3 / 68
1章-1
第3話
しおりを挟む
わけも分からないまま俺が連れて来られたのは村の祭殿だった。
(なんでこんな時間にみんな集まってるんだ?)
祭殿には村人のほとんどが集合していた。
そして、壇上にいる村長に父さんが俺を差し出す。
「村長、申し訳ございません。うちの息子が『勇者さま一行は本当に村にやって来るのか』などと言い出しまして」
「ふむ。それはまことか?」
「はい。ほら、お前もどういうわけかきちんと村長に説明しろ」
「え? 俺っ?」
説明って言われても……。
そんな風に俺が言い淀んでいるとまわりがざわざわと騒ぎはじめる。
「不届き者だ!」
「なんて恥知らずなことを言い出すんでしょう!」
「そんなことを考えている者はこの村に必要ないわ」
「今すぐ追い出すべきだ!」
「ちょっと待ってくれ、みんな! 俺はただ単に気になってたことを訊いただけで……」
俺がそう弁解しようとしていると村長がゆっくりと口を開く。
「この者をルーデウス村から永久追放することにする」
は……永久追放……?
なに?
俺の聞きまちがい?
が、どうやらそういうわけじゃないらしい。
まわりの村人たちは足並みを揃えて「追放だ! 追放!」と声高に叫んでいた。
おかしい。
どうして勇者さまたちが本当にやって来るのかって訊いただけで、村から追い出されなくちゃならないんだ?
「母さんもなんか言ってくれよ。こんなのっておかしいじゃないか」
近くまで来ていた母さんに助けを求めるも。
「なんて子に育ってしまったのかしら……悪夢だわ……」
と、まるで聞く耳を持たない。
父さんもさっきから一緒になって「追放だ!」と声を張り上げてるし。
ダメだ。
父さんも母さんも話を聞いてくれない。
そこでふとバージルのおっちゃんの姿が目に入る。
「おっちゃん! おかしいだろ追放なんて。なんか言ってやってくれよ」
そんな風に助けを求めるが、バージルのおっちゃんはこれまで見たことないくらい冷たい表情を浮かべていた。
「とっとと村から出ていけ。そんなこと言い出すヤツがこの村にいる資格はねぇ」
「な、なんで……! どうしちゃったんだよみんな……!?」
こうなったら信じられる相手はひとりしかない。
俺は祭壇の下に降りると人混みをかき分けて妹の姿を探す。
いた!
「ヨルっ! お前からもなにか言ってくれ! このままじゃ俺、本当に村から追い出されちまう……!」
「えっとね、お兄ちゃん」
どうしてだろうか。
目の前のヨルの表情は不思議なくらい明るかった。
「もう顔なんか一生見たくないよ。お願いだから早く消えてね♪」
「!?」
それで俺の心は完全に砕かれた。
村の男たちに強引に連れ出される形で俺はルーデウス村から追放されてしまう。
「二度と我が村の敷居をまたがせるな」
そんな村長の言葉がいつまでも頭の中でリフレインした。
◇◇◇
ドンドン、ドンドン!
「おいっ! たのむ、開けてくれ!」
外壁の門を精一杯叩くも扉は開かない。
それから何度叩いてみても結果は同じだった。
門がぜったいに開かないってことが分かると、自分が村を追放されたっていう事実がようやく現実のものとなる。
(俺がなにしたっていうんだ)
外の森にはモンスターがうようよと棲息している。
夜、こんな開けた場所に居続けたらいつ襲われるか分からなかった。
ポケットに入れっぱなしになってた金のメダルを取り出す。
(あんなヨル……はじめて見た。いったいどうしちゃったんだよ)
ヨルだけじゃない。
父さんも母さんも、バージルのおっちゃんも村長も、村のみんなも。
普段は本当にいい人たちであんな風に豹変するとかあり得ない。
けどいつまでも嘆いてるわけにはいかなかった。
「とりあえずどこか身を隠せそうな場所に移動するしかないな」
こんなところにいたらみすみすモンスターに殺されるようなもんだ。
こういうときこそ人としての真価が問われる。
「うん、前向きに考えよう。きっとこれからいいことがあるに違いない!」
たとえカラ元気でもいい。
そんな風に思いながら村の敷地を出ようとする。
すると突然。
目の前に光のウィンドウが立ち上がった。
そこにはこんな内容が表示されていた。
===========================
【煌世主の意志】を感知しました。
EXスキルが覚醒します。
===========================
「んんっ? なんだこれ」
煌世主の意志?
EXスキル?
画面に触れてみるも特に反応はない。
いや、いきなり意味が分からないんだが。
この光のウィンドウは、大気中に存在する精霊粒子が集まって仮想的に表示される案内板みたいなものだ。
司祭さまによる祝福を受け、『天恵の儀式』で樹妖精ドライアドと契約を終えた者は「ステータスオープン」と微精霊に呼びかけることで、好きなタイミングでこのウィンドウを起動させることができる。
わけだけど。
(こっちが呼びかけずにこんな風に起動したのははじめてのことだな)
ひとまずアナウンス画面を閉じると、俺は改めて「ステータスオープン」と唱えて自分のステータスを表示させた。
===========================
〈ティム・ベルリ〉
年齢:15歳 種族:人族
職業:村人 AP 1
レベル 1
HP 10/10
MP 5/5
攻撃力 5
守備力 5
魔法力 5
ちから 3
みのまもり 3
きようさ 3
すばやさ 3
[スキルポイント] 0
[所持ルビー] 0ルビー
[所持アイテム] なし
===========================
そこには見慣れたステータスが表示されていた。
見たところ特に変わりはない。
このウィンドウは便利な代物で、ここで自分のステータスを確認できるほか、『特技』や『魔法』の習得もできたりする。
まあ、スキルポイントが0だからどの道習得はできないんだけど。
そんな風にステータス画面をスクロールしていくと。
「あれ?」
スキルの項目に見たことのない名前が追加されていることに気づく。
「EXスキル【オートスキップ】? は?」
まさかさっきアナウンス画面に表示されてたEXスキルがうんぬんって……これのことか?
ぴょん! ぴょん!
(げっ! モンスター!?)
ウィンドウに目を奪われてるうちに俺はいつの間にかスライムの集団に取り囲まれてしまっていた。
すぐに近くに落ちていた木の棒を拾い上げるとそれを武器代わりに応戦しようと試みる。
が。
スカッ! スカッ!
俺の攻撃はスライムに当たらない。
それも見事なほどきれいに。
そこで俺は思い出した。
村人の固有スキルが【命中率0%】っていうデメリットしかないスキルだってことを。
(なにやってんだよ! こんなことしても意味ないじゃん!?)
こっちが攻撃も当てられないほどのザコだってことが分かったんだろう。
「スラ! スラ!」
スライムたちはさらに仲間を呼び寄せると一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「ちょ、ちょっとタイム……! うわあああぁっ~~~!?」
木の棒をその場に投げ捨てると一目散にこの場から逃げ出した。
◇◇◇
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……。なんとか逃げのびたぞぉ……」
5分くらい一心不乱に走りまわってようやく安全なところを見つけた。
村の外に出たことで村人の最弱っぷりを痛感する。
【命中率0%】という固有スキルがある以上、モンスターにはぜったい攻撃が当たらない。
だから村人はほとんど村の外に出ないんだ。
ちなみにこの固有スキルはジョブによって決まってしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】。
どの村人もこれと同じスキルを所有することになる。
人族は15歳になって『天恵の儀式』を迎えると司祭さまからジョブを授かることになる。
このとき、固有スキルも一緒に授かることになるのだ。
===========================
【戦士職】
剣士、武闘家、アーチャー、盗賊
アサシン、暗黒騎士、ウォリアー、モンスター使い
トリックスター、ネクロマンサー、弓使い
【魔法職】
魔術師、魔法剣士、回復術師、薬師
道具使い、幻術師、召喚師
【聖職】
司祭、シスター、予言者
【文化職】
商人、占い師、踊り子、大道芸人
錬金術師、吟遊詩人、船乗り、羊飼い
算術師、大工、彫刻士、調理師、村人
===========================
ここに挙げたジョブはほんの一例だ。
そのほかにも王族系のジョブや〈剣聖〉〈バトルマスター〉などの特殊系のジョブも存在する。
この中でも〈村人〉は最底辺のジョブと言っていい。
(はっきり言って【命中率0%】なんてハズレもいいところだし)
けど悲しいかな。
これだけジョブがあったとしても、将来就けるジョブの素質は生まれながら決まっているって言われてるんだよなぁ。
15歳になって〈剣士〉のジョブを授かる者は生まれながらその素質があるし、〈魔術師〉のジョブを授かる者もまた生まれながらその素質を持っている。
つまりそれは〈村人〉にも言えることで。
〈村人〉の家系に生まれた以上、『天恵の儀式』でほかのジョブを授かる望みはほとんどない。
ごたぶんに洩れず、俺も〈村人〉のジョブを授かったわけだ。
それからしばらく身を隠せそうな場所を探して歩いていると。
「ん?」
森の中に結界が張られているのを確認する。
(どうしてこんなところに)
結界には何種類か存在して、それがどういう役割のものなのか色で判別することができる。
たとえば赤色の結界なら自分たち以外の種族の侵入を防ぐことができる。
目の前に張られた結界の色は黄色。
ということはこいつはモンスターの侵入を防ぐ結界ってわけだ。
ルーデウス村に張られた結界も黄色だったりする。
んで、なんで俺が結界を見て驚いたのかっていうとそれには理由がある。
実はこの結界は〈賢者〉の固有スキルである【天空侵犯】を使わないと張ることができない。
てことは〈賢者〉がこいつを張ったってわけで。
(賢者がこの森までやって来たってことか?)
もちろんルーデウス村にそんな偉人は存在しない。
村長が〈司祭〉のジョブを持っているくらいだ。
そう考えると村の結界も〈賢者〉が張ったってことになるな。
うーん。
考えれば考えるほどよく分からなくなる。
「ま、いっか」
ひとまずこれで助かった。
結界の中に身を隠せばモンスターに襲われる心配もないだろうし。
そう思って結界に近寄る。
するとその結界の上に見覚えのある紋章が浮かび上がってることに俺は気づいた。
(この紋章……つい最近どこかで見たような)
けど、思い出せたのはそこまでだった。
結界の中へ足を踏み入れると俺は近くの木にもたれかかる。
「はぁ、とんでもない一日だったわ」
いちど腰をかけてしまうとすぐに眠気がやって来た。
そのまま俺はウトウトして……。
(なんでこんな時間にみんな集まってるんだ?)
祭殿には村人のほとんどが集合していた。
そして、壇上にいる村長に父さんが俺を差し出す。
「村長、申し訳ございません。うちの息子が『勇者さま一行は本当に村にやって来るのか』などと言い出しまして」
「ふむ。それはまことか?」
「はい。ほら、お前もどういうわけかきちんと村長に説明しろ」
「え? 俺っ?」
説明って言われても……。
そんな風に俺が言い淀んでいるとまわりがざわざわと騒ぎはじめる。
「不届き者だ!」
「なんて恥知らずなことを言い出すんでしょう!」
「そんなことを考えている者はこの村に必要ないわ」
「今すぐ追い出すべきだ!」
「ちょっと待ってくれ、みんな! 俺はただ単に気になってたことを訊いただけで……」
俺がそう弁解しようとしていると村長がゆっくりと口を開く。
「この者をルーデウス村から永久追放することにする」
は……永久追放……?
なに?
俺の聞きまちがい?
が、どうやらそういうわけじゃないらしい。
まわりの村人たちは足並みを揃えて「追放だ! 追放!」と声高に叫んでいた。
おかしい。
どうして勇者さまたちが本当にやって来るのかって訊いただけで、村から追い出されなくちゃならないんだ?
「母さんもなんか言ってくれよ。こんなのっておかしいじゃないか」
近くまで来ていた母さんに助けを求めるも。
「なんて子に育ってしまったのかしら……悪夢だわ……」
と、まるで聞く耳を持たない。
父さんもさっきから一緒になって「追放だ!」と声を張り上げてるし。
ダメだ。
父さんも母さんも話を聞いてくれない。
そこでふとバージルのおっちゃんの姿が目に入る。
「おっちゃん! おかしいだろ追放なんて。なんか言ってやってくれよ」
そんな風に助けを求めるが、バージルのおっちゃんはこれまで見たことないくらい冷たい表情を浮かべていた。
「とっとと村から出ていけ。そんなこと言い出すヤツがこの村にいる資格はねぇ」
「な、なんで……! どうしちゃったんだよみんな……!?」
こうなったら信じられる相手はひとりしかない。
俺は祭壇の下に降りると人混みをかき分けて妹の姿を探す。
いた!
「ヨルっ! お前からもなにか言ってくれ! このままじゃ俺、本当に村から追い出されちまう……!」
「えっとね、お兄ちゃん」
どうしてだろうか。
目の前のヨルの表情は不思議なくらい明るかった。
「もう顔なんか一生見たくないよ。お願いだから早く消えてね♪」
「!?」
それで俺の心は完全に砕かれた。
村の男たちに強引に連れ出される形で俺はルーデウス村から追放されてしまう。
「二度と我が村の敷居をまたがせるな」
そんな村長の言葉がいつまでも頭の中でリフレインした。
◇◇◇
ドンドン、ドンドン!
「おいっ! たのむ、開けてくれ!」
外壁の門を精一杯叩くも扉は開かない。
それから何度叩いてみても結果は同じだった。
門がぜったいに開かないってことが分かると、自分が村を追放されたっていう事実がようやく現実のものとなる。
(俺がなにしたっていうんだ)
外の森にはモンスターがうようよと棲息している。
夜、こんな開けた場所に居続けたらいつ襲われるか分からなかった。
ポケットに入れっぱなしになってた金のメダルを取り出す。
(あんなヨル……はじめて見た。いったいどうしちゃったんだよ)
ヨルだけじゃない。
父さんも母さんも、バージルのおっちゃんも村長も、村のみんなも。
普段は本当にいい人たちであんな風に豹変するとかあり得ない。
けどいつまでも嘆いてるわけにはいかなかった。
「とりあえずどこか身を隠せそうな場所に移動するしかないな」
こんなところにいたらみすみすモンスターに殺されるようなもんだ。
こういうときこそ人としての真価が問われる。
「うん、前向きに考えよう。きっとこれからいいことがあるに違いない!」
たとえカラ元気でもいい。
そんな風に思いながら村の敷地を出ようとする。
すると突然。
目の前に光のウィンドウが立ち上がった。
そこにはこんな内容が表示されていた。
===========================
【煌世主の意志】を感知しました。
EXスキルが覚醒します。
===========================
「んんっ? なんだこれ」
煌世主の意志?
EXスキル?
画面に触れてみるも特に反応はない。
いや、いきなり意味が分からないんだが。
この光のウィンドウは、大気中に存在する精霊粒子が集まって仮想的に表示される案内板みたいなものだ。
司祭さまによる祝福を受け、『天恵の儀式』で樹妖精ドライアドと契約を終えた者は「ステータスオープン」と微精霊に呼びかけることで、好きなタイミングでこのウィンドウを起動させることができる。
わけだけど。
(こっちが呼びかけずにこんな風に起動したのははじめてのことだな)
ひとまずアナウンス画面を閉じると、俺は改めて「ステータスオープン」と唱えて自分のステータスを表示させた。
===========================
〈ティム・ベルリ〉
年齢:15歳 種族:人族
職業:村人 AP 1
レベル 1
HP 10/10
MP 5/5
攻撃力 5
守備力 5
魔法力 5
ちから 3
みのまもり 3
きようさ 3
すばやさ 3
[スキルポイント] 0
[所持ルビー] 0ルビー
[所持アイテム] なし
===========================
そこには見慣れたステータスが表示されていた。
見たところ特に変わりはない。
このウィンドウは便利な代物で、ここで自分のステータスを確認できるほか、『特技』や『魔法』の習得もできたりする。
まあ、スキルポイントが0だからどの道習得はできないんだけど。
そんな風にステータス画面をスクロールしていくと。
「あれ?」
スキルの項目に見たことのない名前が追加されていることに気づく。
「EXスキル【オートスキップ】? は?」
まさかさっきアナウンス画面に表示されてたEXスキルがうんぬんって……これのことか?
ぴょん! ぴょん!
(げっ! モンスター!?)
ウィンドウに目を奪われてるうちに俺はいつの間にかスライムの集団に取り囲まれてしまっていた。
すぐに近くに落ちていた木の棒を拾い上げるとそれを武器代わりに応戦しようと試みる。
が。
スカッ! スカッ!
俺の攻撃はスライムに当たらない。
それも見事なほどきれいに。
そこで俺は思い出した。
村人の固有スキルが【命中率0%】っていうデメリットしかないスキルだってことを。
(なにやってんだよ! こんなことしても意味ないじゃん!?)
こっちが攻撃も当てられないほどのザコだってことが分かったんだろう。
「スラ! スラ!」
スライムたちはさらに仲間を呼び寄せると一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「ちょ、ちょっとタイム……! うわあああぁっ~~~!?」
木の棒をその場に投げ捨てると一目散にこの場から逃げ出した。
◇◇◇
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……。なんとか逃げのびたぞぉ……」
5分くらい一心不乱に走りまわってようやく安全なところを見つけた。
村の外に出たことで村人の最弱っぷりを痛感する。
【命中率0%】という固有スキルがある以上、モンスターにはぜったい攻撃が当たらない。
だから村人はほとんど村の外に出ないんだ。
ちなみにこの固有スキルはジョブによって決まってしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】。
どの村人もこれと同じスキルを所有することになる。
人族は15歳になって『天恵の儀式』を迎えると司祭さまからジョブを授かることになる。
このとき、固有スキルも一緒に授かることになるのだ。
===========================
【戦士職】
剣士、武闘家、アーチャー、盗賊
アサシン、暗黒騎士、ウォリアー、モンスター使い
トリックスター、ネクロマンサー、弓使い
【魔法職】
魔術師、魔法剣士、回復術師、薬師
道具使い、幻術師、召喚師
【聖職】
司祭、シスター、予言者
【文化職】
商人、占い師、踊り子、大道芸人
錬金術師、吟遊詩人、船乗り、羊飼い
算術師、大工、彫刻士、調理師、村人
===========================
ここに挙げたジョブはほんの一例だ。
そのほかにも王族系のジョブや〈剣聖〉〈バトルマスター〉などの特殊系のジョブも存在する。
この中でも〈村人〉は最底辺のジョブと言っていい。
(はっきり言って【命中率0%】なんてハズレもいいところだし)
けど悲しいかな。
これだけジョブがあったとしても、将来就けるジョブの素質は生まれながら決まっているって言われてるんだよなぁ。
15歳になって〈剣士〉のジョブを授かる者は生まれながらその素質があるし、〈魔術師〉のジョブを授かる者もまた生まれながらその素質を持っている。
つまりそれは〈村人〉にも言えることで。
〈村人〉の家系に生まれた以上、『天恵の儀式』でほかのジョブを授かる望みはほとんどない。
ごたぶんに洩れず、俺も〈村人〉のジョブを授かったわけだ。
それからしばらく身を隠せそうな場所を探して歩いていると。
「ん?」
森の中に結界が張られているのを確認する。
(どうしてこんなところに)
結界には何種類か存在して、それがどういう役割のものなのか色で判別することができる。
たとえば赤色の結界なら自分たち以外の種族の侵入を防ぐことができる。
目の前に張られた結界の色は黄色。
ということはこいつはモンスターの侵入を防ぐ結界ってわけだ。
ルーデウス村に張られた結界も黄色だったりする。
んで、なんで俺が結界を見て驚いたのかっていうとそれには理由がある。
実はこの結界は〈賢者〉の固有スキルである【天空侵犯】を使わないと張ることができない。
てことは〈賢者〉がこいつを張ったってわけで。
(賢者がこの森までやって来たってことか?)
もちろんルーデウス村にそんな偉人は存在しない。
村長が〈司祭〉のジョブを持っているくらいだ。
そう考えると村の結界も〈賢者〉が張ったってことになるな。
うーん。
考えれば考えるほどよく分からなくなる。
「ま、いっか」
ひとまずこれで助かった。
結界の中に身を隠せばモンスターに襲われる心配もないだろうし。
そう思って結界に近寄る。
するとその結界の上に見覚えのある紋章が浮かび上がってることに俺は気づいた。
(この紋章……つい最近どこかで見たような)
けど、思い出せたのはそこまでだった。
結界の中へ足を踏み入れると俺は近くの木にもたれかかる。
「はぁ、とんでもない一日だったわ」
いちど腰をかけてしまうとすぐに眠気がやって来た。
そのまま俺はウトウトして……。
19
お気に入りに追加
1,159
あなたにおすすめの小説
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル
異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた
なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった
孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます
さあ、チートの時間だ
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる