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1章-1
第14話
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「すっげー! これぜんぶ食っていいのか!?」
「もちろんバウ。すべてティム殿のために用意したバウ」
その夜。
宴の迎賓席で俺のテンションは爆上がりしてた。
目の前のテーブルには豪華絢爛な料理がところ狭しと並べられている。
ミートローフ、そばめし、串カツのグリル、ブイヤベース、鯖の水煮、オムライス、鮭のレアフライ、大根ステーキ、ポテトサラダ、エビフライなど。
これらぜんぶ俺のために用意されたものだなんて……なんて贅沢なんだ!
「ティムさんが喜んでくれて吾輩たちもうれしいんだワン」
ルーク軍曹がそう言うとイヌイヌ族のみんなも大きく頷く。
これは知らなかったことなんだけどイヌイヌ族の料理の腕前はピカイチなんだそうだ。
「皆の者。我が一族に救いの手を差しのべてくださったティム殿に今いちど盛大な拍手を送るバウ!」
霧丸が大声でそう告げると会場からは大きな歓声が響き渡った。
ちょっと恥ずかしかったけど俺も手を振ってそれに応える。
「それではティムさんとのこの出会いを祝して乾杯だワン!」
「「「ワオーーン!」」」
グラスの鳴る音とともに宴がスタートした。
「それじゃ遠慮なく。いっただきまーす!」
さっそくわんぱくにパクつく。
(うっひょ~! どれもこれも美味いぜ!)
ほしにくの実は正直言って口に合わなかったけど目の前の料理はどれも絶品だった。
「はむはむっ! ばくばくっ! もぐもぐぅ~!」
それなりに腹も空いてたこともあって俺は無我夢中で箸をすすめた。
んっ~~! んまいっ!
「す、すごい食欲なんだワン……」
「けど見ていて気持ちがいいバウ! これだけ食べてもらえると振舞った甲斐があるバウ!」
それからあっという間に俺はテーブルに並べられた料理を平らげてしまった。
◇◇◇
「ふぅい~。ごちそーさまでした……けぷっ」
「見事な食べっぷりだったバウ。某もうれしいバウ」
「ぜんぶ美味かったぞ」
「満足していただけたようでなによりだワン」
そのあとは俺のために用意したっていうささやかな出し物を鑑賞することに。
イヌイヌ族の若い女子たちがステージで歌を歌ったり舞いを踊ったりしてもてなしてくれた。
腹も心も満たされて本当にしあわせな気分だ。
やがて宴もたけなわとなり。
明日も仕事があるからと皆が解散する中、俺は霧丸とルーク軍曹に誘われて一緒に酒を飲み交わしていた。
「これめちゃくちゃ美味いな! なんかやみつきになりそうな味だ」
「ティム殿の口に合ってよかったバウ~!」
「イヌイヌ族は酒についても一級品を作るんだワン~!」
ふたりとも酔いがまわってるのか楽しそうに肩を組んでいる。
バージルのおっちゃんたちと一緒に飲んだら楽しそうだな。
(!)
そこで俺はハッとした。
そうだ、ルーデウス村について訊いてみないと。
「霧丸。そういえば訊きたいことがあったんだ」
「? どうしたんだバウ~?」
そこで思い出したようにルーク軍曹が手を叩く。
「あ、そうだったワン! ティムさんがこの街に来たのはそれを族長に訊ねるためだったんだワン!」
「ルーデウス村って聞いたことないか?」
「ルーデウス村……?」
「ティムさんはその村の出身なんだワン。デボンの森の近くにあるって話なんだワン」
真剣な話をしたことで場の酔いも急に醒めてくる。
霧丸は腕を組んで考えるそぶりを見せるもやがて首を横に振った。
「申し訳ないけど聞いたことがないバウ」
「そうか」
「ミカエリス大陸で暮らしてるころから我らイヌイヌ族はいくつかの種族と交流を持ってきたバウ。でもランドマン大陸にそのような人族が暮らす村があったとはやはり聞いたことがないバウ」
霧丸が村について知らないってことが分かるとルーク軍曹は尻尾をシュンとさせて落ち込む。
が、俺は食い下がって訊ねた。
「5年前の魔族による侵攻も免れたと思うんだ。ちょっとでもいいんだ。なにかルーデウス村について聞いたことはないか?」
「エアリアル帝国が滅亡するまで追い込まれたバウ。デボンの森の近くにティム殿が言う村があったのだとすれば、きっと魔族の侵攻は免れなかったはずバウ」
「やっぱりそうなのか」
イヌイヌ族の族長である霧丸がここまで言うんだ。
今後デボンの森を探してもルーデウス村を見つけるのは難しいのかもしれない。
(でも……これってどういうことなんだ?)
考えられる可能性はひとつ。
村はあの外壁とともにどこかへ消えたってことだ。
いったいなぜ?
みんなどこに消えたっていうんだ?
「もちろんバウ。すべてティム殿のために用意したバウ」
その夜。
宴の迎賓席で俺のテンションは爆上がりしてた。
目の前のテーブルには豪華絢爛な料理がところ狭しと並べられている。
ミートローフ、そばめし、串カツのグリル、ブイヤベース、鯖の水煮、オムライス、鮭のレアフライ、大根ステーキ、ポテトサラダ、エビフライなど。
これらぜんぶ俺のために用意されたものだなんて……なんて贅沢なんだ!
「ティムさんが喜んでくれて吾輩たちもうれしいんだワン」
ルーク軍曹がそう言うとイヌイヌ族のみんなも大きく頷く。
これは知らなかったことなんだけどイヌイヌ族の料理の腕前はピカイチなんだそうだ。
「皆の者。我が一族に救いの手を差しのべてくださったティム殿に今いちど盛大な拍手を送るバウ!」
霧丸が大声でそう告げると会場からは大きな歓声が響き渡った。
ちょっと恥ずかしかったけど俺も手を振ってそれに応える。
「それではティムさんとのこの出会いを祝して乾杯だワン!」
「「「ワオーーン!」」」
グラスの鳴る音とともに宴がスタートした。
「それじゃ遠慮なく。いっただきまーす!」
さっそくわんぱくにパクつく。
(うっひょ~! どれもこれも美味いぜ!)
ほしにくの実は正直言って口に合わなかったけど目の前の料理はどれも絶品だった。
「はむはむっ! ばくばくっ! もぐもぐぅ~!」
それなりに腹も空いてたこともあって俺は無我夢中で箸をすすめた。
んっ~~! んまいっ!
「す、すごい食欲なんだワン……」
「けど見ていて気持ちがいいバウ! これだけ食べてもらえると振舞った甲斐があるバウ!」
それからあっという間に俺はテーブルに並べられた料理を平らげてしまった。
◇◇◇
「ふぅい~。ごちそーさまでした……けぷっ」
「見事な食べっぷりだったバウ。某もうれしいバウ」
「ぜんぶ美味かったぞ」
「満足していただけたようでなによりだワン」
そのあとは俺のために用意したっていうささやかな出し物を鑑賞することに。
イヌイヌ族の若い女子たちがステージで歌を歌ったり舞いを踊ったりしてもてなしてくれた。
腹も心も満たされて本当にしあわせな気分だ。
やがて宴もたけなわとなり。
明日も仕事があるからと皆が解散する中、俺は霧丸とルーク軍曹に誘われて一緒に酒を飲み交わしていた。
「これめちゃくちゃ美味いな! なんかやみつきになりそうな味だ」
「ティム殿の口に合ってよかったバウ~!」
「イヌイヌ族は酒についても一級品を作るんだワン~!」
ふたりとも酔いがまわってるのか楽しそうに肩を組んでいる。
バージルのおっちゃんたちと一緒に飲んだら楽しそうだな。
(!)
そこで俺はハッとした。
そうだ、ルーデウス村について訊いてみないと。
「霧丸。そういえば訊きたいことがあったんだ」
「? どうしたんだバウ~?」
そこで思い出したようにルーク軍曹が手を叩く。
「あ、そうだったワン! ティムさんがこの街に来たのはそれを族長に訊ねるためだったんだワン!」
「ルーデウス村って聞いたことないか?」
「ルーデウス村……?」
「ティムさんはその村の出身なんだワン。デボンの森の近くにあるって話なんだワン」
真剣な話をしたことで場の酔いも急に醒めてくる。
霧丸は腕を組んで考えるそぶりを見せるもやがて首を横に振った。
「申し訳ないけど聞いたことがないバウ」
「そうか」
「ミカエリス大陸で暮らしてるころから我らイヌイヌ族はいくつかの種族と交流を持ってきたバウ。でもランドマン大陸にそのような人族が暮らす村があったとはやはり聞いたことがないバウ」
霧丸が村について知らないってことが分かるとルーク軍曹は尻尾をシュンとさせて落ち込む。
が、俺は食い下がって訊ねた。
「5年前の魔族による侵攻も免れたと思うんだ。ちょっとでもいいんだ。なにかルーデウス村について聞いたことはないか?」
「エアリアル帝国が滅亡するまで追い込まれたバウ。デボンの森の近くにティム殿が言う村があったのだとすれば、きっと魔族の侵攻は免れなかったはずバウ」
「やっぱりそうなのか」
イヌイヌ族の族長である霧丸がここまで言うんだ。
今後デボンの森を探してもルーデウス村を見つけるのは難しいのかもしれない。
(でも……これってどういうことなんだ?)
考えられる可能性はひとつ。
村はあの外壁とともにどこかへ消えたってことだ。
いったいなぜ?
みんなどこに消えたっていうんだ?
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