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16 村の宿
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目的の村までもう少しというところだがとうとう雨が降りだした。
まだポツポツといった感じだが空はすでに真暗である。
村の畑を囲う木製の柵がもう見えている。俺たちは駆け足で村に向かって進んだ。
なんとか本降りになる前に到着できたな。
馬車を宿屋の者に任せると急いで店内にはいった。――うわぁ暗っ。
受付にランタンは置いてあるが店内は薄暗い。まあ電気がないのだからこれは仕方がない。
ましてや街道の小さな村なのだ。
とりあえず、ポンチョ (雨具) の水を払い奥のテーブルにみんなで腰掛ける。
シロも許可をもらえたので一緒だ。雨で暗くてわかりずらいが時間的には昼をまわったぐらいだろうか。
マクベさんは何やらカウンターで店主と話をしている。
「いやー 降ってきちゃったね~。何か食べるかい」
宿の女将さんがオイルランタンをテーブルに置きながら注文を聞いてきた。
「そうね~、スープとパンを人数分。それから干し肉の柔らかいものを3つちょうだい」
「飲み物はどうすんだい?」
「とりあえず葡萄酒を4つ。先に持ってきてもらえる」
カリアさんが代表してテキパキと頼んでいた。お湯は沸かしているがスープはこれから作るそうだ。
店主との話を終えたマクベさんがみんなの待つテーブルにやってきた。
手には木製の燭台を持っている。
その燭台には火が点いていないロウソクが1本立っていた。客室で使うのだろう。
ロウソク付きの燭台は20バースで借りれるそうだ。後で忘れずに借りていかないと廊下も見えやしない。
女将が慣れた手つき葡萄酒の入ったジョッキをテーブルに置いていく。
(おおー、木製のジョッキだ。雰囲気あるねぇ)
そのあと、すぐに干し肉とシロ用の器を持ってきてくれた。
シロには硬い干し肉を別に頼んでもらっている。飲み物の方は水だな。
俺はさっそく葡萄酒を飲んでみた。
ワインと違って少し濃い感じかな。ばあちゃん家で飲んだぶどうジュースもこんな感じだったなぁ。
甘みもあって以外と美味しかった。
薄暗い中、談笑しながらチビチビと葡萄酒を飲む。
『こういうのも何だか良いな~』
せかせかしてなくて、時の流れがゆったりとしたているのだ。
「早々に止んでくれればいいのだが……」
「そうね~、ゆっくりもしていたいけど、やっぱり家がいいわよね~」
カイアさん結構グビグビいってるねぇ。――もう2杯めだ。
いやいやジョッキでだよ。500mlは入っていると思うけど……。
カイアさんに『大丈夫ですか?』なんて聞いたら、『なにが~? ゲンちゃんも呑みなさいよ~』と返されそうで、とても聞けない。
旦那さんも居るのだし放っておこう。
コリノさんもチビチビやっているようだ。
宿屋にいる間は護衛も免除されるのだろう。
「コリノさんってエルフですよねぇ」
酔った勢いで聞いてみた。
「……そう……」
そんだけかいっ! 突っ込みそうになったがここはこらえる。
「魔法とかも使えるんですか?」
「……すこし……」
すこしってどんだけー! あっ、いかんいかん冷静にならなくては。
あと何を聞く? 歳は聞けないし……。
「スープあがったよー!」
女将さんが出来たてのスープを次々と運んでくる。
スープというよりはとろみがあってシチューといった感じだな。
パンも一緒に持ってきてくれた。
では、木のスプーンを持って『いただきまーす!』
ズズッ、……あっ! すすっちゃいけなかったかな?
周りを見るが誰も気にしてないようだ。
ホッとはしたが誰もすすってはいないようだし、これからは気をつけるとしよう。
そんなこと思いながらも食事は和やか進んでいった。
そうそう、宿代を払わないとな。
聞いてみると、夕食と朝食付きで一人部屋なら350バースだとか。
あと、お湯が1桶20バース、ランタンが100バースだそうだ。外に出ないのならロウソクで十分らしい。
あと、粗相をしなければシロも一緒で良いそうだ。――良かった。
宿代と今の食事代を払おうとしていると、
「食事代はおごりだよ」
マクベさんにそう言われた。ここは素直に受け入れることにして、ロウソクとお湯代込みで390バースをカウンターで支払った。
大銀貨1枚を宿のおじさんに渡すと、指折り数えながら銀貨6枚に大銅貨1枚を返してくれた。
部屋は2階に上がって右側の奥で、夕食は日が暮れたら下りてきてくれと言われた。
日が暮れたらって、外はすでに暗いのだが……。
お湯は夕食後に部屋まで届けてくれるらしい。
鍵はないがドアの裏に小さな閂が付いているんだとか。
トイレは廊下の突きあたりらしい。トイレの横かよ――!
夕食時に集まることにし、みんなそれぞれの部屋に入っていった。
俺もシロを連れて部屋に入る。――真っ暗で何も見えん。
ロウソクを借りておいて良かったな。シロにお願いして火を点けてもらった。
……何にもない。
ただ、ベッドがあってコートハンガーがポツンと1本立っているだけ。
ベッドの壁際、枕の上の方に小さな棚がありロウソクはそこに置くようになっている。
再度、シロにお願いして部屋全体に浄化を掛けてもらった。これで匂いも気にならなくなった。
ダッフルバッグをベッドの横に置き、とりあえず横になった。
ベッドのクッションは悪い。シーツの下はおそらく藁だろう。
木窓はあるが雨が降っているので閉めてある。
シロは床で丸くなっている。――可愛い。
やることもないので、この時間は魔力操作の訓練にあてることにした。
ロウソクがもったいないので火は消してベッドで仰向けに寝る。
目を閉じて身体の魔力を感じ取りどのように巡っているのか探っていく。
暫くすると身体がポッポと熱くなってきた。
鑑定してみると状態が[興奮]と出ている。
なるほど、自分の魔力に当てられた感じなのか。
大きく深呼吸を行なったのち、さらに訓練を続けていく。
すると、身体を巡っている魔力の流れが太くなったような感覚をおぼえた。
そうして、いつの間にか眠ってしまっていた。
ぺしぺし! ぺしぺし! 何かが額にあたっている。
『いく、うれしい、おにく、あそぶ、ごはん、おきる』
そう頭に響いてくる。……もうそんな時間なのか?
暗い中で起き上がり手探りで扉まで歩いていく。
荷物の入ったダッフルバッグは念のためインベントリーに入れておく。
扉を開けて廊下に出るとシロは先に階段を下りていった。
俺も転ばないよう壁に手をあてながらゆっくりと1階へ下りていった。
まだポツポツといった感じだが空はすでに真暗である。
村の畑を囲う木製の柵がもう見えている。俺たちは駆け足で村に向かって進んだ。
なんとか本降りになる前に到着できたな。
馬車を宿屋の者に任せると急いで店内にはいった。――うわぁ暗っ。
受付にランタンは置いてあるが店内は薄暗い。まあ電気がないのだからこれは仕方がない。
ましてや街道の小さな村なのだ。
とりあえず、ポンチョ (雨具) の水を払い奥のテーブルにみんなで腰掛ける。
シロも許可をもらえたので一緒だ。雨で暗くてわかりずらいが時間的には昼をまわったぐらいだろうか。
マクベさんは何やらカウンターで店主と話をしている。
「いやー 降ってきちゃったね~。何か食べるかい」
宿の女将さんがオイルランタンをテーブルに置きながら注文を聞いてきた。
「そうね~、スープとパンを人数分。それから干し肉の柔らかいものを3つちょうだい」
「飲み物はどうすんだい?」
「とりあえず葡萄酒を4つ。先に持ってきてもらえる」
カリアさんが代表してテキパキと頼んでいた。お湯は沸かしているがスープはこれから作るそうだ。
店主との話を終えたマクベさんがみんなの待つテーブルにやってきた。
手には木製の燭台を持っている。
その燭台には火が点いていないロウソクが1本立っていた。客室で使うのだろう。
ロウソク付きの燭台は20バースで借りれるそうだ。後で忘れずに借りていかないと廊下も見えやしない。
女将が慣れた手つき葡萄酒の入ったジョッキをテーブルに置いていく。
(おおー、木製のジョッキだ。雰囲気あるねぇ)
そのあと、すぐに干し肉とシロ用の器を持ってきてくれた。
シロには硬い干し肉を別に頼んでもらっている。飲み物の方は水だな。
俺はさっそく葡萄酒を飲んでみた。
ワインと違って少し濃い感じかな。ばあちゃん家で飲んだぶどうジュースもこんな感じだったなぁ。
甘みもあって以外と美味しかった。
薄暗い中、談笑しながらチビチビと葡萄酒を飲む。
『こういうのも何だか良いな~』
せかせかしてなくて、時の流れがゆったりとしたているのだ。
「早々に止んでくれればいいのだが……」
「そうね~、ゆっくりもしていたいけど、やっぱり家がいいわよね~」
カイアさん結構グビグビいってるねぇ。――もう2杯めだ。
いやいやジョッキでだよ。500mlは入っていると思うけど……。
カイアさんに『大丈夫ですか?』なんて聞いたら、『なにが~? ゲンちゃんも呑みなさいよ~』と返されそうで、とても聞けない。
旦那さんも居るのだし放っておこう。
コリノさんもチビチビやっているようだ。
宿屋にいる間は護衛も免除されるのだろう。
「コリノさんってエルフですよねぇ」
酔った勢いで聞いてみた。
「……そう……」
そんだけかいっ! 突っ込みそうになったがここはこらえる。
「魔法とかも使えるんですか?」
「……すこし……」
すこしってどんだけー! あっ、いかんいかん冷静にならなくては。
あと何を聞く? 歳は聞けないし……。
「スープあがったよー!」
女将さんが出来たてのスープを次々と運んでくる。
スープというよりはとろみがあってシチューといった感じだな。
パンも一緒に持ってきてくれた。
では、木のスプーンを持って『いただきまーす!』
ズズッ、……あっ! すすっちゃいけなかったかな?
周りを見るが誰も気にしてないようだ。
ホッとはしたが誰もすすってはいないようだし、これからは気をつけるとしよう。
そんなこと思いながらも食事は和やか進んでいった。
そうそう、宿代を払わないとな。
聞いてみると、夕食と朝食付きで一人部屋なら350バースだとか。
あと、お湯が1桶20バース、ランタンが100バースだそうだ。外に出ないのならロウソクで十分らしい。
あと、粗相をしなければシロも一緒で良いそうだ。――良かった。
宿代と今の食事代を払おうとしていると、
「食事代はおごりだよ」
マクベさんにそう言われた。ここは素直に受け入れることにして、ロウソクとお湯代込みで390バースをカウンターで支払った。
大銀貨1枚を宿のおじさんに渡すと、指折り数えながら銀貨6枚に大銅貨1枚を返してくれた。
部屋は2階に上がって右側の奥で、夕食は日が暮れたら下りてきてくれと言われた。
日が暮れたらって、外はすでに暗いのだが……。
お湯は夕食後に部屋まで届けてくれるらしい。
鍵はないがドアの裏に小さな閂が付いているんだとか。
トイレは廊下の突きあたりらしい。トイレの横かよ――!
夕食時に集まることにし、みんなそれぞれの部屋に入っていった。
俺もシロを連れて部屋に入る。――真っ暗で何も見えん。
ロウソクを借りておいて良かったな。シロにお願いして火を点けてもらった。
……何にもない。
ただ、ベッドがあってコートハンガーがポツンと1本立っているだけ。
ベッドの壁際、枕の上の方に小さな棚がありロウソクはそこに置くようになっている。
再度、シロにお願いして部屋全体に浄化を掛けてもらった。これで匂いも気にならなくなった。
ダッフルバッグをベッドの横に置き、とりあえず横になった。
ベッドのクッションは悪い。シーツの下はおそらく藁だろう。
木窓はあるが雨が降っているので閉めてある。
シロは床で丸くなっている。――可愛い。
やることもないので、この時間は魔力操作の訓練にあてることにした。
ロウソクがもったいないので火は消してベッドで仰向けに寝る。
目を閉じて身体の魔力を感じ取りどのように巡っているのか探っていく。
暫くすると身体がポッポと熱くなってきた。
鑑定してみると状態が[興奮]と出ている。
なるほど、自分の魔力に当てられた感じなのか。
大きく深呼吸を行なったのち、さらに訓練を続けていく。
すると、身体を巡っている魔力の流れが太くなったような感覚をおぼえた。
そうして、いつの間にか眠ってしまっていた。
ぺしぺし! ぺしぺし! 何かが額にあたっている。
『いく、うれしい、おにく、あそぶ、ごはん、おきる』
そう頭に響いてくる。……もうそんな時間なのか?
暗い中で起き上がり手探りで扉まで歩いていく。
荷物の入ったダッフルバッグは念のためインベントリーに入れておく。
扉を開けて廊下に出るとシロは先に階段を下りていった。
俺も転ばないよう壁に手をあてながらゆっくりと1階へ下りていった。
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