どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ

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1章-2

第21話

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 あたりに夕陽が差し込む五の鐘18時のころ。
 岩場前の平地に大量のほしにくの実を用意して俺たちは料理を作っていた。

 そんな中。

 入口の方を見張ってた辺境調査団の仲間が声を上げる。

「ティムさまやりました! やっぱり門が開きましたよ~!」

「作戦成功だな」

 俺が思いついた考えっていうのはこうして外でいい匂いがする料理を作ることでオーガ族のみんなに出てきてもらうってものだった。

 食糧難に陥っているかもしれないんだ。
 空腹の状況で大好物の焼けた匂いがすればぜったい外へ出てくるはずだって俺は予想してた。


 ドドドドドドドッ!!


 まんまと作戦に乗せられる形でオーガ族のみんながこっち目がけて走ってくる。

「慌てなくてもだいじょうぶだぞ~! 食べきれないくらいのほしにくの実があるから~!」

「順番にお配りしますので並んでくださいー!」

「「「ヴオオオォォォッーー!」」」

 俺とルーク軍曹がそう声をかけるとオーガ族のみんなはうれしそうな雄叫びを上げた。
 ちょっと怖い。


「待たれよ皆の者!」

 が、すぐに後方から鋭い声が上がる。
 声の主はゆっくりと集団の前に出た。

 こいつが女首領のガンフーか?

 蒼狼王族サファイアウルフズのみんなよりもさらにでかいのは正直驚きだ。
 それでいて体躯は筋骨隆々に鍛え上げられてる。

 間近で見ると迫力満点だなこりゃ。

「それは口にするな。種族の誇りを忘れたのか」

 女がそう言うとオーガ族のみんなは静かに押し黙る。

 全員自分たちの行いを恥じるような顔つきだ。
 ひょっとすると本能的に行動してしまったのかもな。
 
「べつに毒が入ってるわけじゃないぞ?」

「そんなことを言っているわけではない」

 オーガ族の女は俺の言葉をぴしゃりと遮断する。
 うーん、やっぱすごい威圧感だぜ。

「ルーク軍曹……久しぶりだな。それと先ほどは失礼した。事情があって門を閉じていたのだ」

「いえ。ふたたびお目にかかれてうれしいです」

「我もだ。以前と比べ見違えるように逞しくなったな。種族進化を成し遂げたというのは本当だったようだ」

「こちらのティムさまのお力によって我が一族は蒼狼王族へと進化することができたんです」

「そうかそなたか。蒼狼王族の支配者オーバーロードとなった人族の男というのは」

 そこで女は俺を一瞥する。

「ティム・ベルリだ。わけあって支配者なんてものをやらせてもらってる。あんたはオーガ族の首領ガンフーだな?」

「いかにも」

「悪かったな。こんなおびき出すような真似しちまって。けど、なにかやましいことをしに来たわけじゃないんだ。俺たちはただ食糧を渡そうと……」

「すまぬが我らはほかの種族からの施しは一切受けぬ」

 ガンフーは俺に背を向けると仲間たちに声を張り上げる。

「皆の者! 早く中へ戻るのだ!」

「「「御意っ!」」」

 オーガ族のみんなは首領の言葉に頷くと足並みを揃えて洞窟の方へと引き返していく。
 その姿に目を向けながらガンフーは口を開いた。

「じきに夜になる。夜になれば危険なモンスターも出てくるからな。そなたたちもすぐに帰った方がよい」

「待ってくださいガンフーさん! オーガ族は今食糧について重要な問題を抱えているのではないですか?」

「……」

「普段は冷静なオーガ族の皆さんがほしにくの実の匂いであれだけ押し寄せてくるなんて只事じゃないです。我々はなにか力になりたくて……」

「ルーク軍曹。その件についてはなにも答えることができぬ。なぜならそれは我々一族の問題だからだ」

「っ」

「わざわざこんなところまで来てもらってすまなかった。これからも皆で達者に暮らしてくれ」

 くるりと踵を返すとガンフーは集落へ戻ろうとする。
 俺は思わず声を上げていた。

「このままじゃオーガ族は滅ぶんじゃないのか?」

「……たとえそうだとしても。魔族に追われてこの地へ逃げてきたときから覚悟はできている。今の状況を作ったのはすべて首領である自分の責任。責任は我が取る」

「責任を取るって言ってもこのままなにもしなけりゃみんなで尽きるだけだろ?」

「我らは尽きるときも同じよ」

 どこか悲観したようにガンフーが呟く。
 その言葉だけは俺は理解できなかった。 

「そいつが首領の責任の取り方だって言うなら……それはあんたのエゴだよ」

「エゴ? フッ、分かっておらぬなそなたは。我が一族には『強き者こそ正義』という鉄の掟が存在する。強者に従ってここまで生き延びてきたのだ。我は今の一族の中で最強の存在。だから我の選択に皆は従うのだ」

「ふーん、なるほどね。強い相手の話なら聞くんだな」

「当然だ。それがオーガ族というもの」

「ふむふむ」

 何度か頷きながら俺はある決断をする。

「ならさ。俺と勝負しない?」

「なに?」

「それで俺がもし勝ったらきちんと話を聞いてほしいんだ。負けたらこのまま潔く帰るさ。これでどうかな」

「なにか勘違いしていないか? そなたは人族だ。我らの掟はオーガ族の中でのみ活きる。なぜ関係のないそなたの話に耳を傾けなければならないのだ?」

「それってひょっとしてアレか? 俺に負けるのを恐れてるってやつ?」

「……なんだと?」

 その言葉でガンフーのスイッチが入る。

 思ったとおりだ。
 腕に自信のある彼女ならこの挑発に乗ってくるって俺は考えていた。

「バカを言うな。我が恐れるなどあるものか。オーガ族は最強の種族だ。悪いが人族のそなたでは相手にならん。たとえスキルを使えたとしても同じこと」

「ならいいじゃん。負けることがないなら勝負を受けてくれてもさ。それともオーガ族は戦いを挑まれても背を向けるような種族なの? 蒼狼王族とはやけに違うな~」

「ティムさま!?」

 ルーク軍曹だけじゃなくて辺境調査団の仲間たちもザワザワと騒ぎはじめる。
 少し挑発しすぎた気もしたけど、結果的にガンフーを乗せることに成功した。

「フッ、いいだろう。本来ならばこうしたくだらない挑発は受けないのだがそなたはだいぶ強情そうだ。それに蒼狼王族の支配者となったという実力も気になる。この勝負、受けて立とう」

「サンキュー。恩に着るよ」

「その代わりこちらは一切容赦はせん。命が惜しくば今すぐ立ち去ることだ」

「その点ならだいじょうぶ。ぜんぜん問題ない」

「大した自信だな」

「それが俺の取り柄でもあるんでね。んじゃ準備ができ次第はじめようぜ」

 こうして俺たちは決闘を行うことになった。
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