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第3章
10話
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「ですが・・・具体的にはどうすればいいんでしょうか?」
「えっとね。考えてることがちょっとあるんだ」
そこでゲントはレモンから計画の内容を耳にする。
どうやら明後日に『レギヤド竜炎城』というダンジョンで攻略の生配信が決まっているらしく、その配信中にバヌーの鼻を明かそうと考えている、とレモンは口にした。
それだけではなく、具体的なプランもすでに想定しているようだ。
「当日の配信役はウチに決まってるんだ。だから、配信を切ったフリして生配信を続けたいんだけど。これをするには問題があって・・・」
「光のパネルなら自分でも呼び出せますよ? 2つ使って配信を続けるってのはどうでしょうか?」
「もちろん、そのアイデアは採用させてもらうつもり。でもそれだけじゃ、ぜったいバヌーに気づかれちゃう」
「まあ、ふつうに考えればそうですよね」
配信中の光のパネルは赤色に光り輝く。
そんなものが常時立ち上がっていたら、真っ先に指摘されるのがオチだ。
「だからゲントに聞きたいんだけど。視えない魔剣を持ってるくらいなんだから、光のパネルを視えなくするなんてことできたりしない?」
「どうでしょう・・・? やったことがないので」
そのあと。
光のパネルを立ち上げていろいろ操作してみるも。
「すみません・・・。やっぱムリっぽいです」
「そっか」
結局、光のパネルを認識できないようにすることはできず。
レモンは明らかに落胆の声を上げる。
「う~ん。難しい問題ですねぇ・・・。どーしましょう~??」
この間、ルルムも一緒になって悩んでくれていた。
そんな彼女を見て、ゲントの中にある閃きが舞い降りる。
「レモンさん。ひょっとしたら、なんとかなるかもしれません」
「え? マジ!?」
「はい」
一度レモンから距離を取るとゲントはルルムに訊ねる。
「魔晄に呼びかけて光のパネルを立ち上げるなんてことできたりする?」
「ふぇ? やったことないですけどぉ・・・。マスターが普段してるとおりにすればいいんですか・・・?」
「そう。一度やってみてほしいんだ」
「わっかりましたぁ~!! マスターとレモンさんのため、ルルムお役に立ちたいと思いますぅ~!!」
そのあとすぐに。
ぽんっ!
ルルムは難なく光のパネルを呼び出すことに成功する。
また、それがレモンの目には認識できないことをゲントは確認した。
「うそっ・・・。ホントに今、光のパネルがウチの目の前にあるの?」
「はい。ちょっとした裏技を使いまして。できちゃいました」
「おー! さすがゲントっ♪」
ぱしん!とゲントは背中を強く叩かれる。
レモンもかなり興奮しているようだ。
それからゲントは当日の配信スケジュールを耳にする。
『レギヤド竜炎城』に入ってからスタートさせ、ダンジョンを進みながら配信を続けるようだ。
「たぶん、ゲントはモンスターを倒しながら先へ進むように指示されると思うんだ」
「わかりました。頭に入れておきます」
「そのまま最下層に降りるまで生配信を続けて・・・。ボスがいるフロアの手前でいったん切ることになってるんだよ」
「ということは・・・ここがこちらに配信を切り替えるタイミングですね?」
「そうなると思う」
そこで2人は当日の合図を決めておくことに。
ゲントが無事に光のパネルを立ち上げたら、レモンに向けて大きく手を挙げる。
それを配信切り替えのタイミングとした。
「そしたら、ウチがこっそり〈配信〉の魔法をゲントに向けて使うから。それでたぶん、そっちで配信がはじまると思うよ」
「チャンネルは[ヘルファングの煉旗]共同のものなんですよね?」
「そう。だから、視聴者はチャンネルを移動する必要がないの。一度配信が切れてまたすぐにはじまったくらいにしか思わないはずだよ」
どうやら配信役が変わっても、視聴する側が違和感を抱く心配はないようだ。
「それでここからが重要ね? ゲントがボスを追い込んじゃうと、バヌーは配信を再開させるように指示してくるはず。ウチの方でもまたはじめちゃうけど、こっちの配信はフェイクだから。適当なチャンネルで流す予定だよ」
「わかりました」
ちょうどそのタイミングで。
レモンはバヌーに真実を求めて迫るようだ。
この時、彼の本性が垣間見れるに違いないとレモンは口にする。
「そこを逃さないで。ゲントはバヌーの方にパネルを向けつつ配信を続けてね」
「了解です」
「当日は相手がどう出るか正直読めない・・・。だからゲントも細心の注意を払って。ウチのことよりも、ギリギリまで泳がせて、バヌーの本性を暴くことの方が大事だから」
そこは何度も念を押される。
危険な場面になろうが、バヌーの素顔を配信にのせることをレモンは最優先で考えていた。
ゲントもその考えを尊重する。
ここで自分の良心に従って行動することは、かならずしも正しいとは限らないとわかったのだ。
たとえ、レモンの身に危険が迫ろうとも・・・。
視聴者である国民に真実を叩きつけることの方が優先すべきことだ、とゲントは心に決める。
「レモンさんって・・・強いですね」
「強い? ウチなんかぜんぜん。ゲントには敵わないって。モンスターだってあんなに早く倒せないし」
「いえ、そういう強さじゃなくて。もっとこう人としての強さです」
レモンは理解できていない様子だったが、ゲントにはわかっていた。
なぜなら、こんな風に大勢の者に対して真実を伝えようとすることは、とても勇気のいることだから。
ひょっとすると、自分も批判の対象となるかもしれない。
そういうこともひっくるめて受け入れ、レモンは暴露しようとしているに違いなかった。
「ねぇ・・・ゲント。この先もウチのこと助けてくれる?」
「え?」
「ううん・・・なんでもなーい! それじゃ、またあとで話を詰めよ?」
「はい。わかりました」
***
こうして。
すべてはレモンの計画どおりにことが進んだ。
馬車が消えた方角へと目を向けつつ、ゲントは大きく伸びをする。
「よし、ルルム。戻ってモンスター退治の続きをしちゃおっか」
「はいっ♪ マスターのお役に立たせていただきますよぉ~~!!」
レモンは自分のすべきことをやったんだ。
(今度は自分の番だな)
そう決意し、ゲントは『レギヤド竜炎城』まで戻って行くのだった。
「えっとね。考えてることがちょっとあるんだ」
そこでゲントはレモンから計画の内容を耳にする。
どうやら明後日に『レギヤド竜炎城』というダンジョンで攻略の生配信が決まっているらしく、その配信中にバヌーの鼻を明かそうと考えている、とレモンは口にした。
それだけではなく、具体的なプランもすでに想定しているようだ。
「当日の配信役はウチに決まってるんだ。だから、配信を切ったフリして生配信を続けたいんだけど。これをするには問題があって・・・」
「光のパネルなら自分でも呼び出せますよ? 2つ使って配信を続けるってのはどうでしょうか?」
「もちろん、そのアイデアは採用させてもらうつもり。でもそれだけじゃ、ぜったいバヌーに気づかれちゃう」
「まあ、ふつうに考えればそうですよね」
配信中の光のパネルは赤色に光り輝く。
そんなものが常時立ち上がっていたら、真っ先に指摘されるのがオチだ。
「だからゲントに聞きたいんだけど。視えない魔剣を持ってるくらいなんだから、光のパネルを視えなくするなんてことできたりしない?」
「どうでしょう・・・? やったことがないので」
そのあと。
光のパネルを立ち上げていろいろ操作してみるも。
「すみません・・・。やっぱムリっぽいです」
「そっか」
結局、光のパネルを認識できないようにすることはできず。
レモンは明らかに落胆の声を上げる。
「う~ん。難しい問題ですねぇ・・・。どーしましょう~??」
この間、ルルムも一緒になって悩んでくれていた。
そんな彼女を見て、ゲントの中にある閃きが舞い降りる。
「レモンさん。ひょっとしたら、なんとかなるかもしれません」
「え? マジ!?」
「はい」
一度レモンから距離を取るとゲントはルルムに訊ねる。
「魔晄に呼びかけて光のパネルを立ち上げるなんてことできたりする?」
「ふぇ? やったことないですけどぉ・・・。マスターが普段してるとおりにすればいいんですか・・・?」
「そう。一度やってみてほしいんだ」
「わっかりましたぁ~!! マスターとレモンさんのため、ルルムお役に立ちたいと思いますぅ~!!」
そのあとすぐに。
ぽんっ!
ルルムは難なく光のパネルを呼び出すことに成功する。
また、それがレモンの目には認識できないことをゲントは確認した。
「うそっ・・・。ホントに今、光のパネルがウチの目の前にあるの?」
「はい。ちょっとした裏技を使いまして。できちゃいました」
「おー! さすがゲントっ♪」
ぱしん!とゲントは背中を強く叩かれる。
レモンもかなり興奮しているようだ。
それからゲントは当日の配信スケジュールを耳にする。
『レギヤド竜炎城』に入ってからスタートさせ、ダンジョンを進みながら配信を続けるようだ。
「たぶん、ゲントはモンスターを倒しながら先へ進むように指示されると思うんだ」
「わかりました。頭に入れておきます」
「そのまま最下層に降りるまで生配信を続けて・・・。ボスがいるフロアの手前でいったん切ることになってるんだよ」
「ということは・・・ここがこちらに配信を切り替えるタイミングですね?」
「そうなると思う」
そこで2人は当日の合図を決めておくことに。
ゲントが無事に光のパネルを立ち上げたら、レモンに向けて大きく手を挙げる。
それを配信切り替えのタイミングとした。
「そしたら、ウチがこっそり〈配信〉の魔法をゲントに向けて使うから。それでたぶん、そっちで配信がはじまると思うよ」
「チャンネルは[ヘルファングの煉旗]共同のものなんですよね?」
「そう。だから、視聴者はチャンネルを移動する必要がないの。一度配信が切れてまたすぐにはじまったくらいにしか思わないはずだよ」
どうやら配信役が変わっても、視聴する側が違和感を抱く心配はないようだ。
「それでここからが重要ね? ゲントがボスを追い込んじゃうと、バヌーは配信を再開させるように指示してくるはず。ウチの方でもまたはじめちゃうけど、こっちの配信はフェイクだから。適当なチャンネルで流す予定だよ」
「わかりました」
ちょうどそのタイミングで。
レモンはバヌーに真実を求めて迫るようだ。
この時、彼の本性が垣間見れるに違いないとレモンは口にする。
「そこを逃さないで。ゲントはバヌーの方にパネルを向けつつ配信を続けてね」
「了解です」
「当日は相手がどう出るか正直読めない・・・。だからゲントも細心の注意を払って。ウチのことよりも、ギリギリまで泳がせて、バヌーの本性を暴くことの方が大事だから」
そこは何度も念を押される。
危険な場面になろうが、バヌーの素顔を配信にのせることをレモンは最優先で考えていた。
ゲントもその考えを尊重する。
ここで自分の良心に従って行動することは、かならずしも正しいとは限らないとわかったのだ。
たとえ、レモンの身に危険が迫ろうとも・・・。
視聴者である国民に真実を叩きつけることの方が優先すべきことだ、とゲントは心に決める。
「レモンさんって・・・強いですね」
「強い? ウチなんかぜんぜん。ゲントには敵わないって。モンスターだってあんなに早く倒せないし」
「いえ、そういう強さじゃなくて。もっとこう人としての強さです」
レモンは理解できていない様子だったが、ゲントにはわかっていた。
なぜなら、こんな風に大勢の者に対して真実を伝えようとすることは、とても勇気のいることだから。
ひょっとすると、自分も批判の対象となるかもしれない。
そういうこともひっくるめて受け入れ、レモンは暴露しようとしているに違いなかった。
「ねぇ・・・ゲント。この先もウチのこと助けてくれる?」
「え?」
「ううん・・・なんでもなーい! それじゃ、またあとで話を詰めよ?」
「はい。わかりました」
***
こうして。
すべてはレモンの計画どおりにことが進んだ。
馬車が消えた方角へと目を向けつつ、ゲントは大きく伸びをする。
「よし、ルルム。戻ってモンスター退治の続きをしちゃおっか」
「はいっ♪ マスターのお役に立たせていただきますよぉ~~!!」
レモンは自分のすべきことをやったんだ。
(今度は自分の番だな)
そう決意し、ゲントは『レギヤド竜炎城』まで戻って行くのだった。
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