復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ

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第40話 ☆復讐回①

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「ヒャハハッ! やったぜ! この魔剣の直撃を受けて生きていられるはずがねぇ! ついに忌まわしきナードをぶっ殺したぞ!」

 土煙が上がって、徐々に状況が明らかになる。

 ――けど。

 そこにダコタの望む光景はなかったみたいだ。

「……なっ!?」

 僕は、体に絡み付いた草木を払い落として立ち上がる。
 それを見て、ダコタは激しく動揺した声を上げた。

「あ、ありえねぇ……直撃だったろうがッ!」

「たしかに、魔剣デュエルヴァーミリオンはすごい武器だって思うけど……」

「っ!」

「使う人がダメだと、宝の持ち腐れだね」

「て……てめーッ! 殺す殺す殺す殺すッーー!」

 血走った眼を向けると、ダコタは水晶ジェムを取り出して、魔法発動マジックアクションを唱えた。
 魔法を使っちゃいけないってきちんとルールを確認したはずなのに、もうなりふり構っていられないみたいだ。

「〝かの者にエデンの加護があらんことを 武器を一段階強化せよ――《ファーストライズ》〟」

 魔剣デュエルヴァーミリオンを強化すると、剣先を突き立てながらもう一度突進してくる。

「てめーのゴミみてぇな命もこれで終わりだ! 両手剣術中級技――《皇殺斬おうさつざん》!」

 デュゴゴゴゴゴゴーーーーーンッッ!!

 その攻撃もまた、近距離で直撃を食らってしまう。
 僕の体は、激しい衝撃波と共に吹き飛ばされた。

「……ッ、さすがに死んだはずだぞ!」

 土煙が上がる中、そんな焦った声が聞こえてくる。

「!?」

 そして、その場で僕がゆっくり立ち上がると、今度こそダコタはわなわなと全身を震わせ始めた。

「な……なんでだよッ! 二度も直撃させただろぉがッ!」

 まるで、得体の知れないものでも見るように、その目は大きく見開かれている。
 
 なおも信じられないのか、ダコタは魔剣を振り回して攻撃してくるけど、そのどれを受けても僕は無傷だった。

「ば、化け物かよ、コイツ……」

 まるで歯が立たないって気付いたんだろう。
 ダコタは力なく大剣をその場に沈ませた。

 そんなダコタのもとへゆっくり近付くと、種明かしをすることに。

「普段、他人のステータスなんて見る機会ないでしょ?」

「っ!?」

「だから、こうやって無意味なことができるんだ。いい機会だから見せてあげるよ。あれから僕が、どれだけ強くなったのか」

 ビーナスのしずくのエンドパーツに触れると、自分のステータスをダコタの前に表示させる。

-----------------

[ナード]
LP1,529
HP1,000/1,000
MP500/500
攻500
防500
魔攻500
魔防500
素早さ500
幸運500
ユニークスキル:
<アブソープション【スロットβ】>
<バフトリガー【ON】>
属性魔法:
《ファイヤーボウル》《デモンズフレイム》
《ファイナルボルケーノ》
《サンダーストライク》《プラズマオーディン》
《ライトニングヘブン》
《サイレントカッター》《ブラックサイクロン》
《エターナルストーム》
《フリーズウォーター》《バブルハウリング》
《ブルーリヴァイアサン》
無属性魔法:
《ヒール》《ヒールプラス》
《フルキュア》《ニルオール》
《サードライズ》《超集中コンセントレーション
瞬間移動テレポート》《環境適応コンバート
攻撃系スキル:
<体術>-《あばれ倒し》-《秘技・天翔蹴りてんしょうげり
-《爆烈神覇ばくれつじんは絶影掌ぜつえいしょう
<片手剣術>-《ソードブレイク》-《鷹回剣ようかいけん
-《グラビティサザンクロス》
<斧術>-《メテオスピン》-《無双炎車輪むそうえんしゃりん
-《終焉の大斧しゅうえんのおおおの
補助系スキル:
分析アナライズ》《投紋キャスティング》《調薬ディスペンス
《高速詠唱》
《アルファウォール》《オメガウォール》
《ソリッドシェルター》
《ディフェンスクラッシュ》
《火のカーテン》《雷のカーテン》
《風のカーテン》《水のカーテン》
武器:ウロボロスアクス
防具:
アイテム:
ポーション×158、ダブルポーション×41
マジックポーション×100、マジックポッド×25
エリクサー×2、水晶ジェム×206
英霊の短刀×1、超強化装甲×1
上帝の盾×1、太陽の兜×1
ミスリルグローブ×1
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:50,491,367アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥バードオブリベリオン
討伐数:
E級魔獣80体、E級大魔獣1体
C 級魔獣54体、C級大魔獣1体
B級魔獣227体、B級大魔獣5体
状態:ランダム状態上昇<物理ダメージ無効>

-----------------

「な、な、な……なんだよこのステータスッ!? LP1,529……? あ、あり得ねぇ……! てめー何を……」

「全部<アブソープション>っていうユニークスキルのおかげなんだけどね。僕、相手のLPを吸収することができるんだよ」

「……相手のLPを、吸収…………?」

 多分、何を言っているのか理解できていないんだろう。
 ダコタは声を震わせながら、僕の言葉を復唱した。

「それと<バフトリガー>っていう面白いスキルも持っていて。ほら、【状態】の項目に<物理ダメージ無効>って表示されてるでしょ? だから、今の君がいくら攻撃を当てても、一切ダメージを受けることはないんだ」

「!!」

「運が悪かったね。正直言って、今日の内容はチート過ぎるんじゃないかって僕も思ってる」

「ふ、ふ、ふ……ふざけんなぁぁぁぁぁ~~~~ッ!!」

 顔を真っ赤にして、魔剣デュエルヴァーミリオンを力の限り振り下ろしたダコタの一撃を、僕はいとも簡単に回避する。

「ぶっちゃけるとさ。これまでの攻撃はわざと当たってたんだよね」

「な……ッ」

「だって、その方が君のプライドをズタズタにできるでしょ?」

「ぐおおおおぉぉぉぉぉおおおーーーーー!!」

 絶叫に近い雄叫びを上げながら、なおも大剣を振り回すダコタ。
 
 が。

「っ!?」

 ダコタの背後に素早く回り込むと、魔剣デュエルヴァーミリオンを奪って、僕はそれを遠くへ放り投げた。

「<武器創造>だっけ? 無駄な努力ご苦労さま」

「……ああ、ぁっ……」

「これまで散々僕のことをいじめてくれたよね? ここからはその仕返しをさせてもらうよ。まず挨拶がわりに1発」

 ドスンッ!

「ぐがふッ!?」

 ダコタの腹部に、僕の鋭い拳がヒットする。
 口から胃液を吐き出しつつ、ダコタはその場でうずくまるようにして悶えた。

「あ゛……ぐがぁ゛……うぐぅぅッ……!」

「僕は君にいじめられながらずっと思ってたんだ。いつかこうやって復讐したいって……ねっ!」

 ズコンッ!

「ぶふぉっ……!?」

 重いひと蹴りが顔面に命中する。

 ダコタは鼻から血を垂れ流し、這い回るようにして、この場から逃げようとしていた。
 それを踏みつけて阻止する。

「ダメだよ。誰が帰っていいって言ったのかな? 決闘はきちんと負けを認めないと」

「んぐぐッ……だ、誰が……てめぇ……なんかにぃ…………どぎゃぁ!?」

 ぐしゃりとダコタの銀髪を掴み上げると、僕は顔を近付けながら言った。

「てめぇじゃないよね? ナードさん……いや、ナード様でしょ?」

「……い、言うわけがねぇ……だろがぁ…………おぶぅッ!?」

「ほら、ちゃんと目を見て言ってよ? 『ナード様。これまで散々いじめてきてしまって本当にごめんなさい。私は害虫で、生きてる価値もないゴミクズです。もう金輪際、ナード様には逆らいません』って……ねぇ!」

 バゴンッ!

「あ゛ぁあぁあ゛ぁッッ……!」

 抉るような高速パンチをダコタの顔面にぶち当てる。

 僕は<体術>を習得しているけど、これといって技は使っていない。
 まったく技を使わずとも、これだけ一方的にダコタを翻弄できてしまっているんだ。

 もう言い訳の余地がないくらい、僕たちの間には決定的な力の差があった。

「相変わらず強情だね。でも、それもどこまで保つかな。それじゃ、これまでの恨みを1つずつ晴らさせてもらうよ。これは、クラスメイトの前で僕を裸にして、笑いものにした時の1発!」

 ドスンッ!

「ぐ、があッ……!?」

「これは、脅迫されてお金を巻き上げられた時の1発!」

 ズコンッ!

「ぐげほっ、おえぇぇッ……!?」

「これは、僕を盗みの犯人に仕立て上げて、みんなに一方的に責めさせた時の1発!」

 バゴンッ!

「がぁっぁぁあぁ……ッ!」

「これは、暴力にものを言わせて、仲間と一緒に僕をリンチした時の1発!」

 ボゴンッ!

「ぐ、……あ、ァ……げほっ、おえ……!」

 次々に罪状を読み上げながら、ダコタの顔を殴り続ける。

 すでにダコタの鼻はぐちゃぐちゃに潰れて、目元はこぶで見えなくなるくらい真っ赤に腫れ上がっていた。
 
 けど、こんなもんじゃ全然足らない……。
 これまでの恨みをすべて晴らすように、僕は無心で拳を振り下ろし続けた。










「――これは、セシリアと一緒に僕をパーティーから追放した時の1発!」

 ガゴンッ!!

「……ぅ、ごォっ゛…………」

 もはや、声が出なくなるくらいに、ダコタを滅多打ちにしていた。

 悔し涙なのか、ボコボコに腫れたダコタの目からは微かに涙が流れている。
 それを見て、ようやくひと息つくことができた。

「だいぶ気持ちがすっきりしたかな。それじゃ、次の1発で終わりにするよ。それまでに僕への謝罪がなかったら……」

 僕は、両手をかざして<アブソープション>を唱える。
 すると、ダコタの体は発光し、手のひらに眩い光が吸い込まれていく。

「……ッ!? て……めぇ……な、にを…………」

「今、君のLPを1まで吸い取ったんだ。ちゃんと謝ってくれたら、この1だけは残してあげる。まあでも、これでもう冒険者シーカーとしての君の人生は終了しちゃったけど、死んじゃうよりはマシだよね? さあ、分かったら早く謝罪してよ。これまでの件すべて」

「……ざ……け、ん……なッ…………」

 ダコタは依然として闘志を失っていなかった。
 僕に屈服するのが、嫌で嫌で嫌で仕方ないんだろうな。

 もういいか。
 こんな態度なんだし、手加減する必要もないよね。

 そのまま片腕を掴むと、無言のままそれをボキッと折った。

「ぐぎゃああああぁぁぁああああ~~~!!」

 続けてもう1本の腕も掴む。

「死にたいみたいだから、こっちもいいよね?」

「……あ゛ぁぁ……っ、ま、待って……くれえぇぇ……」

「ん?」

「す……す……すみ……ません……すみませんでしたあぁぁ……俺がぁ、今まで……うぐっ……」

「なに? もっとはっきり言ってよ」

「ぐぎょええぇぇぇええぇえぇぇえ~~~~ッ!?」

 もう片方の腕もボキッと折ってしまう。
 ダコタは血と涙で顔をぐちゃぐちゃにさせながら、巨大な体躯を地面に深く突きつけて謝罪をした。

「……うええ……うぇぇ、ううッ……ほんとぉにぃ……ごめんなさひぃ……俺がぁ、悪かったですぅ……間違って、ましたぁ……」

「それで? 誰になんて言うんだっけ?」

「ナ……ナード様あぁぁ……! だからぁ、もぉ……許してくださぃ……この通りですぅ……本当にぃ……すみませ…………がぁっぁ!?」

 僕はダコタの頭を力の限り足で踏みつけながらこう言った。

「これで分かったでしょ? いくら君が僕に挑んだとしても、もう一生敵うことはないんだって」

「……は、はひぃっ……! 大変、申し訳ございません、でしたあぁぁっ…………!」

 それを聞いた瞬間、最後のひと蹴りをダコタの顔面に振り抜く。

「ヒイィィッ!?」

 バゴンッ!!

 体をぐったりさせると、ダコタはそれっきりまったく動かなくなった。
 足で蹴り上げながら、その場に放り捨てる。

「ふぅ……」

 誰もいない牧草地を見渡して、僕は清々しい気分になっていた。
 これでダコタは、もう二度と目の前に現れることはないだろう。

「君じゃこれは扱えないよ。これは僕が使わせてもらうから」

 草むらに放り投げられたままの魔剣デュエルヴァーミリオンを拾い上げる。

 <武器創造>で作り上げた渾身の一級品を奪う。それがダコタに対する最後の復讐だった。

「あとは……」

 結界越しに夜空を見上げながら、僕は思う。
 まだ1人、復讐を成し遂げなくちゃいけない相手がいるって。
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