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5章
第69話 東京 その3
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そうこう話してるうちに。
(あれかな?)
事前に確認しておいた目印が目に入る。
『霞ケ関地下街メトロード』と掲げられた横看板の下には階段が続いてる。
ここで間違いなさそうだ。
「ありましたわ、優太さま。この先がクランの入口となりますわ」
なんでも。
ダンチューバーの事務所に所属してる都合上、陽子さんは何度か探索者クランに顔を出す機会があったようで。
行き方については熟知してるみたい。
そのまま陽子さんに案内してもらう形で。
ふたりで階段を降りる。
するとその途中に。
(ここか)
歪んだ渦状の空間が浮かんでいた。
次元の狭間だ。
これまでの間ずっと。
書斎の地下階段からダンジョンに潜ってきたから。
トビラを使ってダンジョンへ入るのは、今回がはじめてのことだったりする。
もちろん。
小さい頃からトビラ自体は何度か目にする機会があって。
危険だからここへはぜったい近づかないようにって。
父さんや母さんの言いつけを守ってたっけ。
(やっぱり日常の風景に溶け込んでるよね)
慌ただしく階段を行き来するサラリーマンやOLは、トビラには見向きもしない。
この地下街の真下には、非現実的な空間がどこまでも広がってて。
そこでは日夜。
探索者とエネミーによる熾烈な戦闘が繰り広げられてるってことも。
微塵も気にならない様子で、まわりの大人たちは日々を過ごしている。
(改めて考えると。けっこう歪な状況だなぁ)
15年前はダンジョンなんてものは一切存在しなかったわけで。
慣れって恐ろしい。
陽子さんと少し距離を取ると僕はトビラの前に立った。
「ここで大丈夫です」
「はい?」
「陽子さんは学校がありますよね? あとはひとりでたどり着けますんで」
「まだ朝のHRまでには時間がありますわ。せっかくですので、わたくしも中に――」
「ダンジョンに入っちゃうと、さすがに登校ギリギリになると思うんです。陽子さんには、こんなことで遅刻してほしくないんです。それに。このことがもし親父さんに知られたら大変ですし」
「それは・・・」
前回のことが頭によぎったのかもしれない。
ひょっとすると。
あのボディーガードの人たちの目を盗んで、ここまで来てるのかもしれなくて。
僕のことでこれ以上。
陽子さんに迷惑をかけるわけにはいかなかった。
「ここまで案内していただけただけでも本当に感謝してます。無事試験が終わったら、今度は僕の方からご挨拶に伺いますね」
笑顔でそう口にすると。
「わかりましたわ」
陽子さんは小さく頷いてくれる。
「ご成功を心よりお祈りしておりますわ。先ほどもお伝えしましたが、優太さまならぜったいライセンス試験を突破できると信じておりますわ♡ がんばってください♪」
「ありがとうございます。行ってきます」
こうして。
僕は陽子さんに見送られる形で、『霞ケ関ダンジョン』へと足を踏み入れた。
(あれかな?)
事前に確認しておいた目印が目に入る。
『霞ケ関地下街メトロード』と掲げられた横看板の下には階段が続いてる。
ここで間違いなさそうだ。
「ありましたわ、優太さま。この先がクランの入口となりますわ」
なんでも。
ダンチューバーの事務所に所属してる都合上、陽子さんは何度か探索者クランに顔を出す機会があったようで。
行き方については熟知してるみたい。
そのまま陽子さんに案内してもらう形で。
ふたりで階段を降りる。
するとその途中に。
(ここか)
歪んだ渦状の空間が浮かんでいた。
次元の狭間だ。
これまでの間ずっと。
書斎の地下階段からダンジョンに潜ってきたから。
トビラを使ってダンジョンへ入るのは、今回がはじめてのことだったりする。
もちろん。
小さい頃からトビラ自体は何度か目にする機会があって。
危険だからここへはぜったい近づかないようにって。
父さんや母さんの言いつけを守ってたっけ。
(やっぱり日常の風景に溶け込んでるよね)
慌ただしく階段を行き来するサラリーマンやOLは、トビラには見向きもしない。
この地下街の真下には、非現実的な空間がどこまでも広がってて。
そこでは日夜。
探索者とエネミーによる熾烈な戦闘が繰り広げられてるってことも。
微塵も気にならない様子で、まわりの大人たちは日々を過ごしている。
(改めて考えると。けっこう歪な状況だなぁ)
15年前はダンジョンなんてものは一切存在しなかったわけで。
慣れって恐ろしい。
陽子さんと少し距離を取ると僕はトビラの前に立った。
「ここで大丈夫です」
「はい?」
「陽子さんは学校がありますよね? あとはひとりでたどり着けますんで」
「まだ朝のHRまでには時間がありますわ。せっかくですので、わたくしも中に――」
「ダンジョンに入っちゃうと、さすがに登校ギリギリになると思うんです。陽子さんには、こんなことで遅刻してほしくないんです。それに。このことがもし親父さんに知られたら大変ですし」
「それは・・・」
前回のことが頭によぎったのかもしれない。
ひょっとすると。
あのボディーガードの人たちの目を盗んで、ここまで来てるのかもしれなくて。
僕のことでこれ以上。
陽子さんに迷惑をかけるわけにはいかなかった。
「ここまで案内していただけただけでも本当に感謝してます。無事試験が終わったら、今度は僕の方からご挨拶に伺いますね」
笑顔でそう口にすると。
「わかりましたわ」
陽子さんは小さく頷いてくれる。
「ご成功を心よりお祈りしておりますわ。先ほどもお伝えしましたが、優太さまならぜったいライセンス試験を突破できると信じておりますわ♡ がんばってください♪」
「ありがとうございます。行ってきます」
こうして。
僕は陽子さんに見送られる形で、『霞ケ関ダンジョン』へと足を踏み入れた。
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