上 下
44 / 77
第2章

18話

しおりを挟む
「よくあることだから。気にしないで」

 と、レモンは魔弾銃を装填しながら口にする。

「あの・・・バヌーさんたちになにかあったんでしょうか?」

 そこでレモンは「はぁ・・・」とため息をつく。
 どうやら機嫌がそこまでよくないらしい。

「あいつなら、今配信してると思うよ」

「はい? 配信・・・?」

 あまりに予想の斜め上の言葉にゲントは思わずびっくりする。

「え、嘘だよね? その歳で配信も知らないってことないでしょ?」

 ルルムは首をかしげるが、日本からやって来たゲントには、もちろんピンと来るものがあった。

(配信ってあれだよな。yo〇tubeとか動画サイトの・・・あの配信ってこと?)

 それから詳しくレモンの話を聞けば、当たらずといえども遠からずといったところだった。
 なんでも『交信の書』の魔法を使って配信ができるらしい。

 以下が主要な伝達魔法のようだ。

==================================

[魔法名]
接続アクセス

[魔法レベル/属性]
レベル1/無-伝達

[必要MQ]
40以上

[魔力消費]
5

[効果]
指定したチャンネルに接続し、配信を視聴することができる。
発動者のMQが高ければ高いほど接続時間が長くなる。(最大120分)

==================================

[魔法名]
交信コンタクト

[魔法レベル/属性]
レベル3/無-伝達

[必要MQ]
50以上

[魔力消費]
30

[効果]
指定したチャンネルに接続し、会話することができる。
発動者のMQが高ければ高いほど接続時間が長くなる。(最大60分)

==================================

[魔法名]
配信ストリーミング

[魔法レベル/属性]
レベル5/無-伝達

[必要MQ]
60以上

[魔力消費]
60

[効果]
チャンネルを媒体として配信することができる。
発動者のMQが高ければ高いほど配信時間が長くなる。(最大150分)

==================================

 『交信の書』に記された伝達魔法は、一番気軽に使える魔法のようで、日常的に多くの者が使っているのだという。

 たとえば〈配信〉の魔法の場合、光のパネルを通じて配信を行うことができるようだ。

 通常、光のパネルは無色透明だが、配信を行う場合は赤色に、視聴する場合は青色に輝くらしい。

 「ひぇっ~。魔法でそんなこともできちゃんですかっ!?」

 驚くルルムとはべつの意味でゲントも驚いていた。

(まさかこの異世界でyo〇tubeと似たような文化が根づいてるなんて)

 想像していた〝剣と魔法の世界〟のイメージからはかなりかけ離れるため、それを理解するのにゲントはしばらく時間がかかった。



 レモンは肩にかけた魔弾銃を構えると、ダンジョンの通路を歩きながら口にする。

「この前はきちんと話さなかったけどさ。あいつは王選候補者なんだよね」

「王選候補者?」

「はい? ちょっと・・・王選も知らないなんてことある? あなた本当にロザリア国民なの?」

「すみません。情報にはいろいろと疎くて」

 呆れるレモンだったが、律儀にもこれについてもゲントに詳しく説明をする。

 ちょうど1年ほど前からここロザリアでは、王女に相応しい次期国王を決めるために王立選挙が開催されているのだという。

「・・・ということは、今ロザリアでは国王さまは不在なんですか?」

「あなたホントに大丈夫そ? こんなの、説明するまでもなく国民の常識じゃん」

 もはや開いた口が塞がらないといった様子のレモン。
 なんでも今は、王女であるマルシル姫が国王代理を務めているのだという。
 
「ふぇぇ・・・。お姫様が王様の代理を務めてるなんてすごいですぅ~・・・」

「王選候補者はぜんぶで5人ね? 週に何度か『交信の書』を使って、国民に自身をアピールする生配信を行ってるんだよ」

「生配信ですか」

「配信の内容はいろいろかな。ダンジョンの攻略だったり、日常のルーティン紹介だったり、雑談だったり、質問を受け付けたり・・・。なんでもありって感じ」

 国民は『交信の書』を使って、王選候補者たちのチャンネルにアクセスし、生配信を確認することができるようだ。

「だから今日も配信してるんでしょ? どーでもいい雑談とかね」

「へぇ」

 配信の内容はまんまyo〇tubeのそれと同じだ。

 ほとんどもといた世界と変わらないことをしているため、ここは本当に異世界なのかとゲントは変な錯覚に囚われてしまう。

「でもすごいですねっ~! バヌーさん、このまま王様になっちゃうんですかっ!? ひぇぇ~!?」

 ルルムと同じようにゲントも感心していた。

(たしかにすごい・・・。王選に立候補してて今1位だなんて)

 レモンによれば、バヌーは中間発表の結果、現在候補者の中で1位なのだという。

 本来ならば仲間を祝福すべきところのはずだが、レモンの言葉の節々には棘のようなものが含まれていた。

「ほかのおふたりはどうしたんでしょうか? ジョネスさんとアウラさんでしたっけ?」

「あいつらはバヌーの犬だから」

「え?」

「とにかく・・・。今日はウチとあなたの2人だけ。ぜったい足手まといにだけはならないでよ?」

「わかりました。よろしくお願いします」

 なにかパーティーの中で事情があるのかもしれない。

 そう察知したゲントはそれ以上は深く詮索せず、レモンのあとについて行くのだった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。 だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。 一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

処理中です...