底辺ダンチューバーさん、お嬢様系アイドル配信者を助けたら大バズりしてしまう ~人類未踏の最難関ダンジョンも楽々攻略しちゃいます〜

サイダーボウイ

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3章

第45話 自宅 その2

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「どちらさまでしょう?」

 ドアを開けると、そこには。

(え)

 サングラスをかけたスーツの男性がふたり立ってた。

 どちらも身長は180cm以上。

 スーツ越しからでもその屈強さが伝わってくる。
 たぶん相当鍛えてるんだろう。

「国崎さまのご自宅でよろしかったでしょうか?」

「そうですけど」

「こちらにお嬢さまがお邪魔してると思うのですが、いらっしゃいますか?」

「お嬢さま?」

 僕が不思議に思ってると。

 「あっ」と、小さな声が廊下から漏れ聞こえる。
 陽子さんだ。 

 様子が気になって、リビングから出て来たのかもしれない。

「陽子お嬢さま。やはりこちらにいらっしゃいましたか」
「どうぞこちらへ」

 もうひとりの男性がうしろで手招くと。
 陽子さんは観念したように玄関までやって来る。

「どうして・・・。ここがわかったんですの?」

「申し訳ございません。スマートフォンの位置情報を開示させていただきました」
「旦那さまの許可は得ております」

 サングラスの人たちがそれぞれ口にすると。
 陽子さんは、あからさまに落胆したみたいに肩を落とす。

 ひょっとすると、以前にもこんなことがあったのかも。

「っ、ひどいですわ、お父さまも。これではプライバシーもなにも、あったものではありませんのにっ」

「それだけ旦那さまが心配されているということです」

「あの、陽子さん。この人たちは?」

「・・・お父さまのボディーガードの方たちですわ」

 どこか悔しそうに。
 言葉を絞り出す陽子さん。

「今日は優太さまのご自宅にお泊りできると、楽しみにしておりましたのに~!」

「それは認められません」
「旦那さまには、早急に戻すように言われておりますので」

「嫌ですわっ」

「そうですか。でしたら、少し強引にでも連れ帰らせていただきます」

 ボディーガードの人たちが家に上がって来ようとする。

「追い返しましょうか?」

 小声で陽子さんに声をかけつつ。
 僕はズボンのポケットに手を入れる。

 中にはひとつ。
 武器ウェポン遺物キューブが入ってた。

 これは、帰り際ダンジョンで拾ったもので――。



 基本的に。
 ダンジョンの中で拾ったキューブは、地上へ持ち帰れないって言われてる。

 でも、どういうわけか。
 僕には持ち帰ることができた。

 用心のため、帰り際に拾ったキューブはいつも持ち帰ることにしてて。

 それで。
 これがいちばん重要なんだけど。

(持ち帰ったキューブは、ここ地上でも同じような効果として使うことができるんだよね)

 これを知った時はさすがに驚いたな。
 実際に試してみたからまず間違いない。

 だから。
 ちょっと卑怯な手だけど。

 屈強な男の人たちを引き下がらせることも、今の僕には十分可能だった。



 だけど、陽子さんは首を横に振る。

「・・・いえ。本音を言えば残っていたいですけど。これ以上、優太さまにご迷惑をおかけするわけにはいきませんので」

「ですが」

「いいんですの。なんとなくこうなるってわかっておりましたから」

 そこでパッと明るく笑顔を見せると。
 陽子さんは、ボディーガードの人たちに少しだけ待つようにお願いする。

「優太さま。本日はどうもありがとう存じますわ。とても楽しかったですわ♪ またぜひ、わたくしとおコラボしていただけますかしら?」

「それはもちろん構わないんですけど。陽子さん、本当にこれでいいんですか?」

 きっと。
 まだ実家には戻りたくないはず。

 家族の問題に口出せる立場じゃないけど。

(子供の言葉も聞かず、強引に連れ帰ろうとするなんて・・・さすがに間違ってるよ)

「ご心配いただき感謝ですわ。ですが、わたくしなら問題ございませんわ。ダンチューバーを続けたいって思いは、この先もずっと変わりませんし。お父さまには、わたくしの気持ちをイヤってほどお伝えし続け、ぜっ~たいわかってもらいますから♪」

 どこか力強く。
 陽子さんはそう宣言する。

「またどこかでかならずお逢いしましょう♡ ごきげんよう、優太さま」

 深々と頭を下げると。
 陽子さんはサングラスの人たちと一緒に立ち去ってしまった。





「陽子さん。行っちゃったんですね」

「・・・」

「大丈夫ですよ、お兄さま。陽子さんがおっしゃってたように、かならずまたどこかで再会できますから」

「うん。そうだね」

 せっかく仲良くなれたから。
 ちょっと寂しさも感じたけど。

 紫月にそう言ってもらえると、きちんと納得することができた。

 6月の夜風が吹き抜ける。

 もうすぐ初夏だ。

 近いうちにぜったい。
 また陽子さんと会いたいな。
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