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28 豚魔獣
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リッツさんはしっかり奴隷商館の場所を教えて去っていった。
なかなか商売熱心な人だったよな。
あのノリも嫌いではないし、気が向いたら行ってみるのもいいかもしれない。
俺はシロを伴い衛兵詰め所を後にした。
よし、今日も森へ行って薬草採取といきますか。
ということで、昨日のように北門を出た俺たちは小走りで街道を進んでいく。
そして、周りをよく確認したのち横道に逸れ、
「トラベル!」
うっ! 少しふわっときたが特に問題はない。
一瞬で昨日訪れた森の丘へ出てきた。
そういえば、ここで魔法の練習をしたのだった。
倒された数多くの樹木を見ているとそこはかとなく左手が疼いてくる。
フフフフフッ…… はっ! いかんいかん、『中二病』に侵されそうになっていた。
まあ、今は転生を果たし17歳なわけで、ちょうど時期ではあるのだが……。
いやいやいや、中身は50過ぎのおやじだからね。
………………
先に仕事 (薬草採取) を片付けることにするか。
今日は反対側を探っていくかな。
シロの鑑札を外し。――チェーンジ! (古)
とまあ、昭和臭を漂わせたところで、サイズチェンジしたシロの背に跨る。
「シロ、今日はあっちの方を探すぞ!」
「ワン!」
シロは元気よく答えると森の中を楽しそうに走り始めた。
昨日のヒール草に加え今日は魔力草も集めてみよう。
そして、今日は予め麻袋をインベントリーに入れている。
なので各薬草を10本摘んで束にして入れていけばインベントリー内の麻袋に収まってくれるという寸法だ。
シロの案内でサクサク薬草を摘んでく。
そうして、作業すること一刻 (2時間) 今日の分の薬草採取は終わった。
さて、森の丘に戻って昼食にしようとシロに跨ったのだが、
何故か、シロが森の奥を見据えて動かない。
「シロ? どうかしたのか」
『ばしゃ、ひと、にげる、まじゅう、おそう、たくさん』
誰かが魔獣に襲われている……。
「シロ、その現場の近くまで頼めるか? とにかく行ってみよう」
背中をポンッと叩いてやるとシロは森の中を稲妻の如く疾走してゆく。
乗っている俺が棘のあるブッシュや木の枝でケガをしないよう、シロは結界魔法で障壁を展開してくれている。――快適である。
ただ、目まぐるしく視界が変わっていくので少し酔いそうになるが。
俊足を飛ばして2分程で現場に到着した。
俺たちは現状を把握するため近くの藪に潜み、そこから様子を伺った。
馬車2両を中心とした一行が豚の魔獣に襲撃を受けているようだ。
筋骨隆々、まるで力士のような豚の魔獣40頭に対して護衛の騎士20名程が必死に防戦している。
すでに、5名の騎士が倒れており動く気配がない。
豚魔獣どもはかなり膂力が高いようでネイチャーウェポン (太いこん棒) を片手でブンブン振り回して暴れている。
これは多勢に無勢だな。また騎士が1名 頭にいいのをもらって吹っ飛んでいく。
さらに、後方には2mを優に超えるバカデカいヤツが控えているしなぁ。
大剣までもっているし強そうだ。
うん、だいたいの状況は掴めた。
そろそろ助けに行かないと本格的にヤバいかな。
1両目の馬車の方が魔獣の数が多いか……。
「シロ、助けが必要かどうかまず俺が聞くから、許可を得たらシロは前の馬車に向かってくれ俺は後ろの馬車に行く。身体強化や爪での攻撃はいいが魔法は使うな。体のサイズもそのままだぞ。口笛を鳴らしたら戻ってこい。できるな!」
シロの頭を撫でながら確認をとっていく。
『いく、まえ、だめ、まほう、ふえ、もどる』
よし、行こうか!
俺とシロは街道に飛び出すと小走りで馬車に近づいていく。
「モンソロの冒険者です。助けは必要ですか?」
見えないだろうが冒険者ギルドカードを提示しながら叫ぶ!
「ご助力頂けると助かる。よろしく頼む!」
そう叫んできたが余裕がない。
「いけ!」
俺はシロの背中をポンッと叩いて送り出した。
シロは手前の魔獣をかい潜って10m程離れた前の馬車へと突っ込んでいった。
俺はバスターソードを抜きながら身体強化を掛けると手前の豚魔獣の首を刎ね飛ばす。
これが一番効率がいいのだ。
数が多い場合は止まってしまえばやられる。
『止まると死ぬんじゃ~!』
と言う、アーツ先生のありがたーい教えなのだ。
だから、素早く動き回り斬って斬って斬りまくる。
身体強化した俺の動きに豚魔獣はついてこれない。
視覚も強化されており豚どもが止まって見える。
「動けねえ豚はただのブタだぁ。ばかやろう!」
そして、斬る斬る斬る!
徐々に騎士達の方も士気が上がってきたようだ。
うおおおおおおっ!!
まだまだ行けるぞ! 地獄の朝練にくらべればこんなもの――。
ふぅ――――っと、息を吐き周りを見回すと豚の魔獣は残り数匹。
でもヤツがいるはずだ。どこだ? ――いた!
ピッ――、ピピッ――――!!
俺は口笛を鳴らした。
すると、ものの数秒でシロが隣へ並ぶ。
本当に頼もしいやっちゃ。
シロを引き連れてデカい豚の魔獣に突撃した。
そして、右手に握ったバスターソードで袈裟斬りに切り込んだ。
しかし、デカ豚野郎は俺の一撃を剣でブロック、そのまま横に薙いできた。
俺はすぐさま後方に飛びのき豚野郎の反撃をかわす。
う~ん、剣では少々時間が掛かるか……。
まあ、シロが行けば一撃であろうが。
俺は急遽左手にバスターソードを持ち右手をデカ豚野郎に向けて、
「アイスランス!」「アイスランス!」
氷魔法を2連打でぶち込んでやった。
ところがヤツはXブロックをすることで肩や足に被弾はしているものの致命傷を負うことは防いでいた。
ほほう、よく凌いだな。
――ならば。
俺はバスターソードを地面に突き刺すと、
「シロ、頼む!」
左手をシロの背において再び、
「アイスランス!!」
言い終わった時には既にデカ豚野郎の腹にポッカリと大きな穴が空いていた。
そして、動かなくなったデカ豚野郎はゆっくりと前のめりに倒れていった。
「よっしゃ! ありがとうシロ。残りも軽く追撃といこうか」
そのあとも順調に追撃していき最後の豚魔獣の首を刎ね飛ばし、この戦いを終了させた。
時間にしたらどうだろう30分位か。
よく言われる、人型の魔獣を殺めた嫌悪感や罪悪感などは特になかった。
しかし疲れた。
その場に座り込んでしまった。水筒を取り出しあおっていると、
「今回は誠にかたじけない。少しおいて後ろの馬車の方まで来て頂きたい」
もう良いお年だろう、甲冑を着た白髪・白髭の|おっちゃんに声を掛けられた。
右手にはバスターソードを握っていたため、俺は左手に持っていた水筒を上げ、
「了解した」
そう答えた。
器を出してシロにも水を出してやる。
一緒に干し肉を出して食べたのだが……、
ううっ、臭い!
周りも酷い匂いだが、返り血を浴びた俺の身体からも臭ってくる。
しかし、いま浄化を使うのは控えていた。
彼らはおそらく貴族だろう。だから余計にだ。
まあ、濡れタオルはあるのでとりあえず顔と手は拭いた。
続いてバスターソードを拭き上げて鞘に戻す。
そして、立ち上がり指定された馬車に向かって行った。
馬車に近づいてくと側に居た護衛騎士が剣を抜き、
「そこで止まれ! まず名を名のれ」
女騎士が誰何してきた。
まあ、非常事態だし、形式もあるだろうと、
「俺はモンソロの冒険者でゲン。こっちは従魔でシロだ」
すると、バタン! と馬車の扉が開いて中から執事服を着た初老の男性と空色のドレスを着た女の子が降りてきた。
「この度は危ないところを助けて頂きありがとうございました。わたくしはラファール辺境伯が三女、アリス・ビン・ラファールと申します。どうぞお見知りおきを」
なかなか商売熱心な人だったよな。
あのノリも嫌いではないし、気が向いたら行ってみるのもいいかもしれない。
俺はシロを伴い衛兵詰め所を後にした。
よし、今日も森へ行って薬草採取といきますか。
ということで、昨日のように北門を出た俺たちは小走りで街道を進んでいく。
そして、周りをよく確認したのち横道に逸れ、
「トラベル!」
うっ! 少しふわっときたが特に問題はない。
一瞬で昨日訪れた森の丘へ出てきた。
そういえば、ここで魔法の練習をしたのだった。
倒された数多くの樹木を見ているとそこはかとなく左手が疼いてくる。
フフフフフッ…… はっ! いかんいかん、『中二病』に侵されそうになっていた。
まあ、今は転生を果たし17歳なわけで、ちょうど時期ではあるのだが……。
いやいやいや、中身は50過ぎのおやじだからね。
………………
先に仕事 (薬草採取) を片付けることにするか。
今日は反対側を探っていくかな。
シロの鑑札を外し。――チェーンジ! (古)
とまあ、昭和臭を漂わせたところで、サイズチェンジしたシロの背に跨る。
「シロ、今日はあっちの方を探すぞ!」
「ワン!」
シロは元気よく答えると森の中を楽しそうに走り始めた。
昨日のヒール草に加え今日は魔力草も集めてみよう。
そして、今日は予め麻袋をインベントリーに入れている。
なので各薬草を10本摘んで束にして入れていけばインベントリー内の麻袋に収まってくれるという寸法だ。
シロの案内でサクサク薬草を摘んでく。
そうして、作業すること一刻 (2時間) 今日の分の薬草採取は終わった。
さて、森の丘に戻って昼食にしようとシロに跨ったのだが、
何故か、シロが森の奥を見据えて動かない。
「シロ? どうかしたのか」
『ばしゃ、ひと、にげる、まじゅう、おそう、たくさん』
誰かが魔獣に襲われている……。
「シロ、その現場の近くまで頼めるか? とにかく行ってみよう」
背中をポンッと叩いてやるとシロは森の中を稲妻の如く疾走してゆく。
乗っている俺が棘のあるブッシュや木の枝でケガをしないよう、シロは結界魔法で障壁を展開してくれている。――快適である。
ただ、目まぐるしく視界が変わっていくので少し酔いそうになるが。
俊足を飛ばして2分程で現場に到着した。
俺たちは現状を把握するため近くの藪に潜み、そこから様子を伺った。
馬車2両を中心とした一行が豚の魔獣に襲撃を受けているようだ。
筋骨隆々、まるで力士のような豚の魔獣40頭に対して護衛の騎士20名程が必死に防戦している。
すでに、5名の騎士が倒れており動く気配がない。
豚魔獣どもはかなり膂力が高いようでネイチャーウェポン (太いこん棒) を片手でブンブン振り回して暴れている。
これは多勢に無勢だな。また騎士が1名 頭にいいのをもらって吹っ飛んでいく。
さらに、後方には2mを優に超えるバカデカいヤツが控えているしなぁ。
大剣までもっているし強そうだ。
うん、だいたいの状況は掴めた。
そろそろ助けに行かないと本格的にヤバいかな。
1両目の馬車の方が魔獣の数が多いか……。
「シロ、助けが必要かどうかまず俺が聞くから、許可を得たらシロは前の馬車に向かってくれ俺は後ろの馬車に行く。身体強化や爪での攻撃はいいが魔法は使うな。体のサイズもそのままだぞ。口笛を鳴らしたら戻ってこい。できるな!」
シロの頭を撫でながら確認をとっていく。
『いく、まえ、だめ、まほう、ふえ、もどる』
よし、行こうか!
俺とシロは街道に飛び出すと小走りで馬車に近づいていく。
「モンソロの冒険者です。助けは必要ですか?」
見えないだろうが冒険者ギルドカードを提示しながら叫ぶ!
「ご助力頂けると助かる。よろしく頼む!」
そう叫んできたが余裕がない。
「いけ!」
俺はシロの背中をポンッと叩いて送り出した。
シロは手前の魔獣をかい潜って10m程離れた前の馬車へと突っ込んでいった。
俺はバスターソードを抜きながら身体強化を掛けると手前の豚魔獣の首を刎ね飛ばす。
これが一番効率がいいのだ。
数が多い場合は止まってしまえばやられる。
『止まると死ぬんじゃ~!』
と言う、アーツ先生のありがたーい教えなのだ。
だから、素早く動き回り斬って斬って斬りまくる。
身体強化した俺の動きに豚魔獣はついてこれない。
視覚も強化されており豚どもが止まって見える。
「動けねえ豚はただのブタだぁ。ばかやろう!」
そして、斬る斬る斬る!
徐々に騎士達の方も士気が上がってきたようだ。
うおおおおおおっ!!
まだまだ行けるぞ! 地獄の朝練にくらべればこんなもの――。
ふぅ――――っと、息を吐き周りを見回すと豚の魔獣は残り数匹。
でもヤツがいるはずだ。どこだ? ――いた!
ピッ――、ピピッ――――!!
俺は口笛を鳴らした。
すると、ものの数秒でシロが隣へ並ぶ。
本当に頼もしいやっちゃ。
シロを引き連れてデカい豚の魔獣に突撃した。
そして、右手に握ったバスターソードで袈裟斬りに切り込んだ。
しかし、デカ豚野郎は俺の一撃を剣でブロック、そのまま横に薙いできた。
俺はすぐさま後方に飛びのき豚野郎の反撃をかわす。
う~ん、剣では少々時間が掛かるか……。
まあ、シロが行けば一撃であろうが。
俺は急遽左手にバスターソードを持ち右手をデカ豚野郎に向けて、
「アイスランス!」「アイスランス!」
氷魔法を2連打でぶち込んでやった。
ところがヤツはXブロックをすることで肩や足に被弾はしているものの致命傷を負うことは防いでいた。
ほほう、よく凌いだな。
――ならば。
俺はバスターソードを地面に突き刺すと、
「シロ、頼む!」
左手をシロの背において再び、
「アイスランス!!」
言い終わった時には既にデカ豚野郎の腹にポッカリと大きな穴が空いていた。
そして、動かなくなったデカ豚野郎はゆっくりと前のめりに倒れていった。
「よっしゃ! ありがとうシロ。残りも軽く追撃といこうか」
そのあとも順調に追撃していき最後の豚魔獣の首を刎ね飛ばし、この戦いを終了させた。
時間にしたらどうだろう30分位か。
よく言われる、人型の魔獣を殺めた嫌悪感や罪悪感などは特になかった。
しかし疲れた。
その場に座り込んでしまった。水筒を取り出しあおっていると、
「今回は誠にかたじけない。少しおいて後ろの馬車の方まで来て頂きたい」
もう良いお年だろう、甲冑を着た白髪・白髭の|おっちゃんに声を掛けられた。
右手にはバスターソードを握っていたため、俺は左手に持っていた水筒を上げ、
「了解した」
そう答えた。
器を出してシロにも水を出してやる。
一緒に干し肉を出して食べたのだが……、
ううっ、臭い!
周りも酷い匂いだが、返り血を浴びた俺の身体からも臭ってくる。
しかし、いま浄化を使うのは控えていた。
彼らはおそらく貴族だろう。だから余計にだ。
まあ、濡れタオルはあるのでとりあえず顔と手は拭いた。
続いてバスターソードを拭き上げて鞘に戻す。
そして、立ち上がり指定された馬車に向かって行った。
馬車に近づいてくと側に居た護衛騎士が剣を抜き、
「そこで止まれ! まず名を名のれ」
女騎士が誰何してきた。
まあ、非常事態だし、形式もあるだろうと、
「俺はモンソロの冒険者でゲン。こっちは従魔でシロだ」
すると、バタン! と馬車の扉が開いて中から執事服を着た初老の男性と空色のドレスを着た女の子が降りてきた。
「この度は危ないところを助けて頂きありがとうございました。わたくしはラファール辺境伯が三女、アリス・ビン・ラファールと申します。どうぞお見知りおきを」
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