女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ

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第3章

3話 レモンSIDE

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「なんか皆さんとあまり上手くいってないようにお見受けできますけど」

「ウチは・・・」

 そこまで声に出すも、レモンは言い淀んでしまう。
 弟と妹の顔が一瞬、頭に浮かんだからだ。

 レモンはバヌーから〝余計なことは誰にも口にするな〟と脅しを受けている。
 もしそれを破れば、弟と妹の身が危ない。

 何度も2人を連れてロゲスから逃げ出そうと考えた。
 
 けれど、ロザリア国内に留まっている限り、バヌーの魔の手から逃れることはできない。
 彼の父親はエンペルト領の領主であり、国中に顔がきく。

 きっとすぐに探し出されてしまうに違いなかった。
 ならば、王選が終わるまで自分が我慢を続けた方がマシだ、とレモンは考えた。

(あいつが国王になったら・・・この悪夢も終わるんだから)

 バヌーが正式な国王となったロザリアがそのあとどうなってしまうかというところまでは、レモンは正直考えていない。

 今レモンの中にあるのは〝大切な家族を守る〟というただそれだけの想いだ。

 そのはずなのだが。

(・・・っ・・・)

 ゲントのことを想うとちくりと胸が痛む。
 なぜならレモンもまた、バヌーのたくらみに加担している仲間のひとりと言えたからだ。

「レモンさん?」

 言葉を詰まらせるレモンを見て、ゲントが心配そうに声をかけてくる。

(・・・本当にこのままでいいの? この人、ずっと利用され続けてるのに・・・)

 そんな声がレモンの内側から聞えてくる。

 なにもかも見て見ぬふりして、このまま押し通して・・・。
 果たしてそれは正しいことなの?
 
 自分には真実を人々へ伝える義務があるのではないか。

 そんな考えがふとレモンの頭に過った。
 
 が。

「・・・ウチのことなんか気にしなくていいんだよ」

「え?」

「ゲントは自分の心配した方がいいよ。それじゃね」

 結局、レモンはその声に耳を傾けることができなかった。

 ゲントの言葉も待たずに。
 逃げるようにしてその場をあとにするのだった。



 ***



 ――ゲントSIDE――

「あれ~? レモンさん。どうしたんでしょう? なんか様子が変でしたけどぉ・・・」

「うーん・・・。なんかいろいろあるのかもね」

 ひょっとすると詮索してほしくないことなのかもしれない。
 そんなことを思いながら、ゲントはルルムとともにレモンの背中を見送る。

「でも。今日のマスターもさすがでした~♪ ダンジョンのモンスターまたぜんぶ倒しちゃいましたね~! お疲れさまですっ!!」

「これでロザリアの人たちが少しでも安心して暮らせるようになったんなら、頑張った甲斐もあったって思うよ」

「うぅぅっ~。さすがはマスターですぅ・・・! なんて心がお優しいんでしょうっ・・・」

 ルルムはしっぽを振りながらいつものように感動している。

 それにしても。

 本当にバヌーたちと出会えてよかった、とゲントは思う。

(こんな風に自分のことを助けてくれる人がいるなんて。やっぱり世の中捨てたもんじゃないよな)

 たとえそれが異世界でも。
 優しさというのは普遍だということをゲントは肌で感じていた。

 おかげでここ数週間、受け取った金貨の数は30枚にのぼっている。

 このペースなら、あと2ヶ月ほどで目標の100万yenに届くに違いないとゲントは思う。
 
「さっ。ルルム帰ろっか」

「・・・」

「? どうしたの?」

 ゲントが声をかけてもルルムは反応しない。

 突然大人しくなったかと思えば、レモンがいなくなった夜道へ静かに視線を向けている。

「なんかあった?」

「・・・やっぱりルルム・・・。気づいてもらえませんでしたぁ・・・」

「え?」

「さっきも去り際にレモンさんに手を振ったんですよぉ~! でも、レモンさんはぜんぜん気づかなくて・・・。レモンさんだけじゃないですっ! さっきもバヌーさんたちとマスターは楽しそうにお話しされてました・・・」

「ひょっとして寂しかった?」

「いつもそうなんですぅ~~! ルルムだけ・・・いつもひとりぼっちなんですっ・・・」

 珍しくルルムが弱音を吐く。
 天真爛漫なサキュバスの少女がこれほどまでに落ち込む様子をゲントははじめて目にしていた。
 
 たぶん急に賑やかになったことが原因だろうとゲントは思う。

 バヌーたちと一緒にいる時間が増えたことで、自分が視えない存在だということを強く意識するようになってしまったのかもしれない。

(自分の姿が視えなかったり、声が届かなかったりすることほど寂しいこともないよな)

 それは真っ暗闇の中にぽつんと。
 ひとりだけ取り残されたような感覚に違いなかった。

 少女の繊細な気持ちの変化に気づけなかったことをゲントは反省する。 
 やはりそれは大人の役目だからだ。

 気づけば、ゲントはルルムの頭を優しく撫でていた。

「ふぇ・・・?」

「ごめんなルルム。寂しかったよね。でも俺だけには視えてるから。こうしてちゃんと触れることだってできるわけだし」

「でもでもっ~! ルルムは皆さんと一緒にお話がしてみたいんですっ・・・。それに魔剣の姿になったり、戻ったり・・・もぅこんな体もイヤですぅ・・・」
 
 ゲントはルルムの手をぎゅっと握ると真摯に答える。

「わかった。俺がかならずなんとかしてあげるから」

「マスター・・・?」

「だからそれまでの間、もうちょっとだけ我慢してほしい。こんなおっさんしか話し相手になれないけどさ」

「そんなぁ、おっさんだなんてっ! マスターは世界一のイケメンですよぉ!! ルルム、ずっ~とそう思ってますっ!!」

 そこでルルムは顔をぱっと明るくさせた。

「ごめんなさい! ちょっとわがまま言っちゃいました。そうですよねっ♪ ルルムのそばにはマスターがいてくださりますっ! ぜんぜん寂しくなんかないですっ~!」

「うん。これからもよろしくね」

「はいっ♡」

 ルルムが無理に明るく振舞っているのがゲントにはわかった。
 だからこそ考えを改める。
 
(お金が貯まるようになって安心しちゃったけど・・・それだけじゃダメだよな)

 ルルムのためにも。
 一刻も早く彼女をもとの姿に戻す方法を探さなければならない。

 そうゲントは心に強く決めた。
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