女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ

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第2章

5話

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 その夜。

 まだ出発にはだいぶ時間が早い。

 ぎゅるるる~~。

 その時、2人はあまりの空腹で目が覚めてしまう。

「ううぅっ~~。お腹がすきましたぁぁ・・・。ぜんぜん眠れません・・・」

「うん。たしかに・・・眠れない」

 ルルムは目をぐるぐるとさせていた。
 ゲントも似たような状態だ。

 マジックポーチの中に手を突っ込んでみるも、2人が食べられそうなものはなにもない。
 ほとんどが戦闘用のアイテムばかり。

(マズい・・・。このままだとダンジョンの攻略どころじゃない)

 たとえアビリティがギガ盛りの状態であったとしても空腹には抗えなかったようだ。
 このままでは『フルゥーヴ伝承洞』へ辿り着く前に、2人ともお腹が空いて倒れてしまう。



 そう思ったゲントは、ルルムを連れて納屋を出ると、近くの農場までやって来た。
 昼間はあれだけ店の物を取ってはいけないと注意したわけだが・・・。

(ごめんなさい。この恩はいつかぜったいに返しますから)

 ゲントは手を合わせると、その場にある農作物をいくつか盗んでしまう。 
 逃げるようにしてその場をあとにする。



 ***



 小腹を満たした2人は近くで軽く仮眠を取ると、夜明け前には起床して『フルゥーヴ伝承洞』へと向かった。

 ルルムに一度魔剣の姿になってもらうと、ゲントはそれを所持しながら《天駆》の力を駆使し、ほとんど一瞬のうちにして目的地へと到着する。

「すごいですぅっ~マスター! あっという間に着いちゃいましたっ!」

「ここからまたよろしくね」

「もちろんですっ~! お腹もいっぱいで元気チャージ済みですっ♪」

「うん。あとで農家の方にきちんと謝りに行こう」



 それから。
 小高い丘を下りて少し進むと、ダンジョンの入口が見えてくる。

 そこには石碑が立てられていた。

「『フルゥーヴ伝承洞』って書かれてますねっ?」

「うん。ここで間違いないみたいだけど」

 ふと石碑の隣りに目がいく。
 急遽、備えつけられたような注意書きの看板が置かれていた。

 〝要注意! このダンジョンのモンスターは攻撃魔法を使ってきます!〟

「ん?」

 その看板を見てゲントはある違和感を抱く。

「あれぇ・・・? なんかおかしくないですかぁ?」

 ルルムも矛盾に気づいたようだ。

「魔法は、魔力総量の高い方に発動の優先権プライオリティがいくって話ですよねぇ?」

「たしかにそうだね」

 ポーション店の主人によれば、ここ『フルゥーヴ伝承洞』では、冒険者は魔法が一切使えなくなるという話だった。
 つまり、この周辺にいる魔力総量の高い者が魔法の発動を承認していないということだ。

(なら、モンスターも自然と魔法が制限されるはずなんだけど)

 そもそもの話。
 モンスターが魔法を使ってくるというのはかなりの異常事態と言える。

 なぜなら、どの国でも領主は、モンスターに対して魔法の発動許可を行っていないためだ。
 逆に冒険者に対しては承認している。

 だからこそこれまで冒険者たちは、ダンジョンのモンスターを安全に倒すことができてきたわけだ。

(昨日戦ったモンスターの中には、攻撃魔法を使ってくる敵もいたけど・・・。それはあの場所が魔境だったからだよな)

 誰の優先権も届かない無法地帯の魔境とは異なり、五ノ国ではしっかりと魔導書の承認否認の管理が行われている、というのがフェルンの話だ。

「この注意書きが間違ってるんでしょうか・・・? どーゆうことでしょうぅっ??」

「うーん。もしくは・・・優先権を持つ者がモンスターにだけ魔法の発動を承認してるとか」

「ええぇっ!? なんでそんなことするんですかぁ?」

「ただの仮説だよ。実際に入って確認してみよう」

「わ、わかりましたぁ~~!!」

 とにかく・・・とゲントは思う。

 領主が承認していないこの状況下でモンスターが魔法を使ってくるのだとすれば、考えられる可能性は限られていた。

(叡智の占領者か。いったい何者なんだ)

 それからすぐ。
 ゲントはルルムとともにダンジョンの入口へと足を踏み入れる。



 ***



 ――フルゥーヴ伝承洞 第1層――

 階段を下っていくと、水晶に囲まれた通路が続いていた。
 無限界廊で見てまわったダンジョンとは違い、内部はかなりひんやりとしている。

 ただ、ダンジョン自体はもう慣れたものだった。

(だいたい似たような構造になってるんだな)

 ふとゲントの頭に浮かぶのは、学生の頃よく遊んだ不思議のダンジョンというゲームだ。

 無限界廊へと飛ばされた時は、ダンジョンの中に自分が入っているという興奮が少なからずゲントにはあったわけだが・・・。
 実際にモンスターを倒しながら進んでいくというのは、予想以上にしんどい作業であるということがわかった。

 それに今日は隣りにフェルンがいない。
 なにかわからないことがあっても、もう気軽に質問することもできない。

 彼女がいたことでどれだけ心強かったか。
 ゲントは改めてフェルンの存在が大きかったことを認識した。

「マスター! いよいよですねっ♪」

 その時、ルルムが嬉しそうに羽をぱたぱたとさせながら近寄ってくる。

「? どうされました?」

「ううん。今日もよろしくね」

「はいっ☆」

(そうだ・・・。今の自分はべつに1人ってわけじゃない)

 ルルムが側にいてくれるのだから。

 この心優しいサキュバスの少女は、こんな冴えないアラフォー男に対して、無償の愛を注いでくれている。
 ルルムと一緒ならこの先なんだってできそうだ、とゲントは思った。
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