俺とシロ(second)

マネキネコ

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9. 検証

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 吉牛の駐車場に転移してきた俺とシロは、近くの路地に隠れ光学迷彩こうがくめいさいを解除。

 そのまま何食わぬ顔で吉牛の入口へと進み、店前のステンレスの手すりにシロのリードをしばった。

 「シロ、持ち帰りの牛丼を頼んでくるから、ちょっとここで待っててな」

 シロは尻尾を振りながらコクコクと頷いている。――可愛い。

 店内に入った俺は【お持ち帰り】のプラボードが下がっているカウンターの奥へと進んだ。

 「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞー」

 「持ち帰りで並を10コ。その内5つはつゆだくで」

 「ご注文お受けしましたぁ。先にお会計よろしいですかー」

 ポケットから無造作むぞうさに1万円札を出して会計を済ます。

 (お札入れの財布も買わないといけないな)

 待っている間は店内に貼ってある広告などをながめていた。

 お持ち帰りのクーポンなんかもあるのかぁ。スマホで予約なんかも便利そうだ。

 ――スマホか。

 こちらに長く居るなら必要になってくるけど……。

 「お待たせしました。こちら牛丼弁当、並10個になります!」

 牛丼を受け取り店の外に出る。

 やったー! 牛丼10個ゲットだぜ!

 これで、おいしい牛丼がいつでもどこでも食べられるな。

 よ~し、この調子でどんどんため込んでいくぞー!

 牛丼をインベントリーにしまった俺は、そのままジョギングを開始。今度はスキ家へと向かった。

 そして同じように、10個の牛丼弁当を確保した。

 袋を両手に吊るし、ホクホク顔で店から出てきた俺にシロがまとわりついてくる。

 俺の顔を何度も下から覗きこみ『食べないの~?』と言ってるようだ。

 ていうか、念話で伝えてきている。

 だよねー。この匂いはたまんないよね。

 ……仕方ない、一つ食べていくか!

 俺たちは適当な路地に入ると光学迷彩を発動。そのままスキ家の駐車場に戻ってきて、牛丼弁当を一つずつ食べていくことにした。

 俺のはつゆだくね。

 うんま~~~。これは旨すぎるやろ!

 10年ぶりに食べた牛丼はなつかしさも加わり格別でした。

 「ク――ン!」

 シロがこのように高い声で鳴くときは喜んでいるのだ。

 フェンリルになって良かったな。玉ねぎいっぱいの牛丼なんか犬のままでは食べられないもんなぁ。

 ついつい、もう一つといきそうになったけど必死で我慢がまんしましたよ。





 道なりに進めば、次はヤーマダ電機だな。

 油山観光道路あぶらやまかんこうどうろをシロを連れてゆっくり歩いていく。

 リードをつけたシロは、必ず俺の左側を寄りうように歩く。

 俺がそうしつけたからな。

 もう何十年だ? かなり昔のことなのにシロはちゃんと覚えているんだよなぁ……。

 つい嬉しくなって、シロの頭をわしわしとでてしまった。

 ………………

 俺たちは大型家電量販店おおがたかでんりょうはんてん・ヤーマダ電機に到着した。

 シロは認識阻害にんしきそがいの結界を張ってもらって、出入口横で待機たいきさせる。

 店に入ると、ずらりと並んだ ”ガチャガチャコーナ” が目にはいる。

 うっ、いかん!

 気を抜いたら、そちらに足が向いてしまうぅぅ。

 ダ○ソン並の引力に逆らいながらも、俺はエスカレーターを使い2階の家電コーナーへと向かった。

 しかし、今のところ必要なものはそれほど多くないのだ。

 こちらの世界にいつまで居るかも分からないし。

 それでも見てたら欲しくなってくるんだよな。

 ドイツ製シェーバーに小型マグライト、単3アルカリ電池もダースで購入しておく。

 そうそう、ホットプレートも必要だよな。

 家 (神社) には無いとのことだったので、大きめの物を買っていくか。

 これで焼肉やお好み焼きなんかも手軽にできるよな。

 スマホもいろいろと並んでる。

 すぐに契約けいやくは無理だけど、そのうち何とかしたいな。

 あと、ガンプラやSwitch (ゲーム機) にも触手しょくしゅが……。

 うぅぅっ、今日のところは止めておこう。家から動かなくなってしまいそうだし。

 そして隣のパソコン館へ移動。

 『神社うちにはWi-Fiルーターがあるからパソコンを使うならどうぞ!』

 紗月さつきが言っていたのでノートパソコンを1台買うことにする。

 どのみちネットで情報を拾うだけなので、ワード・エクセルが付いた79,800円のやつにした。





 お次は近くのユ○クロへ寄る。

 下着・靴下・Tシャツを数点ずつ、あとはスエット上下・ジーンズ・たくさんポケットが付いたメッシュベスト・デイパックを購入した。

 今から夏場だし、こんなところで良いだろう。

 買ったばかりのデイパックに購入した物を詰めていく。背中に背負ったと同時にインベントリーに収納していく。

 ホントに多いよね防犯カメラ。これではプライバシーなんかあったものじゃない。

 さて、そろそろ昼になるけど……。

 周りを見まわすとイヲンの前に【モフバーガー】を発見。

 てりやきバーガー・チリドッグ・フライドポテト・チキンナゲット・バニラシェークを2つずつテイクアウトにしてもらった。

 またまた、シロと駐車場にてパクリ。

 うんま~~~! モフバーガーといえば、このレタスたっぷりのてりやきバーガーだよな。

 それにピリ辛ソースとぷちぷちオニオンのハーモニー、チリドッグも最高!

 ………………

 さて、お腹もふくれたし、目の前のイヲンに寄ってから帰りますか。

 正面玄関口でシロに待ってるように伝え店内に入る。

 店内をまわっていると時計店を発見。

 スマホを持ってない俺は、外に出ると時間がわからない。

 あちら (デレクの町) のように、一刻 (2時間) 置きにかねも鳴らないしね。

 このペアで並んでいるS○IKOの腕時計を見せてもらう。

 ふんふん、10気圧防水の上にソーラー電池により10年以上も稼働かどうするのか……。

 うん、コレにしよう。

 S○IKOのステンレス製ペアウォッチを1セット、同じ時計のレディースサイズを2つ購入した。

 支払いにとポケットから万札の束を取り出していると、店員のおねえさんにギョッとされてしまった。

 あっ、いけね! 財布 財布。

 忘れるところだった。持ちれてないとダメだね。





 時計屋を離れ、並びの雑貨店で適当な長財布を買った俺は、1階のフロアーをうろちょろ。

 本屋にも立ち寄ってみる。

 たくさんのマンガやラノベが並んでいるところを見て、やっぱりここは俺が生きていた世界なんだと、何だかほっとしてしまった。

 ついつい、マンガを手に取りそうになったが今日は時間がなかった。シロも外で待たせているしな。

 地下1階の食品売り場に下りてきた俺は、カートを転がして食料品を入れていく。

 特に調味料ちょうみりょうのコーナーは念入りにチェックしていく。

 エバラさん・ガーリックパウダー・りわさびシリーズ・正油・酢・中濃ソース・味噌・マヨネーズ…………、ヤバい止まらん。

 調味料だけで上のカゴがいっぱいになってしまった。

 あとは後日にしようか……。

 レジに並んでいるのだが、その間もコーラやガーナチョコなどをカゴに入れてしまった。

 だって、レジのそばに置いてあるんだもん。

 イヲンの購買戦略こうばいせんりゃくに引っかかりつつ、有人レジにて精算せいさんを終わらせる。

 人が居ない時を見計らって一人でエレベーターに乗りこむ。

 駐車場のある3階のボタンを押した。

 3階フロアに降り立った俺は、そのまま駐車場を横切り反対側の出入口へと進む。

 フフフッ♪ 手には何も持っていない状態だ。

 まったく防犯カメラというのは厄介やっかいなものだよね。

 途中で認識阻害にんしきそがいや光学迷彩といったものを使ったから、おそらくはバレないと思う。

 念入りに一つ一つ調べれば違和感に気づく可能性もあるけど、何か事件が起こらないかぎりはそこまで調べることもないからね。

 今度はエスカレーターに乗り、再び地下1階まで下りてきた。





 なぜ俺がここまで戻ってきたのか?

 それは、とある能力の検証けんしょうを行なうためである。

 向かった先はイヲンの地下1階エレベーターホール。

 その奥にひっそりと存在している【宝くじ売り場】だ。

 まあ、宝くじ売り場ならどこでも良かったのだが……。

 近くにいって目的のブツがあるかを確認した。

 すると、

 只今ただいま発売!
 にゃんにゃんスクラッチ ラッキー3
 1等50万円×20本 1枚200円。

 ――よし、これだ!

 あくまでも検証のためなんだ。

 でも、ちょっぴりドキドキしている。

 買うのは30枚。これなら選ばせてくれ・・・・・・と頼みやすいだろう。

 速やかに窓口へ進んだ俺は、さっき買った財布さいふから現金6,000円を出した。

 「にゃんにゃんスクラッチを30枚。自分で選んでもいいですか?」

 なるべく明るくにこやかに言ってみる。

 「はいよぉ、へ~外人さんかい。当たると良いね~。今あるのはこれだけ!」

 お金を受け取ると、売り場のおばちゃんはスクラッチ10枚入りのたばをトランプのように両手で広げてくれた。

 フフフッ♪ ついに来たなこの時が……。

 ――鑑定!

はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・100円・100円・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・1,000円・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・はずれ・はずれ・はずれ・100円・はずれ・はずれ・・・・・・・・

 わぁ――――お!

 これはいけない!

 俺は鑑定を使いながら邪魔じゃまな ”はずれ“ 表示をオフにした。

 …………あった!

 1等ではなかったが、2等が混じっている。

 俺は悩んでいるフリをしながら3つの束をゲットした。

 すると、おばちゃんは選んだ3つの束を重ねると、手前に置いてある派手派手招き猫マネキネコこすりあて、

 「当たりますように!」

 つぶやくように祈願きがんしてくれた。

 『おばちゃんありがとう。おかげで2等が当たったよ!』

 そう言ってあげられないのが残念ではある。まだけずってもいないので。

 まあ、その場で削ってもよかったのだが、売り場で交換できるのは5万円までだから。

 それに、あまり目立ちたくもないからね。

 スクラッチくじが入った小さなビニール袋を笑顔で受けとり、今回の検証は無事終了した。

 俺は階段を使って1階に上がると、裏側にあたる西の玄関口からイヲンの外に出た。

 『シロ、こっちにまわっておいで』

 シロに念話を送りつつ、玄関口横にあるスロープから目の前の横断歩道おうだんほどうながめていた。

 「…………」

 あぁ、ここか。俺の人生が終わった場所は……。

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