上 下
17 / 68
1章-2

第17話

しおりを挟む
 あれから一週間が経過した。

 あの日の翌日、街の広場へと連れて行かれた俺はそこで蒼狼王族サファイアウルフズのみんなから正式に支配者オーバーロードと認められた。

 その後、あれよあれよと担ぎ上げられて今では高台にある3階建ての領主館バロンコートで生活を送っている。

 この領主館はロザリオテンの貴族が暮らしていたようだ。
 
 生活はさぞ優雅だったんだろう。
 館の中は隅々まで煌びやかな装飾が施されているし。
 
 それとこの高台は皇都のちょうど端に位置してたようで魔族の襲撃を奇跡的に免れたみたいだ。


 だから館の周辺はほとんど無傷のまま残されている。
 大きな庭園も荒らされずにそのままだ。

 イヌイヌ族のみんなはなにか大きな集会のときだけ使うくらいでこの領主館はほとんど使ってなかったようだな。
 
 霧丸からここをぜひ使ってほしいと言われたときはさすがに驚いた。
 ちょっと前までちんけな民家で生活してた俺にとってこの豪邸は贅沢極まりない。

 けど、俺がなにか言っても霧丸は「支配者さまには相応しい住いが必要です」の一点張りで。
 結局押し通される形でここで暮らすことになった。

 今は3階にある豪華な大部屋で何不自由なく生活を送っている。

 食事も配給係が毎回運んできてくれるし。
 三食昼寝つきで言うことなしだ。
 
 村人だったころは毎日陽が昇る前から森へ行ってせっせと薪集めをしてたから、ほんとすごい変わりようだ。

(こんな風に楽な生活を送ってていいのかなぁ)

 支配者なんて大それた名を名乗ってるけど、これといって俺はなにもしていない。
 領主館の1階にある集会の間に顔を出して霧丸やルーク軍曹の報告に頷いたりちょっと意見を言ったりしてるだけだ。


 この間に判明したことがふたつあった。

 まずはステータスに関してだ。

===========================

〈ティム・ベルリ〉

年齢:15歳 種族:人族
職業ジョブ:村人 
準位職:贈与士ギフター AP 1,000

レベル ∞
HP ∞
MP ∞
攻撃力 ∞
守備力 ∞
魔法力 ∞
ちから ∞
みのまもり ∞
きようさ ∞
すばやさ ∞

[スキルポイント] ∞
[所持ルビー] ∞ルビー
[所持アイテム] ほしにくの実×∞、ほしにくの種×∞

[固有スキル]
【命中率0%】
智慧の頂グレイトミラクル

[EXスキル]
【オートスキップ】

===========================

 レベル∞になっても微動だにしなかったAPが1,000に増えていたんだ。

 俺が蒼狼王族のみんなに支配者として認められる前はAP1だったからなにか関係があるのかもしれないと思ってこのことを霧丸とルーク軍曹に訊ねるも。

「申し訳ございません、ティムさま。この数値は我が一族の間でも長らく謎のままとなっておりまして……」

「族長の数値は100。吾輩の数値は50。ほかの者たちは基本的に1~10の間なのですが、やはりこれにどのような意味があるか分からないんです」

「やっぱりそうなんだ」

 まぁ現状なにか不利益があるわけでもないし。
 俺はいったんこれを気にしないことに決めた。 

 それよりも気がかりだったのはもうひとつの方だ。


 蒼狼王族に進化してパワーアップしたことで辺境調査団はかなりの兵を補充することができた。
 そのためモンスター退治の班とルーデウス村調査の班が分かれることになった。

 ルーク軍曹には調査班のリーダーを務めてもらって村の調査に何回か行ってもらったわけだけど、やはり発見することはできなかった。
 村を囲っていた外壁の痕跡すら見つけることができなかったんだ。

(【オートスキップ】を使って俺が昏睡してたのは一週間かそこらだ。そんな短期間のうちに村がどこかへ消えて無くなるなんてやっぱどう考えてもあり得ないぞ)

 それにあれだけ高くそびえ立っていた壁が綺麗さっぱりと消失するなんて正直考えられない話だった。


 疑問はほかにもある。

 実は領主館2階にある大広間には蒼狼王族のオーブが保管されている。
 それを目にして思ったんだ。
 
(そういえばうちの村にも種族のオーブがあったよな?)

 それを手にするために勇者さま一行はルーデウス村を訪れると村ではそう言われていた。
 
 でも今考えれば違和感がある。

 ルーデウス村は本当に小さな村にすぎない。
 そういう重要なものは本来ならば大きな街……それこそ皇都みたいなところに保管されているものじゃないのか?

(それに)

 エアリアル帝国って名前をはじめて耳にしたときにフラッシュバックしたあの光景はいったいなんだったのか。
 どうして玉座の間に飾られていた国旗の紋章とあの隠しダンジョンがあった結界の上に浮かび上がっていた紋章が似てたのか。

 俺には分からないことだらけだった。


「村の手がかりを掴めず大変申し訳ございません、ティムさま」

「いや、ルーク軍曹がそんな風に謝る必要なんてないよ。辺境調査団のみんなはよくやってくれてるから。悪いけど引き続き頼むよ」

「はい。かしこまりました」

 今度はモンスター退治に行かなければならないってことでルーク軍曹が先に集会の間を出る。
 それを見届けると、霧丸がなにかを思い出したように口にした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

処理中です...