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2章
第26話
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冒険者ギルドを出ると、俺とナズナとディーネはチノの後について夜の街を歩き始めた。
一対一の対決ってことは当然荒れるだろうし、それなりに広い場所が必要だ。
このままバルハラの外へ出ようとしているのかもしれない。
俺たちの後には噂を聞きつけた野次馬の冒険者たちが列を成してついて来ている。
これについてチノは特に注意するようなことはなかった。
(大勢に証人になってもらうつもりなのかもな)
さっきは一時的に声を奪われたっていうのにたくましい連中だ。
チノに注意されてまた痛い目を見るよりも好奇心の方が勝っているんだろう。
そんなこと考えながら歩いていると、ディーネが申し訳なさそうにしながら近寄ってくる。
「エルハルト君ごめんね。こんなことになっちゃって……」
「いやこっちこそ悪かった。俺が余計なお節介を焼いたせいで結果的にディーネには嫌な思いをさせちまったからな」
「ううん、ウチのことなんか全然いいんだよ。それよりもチノの追試を受けるってことで本当によかったのかな」
「むしろありがたいくらいだ。こんな風に提案してくれたチノには感謝してる」
難易度が高い追試を課したのはあえてに違いない。
これが簡単な追試だったらほかの冒険者に示しがつかないからな。
「でもエルハルト君。注意してね? 本気になったチノは手がつけられないくらい強いから。ウチなんか簡単に倒されちゃうと思うよ」
「ディーネの話を聞いているからその辺は肝に銘じているつもりだ」
幼い頃から賢者の素質を持つ天才児と呼ばれて育ったチノ。
その魔術師としての実力は王立学院で天才と謳われていたルヴィよりも遥か上に違いない。
警戒して当然の相手だ。
「ウチはエルハルト君のこと応援してるからね♪」
「ありがとな。必ずチノの追試をパスしてみせるさ」
俺がサムズアップするとディーネは嬉しそうに長い尻尾を揺らしながら、前を歩くチノのもとへと戻っていった。
それと入れ替わるようなタイミングで今度はナズナが俺に迫ってくる。
その距離は珍しく近い。
「どうしたナズナ?」
「マスター。お渡ししたいものが一つあります」
そう口にしながらナズナは胸の谷間にかかった紫色の首飾りを外す。
これはずっとナズナが身につけていたもののはずだが。
「この首飾りをマスターに差し上げたいと思います」
「何だ急に」
「これは【シルファリス竜輪】と言って、エンドパーツには竜力が蓄えられたしずくが入っています。ここ数日の間にマスターから受け取った竜力で強化されていますのでかなりの力が秘められていると思います」
そういえばすっかり忘れていたな。
(俺には無限の竜力が溢れていて、それをナズナに渡しているんだっけか)
特に意識せずともそれができてしまうみたいだから完全にそのことを失念してしまっていた。
だが気にする部分はそこじゃない。
「なんでそんなものを俺に渡すんだ? 竜力が蓄えられているんなら大事なものなんじゃないのか?」
「たしかに仰る通り大切なものです。ですが今はマスターがお持ちになられていた方がいいと思いました」
そこでナズナは一度前方へと目を向ける。
先を歩くチノとディーネがこっちの会話に気付いていないのを確認するとこう続ける。
「先程もお伝えしましたがチノさんはかなり手強い相手かと思います。マスターが負けることは考えられませんが、万が一の時はこの首飾りを武器を作る素材としてお使いください。きっとお役に立てると思います」
今回は一対一の対決になる。
ということはナズナの助けは借りられないってことだ。
チノが厄介な相手である以上、用心するに越したことはないか。
「分かった。ありがたく受け取っておくぞ」
「はい」
俺はナズナから【シルファリス竜輪】を渡されるとそれを魔法袋の中に仕舞い込んだ。
一対一の対決ってことは当然荒れるだろうし、それなりに広い場所が必要だ。
このままバルハラの外へ出ようとしているのかもしれない。
俺たちの後には噂を聞きつけた野次馬の冒険者たちが列を成してついて来ている。
これについてチノは特に注意するようなことはなかった。
(大勢に証人になってもらうつもりなのかもな)
さっきは一時的に声を奪われたっていうのにたくましい連中だ。
チノに注意されてまた痛い目を見るよりも好奇心の方が勝っているんだろう。
そんなこと考えながら歩いていると、ディーネが申し訳なさそうにしながら近寄ってくる。
「エルハルト君ごめんね。こんなことになっちゃって……」
「いやこっちこそ悪かった。俺が余計なお節介を焼いたせいで結果的にディーネには嫌な思いをさせちまったからな」
「ううん、ウチのことなんか全然いいんだよ。それよりもチノの追試を受けるってことで本当によかったのかな」
「むしろありがたいくらいだ。こんな風に提案してくれたチノには感謝してる」
難易度が高い追試を課したのはあえてに違いない。
これが簡単な追試だったらほかの冒険者に示しがつかないからな。
「でもエルハルト君。注意してね? 本気になったチノは手がつけられないくらい強いから。ウチなんか簡単に倒されちゃうと思うよ」
「ディーネの話を聞いているからその辺は肝に銘じているつもりだ」
幼い頃から賢者の素質を持つ天才児と呼ばれて育ったチノ。
その魔術師としての実力は王立学院で天才と謳われていたルヴィよりも遥か上に違いない。
警戒して当然の相手だ。
「ウチはエルハルト君のこと応援してるからね♪」
「ありがとな。必ずチノの追試をパスしてみせるさ」
俺がサムズアップするとディーネは嬉しそうに長い尻尾を揺らしながら、前を歩くチノのもとへと戻っていった。
それと入れ替わるようなタイミングで今度はナズナが俺に迫ってくる。
その距離は珍しく近い。
「どうしたナズナ?」
「マスター。お渡ししたいものが一つあります」
そう口にしながらナズナは胸の谷間にかかった紫色の首飾りを外す。
これはずっとナズナが身につけていたもののはずだが。
「この首飾りをマスターに差し上げたいと思います」
「何だ急に」
「これは【シルファリス竜輪】と言って、エンドパーツには竜力が蓄えられたしずくが入っています。ここ数日の間にマスターから受け取った竜力で強化されていますのでかなりの力が秘められていると思います」
そういえばすっかり忘れていたな。
(俺には無限の竜力が溢れていて、それをナズナに渡しているんだっけか)
特に意識せずともそれができてしまうみたいだから完全にそのことを失念してしまっていた。
だが気にする部分はそこじゃない。
「なんでそんなものを俺に渡すんだ? 竜力が蓄えられているんなら大事なものなんじゃないのか?」
「たしかに仰る通り大切なものです。ですが今はマスターがお持ちになられていた方がいいと思いました」
そこでナズナは一度前方へと目を向ける。
先を歩くチノとディーネがこっちの会話に気付いていないのを確認するとこう続ける。
「先程もお伝えしましたがチノさんはかなり手強い相手かと思います。マスターが負けることは考えられませんが、万が一の時はこの首飾りを武器を作る素材としてお使いください。きっとお役に立てると思います」
今回は一対一の対決になる。
ということはナズナの助けは借りられないってことだ。
チノが厄介な相手である以上、用心するに越したことはないか。
「分かった。ありがたく受け取っておくぞ」
「はい」
俺はナズナから【シルファリス竜輪】を渡されるとそれを魔法袋の中に仕舞い込んだ。
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