俺とシロ(second)

マネキネコ

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15. 竹坂慶子

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 女神さまより【加護かご】や【祝福しゅくふく】をさずかるためにはいくつかの条件がある。


 ・教会などの神域しんいきである事。

 ・女神ユカリーナ様がまつられている事。

 ・フェンリルであるシロが同じ神域内にり、かつシロに認められている事。


 さすがは聖獣シロちゃん。

 かしこいシロにはいろんな権限が与えられているんだね。

 まぁとはいえ、これはシロを通してのものであって、女神さまが勇者ゆうしゃや転生者に直接授けられることもある。

 しげるさんの場合は俺とシロがこの神社に戻ってきた時点で条件が成立したのだろう。

 茂さんは加護・・を授かっている。

 そう、【祝福】ではなく【加護】なのである。

 ということは、シロが家族または家族にしても良いと思っているのだ。

 仲間認定のときには、ほとんどが【祝福】だったからね。

 シロは茂さんを身内にしたいと思っているのかな……?

 う~ん、あまり深く考えるとフラグがたちそうだね。BL路線は御免ごめんこうむりたいところ。

 二人ともおじさんなんだし、あまり気にしないことにしよう。

 家でお昼を頂きながら、女神さまから聞いたこと頼まれたことなどの他、祝福や加護についても簡単にだが茂さんに説明しておいた。





 せっかくパソコンも買ったので、俺は今回のことを忘れないように記録しておくことにした。

 学者ではないのでざっくりまとめた感じだな。


 今現在、日本には3基のダンジョンが確認されており、覚醒間近かくせいまじかだという。(女神さま談)

 *ダンジョンとは
この星 (地球) 全体をおおっている大気中には魔素まそが含まれている。魔素というのは魔法現象の元となるものとされるが、生物が生きていく上でも欠かすことのできないものである。魔素がなくなれば生物は死滅しめつしてしまうということだ。この魔素の調整を行っているのがダンジョンである。ダンジョンは世界中のあちこちに点在てんざいしており、周りの魔素濃度まそのうどに応じて休眠・覚醒を繰り返しているという。そのサイクルは数万年ともいわれており計り知れない。そして現在アース (地球) の魔素濃度は22%と少ない。68%~72%が推奨すいしょうとされる目安なんだそうだ。

 *ダンジョンはねむっていたのは何故
地上にいる人間をはじめとした生命体が放出するエネルギー、これがダンジョンの原動力げんどうりょくになるのである。それが巨大隕石いんせき衝突しょうとつ氷河期ひょうがきといった超常現象ちょうじょうげんしょうにより地上の生命体はいちじるしく減少してしまっていた。そこから起こるエネルギーの枯渇こかつ問題に対応するため、地上にあったほとんどのダンジョンは休眠状態へと移行した。

 *どうしてダンジョンは起動きどうした
地球の地核変動ちかくへんどうや地上の環境かんきょう (魔素濃度) の変化など、要因よういんは様々だという。1基目のダンジョンが目覚めようとしていることで、他2基のダンジョンもこの余波 (あおり) を受け覚醒かくせいをはじめてしまった。 また、他の大陸たいりくとは海によりへだたりがあるためか、今のところ影響はでていない。


 つまるところが、ねむっていたダンジョンが起きてしまったので対応をよろしく。とまぁそういうことだよね。(赤ん坊か!)

 人類とダンジョンとの共存きょうぞんか……。

 「倒せ!」 とか「守れ!」とか言われた方が楽なんだけどね。

 こちらの世界での協力者きょうりょくしゃを探していかないとな。

 かじとりは日本政府せいふが行うべきだろうし……。

 総理大臣そうりだいじんあたりに直接ちょくせつ話をもっていくべきかもね。

 下から法案ほうあんなんかをあげていたら何年かかるかわからないし、国防こくぼうの話でもあるから、やはりここは自衛隊じえいたいの方が先かな?

 それに俺の話なんて信じてもらえるのかね・・・・・

 ダンジョンが目覚める兆候ちょうこうといっても、現状では頻発ひんぱつする地震じしんぐらいなんだよなぁ。

 何処どこに話を持っていっても一笑いっしょうされて、「帰れ!」って言われるだけだよなぁ。

 この地震にしても警戒けいかいして対処しないと、かなりの犠牲者ぎせいしゃが出ると思うんだけどな。

 それに輪をかけて、スタンピードなんか起こった日には目もあてられない惨状さんじょうになるだろうね。

 まさに地獄絵図じごくえずだな。

 とりあえずは自衛隊からあたっていくことにしようか。

 話がわかる幹部かんぶさんに出会えるといいのだけど。





 ふむ~、ひとりでモヤモヤ考えていた。そんな時である、

 「ゲンさ~ん。ゲンさんにお客さんだよ。竹坂たけさかさんって綺麗きれい女性ひと面識めんしきあるの?」

 (おおっ、慶子けいこがきた! 信じてくれたのかな?)

 「あっ、はい。以前というか、生前世話になってた人で、このあいだ偶然ぐうぜんイヲンの前で出会ったんですよ」

 「ああ、そうなんだね。じゃあ上がってもらうよ」

 そういって茂さんは玄関へ向かっていった。

 しばらくすると、茂さんに案内され慶子が居間に顔をだした。

 慶子は両手を後ろで組んでいる。

 「えへっ、来ちゃった!」 

 ――ぶふっ!

 俺は飲んでいたお茶を思いっきり吹き出した。

 開口一番かいこういちばんがこれである。

 茂さんもリアクションに困ってるじゃないかぁ!

 70のばあさんが、やるかふつう。

 「ほんと相変あいかわらずだな~。勘弁かんべんしてくれよぉ」

 俺はテーブルの上を片付けながら慶子の方を振り返った。

 あらためて慶子を見やると、メイクと服装で別人のように変身していた。

 肌ツヤもよくなっており、かなり若く見える。

 「は――――っ? 若返わかがえり過ぎだろ。それじゃあどっちが娘かわからないって言われるだろう?」

 すると慶子はスススッと俺の横に座ってきて、

 「そうなのよ、皆ひどいのよ! 若づくりとか、美容整形びようせいけいだとか、詐欺さぎだとか、ハゲろとか、いろいろ陰で言われているんだから。私は何にもしていないのに、ホント勘弁してほしいわぁ~」

 ――自慢じまんかよ!

 文句もんくを並べているようだが、顔が笑ってるぞ!





 茂さんがお茶を入れ直してきてくれたので、おたがいに紹介しあう。

 慶子に近況きんきょうを聞いたところ、今は娘とも距離きょりをおいて、一人暮らしをしているそうだ。

 俺も気ごころが知れた相手なので、あちらの生活のことや婚約者こんやくしゃがいることなどを話していった。

 なにせ10年ぶりだ。(こちらでは5年)

 それに異世界帰りとくれば、話はきようもないのだ。

 ………………

 すこし話し疲れたので、お茶うけにいろいろ出しながらも今度は聞き役にまわる。

 そして話のネタはいろいろと変わっていき……、

 ここ最近起こっている地震じしんの話題となった。

 いつまで続いていくのか?

 地震の規模きぼはまだまだ大きくなるのか?

 日本はこれからどうなってしまうのか?

 日々、不安を抱えているそうだ。

 「これから言うことは内緒だからな」

 俺は口止めをした上で、今回俺が受けた ”女神さまからの使命しめい” について二人にくわしく話して聞かせた。

 ………………

 「そんな日本の危機ききが迫っているのなら僕もできる限り協力するよ!」

 話を聞いていた茂さんは、改めて協力することを約束してくれた。

 「…………」

 「な、なんだよ慶子? 人の顔をじっと見て」

 「やっぱりあなたはゲンなのねぇ。話し方がそっくりだもの」

 「なんだよ、ここに来てまだ疑ってたのかよ!」

 「そりゃあ疑いもするでしょう。あなた鏡を見てみなさいよ! しかも『異世界から帰ってきました』なんて言われても、『はい、そうですか』とすぐには信用できないわよ」

 「おまえの方こそ鏡を見ろ! それが魔法の力なんだよ。それに俺は帰ってきたわけじゃない! むこうの世界から飛ばされてきたんだ。これがぞくにいう異世界転移いせかいてんいというやつなんだよ!」

 「そう、これは魔法の力なのね。それじゃあ魔法の効果がきれたらシンデレラのように、またしわくちゃ・・・・・のかぼちゃになってしまうの……?」

 「ならねーよ。肌と筋肉を再生しているから、そこは大丈夫だな」

 「あら、そうなのね。フフフッ♪ じゃあ私も協力してあげるわ!」

 (なんて現金なヤツだ)





 楽しい時間は過ぎるのもはやく、もうすぐ夕方だ。

 慶子はひざの上に乗せたシロの頭をやさしくでていた。

 (シロのやつ、ビーフジャーキーもらったからって すぐになつきやがって)

 「じゃあ、また来るわね……」

 シロを撫でていた手をとめ、慶子は立ちあがろうとしている。

 「ちょっと待ってくれるか」

 俺は慶子を引きとめ、茂さんに例の神像しんぞうを出してくれるようにと頼んだ。

 『心得こころえた!』とばかりに頷いた茂さんは、すぐに神像を持ってきてくれた。

 突然のことに慶子は、『えっ、何が起こるの?』って感じで固唾かたずをのんでいる。

 ほどなくして、テーブルの上には神像がそっと置かれた。

 言わずと知れた、ベ○ダンディー白ビキニ&パレオVer.をしたものである。

 もし、この姿で顕現けんげんされようものなら、ビーチの視線はひとり占めであろう。

 「慶子、こちらが女神のユカリーナ様だ。向こうの世界であるサーメクス、そして今はここ地球の主神でもあらせられる」

 「…………」

 うううっ、慶子のジト目が……。

 それでも俺はジト目に耐えつづけた。

 「俺とシロを向こうに呼んで引き合わせてくれた神様でもあるんだ。だから俺たちと一緒にいのりをささげてくれないか?」 
 
 慶子はまっすぐに俺の目を見ると、大きくうなずいてくれた。

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