どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ

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1章-1

第11話

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 その道すがら。

 ルーク軍曹からあんな高度な魔法を同時に使えるなんて今どれくらいのレベルなのかって訊ねられたけど俺は適当に言ってごまかした。

 なんでこんなことを訊かれたのかといえば、生涯で習得できる『特技』や『魔法』には限りがあるからだ。
 つまりどんなにレベルを上げても獲得できるスキルポイントには限界があるってわけで。

 生涯に習得できる『特技』や『魔法』は20種類が平均と言われてる。

 だからどの種族も自分がどんな『特技』や『魔法』を習得するかはかなり悩む問題だったりする。

 けど今の俺のスキルポイントは∞。
 どれでも好きに習得し放題ってわけだ。

(まぁそんなこと伝えてもどうせ信じてもらえないから言わなかっただけなんだけど)

 レベル∞なんて聞いてもちょっとなに言ってるか分かんない状態だろうし。

 それに俺には【命中率0%】っていうデメリットスキルがある。
 ぶっちゃけモンスターは一切倒せないわけだからルーク軍曹たちよりも弱いって自覚してる。

(そんなヤツに手助けされたって分かったらショックだろうなぁ)
 
 知らぬが仏って言葉もあるくらいだし、ここは黙っておくのがお互いのためにベストだ。


 そんなことを考えながら森の中をルーク軍曹と一緒に歩いていると。

(あれかな?)

 なにやら街の入口が見えてくる。
 
 尻尾をビシッと高く立てるとルーク軍曹は指さしながら言った。

「ティムさん。あれが我がイヌイヌ族の住処イヌイヌタウンなんだワン」

「本当にデボンの森のすぐ近くなんだな」

「そうなんだワン」

 道中、俺はイヌイヌタウンが皇都ロザリオテンの跡地を利用してるという話を聞いていた。

 さっき廃墟を見かけたわけだけどこっちの方はそこまで壊されずに済んでいたみたいだな。
 居住スペースに使えそうだったからこのあたりをイヌイヌタウンとして利用してるんだろう。


 デボンの森を抜けると小魚たちが泳ぐ澄みきった川にぶつかる。
 それも越えてしばらく歩くと入口の門が姿を現した。

 近くには大きな農園と牧場があって一気に営みが感じられる光景が目の前に広がる。
  
「ずいぶんとでかいな」

「現状食べるものには困ってないんだワン」

 特に牧場の存在感が際立ってる。
 ルーデウス村にも家畜を飼育する小屋はあったけどこんな立派な草地はなかった。

 少しだけ牧場を覗いて見る。 

 中では牛や豚、羊や鶏などが多く飼養されていた。

 不思議なことにモンスターは動物を襲わない。
 だから魔族の侵攻とやらがあってもこんな風に生き延びることができたのかもな。

 どちらにせよどの種族にとっても動物はなくてはならない食料源のひとつだった。

「ようこそイヌイヌタウンへ。ティムさんを歓迎するんだワン」

「おう」


 ルーク軍曹に案内される形で街の中へと足を踏み入れる。

 街の中ではイヌイヌ族がふつうに生活を送っていた。
 すれ違うたびにチラチラとこっちに視線が向くけど特になにか話しかけられるようなことはなかった。

 まあルーク軍曹が隣りにいるわけだし。
 なにか事情があって人族の男を招いてると思ってくれたのかもしれない。

(にしてもさすがは皇都の跡地を利用してるだけのことはあるな)

 イヌイヌタウンはルーデウス村とは違ってあらゆる街の機能が整備されていた。
 水路などのインフラもロザリオテンのものをそのまま使っているようだ。

 そんな街の景色を見て一瞬懐かしさを感じる。

 いや……なんで懐かしさを感じるんだ?
 生まれてからこの方、村を出たことがないはずなのに。
 
(まいっか)

 おかしなことが立て続けに起こっているせいで俺はもう細かいことを気にしなくなっていた。


 それから広場のような場所に出ると白いテントがいくつか建ち並ぶ光景が目に飛び込んでくる。

「あのテントはなんだ?」

「あれは野戦教会の臨時テントなんだワン」

「野戦教会?」

 中を覗くと傷ついたイヌイヌ族がベッドに多く横たわっているのが確認できた。

「みんなこのあたりのモンスターに襲われたんだワン」

「そういえばさっきそんなこと言ってたな」

「前はこんなに犠牲者も多くなかったワン」

 襲われたのはどうやら辺境調査団の兵だけじゃなかったらしい。

 たしかに外には結界も張ってなかったしこれじゃ簡単に街の中に侵入されてしまうはずだ。
 だからルーク軍曹たちはモンスターを退治してたのか。

 この光景を目にした後だとどことなく街全体を悲壮感が覆ってるような印象を受けてしまう。

「〈回復魔法〉でも治せないのか?」

「それが難しいんだワン。街には魔法力のあるイヌイヌ族がいないんだワン」

 尻尾をシュンとさせながらルーク軍曹はふたたび歩きはじめる。
 その後ろに続きながら俺は思い出していた。

(そっか。たしかイヌイヌ族はもともと魔法力が低い種族だったな)

 〈回復魔法〉は詠唱者の魔法力によってその回復量が大幅に左右される。

 人族の間ではこういうのは〈回復術師〉の仕事だ。
 〈回復術師〉が所有する固有スキル【治癒の竪琴】は、〈回復魔法〉の回復量を大幅に上昇させることができるというもの。

 だから人族の世界では〈回復術師〉はこれを生業にして稼いでいる場合が多い。

 ルビーが∞にある今なら惜しみなく依頼することができるんだけどそもそも人族はこの街にいないだろうし……この案はないか。


 とここでふと思いつく。

(俺なら全員の傷を完全に癒すことができるんじゃないか?)

 今の俺の魔法力は∞。
 しかもスキルポイントも∞にあるわけで。

 どんな〈回復魔法〉も覚え放題だ。

「ティムさん、あの大きな家に族長がいるんだワン。もうすぐだワン」

「すまん。ちょっと先に行っててくれないか?」

「?」

「用事を思い出したんだ。すぐ向かうから」

「ティムさん!? どうしたんだワン!?」

 俺はその場にルーク軍曹を残すと来た道を走って戻りはじめた。
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