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1章-3
第28話
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自由市国ルーデウスが誕生してから数日後。
西日が差し込むデボンの森にドワーフ族の姿があった。
金髪のドワーフ族の男を先頭にふたつの影が続いていく。
「アニキ、そろそろ休みませんかぁー?」
「オイラたちモンスター倒すのも疲れたッス……」
「うるさいっ! 黙ってついて来んかい!」
とふたりを一喝したのはドワタンだ。
ドワーフ族特有のモスグリーンの腕を高く振りながらどしどしと森の中を歩いていた。
そんなドワタンのあとに続くようにふたりのドワーフ族が慌てながらついていく。
のっぽでのんびり口調が特徴のドワ太。
語尾に『~ッス』がつく小太りなドワ助。
彼らはドワタンの子分だった。
(父上もあんまりや。ワイをこんなモンスターの巣窟に放り出すなんて)
ドワタンはドワーフキングの息子で次代のキング候補である。
しかし。
その目に余る不真面目さがついにキングの逆鱗に触れ、子分ともども山から追放されてしまったのだ。
魔族に追われてランドマン大陸へ移り住むようになってからドワーフ族の状況は日々悪化していた。
そんな中にあって息子のような不真面目な男が長となれば一族の崩壊は免れないという考えがキングにはあった。
だから今回の追放は起こるべくして起きたことだった。
が、それをドワタンは理解できない。
彼はイライラしながら森の中を進み続ける。
(ワイがなにしたっていうんや)
追放決定のすぐあとドワタンは父親に許しを請うたのだが、キングはまるで聞く耳を持たなかった。
ほとんど強制的に山から追い出されたというここまでの経緯がある。
(こんな場所で死にたくなんかないで。なんとか戻してもらわんと)
どうにか父に許してもらいたい。
そんな風に考えるドワタンだったが不真面目な性格ゆえ邪な考えしか思いつかない。
今ドワタンは自由市国ルーデウスへと向かっていた。
イヌイヌ族が種族進化を果たし、オーガ族と一緒に暮らすようになったという話をキングと側近が話しているのをドワタンはたまたま盗み聞きしていた。
そして、それを今回利用できないかと彼は考えた。
(父上に許してもらうにはそれ相応の手土産が必要や)
そこでドワタンが思いついたのが種族のオーブを献上品として差し出すというものだった。
オーブは種族の根源とも呼べるもの。
これを所有していることで各種族はそれぞれ力を発揮することができているわけだ。
その貴重性ゆえにこれを欲する種族の長は多い。
これまでの歴史を振り返ってみてもこのオーブが争いの火種となってきたことも少なくない。
なぜならこれを手にすることでその種族の力を引き継ぐことができるからだ。
(イヌイヌ族とオーガ族のオーブを献上すれば間違いなく父上も許してくれるはずや)
キングは喜ぶし一族は強さを手に入れられるしまさに一石二鳥。
(ふたつの種族が一緒に暮らしてるんなら当然オーブもそこにふたつあるってことやな。こんなチャンスめったにないで)
少しはワイもドワーフ族のため役立つってことを見せとかんと、とドワタンは意気込む。
が、少しだけ気がかりもあった。
(ただ人族の男が一国の盟主やってるってのは謎やな。ま、両種族とも騙されただけなんやろけど。人族なんちゅーもんはろくでもないクズの集まりやからな~)
ドワーフ族には人族にこき使われ、武器や防具の生産を強いられてきたという暗い歴史がある。
そのためドワーフ族は人族に対して恨みを抱いている場合が多い。
ドワタンもそのうちのひとりだ。
(たぶんエアリアル帝国の生き残りがこそこそ隠れてて頃合いを見計らって表に出てきたんやろな。ランドマン大陸の人族は全滅した思ってたのになかなかしぶといヤツもおったもんやで。まるでゴキブリ並みや)
もちろん騙される側にも責任はあるとドワタンは考えていた。
(しっかしイヌイヌ族もオーガ族もほんまアホやなぁ~。人族なんぞに騙されてまったく同情できへんわ)
人族にオーブを管理されているくらいならワイがそれをもらったる。
そんな思いでドワタンは森の中を歩き続ける。
「アニキぃー。そろそろどこ向かってるか教えてくださいよぉー」
「せっかくこうしてアニキについて来たッス! 隠しごとはなしッスよ~」
「うるさい少しは黙って歩かんかい! ……とまぁけど、たしかにそーやな。お前らふたりはワイを信じてついてきたわけやし。特別に教えてやってもええわ」
ここでドワタンは子分たちに自分の考えを口にする。
それを聞いたドワ太とドワ助は目を大きく見開いて驚いた。
「自由市国ルーデウス! つい最近誕生したイヌイヌ族とオーガ族が暮らす国のことッスね!」
「これから行けるなんてラッキ~! どんなところかいちど見てみたかったんですよぉ~」
「アホかお前ら! 遊びに行くわけやないんやで!」
ぽかっ、ぽかっ!
「「い、痛いっ~~!?」」
ドワ太とドワ助にげんこつをお見舞いするとドワタンは簡単にプランを説明する。
「まずワイらは行商人のフリして街に入るんや。そんでオーブが隠されてる場所をさりげなく聞き出してそいつをバレないように盗むんや」
「なるほどー。さすがアニキっ!」
「オイラたち三人いればオーブの場所もすぐに見つかりそうッスね!」
「ま、そーゆうこっちゃ」
ドワタンはさらに息巻く。
「イヌイヌ族もオーガ族も騙されてるんや。だったらワイがオーブを取り返したるってただそれだけの話や」
「でもそれってよく考えれば横取りって言うんじゃないですかぁ?」
「なんともアニキらしい姑息な考えッス~!」
「お前らは余計なこと考えなくてええねん!」
ぽかっ、ぽかっ!
「「いてぇぇっ~~!?」」
「とにかくオーブさえ持ち帰れば父上も許してくれるはずや。お前らいくらアホでも演技くらいできるやろ。出し抜かなアカンのやからきちんとするんやで!」
「分かりましたぁー! 粗相がないよう頑張りますよー」
「そうッス! オーブをぜったい持ち帰るッス~!」
西日が差し込むデボンの森にドワーフ族の姿があった。
金髪のドワーフ族の男を先頭にふたつの影が続いていく。
「アニキ、そろそろ休みませんかぁー?」
「オイラたちモンスター倒すのも疲れたッス……」
「うるさいっ! 黙ってついて来んかい!」
とふたりを一喝したのはドワタンだ。
ドワーフ族特有のモスグリーンの腕を高く振りながらどしどしと森の中を歩いていた。
そんなドワタンのあとに続くようにふたりのドワーフ族が慌てながらついていく。
のっぽでのんびり口調が特徴のドワ太。
語尾に『~ッス』がつく小太りなドワ助。
彼らはドワタンの子分だった。
(父上もあんまりや。ワイをこんなモンスターの巣窟に放り出すなんて)
ドワタンはドワーフキングの息子で次代のキング候補である。
しかし。
その目に余る不真面目さがついにキングの逆鱗に触れ、子分ともども山から追放されてしまったのだ。
魔族に追われてランドマン大陸へ移り住むようになってからドワーフ族の状況は日々悪化していた。
そんな中にあって息子のような不真面目な男が長となれば一族の崩壊は免れないという考えがキングにはあった。
だから今回の追放は起こるべくして起きたことだった。
が、それをドワタンは理解できない。
彼はイライラしながら森の中を進み続ける。
(ワイがなにしたっていうんや)
追放決定のすぐあとドワタンは父親に許しを請うたのだが、キングはまるで聞く耳を持たなかった。
ほとんど強制的に山から追い出されたというここまでの経緯がある。
(こんな場所で死にたくなんかないで。なんとか戻してもらわんと)
どうにか父に許してもらいたい。
そんな風に考えるドワタンだったが不真面目な性格ゆえ邪な考えしか思いつかない。
今ドワタンは自由市国ルーデウスへと向かっていた。
イヌイヌ族が種族進化を果たし、オーガ族と一緒に暮らすようになったという話をキングと側近が話しているのをドワタンはたまたま盗み聞きしていた。
そして、それを今回利用できないかと彼は考えた。
(父上に許してもらうにはそれ相応の手土産が必要や)
そこでドワタンが思いついたのが種族のオーブを献上品として差し出すというものだった。
オーブは種族の根源とも呼べるもの。
これを所有していることで各種族はそれぞれ力を発揮することができているわけだ。
その貴重性ゆえにこれを欲する種族の長は多い。
これまでの歴史を振り返ってみてもこのオーブが争いの火種となってきたことも少なくない。
なぜならこれを手にすることでその種族の力を引き継ぐことができるからだ。
(イヌイヌ族とオーガ族のオーブを献上すれば間違いなく父上も許してくれるはずや)
キングは喜ぶし一族は強さを手に入れられるしまさに一石二鳥。
(ふたつの種族が一緒に暮らしてるんなら当然オーブもそこにふたつあるってことやな。こんなチャンスめったにないで)
少しはワイもドワーフ族のため役立つってことを見せとかんと、とドワタンは意気込む。
が、少しだけ気がかりもあった。
(ただ人族の男が一国の盟主やってるってのは謎やな。ま、両種族とも騙されただけなんやろけど。人族なんちゅーもんはろくでもないクズの集まりやからな~)
ドワーフ族には人族にこき使われ、武器や防具の生産を強いられてきたという暗い歴史がある。
そのためドワーフ族は人族に対して恨みを抱いている場合が多い。
ドワタンもそのうちのひとりだ。
(たぶんエアリアル帝国の生き残りがこそこそ隠れてて頃合いを見計らって表に出てきたんやろな。ランドマン大陸の人族は全滅した思ってたのになかなかしぶといヤツもおったもんやで。まるでゴキブリ並みや)
もちろん騙される側にも責任はあるとドワタンは考えていた。
(しっかしイヌイヌ族もオーガ族もほんまアホやなぁ~。人族なんぞに騙されてまったく同情できへんわ)
人族にオーブを管理されているくらいならワイがそれをもらったる。
そんな思いでドワタンは森の中を歩き続ける。
「アニキぃー。そろそろどこ向かってるか教えてくださいよぉー」
「せっかくこうしてアニキについて来たッス! 隠しごとはなしッスよ~」
「うるさい少しは黙って歩かんかい! ……とまぁけど、たしかにそーやな。お前らふたりはワイを信じてついてきたわけやし。特別に教えてやってもええわ」
ここでドワタンは子分たちに自分の考えを口にする。
それを聞いたドワ太とドワ助は目を大きく見開いて驚いた。
「自由市国ルーデウス! つい最近誕生したイヌイヌ族とオーガ族が暮らす国のことッスね!」
「これから行けるなんてラッキ~! どんなところかいちど見てみたかったんですよぉ~」
「アホかお前ら! 遊びに行くわけやないんやで!」
ぽかっ、ぽかっ!
「「い、痛いっ~~!?」」
ドワ太とドワ助にげんこつをお見舞いするとドワタンは簡単にプランを説明する。
「まずワイらは行商人のフリして街に入るんや。そんでオーブが隠されてる場所をさりげなく聞き出してそいつをバレないように盗むんや」
「なるほどー。さすがアニキっ!」
「オイラたち三人いればオーブの場所もすぐに見つかりそうッスね!」
「ま、そーゆうこっちゃ」
ドワタンはさらに息巻く。
「イヌイヌ族もオーガ族も騙されてるんや。だったらワイがオーブを取り返したるってただそれだけの話や」
「でもそれってよく考えれば横取りって言うんじゃないですかぁ?」
「なんともアニキらしい姑息な考えッス~!」
「お前らは余計なこと考えなくてええねん!」
ぽかっ、ぽかっ!
「「いてぇぇっ~~!?」」
「とにかくオーブさえ持ち帰れば父上も許してくれるはずや。お前らいくらアホでも演技くらいできるやろ。出し抜かなアカンのやからきちんとするんやで!」
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「そうッス! オーブをぜったい持ち帰るッス~!」
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