俺とシロ

マネキネコ

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 頭に響いてきた声に驚いて、俺は飲んでいた白湯さゆを吹き出しそうになったが何とかえた。

 ――女神さまの声?

 いや、ちょっと違うかな。これからレベルアップの度に聞こえるのかな。

 それはそうと何で今なのであろうか?

 あー、もしかしてシロが魔獣まじゅうを殺っちゃったのか?

 おそらくそれだな。さっきレベル1と言っていたからな。

 じゃー何、今まではレベルが0だったということなの。

 なるほど、それで何も反応しなかったわけだね。

 ピーン!{レベルが2に上がりました}

 はいっ?!

 おいおいシロ、どんだけ狩るつもりなんだよ。

 まぁ、怪我けがはしないだろうがとにかく頑張るんだぞー。

 それからは何事もなく夜半過ぎになりコリノさんが馬車から出てきた。

 シロは未だに帰ってこない。まだまだ頑張っているようだ。

 なので、俺のレベルアップは今も続いている。

 まあ、きたらそのうち帰ってくるだろう。俺はコリノさんに、

 「後はよろしく」

 ひとこと声を掛け、岩を背に毛布に包まって寝ることにした。――おやすみ~。





 ん、んん~、何かを感じ目を開けるとシロが俺の顔をペロペロと舐めていた。

 すでに夜は明けており、カイアさんがかまどの前で鍋のスープをお玉でまわしていた。

 もう、みんな起きているのか。のどもとをポリポリかきながらボーとしてる俺に、

 「あら~、ゲンちゃんやっと起きたのね。シロちゃんも起こしてくれてえらいわ~」

 朝でもカイアさんのテンションは変わらないようだ。

 「起こしてくれてありがとう」

 そうシロに言って立ち上がる。

 「顔でも洗ってきたら~。目が覚めるわよ~」

 カイアさんが川の方を指差している。

 「じゃあ、ちょっと行ってきます」

 俺はカイアさんに声をかけ、ダッフルバッグからタオル代わりの布を持ち出して歩きはじめた。

 途中コリノさんがいたので会釈えしゃくだけして通り過ぎようとしていた。

 すると、コリノさんは右手で林の方を指差して何か言いたげな表情だ。

 俺もそれにつられるように林の方を見てみると……。

 えっ、なんだあれ? そこには何かが積み上がって山ができている。

 「…………」

 それはなんと、シロが夜のうちに倒してきた魔獣 (えもの) だったのだ。

 シロ~、どーするんだよ! ホントに。

 シロは隣でお座りして尻尾をブンブン振っている。――上機嫌だ。

 「そうか、シロが倒してくれたのかぁ。偉いぞ~」

 とりあえず盛大にめておいた。シロには何も罪はない。

 空気なんか読めるはずもない。――犬なのだから。





 とりあえず川まで行って顔を洗い、そして朝ごはんを頂いた。

 トカゲの肉はスープにしてもなかなかに良い出汁だしがとれて旨かった。

 それから、今日の行動を話し合っていく。

 シロが積み上げた獲物はウルフ系の魔獣であるらしい。

 グレーウルフ×8、ブラックウルフ×3、ハイウルフ×1という構成である。

 ここでもカイアさんが大興奮だいこうふん

 今から3人で解体するからぜひ買取させてくれと言い出したのだ。

 まぁ、俺たちも別に急いでいる訳ではないので快諾かいだくしたよ。

 それに解体の勉強にもなるしね。こちらとしてはありがたいくらいだな。

 サクサクやれば昼前には出発できるということだ。

 そして俺はというと、今日は水係りに徹していた。

 解体には多くの水が必要になるらしいからな。

 まぁ、たくさんの血が出るし、手もナイフも使っているとギトギトになるだろう。

 それで、お肉なのだがハイウルフ以外はあまり美味しくないらしく廃棄はいきするそうだ。

 作業をしている間はひまなので昨日のようにお水を白湯に変えている。

 今日はマクベさんから鍋を借りたのですごく効率がいい。

 ついでだから、みんなの分も引き受けてやっているところだ。





 ここから川までは20m程の距離があるのだが今日はぜんぜん余裕なのだ。

 これがレベルアップによる恩恵なのだろう。

 そうでなければ、木製のおけバケツはめちゃくちゃ重いのだ。それに水が加わるので一往復するだけでもかなりの重労働といえる。

 それが今は両手に持ってもスーイスイ。笑えてしまうぐらいなのだ。

 シロは基本的には俺の周りをウロチョロくっついて回ってる。

 しかし、解体中に内臓 (はらわた) なんかが出るとそちらにへばりついては、おこぼれをもらっているようだ。

 お陰で、みんなとも仲良くなっているようだ。

 特にコリノさんからは可愛がられているようで尻尾をブンブン振ってへばりついている。

 コリノさんもシロに対しては無防備に素敵な笑顔を見せている。

 んん~、それはそれで何だか嫉妬しっとしてしまうぞ。俺もコリノさんに笑顔を向けて欲しいな……。

 一方俺は竈の前に陣取ってお湯を沸かしている。

 今、竈のまわりには俺一人。そこで、昨夜獲得かくとくしたスキルを試してみることにした。

 まずは、これからだよな。

 「ステータスオープン!」

 ……………………かぁ~~~。 (カラスです)

 何にも出ませーん。がっくし。

 そして、誰も居ないのにキョロキョロとまわりを見てしまった。――恥ずかしい。

 うん結構くるよなぁ、これは。

 転生ものなどで失敗しているみんなの気持ちがわかって良かったwww

 …………気をとりなおして、

 今度は自分の手を見つめながら、『鑑定!』

 すると出たよ、出やがりましたよ!


 ゲン    Lv.8

 年齢    17
【従魔】    シロ (フェンリル)
 HP    79/79
 MP    120/120
 筋力    39
 防御    40
 魔防    44
 敏捷    30
 器用    34
 知力    73

【特殊スキル】 時空間魔法(U) 身体頑強  状態異常耐性
【スキル】   鑑定 (3) 魔法適性(全) 魔力操作(3)
【魔法】    風魔法(3)
【加護】    ユカリーナ・サーメクス


 おぉ、俺は17歳だったのか。ちゃんとシロも従魔じゅうまになってるな。

 身体のパラメーターなどは比較対象ひかくたいしょうがないのでわからん。

 特殊スキルとはユニークスキルということだろうか?

 この時空間魔法というのがインベントリー関連になるのだろう。

 これがユニークスキルだとするならば、インベントリーが使える者は極わずかということになる。

 あとの『身体頑強しんたいがんきょう』と『状態異常耐性じょうたいいじょうたいせい』はこの身体に標準装備されたものだろう。

 しかし、スキルが若干じゃっかん多くないかぁ。

 う~ん、あの時にお願いしたのは『インベントリー』、『鑑定』、『風魔法』の3つだったよな。確か。

 ………………

 あ~、魔法を使うためには『魔法適性』や『魔力操作』といったスキルも必要になるということかな?

 なるほど、これでは魔法使いが少ないはずだ。最低でも3つスキルが必要になるのだから。

 100人に1人か……。

 おそらくだが、この『魔法適性』というスキルは生まれ持ってのものではないだろうか。

 う~ん、世知辛せちがらい。

 魔法の使える者をそうバンバンとは出せないということなんだろう。

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