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第3章
1話 バヌーSIDE
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あれから数週間。
バヌーはゲントをロゲスの宿屋に滞留させ、ロザリア国中のさまざまなダンジョンへと派遣させていた。
ダンジョンを消滅させたというゲントの報告を耳にするたびに、バヌーはゲントの力が本物である確信を強めていく。
この頃には仲間たちも黒の一帯を消し去ったという彼の話を信じるようになっていた。
「しかしよぉ、あのおっさん! 予想以上に使えるわ~。まるで忠犬だぜぇ? こっちの言うことをワンワンってぜんぶ素直に聞きやがる! くっくっく!」
「ああ、さすがバヌーだ。本当に上手く利用してるぜ。いい歳こいて、俺らみたいな若い連中に下働きさせられて少し同情するがな」
「同情なんてそんなこと、ジョネスあんた微塵も思ってないでしょ? 騙されるあのオヤジが悪い。ただそれだけだよ」
「ハッ! アウラの言うとおりだ。騙される方が悪い。バカは利用されて当然だなぁ! ハハハッ!」
バヌーはいつものように仲間たちと一緒に酒場で盛り上がっていた。
ゲントがダンジョンを消し去るたびに、バヌーはまるで自分の戦果のようにギルドに報告していた。
配信にしても同じだ。
すべて自分がやったかのように視聴者に伝える。
当然、ここ数週間ほどで、まわりの見る目も大きく変わった。
ダンジョンをひとつだけでなく、いくつも消し去っているからだ。
国家勲章ものの功績を立て続けに残したことで、バヌーは今、ロザリアで時の人となっていた。
国内に留まらず、その噂は五ノ国全域にまで轟いている。
今バヌーが生配信を行えば、同接数は10万を軽く越えた。
次はどんな報告が飛び出すのかと、日に日に民衆の期待値は上がっている。
もちろん、自分が成し得たことはなにひとつない。
これまでの間ずっと。
バヌーは誰かの成果を横取りにして、あたかも自分がやったかのように偽りながら生きてきたのだ。
***
魔力総量237万8749。
エンペルト領主の息子にして[ヘルファングの煉旗]のリーダー。
それがバヌーという男だ。
1年ほど前に王選候補者として立候補し、魔法学院の優秀な卒業生とともにパーティーを組んでいる。
見た目は爽やかなイケメン。
人当たりも悪くないため、国民から支持を得て、王選の中間発表ではトップを独走中。
エンペルト魔法学院を主席で卒業したレモン、2位のジョネス、3位のアウラという黄金のメンバーを従え、これまでに数々の戦果を挙げてきた。
基本的にバヌーが戦闘に参加することはない。
魔術師としての素質は皆無。
努力嫌いなこともあってMQは60と平均以下だったりする。
ただ、いくら優秀なメンツが揃っているからといって、これまでに[ヘルファングの煉旗]が挙げた戦果はあまりにも出来すぎであった。
これにはからくりがある。
[ヘルファングの煉旗]だけは、エンペルト領内では発動が禁止されている『強化の書』の使用が領主によって承認されていたのだ。
これにより差別化がはかられ、バヌーたちはほかのパーティーよりも有利にダンジョンの攻略を成し遂げることができていた。
それだけではない。
ギルドマスターの協力もあって、中にはいくつか虚偽の戦果も含まれている。
当然、この事実がロザリア王家にバレたら只では済まない。
ここまでエンペルト領主がリスクを冒すのには理由があった。
領主は自分の息子を利用し、一族が王族に取り入ることを悲願としているのだ。
バヌーもこれは承知の上である。
裏では口が悪く、民衆を見下すような性格のひん曲がった男だが、一族に対する思いは本物だった。
だから、ロザリアの国王となることは、父親の悲願であると同時に、バヌー自身の一番の望みでもあった。
そのためには、なりふりを構っていられないというのがバヌーの本音だ。
実はゲントと出会う直前まで。
バヌーはかなりの焦りを感じていた。
王選の第1回、第2回の中間発表ではバヌーはトップとなったわけだが、2位の候補者との得票数の差が徐々に縮まってきており、エンペルト領以外のダンジョンでも戦果を挙げる必要が出てきていた。
しかし、テラスタル領をはじめとする他領では、『強化の書』の発動が認められておらず、[ヘルファングの煉旗]はなかなか思うような戦果を挙げることができずにいた。
『フルゥーヴ伝承洞』のクエストを受注したのは、そこがロザリア3本の指に入る高難易度のダンジョンだったからだ。
もしここで思うような戦果が挙げられなければ、今頃バヌーは窮地に立たされていたところだった。
だから、ゲントという使い勝手のいい駒を手に入れたことは、バヌーにとってカモが葱を背負って来るほどの幸運な出来事であった。
幸いにもゲントは自分の強さに無自覚だったため、バヌーは口上手く誘いに乗せることに成功している。
現状、僅かな報酬で意のままに働かせ、大きな戦果を横取りすることができていた。
***
「この調子ならバヌーの1位は安泰ね」
「まあな」
アウラの言葉に、さも当然のようにバヌーは頷く。
「国王になった暁にはいろいろと頼むぜ?」
「そうさ。アタイも分も忘れないでくれよ」
「わかってるさ、2人とも。くっくっく。オレサマももうすぐ国王かぁ~。民衆なんてやっぱりバカでちょろい連中の集まりだなぁ! ハッハッ!」
エールの入ったグラスを傾けながら、バヌーは未来の自分に思いを馳せる。
もうすぐその夢が叶うのだ。
そう思うとニヤニヤが止まらなかった。
が、そこでふとあることを思い出す。
「おーい、そういやジョネスよぉ。レモンのヤツ、ちっと遅くねぇーか?」
実は今日、バヌーは朝からレモンをダンジョンの攻略に向かわせていた。
「そうだな・・・。時間的にもそろそろロゲスに戻って来てる頃だと思うぞ? どうせいつものように一度ガキどもの顔を見に寄ってるんだろう。じきにやって来るさ」
「くっくっく。あいつもあいつでバカだからなぁ~。どいつもこいつもバカは利用されて当然だよな、ハハハッ!!」
バヌーはゲントをロゲスの宿屋に滞留させ、ロザリア国中のさまざまなダンジョンへと派遣させていた。
ダンジョンを消滅させたというゲントの報告を耳にするたびに、バヌーはゲントの力が本物である確信を強めていく。
この頃には仲間たちも黒の一帯を消し去ったという彼の話を信じるようになっていた。
「しかしよぉ、あのおっさん! 予想以上に使えるわ~。まるで忠犬だぜぇ? こっちの言うことをワンワンってぜんぶ素直に聞きやがる! くっくっく!」
「ああ、さすがバヌーだ。本当に上手く利用してるぜ。いい歳こいて、俺らみたいな若い連中に下働きさせられて少し同情するがな」
「同情なんてそんなこと、ジョネスあんた微塵も思ってないでしょ? 騙されるあのオヤジが悪い。ただそれだけだよ」
「ハッ! アウラの言うとおりだ。騙される方が悪い。バカは利用されて当然だなぁ! ハハハッ!」
バヌーはいつものように仲間たちと一緒に酒場で盛り上がっていた。
ゲントがダンジョンを消し去るたびに、バヌーはまるで自分の戦果のようにギルドに報告していた。
配信にしても同じだ。
すべて自分がやったかのように視聴者に伝える。
当然、ここ数週間ほどで、まわりの見る目も大きく変わった。
ダンジョンをひとつだけでなく、いくつも消し去っているからだ。
国家勲章ものの功績を立て続けに残したことで、バヌーは今、ロザリアで時の人となっていた。
国内に留まらず、その噂は五ノ国全域にまで轟いている。
今バヌーが生配信を行えば、同接数は10万を軽く越えた。
次はどんな報告が飛び出すのかと、日に日に民衆の期待値は上がっている。
もちろん、自分が成し得たことはなにひとつない。
これまでの間ずっと。
バヌーは誰かの成果を横取りにして、あたかも自分がやったかのように偽りながら生きてきたのだ。
***
魔力総量237万8749。
エンペルト領主の息子にして[ヘルファングの煉旗]のリーダー。
それがバヌーという男だ。
1年ほど前に王選候補者として立候補し、魔法学院の優秀な卒業生とともにパーティーを組んでいる。
見た目は爽やかなイケメン。
人当たりも悪くないため、国民から支持を得て、王選の中間発表ではトップを独走中。
エンペルト魔法学院を主席で卒業したレモン、2位のジョネス、3位のアウラという黄金のメンバーを従え、これまでに数々の戦果を挙げてきた。
基本的にバヌーが戦闘に参加することはない。
魔術師としての素質は皆無。
努力嫌いなこともあってMQは60と平均以下だったりする。
ただ、いくら優秀なメンツが揃っているからといって、これまでに[ヘルファングの煉旗]が挙げた戦果はあまりにも出来すぎであった。
これにはからくりがある。
[ヘルファングの煉旗]だけは、エンペルト領内では発動が禁止されている『強化の書』の使用が領主によって承認されていたのだ。
これにより差別化がはかられ、バヌーたちはほかのパーティーよりも有利にダンジョンの攻略を成し遂げることができていた。
それだけではない。
ギルドマスターの協力もあって、中にはいくつか虚偽の戦果も含まれている。
当然、この事実がロザリア王家にバレたら只では済まない。
ここまでエンペルト領主がリスクを冒すのには理由があった。
領主は自分の息子を利用し、一族が王族に取り入ることを悲願としているのだ。
バヌーもこれは承知の上である。
裏では口が悪く、民衆を見下すような性格のひん曲がった男だが、一族に対する思いは本物だった。
だから、ロザリアの国王となることは、父親の悲願であると同時に、バヌー自身の一番の望みでもあった。
そのためには、なりふりを構っていられないというのがバヌーの本音だ。
実はゲントと出会う直前まで。
バヌーはかなりの焦りを感じていた。
王選の第1回、第2回の中間発表ではバヌーはトップとなったわけだが、2位の候補者との得票数の差が徐々に縮まってきており、エンペルト領以外のダンジョンでも戦果を挙げる必要が出てきていた。
しかし、テラスタル領をはじめとする他領では、『強化の書』の発動が認められておらず、[ヘルファングの煉旗]はなかなか思うような戦果を挙げることができずにいた。
『フルゥーヴ伝承洞』のクエストを受注したのは、そこがロザリア3本の指に入る高難易度のダンジョンだったからだ。
もしここで思うような戦果が挙げられなければ、今頃バヌーは窮地に立たされていたところだった。
だから、ゲントという使い勝手のいい駒を手に入れたことは、バヌーにとってカモが葱を背負って来るほどの幸運な出来事であった。
幸いにもゲントは自分の強さに無自覚だったため、バヌーは口上手く誘いに乗せることに成功している。
現状、僅かな報酬で意のままに働かせ、大きな戦果を横取りすることができていた。
***
「この調子ならバヌーの1位は安泰ね」
「まあな」
アウラの言葉に、さも当然のようにバヌーは頷く。
「国王になった暁にはいろいろと頼むぜ?」
「そうさ。アタイも分も忘れないでくれよ」
「わかってるさ、2人とも。くっくっく。オレサマももうすぐ国王かぁ~。民衆なんてやっぱりバカでちょろい連中の集まりだなぁ! ハッハッ!」
エールの入ったグラスを傾けながら、バヌーは未来の自分に思いを馳せる。
もうすぐその夢が叶うのだ。
そう思うとニヤニヤが止まらなかった。
が、そこでふとあることを思い出す。
「おーい、そういやジョネスよぉ。レモンのヤツ、ちっと遅くねぇーか?」
実は今日、バヌーは朝からレモンをダンジョンの攻略に向かわせていた。
「そうだな・・・。時間的にもそろそろロゲスに戻って来てる頃だと思うぞ? どうせいつものように一度ガキどもの顔を見に寄ってるんだろう。じきにやって来るさ」
「くっくっく。あいつもあいつでバカだからなぁ~。どいつもこいつもバカは利用されて当然だよな、ハハハッ!!」
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彼らは通称カーヴァント。
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カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。
しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。
また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。
探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。
つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。
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