俺とシロ

マネキネコ

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60 俺たちの事を

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 お宝袋は収納して、次は吊戸棚つりとだなのほうを見ていく。

 金属の胴鎧どうよろいやヘルムに籠手こてといった防具がごろごろと無造作に置かれている。

 特に変わった物はないみたいだ。

 もう一つの吊戸棚にも防具ぼうぐ関係がほとんどで、隅っこの方に黒い布袋が置かれていた。

 さっき収納した袋と感じは同じなので、これもおそらくマジックバッグだと思う。

 おもて裏を確認するが何も書かれていない。俺は黒い布袋の中に手を入れた。

 「――うわっ!?」

 出てきたのは、宝石が散りばめられコテコテに装飾された金の王冠。

 持った感じはずっしりと重い。

 おいおい、いったい何キロあるんだ?

 とても実用的とは思えない代物だ。観賞用だったとか?

 あと似たような金のつえも出てきた。

 ベビー用品なんかもあるなぁ。

 黄金のガラガラにミスリル合金製のゆりかご。

 「…………」

 これ、いるのか?

 純金製ポッポちゃんオマル、ふたつき。

 どこに金をかけているのやら……。

 極めつけはコレだな。

 金の髑髏しゃれこうべ。――信長か!

 いや、これで酒を飲んだかどうかは知らないが……。

 これもなんちゃら帝国の宝物庫から持ってきた物なのかな? (バルタ大帝国です)

 雑多に置いてあるところを見ると、使うに使えなかったんだろうね。

 かといってつぶすには少々もったいなかった……と。

 結局、残ってんじゃん!

 それで困って次 (俺) へまわしたと。

 まあ、市場には出せないし。下手なところに流して出所を探られても面倒だったんだろうね。当時は。

 ちなみに、インベントリーにしまっておいた『お宝』のほうには各種鉱石がゴロゴロ入っていた。

 あとで鑑定かんていしてみたところ、

 『ミスリル鉱石』の他にも、『オリハルコン』・『アダマンタイト』といった異世界を代表する超金属レアメタルもちらほら混じっていた。

 これら金属の特性とくせいや、どういった利点があるかはガンツに聞いてみないとだな。

 一緒に入っていた金塊きんかいや各種宝石のほうもありがたく。





 さてと、大体こんなものかな。

 マクベさんにはどう説明したものか?

 ……まあ、かくすような事でもないかな。

 今更いまさらだしね。 ――全部話そう。

 俺は机のところまで戻ってくると、上に出していた化粧箱を元あった引き出しにしまった。

 そして机の前の椅子に腰掛けながら入口の近くで丸くなっているシロを呼んだ。

 「なぁシロ。これらの品々は日本から召喚しょうかんされた人が残したものみたいだ。そしてこの手紙には俺が全部もらって良いように書かれている。せっかくだから、貰えるものは貰って有意義に使いたいと思うんだ」

 シロは俺の目を見てコクリと頷く。

 「それでなんだが、この件も含めて俺たちの事をある程度マクベさんに話してもいいかな? マクベさんならきっと大丈夫だと思うんだ」 

 そのように話していくと、シロは尻尾しっぽを振って何度もうなずいている。

 「そうかそうか、分かってくれたか」

 お座りしているシロの頭をやさしく撫でてあげた。

 「それじゃあ、マクベさんに報告しに行きますかね」

 そうつぶやきながら俺は椅子から立ちあがった。

 秘密部屋を出た俺とシロは、みんなが居る洞窟どうくつの入り口付近ふきんに戻ってきた。

 メアリーはぐっすり眠っているようで、ミリーと並んで毛布に包まっている。

 「ただいま戻りました。コリノさんもすみません、護衛ごえいを任せてしまって」

 「おかえり。なにか収穫 (お宝) はあったかい」

 「はい、いろいろと。それについて話しがあるのですが、一緒に来てくれませんか?」

 「んっ、そうなのかい。私はもちろん構わないよ。よし、行ってみようじゃないか!」

 マクベさんはそう答えるとすぐに立ち上がった。

 ここで待っているあいだ、結構けっこうウズウズしていたのかもしれない。

 ――とても嬉しそうだ。





 今回はシロを残して二人で秘密部屋へ向かうことにした。

 松明たいまつを片手にどん突きまできた。

 まず、門松かどまつについて軽く説明したのち岩スイッチを引く。

 引き戸をスライドさせて中に入ろうとしたのだが……、

 マクベさんは未だ門松を観察かんさつしている。

 「これは見事な……」とか、「ぜひ店の前に……」とか、

 松明をかかげ、自分のアゴを指でつまみながらブツブツ言っている。

 まぁ目は引くよね。立派だし。

 「………………」

 らちかないので、マクベさんに声を掛け部屋の中へと進んだ。

 するとマクベさん、またまた立ち止まると、

 「おおっ、これは素晴すばらしい! こんな所に」

 とか言っているし……。

 (今度はなんだよ?)

 振り向くと、どうやら本棚ほんだなにくぎ付けのようだ。

 「これはまぼろしの……」とか、「全巻そろっているのはまさに奇跡きせきだ……」とか、

 「………………」

 まあ、しょうがないか。





 しばらく付き合ってあげることにした。

 「そんなに良い物なんですか?」

 す る と、

 「いいも何も、――――――――――――――――――――――――だから、――――――――――――――――――――――――とても素晴らし物なのだよ!」

 「さらにだね、――――――――――――――――――――――――であって、――――――――――――――――――――――――も真っ青な代物なんだよ!」

 30分程熱く語られてしまった。 ……やれやれ。

 続いて引き出しから例の化粧箱けしょうばこを取り出し机の上においた。

 す る と、

 「おおっ、おおおぉおおお! これはマホガトレントの化粧箱。しかも、この大きさなら白金貨級だよ~」 

 マクベさんは机にへばり付いて化粧箱を観察している。

 そこで俺は質問を……、するのをやめた。話が進まないので。

 化粧箱を開けてみた。

 「こ、ここ、これは大変だ。しかも12枚も!」

 あらっ、――そっち?

 この宝剣ほうけんはどうなのよ? ――ねぇ。

 まあ、金貨は俺も興味きょうみがある。生前コイン収集も趣味しゅみにしていたし。
 
 俺はその金貨について聞いてみた。

 この金貨はその昔、この大陸一とうたわれたバルタ大帝国だいていこくの大金貨だそうだ。

 使われている金の比率ひりつも高く特筆とくひつすべきはこの厚さだという。

 歴史的価値れきしてきかちや希少性を考えるならば、王都のオークションに出品すればこれ1枚で50万バースはくだらないだろうとのこと。

 それが12枚もあるのだ。

 「頭がどうにかなりそうだよ」とマクベさん。

 (ふ~ん、そうなんだ)

 「でも、これなら鋳型いがたを作って偽物が出回るんじゃないですか?」

 チチチチチチチ!

 マクベさんは人差し指を左右にふる。

 「ゲンは魔力があるよねぇ。試しにこの金貨を一枚握って魔力を通してごらん」

 俺は言われたとおり、金貨を握って魔力を通した。

 すると、どうだろう。

 握りこんだ拳の上に二頭の馬をかたどった紋章が浮かび上がるではないか。

 「…………」

 「ハハハハハッ、どうだい凄いだろう。この金貨には今は失われた技術が使われているんだよ」

 この金貨、まじでスゲー! 

 ――1枚はキープしておこう。





 さて、まだ奥にも部屋があるんだよなぁ。

 そこで俺はマクベさんがこわれるまえに話をすることに決めた。

 マクベさんを椅子に座らせ、俺は机をはさんで前に立つ。

 そして机に入っていた羊皮紙ようひししめしながら説明していった。

 「じつはですね、俺とシロは……………………」

 一通りの話を終え、質問があれば随時ずいじ受付ますので気兼きがねなくおたずねくださいと言っておいた。

 マクベさんは意外に理解を示してくれた。

 ただ、異世界いせかいや転生などに関しては未だ理解が及ばないようである。

 それにシロが聖獣せいじゅうフェンリルだというと……。

 「……………………」

 しばらく固まってしまったが、

 「なるほど、思い返してみれば……」

 自分なりに納得しているようだった。

 それにマクベさんが言うには、この羊皮紙ようひしに書かれている人物に心当たりがあるようだ。

 この国の始まりをしめしたとされる書物に『創国記そうこくき』というものがあるのだという。

 その中に記されている、初代国王と共に国を支えたとされる人物。

 【龍殺しの英雄・クドウ】

 おそらくはその人物ではないかと……。

 ふ~ん、工藤ちゃん割りと有名だったんだ。

 ………………

 俺はマクベさんと共に奥の扉へ向かった。

 短剣をかざして、

 「バルス!」

 人前ではちょっぴり恥ずかしい……。

 扉を押して二人で倉庫の中に入った。

 (どうよ! このオリハルコンの剣とか…………)

 (すごいよ! ミスリルのガントレット…………)

 マクベさんは鎧や剣などをつらつらと見ていき、さっさと部屋を出ていってしまった。

 こっち系には触手しょくしゅが動かないようである。

 「………………」

 べつに、寂しくなんかないんだからね!

 い、いいもん、ガンツがいるもんねぇー。





 マクベさんは本棚ほんだなに置いてある本に夢中だ。

 俺はその間に、倉庫に置いてあった武器や防具をすべてインベントリーへ収納した。

 あとの机や椅子、ベッドにクローゼット、そして門松かどまつなどはそのまま残すことにした。

 マクベさんのお気に入りの本は本棚ごと収納している。

 そして秘密部屋を出ようとする際、

 「これらは全てゲンにたくされたものだ。だからゲンの好きにするといい」

 マクベさんはそう小声で言うと、みんなのところへ戻っていった。

 「あら、帰ってきたのねぇ。おかえり~」

 手を上げてカイアさんに答えていると、シロが出迎えるようにすり寄ってきた。

 「シロも待たせたなぁ」

 頭をでてあげる。

 いろいろ話をしたいところだが、まだ旅の途中とちゅうなのだ。

 今日も俺が夜半過やはんすぎまで、そこからはコリノさんが朝までと夜警やけいの割り振りをする。

 俺はシロを連れて洞窟の入口付近に陣取じんどり腰を下ろす。

 「ブルブルブル」

 床で寝ていたお馬さんがあいさつしてくる。

 洞窟の外は雨があがったらしく、シーンと静まりかえっていた。

 この調子いけば明日はなんとか馬車を走らせることが出来るだろう。

 するとここでメアリーが起きてきた。

 どうやらオシッコのようだ。

 用をすませると寝床ねどこには戻らず、こちらに来てしまった。

 仕方がないので膝の上に座らせ毛布を掛けてやる。

 水を飲ませ、「ゆっくりおやすみ」と言っておく。

 ………………

 コリノさんが起きてきたので交代してひと眠りした。





 翌朝。

 シロに起こされた俺は表に出て身体を動かす。

 うん、いい朝だな。

 ゆっくり目の朝食を終え、地面の様子を確認したのち俺たちは洞窟をでた。

 ぬかるみをけながら馬車はゆっくり進んでいく。

 ………………

 結構、慎重しんちょうに進んできたのでタグ村に到着とうちゃくするのが夕方になってしまった。

 しかし道中雨に降られたことを考えると、いたって順調だったといえるだろう。

 最後の坂を上りきると、ようやくタグ村が見えてきた。

 そのまま馬車をともなって村にはいる。

 まもなく日が暮れるということで荷降におろしは明日やることになった。

 そして俺たちは村に一つしかない宿屋の前に到着した。

 「いらっしゃいませぇー」

 元気にむかえてくれるショートカットの女の子。

 この宿の看板娘かな。

 カウンターで宿泊代やどだいを払うとそのままテーブル席につく。

 すると、すぐ女将おかみさんがやってきて、

 「こんなに大勢おおぜいで来るとは思ってなかったから肉が足りないよ~。どうしよっか?」 

 確かに、この田舎いなかの宿にそんな沢山たくさんの食料が有るはずがない。

 それに、今回は特に人が多いから全然足りないだろうね。

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