66 / 81
3章
第1話
しおりを挟む「…………ん」
気付くと俺――レオ・アレフは真っ白な空間に体を漂わせていた。
(どこだここは?)
眼下には色鮮やかな庭園が広がり、その中央には可愛らしいモルタルの小屋が見える。
こじんまりとした噴水もあって小屋の近くには花柄のガーデンテーブルが置かれていた。
こんなメルヘンチックな場所は知らないぞ。
「よっと」
どうやら自由に降りることができたらしい。
地面に足をつけると一度辺りを見渡してみる。
(空が見えないな。庭園の奥は真っ白な空間が続いてるだけだ。一体どうなってるんだ?)
魔王を倒して世界を救ったから、これから仲間たちと田舎でスローライフを送るつもりだったんだが。
そんなことを考えているとどこからともなく声が聞えてくる。
「ほぅ、目覚めるのも早かったのぅ~。さすがは最強の勇者レオじゃ!」
それは幼い女の子の声だった。
「誰だ?」
辺りを見渡しても誰の姿も見えない。
シュポン!
すると、突然白煙が上がったかと思うと、真っ白な聖衣を羽織った幼女が宙に姿を見せる。
「歓迎するぞぉ~。よくぞ我ら神族が暮らす地へとやって来たのぅ~♪」
宙でくるりと回転して幼女がぱちぱちと拍手する。
なんだこいつは……。
(神族とか言ってたが)
こんな小さな女の子が神様だとでも言うのか?
幼女はショートツインテールのピンク色の髪を嬉しそうに揺らしながらそのまま地面へと降り立つ。
こんな幼い容姿のくせに下は際どいミニスカートをはいていたから降りてくれて助かった。
パンツを覗いたとかあらぬ罪で責められたくないからな。
「やはり相当な色男じゃな! 其方がさまざまな女子から言い寄られてきた理由もこれで納得じゃ~」
「というかあんた何者だ? なんで俺のことを知ってる?」
「妾は女神だからじゃ」
「女神? ただのガキにしか見えないんだが」
俺が想像していたナイスバディの女神と180度違ったから思わずつっこんでしまう。
「なにぃ~!? 妾はガキなんかじゃないぞぉーー! こう見えても其方たち人族には想像もつかないくらい長い年月を生きておるのだからのぅ~! なかなか失礼なヤツじゃ~!」
ロリ女神は頬を膨らませてぷりぷりと怒り出す。
そういうところが子供っぽいんだが……まあいいか。
実際は6~7歳にしか見えなくても俺よりも長く生きているんだろうし。
(こんなわけの分からん空間に突然現れたわけだからな。こいつの言うことを信じてみるか)
「それで。なんで俺はこんなところにいる?」
少なくとも俺は自分の意思でここへ来た覚えはない。
「それは妾が其方をこの上位界へと召喚したからじゃ! 其方の活躍はすべて見ておったぞぉ~」
「上位界?」
「便宜上そう言ってるだけじゃ。我ら神族が暮らす地のことを指す。そいで其方らが暮らす並列異世界を下位界と呼んでおる」
ちょっと待て。
一気によく分からない単語が出てきたぞ?
なんだ? 並列異世界って。
「さすがの其方でも混乱している様子じゃな」
「ああ。できれば一から説明してくれ」
「うむ。ではそのテーブルにつくのじゃ。そこで詳しく説明するぞ~」
◇◇◇
ロリ女神がパチンと指をはじくとテーブルの上にティーカップとポットが現れる。
カップに紅茶を注ぎながら幼女は自己紹介をした。
「妾の名はシルル・ティターン・オリュンポス。12柱神のうちの1人じゃ。主に勇者のスカウトを担当しておる」
「急にそれっぽい設定が出てきたな」
「だから妾は本当に女神なのじゃ~~!」
椅子の上で手足をバタバタとさせて訴える姿はやっぱり子供にしか見えない。
「じゃが妾を前にしても臆することのないその度胸は気に入ったぞぉ~! さすがは妾が見込んだ男だけのことはあるのぅ~!」
よく分からないがどうやら幼女に気に入られてしまったらしい。
「長い名じゃから今後はシルルと呼ぶがいい」
「分かった」
次は俺の番だな。
「俺の名前はレオ・アレフだ。勇者として魔王を倒して世界を救った。……と言っても、どうせあんたは全部知っているんだろ?」
「うむ。それだけじゃないぞぉ? 其方が並列異世界の勇者の中で最速で魔王を倒したということも知っておる! 実に天晴なことじゃ~!」
また並列異世界か。
それに俺が魔王を最速で倒したって……どういうことだ?
俺は思わずシルルに訊ねた。
1
お気に入りに追加
1,538
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」
Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。
しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。
彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。
それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。
無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。
【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。
一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。
なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。
これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる