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2章
第27話 学校
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キンコーン、カンコーン。
(よし、終わった)
HRのチャイムが鳴ると同時に。
すばやく帰りの支度を済ませて席を立つ。
放課後。
それは学生にとってもっとも大事な時間。
部活に青春を捧げる者。
友人と楽しいひと時を過ごす者。
そんなクラスメイトの流れに逆らうようにして教室を出る。
今どき。
ダンジョン配信なんてものに勤しんでるのは相当な変わり者だ。
どういうわけか。
スタイルを所持できるのは高校生のみで。
ダンジョンに潜れるのは、基本的にこの3年間しかない。
だから本来なら、多くの高校生がダンジョンに入っててもおかしくないんだけど。
そうじゃないんだよね。
理由ははっきりしてる。
(ブームが去ったんだ)
突如として日本各地にダンジョンが出現した2013年。
あれからすでに15年の月日が流れてる。
当時、高校生の間で競うようにして流行ったダンジョンに潜るっていう行為は。
現在じゃ完全に廃れてしまっていた。
もちろん、理由もなくそうなったんじゃなくて。
いろいろな出来事や流れがあっての今なんだけど。
とにかく。
このご時世、ダンジョン配信に貴重な青春を捧げてる高校生は、めちゃくちゃマイノリティってことだ。
けど。
そんな僕でも、はじめて志を同じにする人と出会えた。
ちょっと恥ずかしい言葉だけど。
それはある意味、奇跡って呼べるのかも。
(陽子さんを待たせるわけにはいかないよね。急ごう)
グラウンドを早足で横切り。
僕は校門を駆け抜けた。
◇◇◇
その帰宅途中。
(ん?)
こっちに手を振る人影を見つける。
すぐに陽子さんだとわかった。
駆け足で近寄る。
「あぁ、優太さま。ごきげんよう。ちょうどよかったですわ~。今、優太さまのご自宅へ向かってる最中でしたの」
「すみません。お待たせしちゃって」
「とんでもございませんわ。今回のおコラボは、わたくしが無理にお願いしたものですから♪」
それからふたりで並んで歩きはじめる。
「時間大丈夫でした? 暇だったりしませんでしたか?」
「いえ。市街地をいろいろ見てまわっておりましたので。気づいたらもう放課後のお時間。あっという間でしたわ~。こちらは楽しんでおりましたので、お気になさらないでくださいな」
一応ダンチューバーである前に学生であるはずなんだけど。
陽子さんはまったく気にしてない様子。
補導とかされなくてひとまずホッとする。
こういう部分は、好奇心旺盛っていうか。
日本トップレベルのお嬢様学校に通ってる人とは思えない。
もちろんいい意味でだけど。
こんなにもまっすぐ言われちゃうと、僕も自然と笑顔になってしまう。
「それはよかったです」
「ホント素敵でしたわ~。見るものすべて新鮮ですし。新しい街の空気を吸いながら歩くのっていいですわね♪ 優太さまはこの街でお生まれになったんですの?」
「はい。東京とは違ってぜんぜん田舎だと思いますけど」
「そんなことございませんわ。わたくしの地元松濤とはまた違ったとても赴きある素敵な街だと思いますの。なんと言っても、空気がとても美味しいですわ♪ これは都会じゃぜったい味わえない良さなんですのよ? おほほほ」
どうやらこの街を陽子さんは気に入ってくれたみたい。
お世辞かもしれないけど。
それでもそう言ってもらえて嬉しかった。
「それで優太さま。本日はどちらのダンジョンへ? わたくしいろいろと調べましたの。なんでもT市には、3箇所ダンジョンがあるみたいですわね。ここから一番近いのは・・・尾張横須賀地下横断歩道から入れる『太田川ダンジョン』かしら?」
「そうですね。たしかに『太田川ダンジョン』が一番近いんですけど。今月はあるエリアを重点的に攻略してまして」
「あるエリア?」
そこで。
なにか気づいたように陽子さんが顔をハッとさせる。
「そういえば・・・。あの日はどうして『池袋ダンジョン』に潜ってらしたのかしら? ご旅行でたまたま東京にいらしてたとか?」
「・・・」
「でも、平日でしたから当然学校もありましたわよね?」
「えっと、そのあたりのことも。ついて来ていただければ、わかってもらえるはずです。それで大丈夫ですか?」
「? ええ、もちろんですわ。優太さまについて行きますわ♪」
「ありがとうございます。こっちです」
陽子さんをエスコートしながら。
僕は自宅の方面へ向けて歩みを進めた。
(よし、終わった)
HRのチャイムが鳴ると同時に。
すばやく帰りの支度を済ませて席を立つ。
放課後。
それは学生にとってもっとも大事な時間。
部活に青春を捧げる者。
友人と楽しいひと時を過ごす者。
そんなクラスメイトの流れに逆らうようにして教室を出る。
今どき。
ダンジョン配信なんてものに勤しんでるのは相当な変わり者だ。
どういうわけか。
スタイルを所持できるのは高校生のみで。
ダンジョンに潜れるのは、基本的にこの3年間しかない。
だから本来なら、多くの高校生がダンジョンに入っててもおかしくないんだけど。
そうじゃないんだよね。
理由ははっきりしてる。
(ブームが去ったんだ)
突如として日本各地にダンジョンが出現した2013年。
あれからすでに15年の月日が流れてる。
当時、高校生の間で競うようにして流行ったダンジョンに潜るっていう行為は。
現在じゃ完全に廃れてしまっていた。
もちろん、理由もなくそうなったんじゃなくて。
いろいろな出来事や流れがあっての今なんだけど。
とにかく。
このご時世、ダンジョン配信に貴重な青春を捧げてる高校生は、めちゃくちゃマイノリティってことだ。
けど。
そんな僕でも、はじめて志を同じにする人と出会えた。
ちょっと恥ずかしい言葉だけど。
それはある意味、奇跡って呼べるのかも。
(陽子さんを待たせるわけにはいかないよね。急ごう)
グラウンドを早足で横切り。
僕は校門を駆け抜けた。
◇◇◇
その帰宅途中。
(ん?)
こっちに手を振る人影を見つける。
すぐに陽子さんだとわかった。
駆け足で近寄る。
「あぁ、優太さま。ごきげんよう。ちょうどよかったですわ~。今、優太さまのご自宅へ向かってる最中でしたの」
「すみません。お待たせしちゃって」
「とんでもございませんわ。今回のおコラボは、わたくしが無理にお願いしたものですから♪」
それからふたりで並んで歩きはじめる。
「時間大丈夫でした? 暇だったりしませんでしたか?」
「いえ。市街地をいろいろ見てまわっておりましたので。気づいたらもう放課後のお時間。あっという間でしたわ~。こちらは楽しんでおりましたので、お気になさらないでくださいな」
一応ダンチューバーである前に学生であるはずなんだけど。
陽子さんはまったく気にしてない様子。
補導とかされなくてひとまずホッとする。
こういう部分は、好奇心旺盛っていうか。
日本トップレベルのお嬢様学校に通ってる人とは思えない。
もちろんいい意味でだけど。
こんなにもまっすぐ言われちゃうと、僕も自然と笑顔になってしまう。
「それはよかったです」
「ホント素敵でしたわ~。見るものすべて新鮮ですし。新しい街の空気を吸いながら歩くのっていいですわね♪ 優太さまはこの街でお生まれになったんですの?」
「はい。東京とは違ってぜんぜん田舎だと思いますけど」
「そんなことございませんわ。わたくしの地元松濤とはまた違ったとても赴きある素敵な街だと思いますの。なんと言っても、空気がとても美味しいですわ♪ これは都会じゃぜったい味わえない良さなんですのよ? おほほほ」
どうやらこの街を陽子さんは気に入ってくれたみたい。
お世辞かもしれないけど。
それでもそう言ってもらえて嬉しかった。
「それで優太さま。本日はどちらのダンジョンへ? わたくしいろいろと調べましたの。なんでもT市には、3箇所ダンジョンがあるみたいですわね。ここから一番近いのは・・・尾張横須賀地下横断歩道から入れる『太田川ダンジョン』かしら?」
「そうですね。たしかに『太田川ダンジョン』が一番近いんですけど。今月はあるエリアを重点的に攻略してまして」
「あるエリア?」
そこで。
なにか気づいたように陽子さんが顔をハッとさせる。
「そういえば・・・。あの日はどうして『池袋ダンジョン』に潜ってらしたのかしら? ご旅行でたまたま東京にいらしてたとか?」
「・・・」
「でも、平日でしたから当然学校もありましたわよね?」
「えっと、そのあたりのことも。ついて来ていただければ、わかってもらえるはずです。それで大丈夫ですか?」
「? ええ、もちろんですわ。優太さまについて行きますわ♪」
「ありがとうございます。こっちです」
陽子さんをエスコートしながら。
僕は自宅の方面へ向けて歩みを進めた。
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