迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

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5章

第1話

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 レヴェナント旅団のルーファウス一味を捕まえてから数週間。
 すっかりベルは、【天空の魔導団クランセレスティアル】の一員として馴染んでいた。

 ルーファウスを捕まえたという噂は、アスター王国各領の冒険者ギルドへとすぐに伝わり、他領からゼノたちのもとへクエストの依頼が殺到。
 
 ゼノたちは、各冒険者ギルドから厚遇を受け、さまざまな土地で重要なクエストをいくつか達成する。
 ある領では〝渦〟討伐のクエストもこなした。

 そうして戦果を挙げていくうちに、ゼノが気付いたのは、自分たちのパーティーは攻守のバランスがとても優れているということだった。

 アーシャが先陣を切り、ベルが盾で皆を守り、モニカが傷を負った者を治療する。
 ゼノは、オールラウンダーとして、攻撃役にも補助役にもなった。

 そうした連携が、息を吸うように簡単にできてしまっていたのだ。
 
(3人とも、本当にすごいよなぁ)
 
 クエストを達成するたびに、ゼノは彼女らの働きに大きな感動を覚える。

 あの日。
 【狂悪の凱旋トライアンフキラー】の3人とワイド山で会った時から、自分はこうして信頼できる誰かとパーティーを組むことに憧れていたのかもしれない、とゼノは思った。

(ジェシカさんたち、元気にやってるといいな)

 今度、全員でラヴニカの冒険者ギルドに挨拶へ行ってもいいかもしれない。
 
 そんなことをゼノが考えていると……。

 ぺたっ!

 いつものように、ベルがゼノに抱きついてくる。

「……お兄ちゃんの体、あったかい……」

「あーっ! またこのガキんちょ、ゼノにべったりだぜ!? おいこら! 離れろ~!」

「嫌っ、アーシャ姉には、ぜったい渡さない」

「んだとぉ!」 

 クエストの帰り道は、いつも決まってこんな感じだ。

「……はぁ。なんで毎回、小競り合いしてるんだ……。戦闘での素晴らしい連携はどこにいった?」

「連携? ハッ、んなもん知るかよ」

「なんで、仲良くできないんだよ……」

「このガキんちょが、毎回ずりぃーことばっかするからだぜ!」

「ベルは何もしてないもん……」

「くぅぅ~っ! そーゆう甘えっぷりがずりーんだよっ!」

「まぁまぁ、アーシャさん。ベルちゃんも甘えたいお年頃なんですよぉ~」

「アタシだって甘えたい年頃だ!」

「アーシャ、俺らと同い年だよな……?」

 というか、すでに成人していないか?と、心の中でゼノはつっこみを入れる。
 アーシャの駄々っ子ぶりも、あいかわらずだ。

 未だに、ベルがゼノと一緒の部屋で寝泊まりしていることが許せないようだ。

(この前なんか寝てる時、突然、上がり込んで飛びかかってきたことがあったらなぁ……。まぁ、ずっとべったりのベルもベルなんだが……)

 あれから、ベルの甘えっぷりはさらにエスカレートしており、ゼノを困らせていた。
 それは、旅先であってもお構いなしなのだ。

「モニカ姉になら、お兄ちゃんを渡してもいい」

「んふふ~♡ ベルちゃんは優しい子ですね♪」

「なんで、このアホピンクはいーんだよ!?」

 最近では、ベルはすっかりモニカに心を開いている。
 きっかけは、モニカがベルの傷跡を〈回復術〉で消し去ってからだ。

 肉体的な理由による傷は、ヒーラーなら誰でも治療することができるが、精神的な理由を伴った傷は、上位術使いのヒーラーが使う〈回復術〉でなければ、治すことが難しいらしい。

 だが、今のモニカにはそれが簡単にできてしまった。
 きっとあの時、術式を制限されていなければ、フォーゲラング村の婦人の傷も、彼女は簡単に癒せてしまっていたに違いない。
 
 以来、ベルはよく笑うようになった。
 ベルが今、普通にクエストをこなせているのは、モニカのおかげでもあるのだ。

「モニカ姉は特別だから」

「えぇ~? そーですかぁ? じゃあ、ベルちゃんもそう言ってくれてますし、お言葉に甘えちゃいます♪ えいっ♡」

 そう言いながら、モニカがゼノの腕に抱きつく。

「うがぁっ~! モニカまで許せねぇ……! こうなりゃ、強引にでもいかせてもらうぜっ!」 

 がばっ!

 さらに、アーシャが背中越しからゼノに抱きつく。

「んひひっ♪ 後ろからなら、お前らも文句ねぇーだろ?」

「アーシャさん~! ゼノ様とお顔が近いですよぉ~!」

「ずるいアーシャ姉……」

「……だから、俺の体で遊ぶなぁーーーっ!!」

 もうこうなると、打つ手はなかった。
 無邪気な少女たちに手足を引っ張られ、また肌や胸を無防備に押し当てられ、流れに身を委ねるしかない。

(……はぁ。もうどうにでもなってくれ……)

 のどかな田舎道の真ん中で、ゼノは諦めの境地に達するのだった。



 ◆



 ソワソン領の領都トーメントの冒険者ギルドから受注したクエストを達成し、マスクスの宿舎へ戻る頃には、辺りはすでに真っ暗となっていた。

 ここ数日間は遠方へ出払っていたということもあり、4人とも久しぶりの帰宅である。

「それではゼノ様。すみませんが、ご厚意に甘えてお先にいただきますね♪」

「うん、どうぞ」

「ゼノも一緒に入ろうぜっ! アタシは大歓迎だぞー!」

「いや、歓迎するなよ……」

「お兄ちゃん、行ってくる」

「ああ。行ってこい」 

 3人が仲良く浴場へ行ってしまうと、ようやくゼノは1人となる。

「はぁ……。なんか、一気に疲れが押し寄せてきたな……」

 バタン。

 そのままベッドの上で仰向けとなる。

「ステータスオープン」

 そして、なんとなく光のディスプレイを出現させて、自分の現状を確認した。

----------

【ゼノ・ウィンザー】
[Lv]68
[魔力値]0 [術値]0
[力]29 [守]19
[魔攻]485 [速]24 
[スキル]〔魔導ガチャ〕
[魔石コンプ率]225/666
[所持魔石]
☆2《大地割り》 ☆2《キャンディーハウス》
☆2《補充》 ☆2《威圧》
☆2《爆音》 ☆2《マジックエンチャント》
☆2《コンセントレーション》 ☆2《魔法防御ダウン》
☆2《祈祷》 ☆2《巨乳化》
☆2《見切り》 ☆2《底力》
☆2《物理攻撃耐性アップ》 ☆2《天の幻光爆フラッシュホール
☆3《透明》 ☆3《感応強化》
☆3《テレポート》 ☆3《絶天の無穹キングブリザード
☆3《泥喰の貯蔵マッドイーター》 ☆3《残響の戯曲キリングギフト
[所持クリスタル]
青クリスタル×21
緑クリスタル×2
赤クリスタル×1
[Ωカウンター]028.42%

----------

 最近は、定期的に緑クリスタルが入手できているということもあり、魔石のコンプ率は徐々に上がっている。
 それは単純に喜ばしいことなのだが、ゼノには気がかりがあった。

「Ωカウンターは、もう028.42%なんだよな……」 

 これまでは、そこまで強くカウンターを意識することはなかったが、そろそろ30%に到達しようとしている。
 まだ余裕があるとはいえ、楽観的にもなれない。

 当然、レアリティの高い魔石を使えば、カウンターの上昇率も大きくなる。
 そういう理由もあって、ゼノはまだベルから受け取った赤クリスタルを使用できずにいた。

「迷宮を出てから、あと一週間でちょうど2ヶ月か。お師匠様ともだいぶ長い間会えていないなぁ……」

 3人の少女たちが好意を向けてくれるのはありがたいと思うゼノだったが、やはり一番の想い人はエメラルドなのだ。

(お師匠様、ああ見えて寂しがり屋だから。あまり、待たせたくはないんだよな)

 そろそろ、女王から筆頭冒険者として声をかけられるための大きなきっかけが欲しいと思うゼノであった。



 ◆



 まだ夜と朝がせめぎ合っている時間帯。

 突然、ゼノはノックの音で叩き起こされる。

 コンコン! コンコン!

「…………っ、ん……」

 辺りは薄暗く、まだ陽の光も差し込んでいない。
 隣りを覗けば、布団の中でベルはまだぐっすりと眠っていた。

 コンコンッ! コンコンッ!

 ノックの音はさらに大きく鳴り響く。

(……なんだ……? こんな朝早くに……)

 さすがに音が大きかったのか、ベルも眠たそうにしながら目を覚ました。

「……おにぃ……ちゃん……?」

「うん。ベルは、ちょっとここで待っていて」

 ゼノはベッドから起き上がると、部屋の壁に立てかけてあった聖剣クレイモアを手にして、ドアの前へと赴く。

「……誰ですか?」

 ドア越しにそう声をかけると、慌てたような声が外から響いた。

『あっ、ゼノくん! 起きてくれたか!』

「その声は……リチャードさん……?」

『こんな朝早くにゴメンねぇ。実は、今しがた王都から【天空の魔導団クランセレスティアル】宛てに、緊急の招集がかかって』

「えっ」

 すぐにドアを開けて、ゼノはリチャードと対面する。

「すまないねぇ、2人とも。こんな朝早く訪ねて来ちゃって」

「いえ、それはいいんですけど……。あの、緊急の招集って……?」

「詳しい話はギルドへ来てから話すよ。アーシャ様とモニカちゃんにも、声をかけて連れて来てほしいんだ」
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