど!! ダンジョン・・・・・それにモンスター・・・・・ですか。では、これまでの話をまとめますと……」

 男性の鈴木さんが話に割り込んできた。

 また、その声がデカいこと。

 「この半年ほど続いている地震がそのダンジョンとかいう物のせいだという事。今から起こる地震で被害ひがいが多く予想されるので、その該当がいとうする地域の住人を避難ひなんさせてほしい事。地震災害じしんさいがいが起こってからの復旧作業ふっきゅうさぎょう中にダンジョンからモンスターがあふれだし復旧作業中の者や一般住民などがおそわれるであろう事。最終的には、そのダンジョンを中心とした政策せいさくや人員の配置はいち、冒険者による探索たんさく資源しげんの確保をうながせるように国に対して ”冒険者ギルド” のような組織の立ち上げや整備せいびをしてほしい事」

 「以上ですね!!」

 鈴木さんは会話をつづったレポート用紙に目を落としながら会話を終えた。

 「いや~、貴重きちょうな情報と建設的な話を聞かせて頂きありがとうございます。こちらもいろいろとございまして、ぐにどうこうする事は難しいでしょうが前向きに検討けんとうさせて頂きます。本日はお疲れさまでした!!」

 会談の終了を強引に宣言せんげんされてしまった。

 「…………」

 「…………」
 
 「そうですか……。ここで申しましたことは、これから先 世界に対して日本の立ち位置が決まるような大きなものです。可及的かきゅうてきすみやかに行動されることをせつに願います。そして最後になりましたが、こちらメモは本日より2週間、これから起こる地震の震源地しんげんちと規模の大きさを示したものになります。これからの救助活動きゅうじょかつどう是非ぜひお役立てください」

 俺はそう言ってから鈴木さんと佐藤さんそれぞれにメモを渡した。

 そして陸上自衛隊からお越しになったお二方ふたかたは玄関にて深々と頭を下げると、回れ右をしてそそくさと帰っていかれた。

 「なあ……、ゲンさんはどう思う?」

 「まあ、最初はあんなもんですよ。よく怒って帰らなかったなぁと感心しているぐらいですから」 

 俺は茂さんと目を合わせると。

 「「ぷっ!」」

 ――はははははははっ! 

 ふたりで笑い飛ばしてやった。

 今帰った二人が2週間後にどんな顔をするのか楽しみである。

 何せ、あのメモには地震の起こる日付の他、時間までがしっかりと書き込んであるのだ。 

 俺はカンゾー (ダンジョン) に人間が使う日付と時間の概念がいねんを教えていた。

 正確な日付と時間を割り出せるようになったカンゾーが出してくれた ”デモンストレーション” の予定をメモに書いて渡しているのだ。

 これから2週間以内に起こる6回の地震は、すべてがメモの通りに発生するのだから。






7月24日 (金曜日)  
次の満月は7月29日
ダンジョン覚醒まで44日・104日

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

処理中です...