復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ

文字の大きさ
上 下
37 / 49

第37話

しおりを挟む
「おめでとうございます♪ こちらがB級ダンジョンの初回クリア報酬天空のティアラとなりますよ~。どうぞ、ナード様!」

「ありがとうございます!」

 ついに念願の天空のティアラを手に入れちゃった。
 格調高い装飾で彩られた黄金の冠だ。手に持っただけでちょっとドキドキしてしまう。

「これからも魔光石の採取よろしくお願いしますね♪」

「はい、またお願いします!」

 深々とお辞儀をして、その場を後にしようとしたところで

「あっ、そうでした! ナード様、ちょっとよろしいですか?」

「はい? なんですか」

 受付のお姉さんに呼び止められてしまう。
 お姉さんは普段の柔らかな笑みを珍しく崩すと、少しだけ真剣な表情でこう告げてきた。

「……実はですね。昨日の夜に、ギルド内の質屋金庫が破られるっていう事件が起きたんです。中からS級素材が数点盗まれてしまったみたいで」

「え……」

 もちろん、その話は初耳だった。

(たしかに言われてみたら、周りがなんか騒がしい気がしてたけど)

 ほかの冒険者シーカーと情報交換とかまったくしていないから、こうやって受付のお姉さんから新しい情報を教えてもらうことが最近多い。その中でもこれはけっこう衝撃的な内容だ。

「でも、金庫番の方もいたんですよね?」

「はい。2人で警備にあたっていたようなんですけど、彼らは気絶させられちゃったんですよぉ……。どうやら攻撃魔法が使われたみたいです。だから、けっこう大きな被害があって、今日の質屋は営業中止にしてますね」

「そんなことがあったんですか……」

 人に対して攻撃魔法を使用することは重罪とされていて、バレたら牢獄行きは免れない。
 つまり、相手はそれを覚悟の上で攻撃魔法を使ったってことになる。

「まだ犯人も捕まってませんので、ナード様も十分にご注意くださいね」

「わざわざすみません。注意喚起ありがとうございます!」

 お礼を述べると、今度こそ受付を後にした。

(質屋の金庫はとても頑丈だって話だったのに。それが破られちゃったなんて)

 歩きながら、すぐに天空のティアラを魔法ポーチの中へとしまい込む。
 僕も貴重なアイテムや素材をいくつか持っているんだから、用心しないと……。

 結局、帰りはいつも以上に警戒して帰ることになった。



 ◇



 アパートの外観が見えてきたところで、ようやくホッとため息が漏れる。

 朝一でシーカーキャンプのロッジを出たっていうのに、すでに辺りはオレンジ色に染まり始めていた。
 まあ、かなり遠方のダンジョンまで遠征していたから当然と言えば当然か。

「でも、無事に帰って来られてよかった。本当に久しぶりの帰宅だよ」

 今、魔法ポーチの中には大量の金貨が入っている。

 結局、この1週間で僕がクリアしたB級ダンジョンは5箇所。B級魔光石をすべて換金して、5千万アローを手に入れた。

 もうこんな狭いアパートに住み続ける必要もないんだ。
 ノエルの体調が良ければ、すぐにでも引っ越したいくらい。

「家賃の支払いに、悪戦苦闘してた日々が嘘みたいだよね」

 そんな風にひとりごちながら、玄関のドアを開けた。

 ガチャッ。

「ただいまー! 今帰ったよ~!」

「……わわ!? お、お兄ちゃんっ!?」

「ノエル! ずっと1人でお留守番させちゃってごめんね」

「本当にお兄ちゃんだ! お帰りぃぃ♪ 無事でよかったよぉ~!」

「ありがとう。心配かけてごめん」

「ううんっ! お兄ちゃんが無事に帰ってきてくれただけでノエルとっても嬉しい~♪」

 ガバッ!

「っとぉ!?」

 久しぶりにノエルに思いっきり抱きつかれる。

「はひゅぅ~♪ お兄ちゃんの匂いだぁ~」

「ちょ、ちょっとノエルっ!?」

 あいかわらず顔が近い! 
 それとやっぱり小さな胸がむにぃむにぃ当たって……。

「うぅっ……」

「1週間分のお兄ちゃん成分しっかり摂取するんだから! むぎゅぅぅ~♡」

「ぐはっ!」

 それからしばらくの間、妹の愛情表現をたっぷり受けることになった。
 うん、なんかもうすごく幸せだ。なにも言うまい。



 テンションの上がった僕は、それからすぐに天空のティアラをノエルを渡した。

「じゃじゃーん! はいこれ。ノエルにプレゼント!」

「!? ちょっとお兄ちゃん! これって……」

「ふふっ、もう何か分かるよね?」

「天空のティアラ!?」

「そう、正解っ! B級ダンジョンをクリアしたから、その初回クリア報酬に貰ったんだよ。これ憧れだったって、一度でいいから付けてみたいって前に言ってたでしょ?」

「い、言ったけどぉ……」

 ノエルは、黄金の冠に目を向けたまま固まってしまう。
 
 中央の装飾は、煌めくダイヤモンドと大きなエメラルドで彩られていて、知識がない僕でもこれがとても気品に満ち溢れた物だっていうことが分かる。

 冒険者でも、これを手にすることができるのはほんの一握りなんだ。

 だからこそ、真っ先にノエルに渡したかった。
 なんだけど……。

「お、お兄ちゃん……。ノエル、こんな高価な物付けられないよぉ~」

 いざ天空のティアラを目の前にして萎縮しちゃったのか、ノエルはなかなか受け取ってくれない。
 ここはきちんと本音を言わないと。

「僕が付けているところを見たいんだよ」

「へっ?」

「絶対に似合うと思うからさ。だからノエル。付けてくれないかな?」

「う、うん……」

 真剣にそう伝えると、ノエルは恥ずかしそうにしながらも頷いてくれる。
 そして、頭の上にノエルが天空のティアラを装着した瞬間、部屋中がパッと輝いた。

「どうかなぁ?」

「うん! とってもよく似合ってる」

「そ、そぉなんだ? えへへ……♡」 

 どことなく照れながらもノエルは嬉しそうだ。

(!)

 その姿を見て、思わずハッとする。

 なんだろう。
 上手く説明できないんだけど、ノエルの中に何か高貴なものを感じたんだ。
 
 昔からこんな物を身につけて過ごしていたような……そんな雰囲気がどこかあった。

「お兄ちゃんっ! 鏡の前で見てきてもいい?」

「もちろんだよ。行っておいで」

「うんっ♪」

 嬉しそうにリビングを飛び出して、ノエルは自分の部屋に行ってしまう。
 これまでずっと閉じこもった生活を送ってきたから、ノエルはこうやっておめかしする機会が極端に少なかった。

(だから、余計に嬉しいんだよね)

 絶対に病を完治させてあげたい。
 それで、普通の女の子が送ってきたような生活を送らせてあげたいんだ。

 ノエルの背中を見送りながら、そんなことを強く思った。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

処理中です...