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2章

第3話

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「エルハルト・ラングハイムさんですね。人族の15歳。レベルは1でクラスは…………え?」

 その時、受付嬢が目を丸くさせる。

「錬金鍛冶師? なんですか、これ……」

「ああ。錬金術師と鍛冶師が組み合わさった特殊なクラスなんだ」

「えっと、それはつまり……。ハズレ職とハズレ職が劣化して組み合わさった大ハズレの生産職ってことですよね……ぷぷっ」

 受付嬢は思わずといった感じて吹き出してしまう。
 見慣れたリアクションだ。

 俺のクラスを目にしたら大抵こんな感じの反応になる。
 だから急な受付嬢の態度の変化にも俺は驚かなかった。

「大ハズレの生産職で冒険者になろうなんて……ぷぷっ。一生レベル1で魔物すら倒せない足手まといのくせに……ぷぷっ」

「聞いたか?  錬金鍛冶師だってよ! 完全に終わってね?」
「生産職が冒険者とか聞いたことねーぜ。コイツ、バカか?」
「劣等職の無能がダンジョンになんか入れるわけがねぇ!」
「頭にウジ湧いてるから何も知らねぇんだろなぁ。んはははっ!」

 受付カウンター周りは騒然としてちょっとしたお祭り騒ぎとなる。
 生産職が冒険者として登録するのが相当珍しいんだろう。
 
(この反応も想定内だ)

 こういった大きなギルドには必ずおかしな輩が存在する。
 現にぎゃあぎゃあと騒いでいるのはごく一部の連中だ。

 さすがに放置しておけないと思ったのか、隣りでナズナが声をかけてくる。

「マスター。騒ぎを収めた方がよろしいでしょうか?」

「気にするな。俺は平気だ」

「ですが」

「ナズナ。悪いんだが登録が終わるまでもう少し待っていてくれ」

「……了解しました、マスター」

 ナズナにそう伝えると俺は受付嬢に向き直った。

「それで内容は問題なさそうか? 生産職でも冒険者にきちんと登録できたはずだが」

「もちろん登録はできますよぉ~? けど命の保証はまーったくありませんから……ぷぷっ。ダンジョンなんかに入ったら間違いなく即死ですね……ぷぷっ」

「その点なら問題ない」
 
「そんなに死にたいのでしたらもう止めませんけどねぇ? ではこれからステータスを測定しますのでこちらまで来てください。まあ、測るほどのステータスなんてないんでしょうけどぉ……ぷぷっ」

「分かった」

 俺は受付カウンター近くに設置された巨大水晶の前までやって来る。

 自分の背丈の倍以上ある水晶に手をかざすと、目の前に光のディスプレイが現れてそこに俺のステータスが表示された。 

------------------------------
【エルハルト・ラングハイム】
クラス:錬金鍛冶師
Lv:1
HP:10/10
MP:1/1
攻撃力:1+2750
防御力:1+5
魔法力:1
素早さ:1
幸運:1

【固有スキル】
《マナ分解》
《強化付与》
《調薬》

【特殊スキル】
《ヴァルキリーの技巧 Lv.2》
《金字塔の鍛造 Lv.2》

天賦ギフト
《碧星級竜王》
《叡智の伝授》

【武器】
無法者の偃月刀

【防具】
生産職の服
旅人のコート
------------------------------

 いつもの見慣れたステータスだ。
 特に変わりはないはずなのだが……。



 バリ、バリ…………バリッバリッバリッバリッーーーーン!!



 その時。
 なぜか巨大水晶はもの凄い音を立ててぶっ壊れてしまう。
 
「きゃあぁぁぁぁっ!?」

 隣りで薄笑いを浮かべていた受付嬢は口に手を当てて悲鳴を上げた。
 巨大水晶が壊れたことでギルド全体は騒然となる。

(はぁ……またか。やっちまった)

 前の世界でも冒険者登録をする際に俺は水晶を同じように壊してしまった。
 今回は前回とは違って、ステータスが最低だったから普通にいけると思ったんだが。

(なんで毎回こんな風に壊れるんだ?)

 すると。
 タイミングを見計らったかのようにぞろぞろと屈強な男たちが俺の周りに集まってくる。

「てめーッ! 何ギルドの物壊してんだよ、ああんッ!?」
「おい、弁償しやがれ!」
「劣等職の分際で、イキって女連れ込んでんじゃねーぞゴラァ!」
「こりゃもう出入り禁止だなぁ! ヒャッハハ!」

 まるでつっかかるきっかけを待っていたとばかりに男たちはぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。
 
 こういう時は下手にケンカを買うのは逆効果だ。
 しっかりと謝罪して誠意を示すべきだ。

「水晶を壊して悪かった。修繕の費用はすべてこっちで出す。だからどうか許してほしい」

 俺は受付嬢に深く頭を下げた。

「んあァ!? それだけで済むと思ってんのかァ!?」
「連れの女を俺たちに渡せよぉ~! それで勘弁してやるぜ」
「くはははっ! こんな軟弱男、女もどうせ愛想を尽かしたに違いねー」
「謝罪なら土下座しろってんだ、劣等職の無能が! 神聖なギルドを汚しやがって!」

 だが、取り巻きの男たちに黙る気配はない。
 あらゆる方向から罵詈雑言が飛んでくる。

 それでも俺は受付嬢に頭を下げ続けた。
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