迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

文字の大きさ
上 下
10 / 90
1章

第1話

しおりを挟む
「っどぅぁ!?」

 ドスン!

 《脱出》の魔法で一気に外へと追い出されたゼノは草むらに転げた。

「いってぇ……」

 尻を擦りながら後ろを振り返ると、そこには死神の大迷宮の入口の穴があった。

「くそぉ~。お師匠様と別れのキスもできなかったぁ……」

 そんなことをひとりごちながら、ゼノは5年ぶりとなる地上の空気を吸い込む。

「すぅぅーー、はぁーーっ。うん、久しぶりだ。空気がおいしいな」

 辺りを見渡せば、そこは森の中であるようだった。

「けど、こんな所に5年間も入っていたんだ」

 ハワード家の使用人の男とここへやって来た時は真夜中だったため、どこをどう辿って来たか、ゼノはまったく覚えていなかった。

 今一度、迷宮の入口に目を落とす。
 エメラルドはこんな場所に400年近くも閉じ込められているのだ。

「お師匠様……。絶対に俺が出して差し上げます。だから、少しの間だけ待っていてください」

 ゼノは入口の穴に向けて深々と頭を下げると、その場をゆっくりと後にした。



 ◆



 死神の大迷宮を後にしたゼノは、さっそく〔魔導ガチャ〕を使ってみることにする。

「さて、一度魔石を召喚してみようかな」

 魔導袋の中から青クリスタルを取り出しながら、迷宮でエメラルドに言われた言葉を思い出す。

「たしか、青クリスタルの出現確率は、☆1の魔石が89%だったよな」

 これは、魔石1個における出現確率らしい。
 たとえば、10個の魔石を召喚すると、そのほとんどは☆1の魔石が出る計算であった。

 だが、ゼノとしては、☆1の魔石だろうが、☆2の魔石だろうが、まったく気にしていない。

「だって、初めて魔法が使えるかもしれないんだ。なんでも嬉しいよ」

 まずは言われた通り、ゼノは足元に魔法陣を発生させた。

「……よし。ここまでは問題ないな」

 足元の魔法陣に目を向けながら、青クリスタルをギュッと握り締める。

「ここに、このクリスタルを放り込めば、魔石が召喚されるんだ」

 意を決すると、ゼノはそのまま青クリスタルを魔法陣の中へと投げ込む。

「〔魔導ガチャ〕――発動!」

 ゼノがそうかけ声を上げると……。
 
 シュピーン!

 突如、青色のサークルがゼノの周りに発生し、そこに10個の魔石が浮かび上がった。

----------

〇ガチャ結果

①New! ☆1《建築》
②New! ☆1《天気予報》
③New! ☆1《治療》
④New! ☆1《階段》
⑤New! ☆1《マップ》
⑥New! ☆1《散髪》
⑦New! ☆1《嫌われ者》
⑧New! ☆1《突風》
⑨New! ☆1《テレキネシス》
⑩New! ☆1《凍結》

----------

「うぉぉおっ~~!! 本当に出たぁっ!?」

 エメラルドが使用したことのある魔法もあれば、初めて目にする魔法もある。
 これらの魔法を、これから自分が使えるかもしれないのだ。

「すごいっ! これが魔石なんだ!」

 サークルに浮かぶキラキラと光り輝く丸い石に目を向けながら、興奮は最高潮へと達する。
 
 現在、発見されている魔法は全部で13種類。
 だが、今召喚した魔石は、そのどれとも異なった。

 つまり、未発見魔法を使える手段を、ゼノはこの瞬間に手に入れたのだ。

(この〔魔導ガチャ〕のスキルがあれば、666の魔法を列挙するのも本当に夢じゃないかもしれない……!)

 あとは、実際に使えるのかどうか試すだけだったが、Ωカウンターのこともあるので、この場は魔石を魔導袋の中へしまうことに。

「必要な場面が来たら使おう」

 ゼノは一旦先へ進むことにした。



 ◆ 



 それからさらに歩くこと数分。

「……あっ」

 目の前の道が倒れた大木によって通行不能となっていることにゼノは気付く。

「どうしようか。これじゃ通れないぞ」

 来た道を一回引き返そうかと思うゼノだったが、ここで一度魔法を使ってみるのはどうかという考えに至る。

「たしかさっき、《突風》っていう魔石が手に入ったよな?」

 魔導袋の中から《突風》の魔石を取り出す。

「えっと……。聖剣クレイモアにこの魔石をはめて……」

 腰にぶらさげた聖剣をホルスターから引き抜くと、ゼノはガードの丸い穴に魔石をすぽっとはめ込む。
 形もぴったりだった。

 その瞬間。
 聖剣クレイモアは輝きをもって光り始めた。
 
「……っ、これで、いいのかな……?」

 グリップを両手で握って、聖剣を高く掲げてみる。

「いつでも魔法が発動可能になったはずだけど……」

 エメラルドによれば、この状態で魔法名を詠唱すれば、それだけで魔法が発動するという話であった。
 詠唱文を読み上げることもできるが、破棄してしまっても問題はないようだ。

 だが、ゼノは未だに半信半疑であった。
 こんな簡単なことで、本当に魔法が使えるのだろうか。

(……いや、お師匠様がそう言っていたんだ。一度試してみよう)

 大木に狙いを定めながら、聖剣クレイモアを振り下ろす。

「《突風》」

 ――すると。
 光を帯びた聖剣から激しい風が放たれた。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴッーーー!

 それは、目の前の大木を押し退けていく。
 大木はそのまま粉々に砕かれて、あっという間に目の前の障害物は取り除かれた。

「おぉっ……すごい! これが魔法なんだ!」

 本当に魔法が使えたという喜びが、徐々に実感としてゼノの中で大きくなっていく。
 
(魔法なんて、もう一生使うことができないって思ってたけど)

 実家から迷宮に廃棄されて、絶望の淵を漂っていたあの日の自分に、この事実を伝えたいとゼノは心から思った。

「お師匠様の言う通りでした! 俺、本当に魔法が使えましたよぉぉっーー!!」

 その瞬間、喜びを爆発させたゼノの声が森の中に木霊した。



 ◆



 それからひと通り喜んだ後、ゼノは一度クールダウンする。

「……と、そうだ。Ωカウンターもチェックしておかないとな」

 エメラルドによれば、青クリスタルで召喚できる魔石なら、その上昇率は微々たるものという話だったが、さすがにどれくらい上昇するのかはゼノも気になっていた。
 
 《突風》は☆1の魔石だ。
 ☆1の魔石でどれくらいカウンターが上昇するのかが分かれば、それが今後の基準となってくる。

「ステータスオープン」

 ゼノがそう唱えると、目の前に光のディスプレイが現れる。

----------

【ゼノ・ウィンザー】
[Lv]24
[魔力値]0 [術値]0
[力]12 [守]6
[魔攻]170 [速]9 
[スキル]〔魔導ガチャ〕
[魔石コンプ率]010/666
[所持魔石]
☆1《建築》 ☆1《天気予報》
☆1《治療》 ☆1《階段》
☆1《マップ》 ☆1《散髪》
☆1《嫌われ者》 ☆1《テレキネシス》
☆1《凍結》
[所持クリスタル]青クリスタル×49
[Ωカウンター]000.07%

----------

「……000.07%か。思ったよりも上昇しないな」

 てっきり1%くらいは上昇するものだと思っていたので、少しだけ拍子抜けしてしまう。

「けど、これは下がることはもうないんだよね」
 
 なんだか、死のレースが幕を切って落とされたようで、途端に緊張感が走り抜ける。

「……うん。やっぱり甘く考えちゃダメだ。お師匠様の言う通り、使う魔法を選別していこう」

 決意を新たにすると、ゼノは森の出口を目指して歩みを進めるのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...