女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ

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第2章

16話

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「とにかく皆さんがご無事でよかったです」

「まぁ、それはそうなんだけど・・・」

 レモンと少し話をしていたゲントは、そろそろこの場から切り上げようとする。
 
 彼女は明らかに不審な目を向けていた。
 長く留まっていたらいろいろと詮索されかねない、とゲントは思う。

「それでは、自分はこのあたりで失礼させていただきます。皆さんお元気で」

 頭を下げて、ゲントが立ち去ろうとしていると。

「ちょっと待てよ。おっさん」

 少し離れた場所に移っていたバヌーが嫌らしい笑みを浮かべながら戻ってきた。

「いや~。いろいろと疑って悪かったな!」

「いえ」

「さっきのあんたの言葉、信じることにしたぜ。魔境を消し去ったっていうアレだよぉ」

 なにか心境の変化があったのか。
 バヌーは先ほどまでとは別人のようにフランクとなっていた。

「信じていただけたのでしたら、こちらとしても嬉しい限りです」

「ダンジョンが消えて無くなっちまう様子もこの目で見たしな。おっさん、あんたその冴えない見かけによらず、すげぇーんだな!」

 ここでバヌーは、自分たちがここまでやって来た経緯を簡単に口にする。

「ええぇっ~!? 領主の息子さんなんですかっ!?」

 その話を聞いてルルムが驚きの声を上げる。
 ゲントも同じように驚いていた。

 なんでもバヌーはエンペルト領主の子息であり後継者なのだという。

「すみません。こっちもなんかぶしつけなことを言ってしまって」

「へっへっへ、気にすんなって。領主の息子なんざ、おっさんの偉業に比べたら大したことじゃねーって」

 そこでジョネスも話に加わってくる。
 
「俺たち[ヘルファングの煉旗]は、エンペルトの冒険者ギルドからクエストを受注して『フルゥーヴ伝承洞』までやって来たんだ。それで、そっちはなんでこのダンジョンに入ってたんだ?」

「えっと・・・。こちらにもいろいろと事情がありまして」

「んだよぉ、ゲントのおっさん! ここで会ったのもなにかの縁じゃねーか。水臭せーって、ちゃんと話せよぉ~」

 親子ほどの歳が離れているにもかかわらず、まるで仲のいい友人のように背中をボンボンと叩いてバヌーは豪快に笑う。

 本当にさっきまでとは別人だった。

 その笑顔を見て、ゲントは彼ら若者になら話してもいいかもしれないと思った。

「・・・実は、お金に困っておりまして・・・」

「金だぁ?」

「恥ずかしい話ですが、今日食べる分のお金もないのが現状なんです」

「うううっ~~。そう考えると、急にお腹が空いてきちゃいましたぁぁ・・・」

 ルルムがお腹をかかえてくるくると宙でまわる。

 そんなサキュバスの少女のためにも。
 一刻も早くギルドに報告しに行かなければ、とゲントは思った。

「だからすみません。ちょっと急いでおりますので。このあたりで失礼させていただきます」

 サラリーマンとしての癖がまだ抜けないのか。
 ゲントは律儀にも深々と頭を下げると、足早にこの場をあとにしようとする。

 が。

「んだよ! んなことなのか、ハハハッ!」

 豪快に笑うバヌーにがしっと肩を掴まれてしまう。

「金ねぇ~。そっかそっか。金がねぇーんだなぁ? 気に入ったぜ、おっさん! ならよ、オレサマがあんたを雇ってやる!」

「はい?」

「どうせ、エコーズのギルドへ寄ってこの件を報告しようってんだろぉ? やめとけやめとけ~。ギルドの職員なんざ、野良の足元しか見ねぇーんだから。特にあそこの連中はサイアクだ。よくて日銭を貰える程度。それでおしまいさ」

「そうなんですか?」

「オレサマを誰だと思ってる? 領主の息子だぞぉ? 隣領の情報なんざいくらでも入ってくる。テラスタルなんて、どこもろくでもねぇー町ばかりだからな。ハハハッ!」

「・・・」

 そんな風に流暢に話すバヌーに目を向けつつ、レモンは唇を薄く噛む。
 どこか歯痒い表情を浮かべながら。

「オレサマならあんたにきちんと報酬を払うことができる。衣食住くらいは保証してやるぜ?」

「え、本当ですか?」

「もちろんさ。その代わりだ。あんたの力を少し貸してもらいたい。悪いが、あんたみたいな加齢のおっさんを雇ってくれる場所なんざ、どこ探してもねぇーだろうよ。だから野良なんてもんやってんだろ?」

「はい。仰るとおりです」

「野良なんかやってちまちまと日銭稼ぐよりも、オレサマに雇ってもらった方が何兆倍もいいと思うぜぇ?」

「すみません・・・。ちょっとだけ考えてもいいでしょうか?」

「おうおう! よ~く考えろや! ハハハッ!」



 ゲントは断りを入れると少し離れた場所でしばしの間考える。

 たしかにバヌーが言うとおり、このまま冒険者ギルドへ報告に行っても高報酬を貰えるとは限らなかった。

 それどころか、ダンジョンひとつ消し去ったと報告しても相手にされない可能性がある。
 あの受付嬢の態度から考えればわかることだった。

 とすれば。
 
 ここでバヌーの提案を受け入れる方が賢明だ、とゲントは思う。

 もとの世界へ戻るためにも、どうしても100万yenは稼いでおかなければならない。

(それに。今の自分にできることは戦うことしかないんだし)

 冒険者としてやっていけない以上、どんな形であれ、報酬を貰いながら生活できるというのは魅力的な提案だった。

「マスター? どうされます~?」

「バヌーさんの話、受けてみようと思う」

「おぉぉぉっ~~! ではマスターは今日から[ヘルファングの煉旗]の一員ですねっ~~♪」

「そういうことになるのかな?」



 そのあと。
 ゲントはバヌーたちのもとへ戻ると、提案を受け入れたいという旨を伝えた。

「ハッ! さすがオレサマが見込んだおっさんだ! あんたの選択は正しい! これからはオレサマがあんたの面倒を見てやるよ! 心配すんな」

「すみません、助かります。これからよろしくお願いします」

 ゲントが頭を下げると、バヌーは満足そうに高笑いを浮かべた。

 それからゲントは、次回に会う約束を決め、いったんバヌーたちと別れる。
 どうやら彼らはこのままエンペルト領まで戻るようだ。

 4人の若者たちの背中が見えなくなるまで、ゲントはルルムとともに手を振って見送った。

 しばらくしてルルムが嬉しそうに口にする。

「実はいい人たちでしたねっ~! 皆さんちょっとお顔と言動は怖いですけどぉ・・・。でもでも! あんな風にマスターを受け入れてくれるなんて、エコーズの人たちとは大違いですっ!」

「そんなこと言っちゃいけないよ。でも・・・うん。たしかにいい人たちだね」

 前払いの報酬としてゲントはバヌーから金貨を受け取っていた。
 これでしばらくの間、衣食住の心配はなくなる。

 彼らと会ったことは本当に偶然だったのだが。

 出会えてよかったと、ゲントは心から思うのだった。



 ***



 ――バヌーSIDE――

 その帰り道。

 [ヘルファングの煉旗]一行は盛り上がりながら歩いていた。

「ハハハッ~! まさかあんなバカでマヌケなおっさんがいるなんてなぁ!」

「違いねぇ、あれはめちゃくちゃ利用できるぜ」

「アタイらもこれからずいぶん楽できそうだよ。フフフ・・・」

 そんな風に面白おかしそうに話しながら歩く3人。

 だが。
 ひとりだけ複雑な表情を浮かべる者の姿があった。

 一歩下がるようにして歩いていたレモンがバヌーに声をかける。

「・・・ねぇ・・・。ホントのこと、言わなくてよかったのかな?」

「あん?」

「だって・・・王選のこと。あのおじさんにぜんぜん伝えてなかったじゃん?」

「んなもん、べつに言う必要なんかねぇーだろが。こっちは先に金払ってんだよ。あのおっさんには報酬分働いてもらうだけだ」

「報酬分って・・・。あんな金貨3枚で?」

「あん!? てめーレモンぁ! オレサマになんか文句でもあんのかよ!? ガキどもがどーなってもいいってかぁ!?」

「も、文句ってわけじゃないよ・・・」

 バヌーの気迫に押されてレモンは黙り込んでしまう。

「けっけっけ。さすがバヌー! 口の上手さはロザリアで一番だな」

「たしかにねぇ~。あのオヤジなんか心から信じてる様子だったもんな。よくて日銭を貰える程度だって? ダンジョンひとつ消し去ったなんて国家勲章もんでしょうに。バヌーも人が悪いわ」

 ジョネスもアウラもおかしそうに笑う。

「あのおっさん、自分の実力がわかってねーみたいだったからなぁ。まあ、こうなれば利用してやるさ。オレサマが国王になるまでの間、とことんな! 用が済んだら社会的身分ごと抹殺しちまうから関係ねぇーし! ハハハッ~!」

 バカ正直に話すゲントを見て、バヌーはさらに利用できると感じていた。

「・・・」

 その盛り上がりに参加することもできず。

 レモンはどこか悔しそうに拳を握り締めるのだった。
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