どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ

文字の大きさ
上 下
48 / 68
2章-1

第12話

しおりを挟む
「歩いて見てまわって分かりました。ここは本当に美しい街ですね」

「そうか?」

「はい、ロザリオテンとそっくりです。なんだか懐かしい気分になりました」

「そりゃ皇都の跡地を利用してるわけだからな」

「それでも……。エアリアル帝国はいちど滅びました。ここまで美しい街を再興することができたのはきっと盟主であるティムさまの手腕です」

「宿屋でも話したけど俺はほんとなにもしてないよ。仲間ががんばってくれてるだけでさ」

「なにもしてないだなんてそんなはずないです。ここで暮らす皆さんの顔を見たらすぐに分かりました。ティムさまがいるから皆さんこんなにも活き活きと暮らしているんだって」

 宿屋にいたときとは違い今のマキマは饒舌だった。
 
(最初見たときはヨルと瓜ふたつだって思ったけど)

 こうして並んで話してるとぜんぜん違うことが分かる。
 俺はもうマキマにヨルの影を重ねて見ていなかった。

「そういうすごい部分は昔からお変わりありません」

「そんなすごかったのか。ルーデウスだったころの俺は」

「はい。気高くて強くてかっこよくて……。わたしのすべての憧れでした」

 ほかの三人の口ぶりからしてもそれは間違いないんだろう。
 
 やれやれ。
 そんなやつが本当に俺だったなんて。

 今とは正反対だ。

「わたしなんかには本当にもったいない殿方だって……ずっとそう思っておりました」

「ん? なんて?」

「あ、いえ……」

 しまったというような表情を浮かべるマキマ。

 もったいないとな。
 俺の聞き間違いか?

「……ですがべつに隠すことじゃないですよね」

 自分に言い聞かせるようにそう呟くと。

 月明りに照らされたマキマはどこかほんのりと頬を赤くさせたまま衝撃的な言葉を口にする。
 少なくとも俺にとっては十分衝撃的な言葉だった。


「実はわたしたちは許嫁同士だったんです」

「は……?」

 許嫁だって?
 それって……あの、結婚を約束された関係だよな?

 こんな美人の女の子と許嫁って……勝ち確かよ。

「といってもまだ婚約前でしたが。ルーデウスさまが成人を迎えたときわたしは13歳だったんです。あれから5年経ちましたから今ではわたしの方がお姉さんですね。なんかすごく不思議です」

 同じ一日をずっと繰り返していた俺は15歳のままだ。
 
 そっか。
 年上だったからマキマは大人びて見えたんだ。

「エアリアル帝国では代々仕来りがあったんです。第一皇子さまは神聖騎士隊隊長の長女と婚約するって」

「なるほど……」

「神聖騎士隊は皇族の方々に仕えるのが使命ですから。わたしは幼いころからよくお城に出入りさせていただいておりました。ルーデウスさまと出逢ったのはそんな物心つくかどうかって時期です。当時のわたしは皇族の方々と神聖騎士隊の関係がどういうものかよく分かってなくて、ルーデウスさまのことを兄のように感じておりました」

 まあ小さいころなんてそんなもんだよな。
 大人になるにつれて変なしがらみが出てくるけど子供の世界は単純だ。

 当時のマキマにとって俺は本当に兄貴のような存在だったんだろう。
 
「ルーデウスさまにはほんとよく遊んでいただきました。といっても、ほとんどが男の子が好むような遊びでしたけど。まだ小さいウェルミィさまと一緒になって竹刀で追い回されたり、よくけちょんけちょんにされたものです。うふふ」

「容赦ないなぁ……」

「だからわたしの剣の腕前はもともとルーデウスさまに磨いていただいたものなんです」

「つっても遊びだったんだろ?」

「たしかに子供のお遊びでしたけど、小さいウェルミィさまをお守りしながら遊んでるうちに自然と太刀筋が上達していったんです。父の稽古についていくことができたのはルーデウスさまのおかげなんですよ」

 〈剣聖〉のジョブを授かることができたのもぜんぶ俺のおかげらしい。

 めちゃくちゃ過大評価されてる感は否めないけど。
 子供のころの思い出なんてだいだいそんなものかもしれない。
 
「最初はそんな感じで仲のいい兄妹みたいな関係だったんです。でも年齢を重ねるにつれていろいろなことが見えてきて……。あるときようやく分かったんです。わたしはルーデウスさまやウェルミィさまとこんな風に親しく接していい身分じゃないんだって」

「そんなことないと思うけど」

「いえ。おふたりはエアリアル帝国の未来を支える皇子さまと皇女さまで、わたしは騎士隊長のいち娘にすぎませんでした。そもそもの出逢いはじめからわたしは接し方を間違えてしまっていたんです」

 うーん。
 でもたしかにそうなのかもな。

 今の俺に記憶がないだけで皇族ってのはそういう世界で生きる人たちなんだ。
 
「それに……兄のように感じてたルーデウスさまは実は許嫁で、ゆくゆくは婚約する関係にあるってことが理解できると、わたしはどう接すればいいのか分からなくなってしまいました」

 そのころから俺もマキマのことを意識するようになったみたいだ。
 これまでの距離感で接することもなくなり、一緒に遊ばなくなってしまったらしい。

「わたしがルーデウスさまの許嫁だということが分かると、それまで妹のように感じていたウェルミィさまとの仲もぎこちなくなってしまいました。ウェルミィさまはルーデウスさまのことが本当にだいすきですから」

「それは見てたらなんとなく伝わってくる」

「当然のようにウェルミィさまとも遊ぶ機会がなくなりました。ですがそれが本来の距離感なんです。次第にわたしは自分の使命の重要性について理解するようになりました。皇族の方々をお守りするのがわたしに課せられた使命なのだと。以降、わたしは父から本格的に指導を受けることになったんです」

 その口ぶりからは決意のようなものがうかがえた。
 
(本来の距離感か)

 皇族と神聖騎士隊。
 それが俺とマキマを繋いでいた関係だったのかもしれない。

 許嫁なんていうのは名ばかりでマキマの中には恋愛感情はなかったんだろうし。
 
(そりゃ同世代の男女がそんな近くにいたら少しは意識したかもしれないけど)

 けどそれは思春期特有の甘酸っぱい勘違いってやつだ。
 親たちから許嫁だって言われて自分の気持ちを誤って認識してただけ。
 
 実際は主従関係に近い結婚となったはずだ。

 そんなものは本物の愛じゃない。

 だから。
 その点に関しては、俺はマキマの前からいなくなってよかったんだろう。


「……なんとか追いつきたいという気持ちでいっぱいでした。けれどルーデウスさまはわたしなんかでは追いつけないくらいの早さでどんどんお強くなられていったんです」

 当時の俺はまだ成人前だってのにダンジョンの奥地に潜むボス級のモンスターを倒したり、大人達に混じって武闘大会で優勝したり、帝政に意見を言って実際に解決したりしてたようだ。

「最終的には〈勇者〉として祝福を受けて果敢にも大魔帝ニズゼルファに戦いを挑まれました。本当に憧れの存在だったんです」

「でもさ。マキマは今、神聖騎士隊の隊長として仲間を引っぱってるんだろ? こうして俺にも会いに来てくれたわけだし」

 少なくとも。
 今の俺はマキマに憧れられるような存在じゃないって思った。

 【命中率0%】のデメリットスキル持ちでスライムすらろくに倒せないわけだし。

「ここへ来るまでの道中も大変だったんじゃないか?」

「いえ、ヤッザンとブライさまもおりましたから。ウェルミィさまをお守りするだけだったので特に大変ということはありませんでした。ウェルミィさまさえ生きていればルーデウスさまの中に眠る勇者の力を呼び起こすことができますし。……って、ごめんなさい。このことは……」

「べつにいいよ」

 また気まずい雰囲気に逆戻りしてしまう。
 
 すぐに俺は話題を変えた。


「話は変わるんだけどさ。すごいなその剣」

「え?」

「会ったときからずっと気になってたんだ」

 背中に装着した剣を指さしながら俺は言う。
 マキマは腰のホルダーにも白銀の刀を収めているけど背中の剣の方が目立ってる。
 
 その剣のヒルトは黄金色に輝き、ガードには赤く光る宝玉が埋め込まれていてとても美しいデザインをしていた。

 なんか懐かしい感じがするんだよなぁ。
 はじめて見る気がしないっていうのかな。

 そんなことを考えているとマキマがなにか思い出したように顔をハッとさせた。 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。

コル
ファンタジー
 大学生の藤代 良太。  彼は大学に行こうと家から出た瞬間、謎の光に包まれ、女神が居る場所へと転移していた。  そして、その女神から異世界を救ってほしいと頼まれる。  異世界物が好きな良太は二つ返事で承諾し、異世界へと転送された。  ところが、女神に転送された場所はなんと異世界の無人島だった。  その事実に絶望した良太だったが、異世界の無人島を生き抜く為に日ごろからネットで見ているサバイバル系の動画の内容を思い出しながら生活を開始する。  果たして良太は、この異世界の無人島を無事に過ごし脱出する事が出来るのか!?  ※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「ノベリズム」さんとのマルチ投稿です。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...