迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

文字の大きさ
上 下
20 / 90
1章

第11話

しおりを挟む
 冒険者ギルドを出て、ゼノはティナに言われた言葉を振り返っていた。

「今回のクエストを達成できなかった場合は、マスクスのギルドで依頼を受けることができなくなるんだ」

 つまり、失敗は許されないということ。

 だが、その不安よりも、ゼノの中ではティナがクエストを紹介してくれたという事実が、何よりも嬉しかった。

「せっかく、ティナさんが俺にクエストを紹介してくれたんだ。なんとしても達成したいな」

 それからゼノは、道具屋へ寄ってポーションを数個購入する。
 ソロで行動するのだから、これくらいの事前準備は当然と言えた。

「ポーションも買ったし、準備は万全だな。あとは……」

 ゼノは一度裏路地へ入ると、周りに誰もいないことを確認して、魔導袋の中から青クリスタルを1つ取り出す。

「今日も忘れないうちに、〔魔導ガチャ〕で魔石を召喚しておこう」

 魔法陣を発生させると、かけ声とともに青クリスタルを足元へと落とす。

「〔魔導ガチャ〕――発動」

 シュピーン!

 すると、青色のサークルが周囲に現れ、魔石が10個浮かび上がった。

----------

〇ガチャ結果

①New! ☆1《減量》
②New! ☆1《温度調整》
③New! ☆1《快馬》
④New! ☆1《ダンプ》
⑤New! ☆1《疲れ知らず》
⑥New! ☆1《ベーカリー》
⑦New! ☆1《発見》
⑧New! ☆1《点呼》
⑨New! ☆1《掃除》
⑩New! ☆2《氷焉の斬鉄アイスジャベリン

----------

「よしっ! 今日も☆2の魔石が出たぞ! 多分、これも攻撃魔法だな」

 魔石をすべて魔導袋の中へしまうと、念のためにステータス上で一度確認しておく。

----------

☆2《氷焉の斬鉄アイスジャベリン
内容:対象相手に氷魔法によるダメージ小/1回

----------

「うん。やっぱり攻撃魔法だ。今度は氷属性か」

 依然として☆3は出ないが、今日はダブりもなく、順調に魔石を召喚できているという実感をゼノは得た。

「さてと……。魔石も召喚したことだし。さっそく、ワイド山へ向かうとしよう」

 ゼノはティナから受け取ったワイド山の場所が記されたファイフ領の地図を開く。

「フォーゲラングの村まで戻って、領都のラヴニカを越えて……って、え……? マスクスからかなり離れてるぞ……」

 呑気に徒歩で行っていたら、間違いなく日没までには戻って来られない。
 
「……となれば、馬を使うしかないな。たしか、町の入口で乗用馬を貸し出していたと思ったけど」

 昨日、いろいろと見て回った際に、この町では貸し馬があることをゼノは調べていた。
 馬車を使うという手も考えられたが、乗用馬を使った方が速く目的地へ到着することができる。

 また、馬の扱いなら、ゼノは慣れていた。
 幼少期からハワード家の家庭教師により、みっちり指導されてきたからだ。 

 駆け足で町の入口まで向かうと、ゼノは馬小屋の前にいる厩役の男に声をかけた。

「すみません。乗用馬を1日借りたいのですが」

「おう、あんた冒険者かい?」

「はい。昨日、登録を終えたばかりのFランク冒険者です。今日が初クエストでして」

「ほうほう。そりゃめでたいな。ウチの馬が必要なら、銅貨3枚で貸し出せるが……ビギナーさんは特別だ。今回はタダで貸し出すよ」

「え? いいんですか?」

「冒険者には、日頃から世話になってるからね。今後もウチの愛馬たちを贔屓にしてくれってことで、初回はタダで貸し出しているのさ。だから、気にせずに使ってくれ」

「ありがとうございます!」

 ゼノは厩役の男に頭を下げると、馬小屋にいる1体の白馬を引き取る。

「そいつはなかなかに優秀でね。足腰も丈夫で体力もあるから、きっとあんたの役に立つはずさ」

「そうなんですね。それじゃ少しの間、こちらのお馬をお借りします」

「おう! 気をつけてな」

「はい、行ってきます!」

 手綱を手に取ると、ゼノは白馬と共にマスクスの町を飛び出した。



 ◆



 白馬に乗りながら、しばらく田園地帯を走り続けたところで、ゼノはふと思う。

(たしかに、厩役さんが言うようにこの馬は速いけど……)

 だがそれでも、山を登って降りて日没までにマスクスへ帰って来るなら、もっとペースを上げなければ間に合わない可能性があった。

 一度、白馬を路肩に止めると、ゼノは「ステータスオープン」と唱えて光のディスプレイを表示させる。

----------

【ゼノ・ウィンザー】
[Lv]24
[魔力値]0 [術値]0
[力]12 [守]6
[魔攻]170 [速]9
[スキル]〔魔導ガチャ〕
[魔石コンプ率]029/666
[所持魔石]
☆1《減量》 ☆1《温度調整》
☆1《快馬》 ☆1《ダンプ》
☆1《疲れ知らず》 ☆1《ベーカリー》
☆1《発見》 ☆1《点呼》
☆1《掃除》 ☆2《怒号の火球マグマボール
☆2《氷焉の斬鉄アイスジャベリン
[所持クリスタル]青クリスタル×47
[Ωカウンター]000.35%

----------

 そのまま《快馬》の項目をタップし、魔石の情報を確認した。

----------

☆1《快馬》 
内容:対象馬に負担をかけることなく快速に走らせる/1日

----------

「やっぱり、思った通りの魔法だ」

 実は、ゼノが乗用馬を使おうと思ったのは、この魔石を手に入れたからでもあった。
 このタイミングで《快馬》の魔石を召喚できたことはかなり運がいい、とゼノは思う。

 ホルスターから聖剣クレイモアを抜き取ると、ゼノは魔導袋から取り出した《快馬》の魔石をそこにはめる。

「《快馬》」

 片手で手綱を持ち、光り輝く剣を振りかざしながらそう唱えると、白馬はものすごいスピードで駆け出していく。

「うぉぉおっ!?」

 ズビューーーン!

 それから、白馬はファイフ領の平原を駆け抜け、ゼノはあっという間にワイド山の麓へと到着するのだった。



 ◆



 ワイド山は、なだらかな斜面にゴツゴツとした岩が転がる岩山であった。
 山頂部分には、霧氷が付着した針葉樹林が広がっているのがかすかに確認できる。

「……なるほど。山頂付近にしかベリー草が分布していない理由がこれか」

 ティナによると、そこまで険しい山ではないという話であったが、なかなかに登るのが大変そうな岩山だ。
 足元に十分注意して登る必要がありそうだった。

「悪いけど、少しの間、ここで待っていてくれ」

 ゼノは、白馬の頭を撫でながら、ロープを大木に括り付けると、改めてワイド山を見上げる。
 日没までにマスクスへ戻るとなると、山頂付近までなるべく早く登る必要があった。

「結構、時間に余裕がないクエストだよなぁー」

 そんなことを思いつつも、ゼノはティナが今回のクエストを紹介してきたことに、まるで疑問を抱いていなかった。
 今は、ギルドの期待に応えることが何よりも大切だと考えていたからである。

「うーん。体力には、ある程度自信があるけど……」

 エメラルドの修行によって、基礎的な体力は鍛えられている。
 けれど、時間制限があるとなると話は別だった。

「この魔法を使ってみようかな」

 魔導袋の中から《疲れ知らず》という魔石を取り出す。
 これも、先程のガチャで召喚した魔石であった。

「《疲れ知らず》」

 聖剣に魔石をはめ込んでそう詠唱すると、一瞬のうちに変化が起こる。

「ぬぉっ!? 体がめちゃくちゃ軽くなったぞ?」

 これなら、どんどん登れそうだ。

 岩場に足を踏み入れると、ゼノは軽快な足取りでワイド山を登っていくのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

処理中です...