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3章

第44話 自宅 その1

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「そういえば陽子さん。お腹の具合大丈夫ですか?」

「ふぇ? あっーー! 思い出したら急にお腹が空いてきましたわぁ~~!?」

「そういうことでしたら、ご一緒にお食事いかがでしょうか? お兄さまの分と一緒に、実は陽子さんの分も作ってましたので」

「えっ、よろしいんですのっ!?」

「もちろんです♪」

「そうですね。ぜひ食べて行ってください」

「おふたりとも、誠にありがとう存じますわぁっ! では、お言葉に甘えさせていただきますわ♡」

「どうぞこちらへ」



 ◇◇◇



 そのあと。
 3人でわいわいと食事した。

 その間、紫月しづきは楽しそうに陽子さんにあれこれと質問してた。

 思い返してみると。
 こうして誰かを交えて食事したのは何年ぶりだろう。

 両親を交通事故で失ってから。
 僕らはずっとふたりで暮らしてきた。

(久しぶりだよね)

 なんかとても温かい気持ちになる。
 紫月が嬉しそうでほんとよかった。



「ふぅ~。美味しゅうございました。紫月さん、とても素晴らしいご夕食をご馳走いただき、ありがとうございましたわ♪」

「お口に合ったようでなによりです。ふだんはおうちでとても豪華な料理を食べられてると思うので、実は緊張してたんですよ」

「なにをおっしゃいますの! うちのシェフが作るディナーなんかより、100倍は美味しかったですわ♪ なによりこちらのご夕食からは温かな愛情を感じましたの、わたくし♡」

 そんな風に盛り上がってると。

 かーん、かーん。

 時計が鳴る。
 時刻は19時を指してた。

「あら。もうこんなお時間ですわ」

「今日もホテルにお泊りなんですか?」

「いえ。本日はまだ予約しておりませんでして」

「明日は日曜日ですし。陽子さんさえよければ、今日はうちに泊まっていきませんか?」

「さすがにそこまでご厚意に甘えるわけには・・・」

「さっき紫月と話したんです。今から新幹線で東京に戻るってなると、遅くなっちゃうと思いますし」

「遠慮せずにどうぞ」

「優太さま、紫月さん・・・。お気持ちはとても嬉しいのですけれど」

 少しだけ表情を曇らせると。
 陽子さんは、静かに事情を説明してくれる。



 実はダンチューバーをやってることは、親父さんに反対されてるらしく。

 ここへ来るにあたっても。
 当てつけのように内緒で大屋敷を抜け出して来てしまったみたい。

「言えば、ぜったい反対されるに決まっておりましたので。どうしても、優太さまに直接お礼を伝えたかったんですの。ホテルもあのあと急遽予約しまして・・・。親にちゃんと断ってきたなんて嘘をついてしまって、本当に申し訳ございませんわ」

「なるほど。そうだったんですね」

 でも。
 そうまでして、僕に会いに来てくれたんだ。
 
(ぜんぜん陽子さんの気持ちわかってなかったな)

 今回のコラボ配信にしても。
 僕のペースでずっと振り回しちゃってたし。

 自分ひとりで突っ走りすぎちゃったなって、反省だ。

「ですがっ。まだお父さまのもとへは戻りたくありませんの。優太さまと紫月さんがご迷惑でなければ。また、ご厚意に預からせていただきたいのですが・・・いかがかしら?」

「もちろん大丈夫ですよ」

「ぜひ泊まっていってください。お兄さまも私も。その方が嬉しいので」

「! おふたりの優しさには感激ですわっ! あぁ、なんとお礼を申し上げればよろしいのでしょうっ。心から感謝いたしますわ♪」

 と、話がまとまったそんなタイミングで。


 ピンポーン。


 チャイムが鳴る。

(なんだろう?)

 こんな時間に誰か来る約束をした覚えはないんだけど。

 配達の人かな。

「すみません。少し席を外してもいいですか?」

「どうぞどうぞっ」

 陽子さんに断りを入れると。
 紫月にも声をかける。

「ちょっと見てくるよ」

「はい。よろしくお願いします、お兄さま」

 不思議に思いながらリビングを出て。
 そのまま玄関へ。
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