女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ

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第1章

25話

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 翌日。

「う~ん。気持ちのいい朝だ」

「ですです♪」

 隣りでルルムは羽をぱたぱたとさせて宙で一回転する。

 もとの体に戻れて嬉しかったのだろう。
 宿屋のベッドではぐっすりと眠っていた。

(こっちはルルムが添い寝してきて、気になって仕方なかったけどね)

 さすがにいい歳したおっさんで分別をわきまえているとはいえ、こんな風に肌を露出させた少女が常に隣にいるという状況はどうにも落ち着かない、とゲントは思う。

(まぁ、これも慣れの問題かな)

 そのあとすぐに。
 宿屋の支払いを済ませたフェルンが降りてくる。

「なんかすみません。宿代まで出していただいて」

「とんでもないさ。これくらい当然のことだよ」

「すみません。ありがとうございます」

 ゲントは深々と頭を下げた。
 これはサラリーマンとしての癖のようなものだ。

 そして、フェルンもう~ん!と伸びをする。
 頭上には気持ちのいい青空が広がっていた。

「昨日は暗くてよくわからなかったけど。どうやらここは『火の国ロザリア』みたいだね」

「そうなんですか?」

「あそこに国旗が掲げられているだろう?」

 フェルンが指さした方へ目を向けると、確かに真紅の旗が町の中でゆらゆらと揺れていた。

「火の国ロザリアっ!? なんか名前からしてかわいいです~♪」

 豊満なボディを揺らしてルルムは嬉しそうだ。

(ロザリアか。ってことは、『火の書』以外の属性魔法の使用は禁止されてるってことだな)

 ゲントもだんだんとこの異世界に馴染んできていた。
 自然とそんな風に考えることができていたからだ。

「さてと」

 そこで気を取り直すように、フェルンがパンパンと手を叩く。

「次はキミをもとの世界に帰さなければならないね」

「はい?」

「言っただろう? キミは私が責任をもって最後まで面倒を見るって。クロノだってニホンへ帰っていったわけだし。なにかかならず方法があるはずさ」

 そこでびくん!とルルムが体を震わせて反応する。

「ええぇっ!? マスターどこかへ帰っちゃうんですかぁ~~!?」

 「そんなのいやですぅ~~!!」と、駄々っ子のように銀色のツインテールを揺らしながらルルムがゲントに抱きつく。
 
 もはやそんなボディタッチにも慣れたゲントは、特に気にすることなく話を続けた。

「それなら心配しないでください。戻る方法ならもうわかってますので」

「え・・・そうなのかい?」

「こっちの世界で100万円集めれば、それでいいみたいなんです」

「100万yen? それを集めるだけでいいのかい?」

「はい。女神さまがそう仰ってましたから」

「な、なんだ・・・。それで帰れるんだ」

 思わず拍子抜けしたようにフェルンは声を漏らす。
 まさかそんなことで戻れるとはさすがに思っていなかったのだろう。

 そして、ゲントは抱きついたままのルルムに小さく声をかけた。

「マスターぁぁ~~・・・」

「今まで黙っててごめん。実は俺、この世界の人間じゃないんだよ」

「ふぇ・・・?」

「召喚されてフィフネルへやって来たんだ」

「召喚・・・? どーゆうことですかぁぁ・・・??」

 ルルムは首を傾げる。
 どうやらよくわかっていないようだ。

「とにかく心配しないで大丈夫。今はまだ帰らないから。というよりも帰れないからね」

「??」

「それにルルムのことも気になるし。当分の間はこっちの世界にいるつもりだよ」

「ううぅっ~! マスターぁ・・・!! ルルムのことを想って、そんな風に言ってくださるなんて・・・ぐすん・・・」

 とたんにしおらしくなり、ウルウルと涙をため込む。
 実に感情の変化に忙しいサキュバスだった。

「では、そのお金は私が出そう」

 マジックポーチから金貨の入った袋を取り出すフェルンだったが、それをゲントは手で制する。

「さすがにこれ以上、フェルンさんにご迷惑をおかけするわけにはいきません」

「でも・・・」

「気持ちだけありがたく受け取っておきます。それに昨日も伝えましたけど、俺がこの世界へやって来たのはフェルンさんのせいじゃないですから」

 ゲントが笑顔でそう口にすると、フェルンも頭をさすりながら恥ずかしそうに顔を赤くした。

「あはは・・・すまない。実は私もあまりお金は持ち合わせてなくてね・・・」

「宿代を出していただけただけでも本当に感謝しています。ですから、もう責任を感じないでください。フェルンさんは自分のすべきことをしてほしいです。それが俺の心からの願いですから」

「ゲント君・・・」

 きっぱりとゲントがそう言い切ると、フェルンはようやく納得したように頷いた。

「うん。わかったよ」

 黒いローブを振り払うと、フェルンは顔を上げて口にする。

「それじゃ・・・いったんここでお別れだ」

「はい」

「ええっ!? 今度はフェルンさんがどこか行っちゃうんですかぁ~~!?」

 ルルムはあいかわらずツッコミに忙しい。
 もちろん、彼女の姿はフェルンには視えていないわけだが。
 
「これからどうするんですか?」

「そうだね・・・。クロノを召喚するって目的はこれまでと変わらないかな。そのためにもまずは『風の国カンベル』にある五ノ国最大の魔法学院へ行こうと思ってる」

「魔法学院?」

「MQを高めるためには『学問の書』の魔法を使う必要があるってことは話したよね? 私の場合は独学で学んできたわけだけど、これは特殊な例なんだよ」

 フェルンの話によると、人々は10歳になると魔法学院へと通い、そこで『学問の書』を通じて魔法理論を学ぶのだという。
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