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第2章
20話 レモンSIDE
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――幻影飛魔天 第4層――
ずぎゅーーん!!
勢いよく飛び出した魔弾がブルーヒドラを正確に撃ち落とす。
「ゴアァァシャァァァ~~!?」
敵が完全に沈黙したのを確認すると、魔弾銃を肩にかけてレモンはひと息つく。
その流れるような動作には一切の無駄が存在しない。
「すみません、レモンさん。今回も助かりました」
深々と頭を下げながら、ゲントが礼を言ってくる。
それを見てレモンは思わず本音を口にしてしまっていた。
「あのさ、おじさん。さっきからず~っとウチばっかモンスター倒してるんですけど?」
「はい?」
「まぁ、もういーけどね」
そろそろ潮時だとレモンは考えていた。
(ダメだ・・・この人。やっぱぜんぜん使えない)
バヌーは上手く言い包めたつもりなのだろうが、ひょっとするとこの中年男の方が一枚上手だったのかもしれない。
どのみち自分には関係ないとレモンは思う。
(あとは適当なところで引き返して、この件を報告すればいっか)
そう考え、来た道をひとりで戻ろうとするレモンだったが・・・。
「危ないです、レモンさん!」
そんな声が聞えたかと思えば、次の瞬間、レモンはゲントに抱きかかえられていた。
(え・・・なに?)
ビュゥゥ!!
その目にも留まらぬ動きを見て、レモンは思わず目を疑う。
一瞬のうちに自分の体が通路の端から端へと移動していたからだ。
「よかったです。ご無事で」
「ちょ、ちょっと・・・いったいなにして・・・」
「安心してください。モンスターはこの間にぜんぶ倒しておきましたので」
「へ?」
彼がなにを言っているのか、レモンには理解ができない。
そもそもモンスターの姿など通路のどこにもなかったからだ。
いったいなにが危なかったというのか。
「てゆーか・・・どさくさに紛れてなに触ってるんだよー!」
「あ、ごめんなさい。すぐに離します」
抱きかかえられたままとなっていたレモンはその場でスッと下ろされる。
(もう・・・。なんなんだよ・・・)
自分の身に今なにが起きたのか、レモンは状況を上手く飲み込めない。
正直、かなり混乱していた。
なぜなら、常人ではあり得ない瞬発力と脚力で、この中年男は自分を抱きかかえたまま移動したからだ。
レモンが頭を悩ませていると。
「ふぅ・・・。これで120体目か」
青銅の剣をゆっくりと鞘に収めながらゲントが呟く。
まるで、これまで本当に戦っていたかのようなモーションだった。
演技と呼ぶにはあまりにも自然なその所作に、レモンはつい言葉が漏れてしまう。
「・・・ねぇ。まさかって思うけど。ホントにモンスターと戦ってたの?」
「え? はい。そうですけど」
「でもでもっ! モンスターなんてどこにもいないじゃん!」
「すみません、レモンさん。この『幻影飛魔天』の特徴をご存じありませんか?」
「なんだよ特徴って」
そこでゲントはあっけらかんとこんなことを口にする。
「このダンジョンに出現するモンスターのほとんどは、姿が視えないっていう特徴があるみたいなんです」
「姿が視えない・・・?」
またもレモンは理解に苦しむ。
いろいろと気になることはあったが、特に引っかかったのはゲントの口調。
まるで自分だけは視えるとでも言うような口ぶりだったからだ。
さすがに問わずにはいられない、とレモンは思った。
「今モンスターはぜんぶ倒したとか言ってたよね?」
「はい」
「どーやって? まさかおじさんにだけ姿の視えないモンスターが視えるってことはないでしょ?」
透明なモンスターが出現するダンジョンがロザリアに存在するという話はレモンも耳にしたことがあった。
ひょっとすると、あえてこのことを伏せてバヌーは試したのかもしれない。
(あいつが考えそうなことだよ)
ただ、百歩譲ってここがそのダンジョンだとしても・・・。
(なんでこのおじさんにだけ視えるの? あり得ないって・・・)
が。
ゲントはさも当たり前のように頷いてみせる。
「ホントなの?」
「心配しないでください。ここからは自分が先を歩いてすべての敵を倒しますから」
ゲントは笑顔でそう口にすると、先陣を切るようにしてダンジョンの階段を降りていく。
(いや違う。これもブラフだ)
騙されるものか!と、来た道をそのまま引き返そうとするも。
「・・・」
なぜかレモンの足はそこで止まってしまう。
やはりどうしても気になってしまい、彼の正体を突き止めなければという衝動にレモンは駆られる。
(ぜっーたい嘘を見抜いてやるんだから!)
そのままゲントの背中を追う形で、レモンも階段を下っていくのだった。
ずぎゅーーん!!
勢いよく飛び出した魔弾がブルーヒドラを正確に撃ち落とす。
「ゴアァァシャァァァ~~!?」
敵が完全に沈黙したのを確認すると、魔弾銃を肩にかけてレモンはひと息つく。
その流れるような動作には一切の無駄が存在しない。
「すみません、レモンさん。今回も助かりました」
深々と頭を下げながら、ゲントが礼を言ってくる。
それを見てレモンは思わず本音を口にしてしまっていた。
「あのさ、おじさん。さっきからず~っとウチばっかモンスター倒してるんですけど?」
「はい?」
「まぁ、もういーけどね」
そろそろ潮時だとレモンは考えていた。
(ダメだ・・・この人。やっぱぜんぜん使えない)
バヌーは上手く言い包めたつもりなのだろうが、ひょっとするとこの中年男の方が一枚上手だったのかもしれない。
どのみち自分には関係ないとレモンは思う。
(あとは適当なところで引き返して、この件を報告すればいっか)
そう考え、来た道をひとりで戻ろうとするレモンだったが・・・。
「危ないです、レモンさん!」
そんな声が聞えたかと思えば、次の瞬間、レモンはゲントに抱きかかえられていた。
(え・・・なに?)
ビュゥゥ!!
その目にも留まらぬ動きを見て、レモンは思わず目を疑う。
一瞬のうちに自分の体が通路の端から端へと移動していたからだ。
「よかったです。ご無事で」
「ちょ、ちょっと・・・いったいなにして・・・」
「安心してください。モンスターはこの間にぜんぶ倒しておきましたので」
「へ?」
彼がなにを言っているのか、レモンには理解ができない。
そもそもモンスターの姿など通路のどこにもなかったからだ。
いったいなにが危なかったというのか。
「てゆーか・・・どさくさに紛れてなに触ってるんだよー!」
「あ、ごめんなさい。すぐに離します」
抱きかかえられたままとなっていたレモンはその場でスッと下ろされる。
(もう・・・。なんなんだよ・・・)
自分の身に今なにが起きたのか、レモンは状況を上手く飲み込めない。
正直、かなり混乱していた。
なぜなら、常人ではあり得ない瞬発力と脚力で、この中年男は自分を抱きかかえたまま移動したからだ。
レモンが頭を悩ませていると。
「ふぅ・・・。これで120体目か」
青銅の剣をゆっくりと鞘に収めながらゲントが呟く。
まるで、これまで本当に戦っていたかのようなモーションだった。
演技と呼ぶにはあまりにも自然なその所作に、レモンはつい言葉が漏れてしまう。
「・・・ねぇ。まさかって思うけど。ホントにモンスターと戦ってたの?」
「え? はい。そうですけど」
「でもでもっ! モンスターなんてどこにもいないじゃん!」
「すみません、レモンさん。この『幻影飛魔天』の特徴をご存じありませんか?」
「なんだよ特徴って」
そこでゲントはあっけらかんとこんなことを口にする。
「このダンジョンに出現するモンスターのほとんどは、姿が視えないっていう特徴があるみたいなんです」
「姿が視えない・・・?」
またもレモンは理解に苦しむ。
いろいろと気になることはあったが、特に引っかかったのはゲントの口調。
まるで自分だけは視えるとでも言うような口ぶりだったからだ。
さすがに問わずにはいられない、とレモンは思った。
「今モンスターはぜんぶ倒したとか言ってたよね?」
「はい」
「どーやって? まさかおじさんにだけ姿の視えないモンスターが視えるってことはないでしょ?」
透明なモンスターが出現するダンジョンがロザリアに存在するという話はレモンも耳にしたことがあった。
ひょっとすると、あえてこのことを伏せてバヌーは試したのかもしれない。
(あいつが考えそうなことだよ)
ただ、百歩譲ってここがそのダンジョンだとしても・・・。
(なんでこのおじさんにだけ視えるの? あり得ないって・・・)
が。
ゲントはさも当たり前のように頷いてみせる。
「ホントなの?」
「心配しないでください。ここからは自分が先を歩いてすべての敵を倒しますから」
ゲントは笑顔でそう口にすると、先陣を切るようにしてダンジョンの階段を降りていく。
(いや違う。これもブラフだ)
騙されるものか!と、来た道をそのまま引き返そうとするも。
「・・・」
なぜかレモンの足はそこで止まってしまう。
やはりどうしても気になってしまい、彼の正体を突き止めなければという衝動にレモンは駆られる。
(ぜっーたい嘘を見抜いてやるんだから!)
そのままゲントの背中を追う形で、レモンも階段を下っていくのだった。
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