どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ

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1章-1

第13話

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「ちょっと失礼するぞ」

 俺はベッドで横になってるイヌイヌ族のみんなに声をかける。

 なんでこんなところに人族の男がいるのかと皆不思議そうな視線を向けてくるもそれも一瞬のことだった。
 モンスターにやられた傷がとても痛むのか、全員すぐ辛そうに唸り声を上げはじめる。

 こりゃ放っておけない。
 速攻で治してあげないと。

 全体の傷を大回復させるには《人体復活IIヒールメシア》を使うのが有効的だけど完全に傷を治せるわけじゃない。
 さっきも言ったように〈回復魔法〉は詠唱者の魔法力によってその回復量が決まるからだ。
 
(でも今の俺の魔法力は∞だから。間違いなくみんなの傷を完治させられるはず)

 いちど深く息を吸い込んで集中すると俺は詠唱文を唱えた。


「幾星霜の時を駆ける生命の雫よ、透過なる安息の理へと導け――《人体復活IIヒールメシア》」


 シュルピィーーン!


 全体に淡い光の波が広がっていく。
 すると、唸り声で溢れ返っていた野戦教会のテントは驚きの声で溢れ返ることに。

「これだけの数の負傷者を一瞬で完治させちゃったのかワン!?」

 外で様子を見ていたルーク軍曹が慌てて中へ飛び込んでくる。

「なんとかなったみたいだ」

「あ、あり得ないワン! ティムさんはどこまですごいんだワン!?」

 顔に両手を当てながらルーク軍曹はぶったまげていた。
 俺としてもちょっと驚いている。

 まさかこんな一瞬のうちにみんなの傷を完治させられるなんて。


「キャンキャン!」
「きゃるるぅ~~!」
「ワウワウォーン!」
 
「どわぁっ!?」

 ベッドで寝てたイヌイヌ族のみんなが俺目がけて一斉に飛びついてくる。
 んで、そのまま大勢に取り囲まれてすごい状況に。

 尻尾をうれしそうに振った全員から全身をぺろぺろと舐めまわされ、抱きつかれたりハグされたり。

「ルーク軍曹ぉ……! ちょっと助けてくれぇ~!」

「みんなティムさんにとても感謝してるんだワン! 一族最大の愛情表現なんだワン!」

「ぅっ……く、苦しい……」

 それからしばらくの間。
 熱烈な愛情表現(?)は続き、俺はみんなから感謝されるのだった。



 ◇◇◇


 
「はぁ、はぁっ……。やっと……解放されたぞ……」

「みんなティムさんのことが好きになったんだワン!」

「まさか……こんなことになるとは、思ってなかったぜ……」

「我がイヌイヌ族は受けた恩はかならず返すんだワン。みんなまだまだ感謝したいはずだワン!」

「ぺろぺろ舐めまわすのだけはもう勘弁してくれぇ……」

 そんなことを話しながら歩いているといつの間にか2階建ての大きな家の前に到着する。
 
「この中に族長がいるんだワン」

「ずいぶんでかい家だな」

「高台にはもっと大きな館があるワン! けどここはその次に大きい住居なんだワン」

 もともとロザリオテンの金持ちが暮らしていたんじゃないかって話だ。
 どうりで大きいわけだ。

「族長! ルーク軍曹なんだワン!」

 ドアをコンコンとノックしてそう呼びかけると家の中から声が返ってくる。
 どうやら入っていいと言ってるみたいだ。

「失礼しまーす」

 ルーク軍曹のあとに続いて俺も家の中へ足を踏み入れる。

 すると、奥の広間に人影が見えた。
 和ものの敷物の上に座布団を置き、そこに大柄なイヌイヌ族の男が座っている。

(この方が族長か)

 イヌイヌ族の族長は片眼に黒い眼帯をして和装のかみしもを羽織っていた。

 小柄なイヌイヌ族の中ではずいぶんと体格がいい。
 俺とほとんど変わらない背丈をしてる。

「人族が我がイヌイヌタウンにやって来るとは珍しいバウ」

 目元までかかったふさふさの眉を動かしながら族長はそんなことを口にした。

「族長、この人はティムさんっていうんだワン。とてもお世話になったんだワン」

「突然上がり込んで悪いな。ちょっと縁があってここまで案内してもらったんだ」

「なるほどバウ。ルーク軍曹が連れてきた御方なら信頼できるバウ」

 そこで族長は姿勢を正すと名前を明かした。

「某の名は霧丸と申すバウ。イヌイヌ族の族長を務めているバウ」

「族長は魔族の侵攻によって命を落とした先代に代わって一族を率いているんだワン」

「そうだったのか。俺はティム・ベルリだ。よろしくな」

「こちらこそよろしくバウ」

 俺と霧丸が握手するのを見届けるとルーク軍曹はここまでの経緯を簡単に話しはじめた。



 ◇◇◇



「……そんなことが。ティム殿、我が一族が大変お世話になったバウ。心から感謝したいバウ」

「どれも俺が勝手にしたことだから。そこまで言われるとなんか申し訳なくなってくるぞ」

「これだけの恩を受けたのだから感謝して当然なんだワン!」

「ルーク軍曹の言うとおりバウ。異種族にもかかわらず手助けしてくれたことが本当にうれしいバウ」

 そこで霧丸はポン!と手を叩くと側近のイヌイヌ族になにかを告げる。

「せっかくイヌイヌタウンまで来てもらったバウ。今夜は宴を開くことに決めたバウ。ぜひ参加してほしいバウ」

「いいのか? 俺が参加しても」

「なにを言ってるバウ。ティム殿のための宴バウ」

「そうなんだワン! ティムさんのために一族が腕によりをかけて豪華な食事を振舞うんだワン!」

 霧丸もルーク軍曹もなぜか大盛り上がりだ。
 どうやら俺が宴に参加するってのは決定事項らしい。

 村を出てからほしにくの実しか食べてないからこちらとしては願ったりなんだけど。

(でも本当にいいのかな)

 こっちが勝手にやったことをめちゃくちゃ感謝されて何十倍にもなって恩を返されてる気がするぞ。

 けど。
 それから俺がなにか言ってもふたりはぜひ参加してほしいの一点張り。

 結局、俺はイヌイヌ族の宴に参加することになった。
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