復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ

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第21話

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「おめでとうございます、ナード様♪ これで【グラキエス氷窟】のクエストは達成となります~。お疲れさまでした! それと、ナード様はタイクーンとしてE級ダンジョンクリアが今回初めてですので、初回クリア報酬をお渡しさせていただきます♪ どうぞ、木霊のホットストーンですよ~」

「ありがとうございます!」

「次回のクエストもお待ちしておりますね」

 すごい、これが木霊のホットストーン!
 
 学校の授業では、木霊のホットストーンを手にすることができれば、一人前の冒険者シーカーとして認められるって言っていたけど、まさか自分がこれを手にする日が来るなんて……。
 あの最低なステータスを授与された僕からしてみれば、信じられないことだった。

 気を抜かずに、これからもがんばっていこう。



 ◇



 その後、換金所へ行って、E級魔光石と木霊のホットストーンを換金した。
 もう少し余韻に浸って所持していたいところだったけど、銀貨11枚を受け取ったら、そんな思いは吹き飛んでしまう。

「この銀貨、僕の力だけで稼いだお金なんだよね」

 そう思うと、嬉しさで胸がはち切れそうになる。今日くらいは夕食を贅沢にしてもいいかもしれない。

 市場で普段は手が出ない高級な食材を購入し、途中リジテさんの家へ寄って家賃の支払いを済ませてしまう。
 リジテさんは何か言いたそうに睨みつけてきたけど、今朝みたいに怒鳴るようなことはなかった。
 ひとまず、これで住み続けることができそうだ。

 アパートの前に着く頃には、すでに辺りは暮れ始めていた。
 結界越しに差し込むオレンジ色の光に目を細めながら、ウキウキした気分で玄関の鍵を開ける。

「ただいまノエル! 今帰ったよ!」

「あ、お兄ちゃんだー! おかえりぃ♪」

「どわぁっ!?」

 ノエルが飛びながら抱きついてくる。

 いつもならここで、安静にしていなくちゃダメだよって小言を言うところだけど。
 今日はさすがにそんな気分じゃない。ノエルに早く伝えたくて仕方なかった。

「それでお兄ちゃん、今日どうだったのかな……?」

「うん。無事にクリアしてきたよ」

「ほ、本当!? すごいよぉお兄ちゃんっ! ソロでE級ダンジョンのクエスト達成しちゃったんでしょ!?」

「ついでに、リジテさんに家賃も払ってきたから。だから、もうここから出て行くとか、そんなことは考えなくて平気だよ」

「うぅっ……。お兄ちゃんかっこよすぎだよぉ~……はぐぅぅ~!」

 ぎゅっと僕の体に抱きつくノエルの瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。
 今日1日、ずっと心配してくれていたのかもしれない。

 妹にこれだけ想われているってことが分かると、なんだか胸がカッと熱くなってくる。
 ヤバい、僕もなんか泣きそう……。

「……あ、あのさ! これ、市場で買ってきたから!」

「ふぇっ?」

 気恥ずかしさをごまかすために、買ってきた食材をテーブルの上に置く。

「これは鶏のローストで、こっちはサーモンの塩漬け。あと、デザートにフルーツパイも買ってきたよ」

「す、すごい! こんな豪華な食べ物見たことないよぉっ! これ全部食べていいのっ?」

「もちろんだよ。ノエルのために買ってきたんだし」

 それに【グラキエス氷窟】をクリアできたのはノエルの言葉のおかげだ。
 あれで僕は、自分が【叛逆の渡り鳥バードオブリベリオン】のタイクーンだってことに気付けた。

「すぐに夕食の準備をしちゃうから。一緒に食べよう」

「お兄ちゃん、もうホントだいすきぃぃーー♡」

「どおぉぅ!?」

 これまでにないくらい強烈に抱きしめられる。
 うぐぐ……く、苦しい……! だが、それがまたいい!

 ノエルの愛情を胸いっぱいに感じながら、結果報告は幸せのうちに終了した。



 ◇



 それから2人でささやかな宴会を開き、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

 ノエルがあくびをする頃には、時刻もけっこう深い時間帯に突入していて、名残惜しかったけど今夜はこの辺でお開きとすることに。

「すぅ……すぅ……にゅふふ♡ お兄ちゃん……すきぃ……むにゃむにゃ……」

「もう眠っちゃったか」

 ベッドに寝かせてノエルの部屋を出ると、僕はふぅ……とひと息つく。
 リビングのソファーにもたれかかると、ダンジョンの疲れが一気に押し寄せてくるみたいだった。

「はぁ、すごい1日だったな。まさか、本当にE級ダンジョンを1人でクリアできちゃうなんて」

 ぶっちゃけ、実感はまだあまりない。
 だって、ほんの1週間前は、スライムに襲われて何もできずパニックになっていたわけだし。

「それが今日、ビッグデスアントを倒しちゃったんだもんね」

 しかも、瞬殺。

 想像していなかったほどの成長スピードだ。
 まあ、僕の力っていうよりも、すべて<バフトリガー>のおかげなんだけど。

 ビーナスのしずくに触れると、水晶ディスプレイを立ち上げて、自分のステータスを今一度確認してみる。

-----------------

[ナード]
LP12
HP9/150
MP10/130
攻106(+10)
防106(+5)
魔攻106
魔防106
素早さ106
幸運110
ユニークスキル:
<アブソープション【スロットβ】>
<バフトリガー【ON】>
属性魔法:《ファイヤーボウル》
無属性魔法:《瞬間移動テレポート
攻撃系スキル:<片手剣術>-《ソードブレイク》
補助系スキル:《分析アナライズ》《投紋キャスティング
武器:獣牙の短剣
防具:毛皮の服
アイテム:
マジックポーション×1、水晶ジェム×11
魔獣の卵×1
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:75,000アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥
討伐数:E級魔獣80体、E級大魔獣1体
状態:ランダム状態上昇<物理攻撃10倍ダメージ>

-----------------

 あの後、<アブソープション>を使って、ビッグデスアントのLPをすべて吸収しようとしたところでハッとした。

 ボス魔獣のLPを0にしてしまうと、そのダンジョンには永久にボス魔獣が現れないってことになる。
 つまり、それは魔光石も一生手に入らなくなるってことなわけで。

「こういう時のための〝調整可〟ってことなのかな」

 <アブソープション>のスロットβは、相手のLPを調整して吸収することができる。

 だから、ビッグデスアントのLPは、24だけ吸収して1残すことにした。
 こうしておけば、時間が経つとビッグデスアントは蘇生して、再び【グラキエス氷窟】に出現するようになる。

 完全に脅威を取り除くことも考えたけど、それは冒険者の仕事を1つ消すことになるから、さすがにそれを僕がするわけにはいかなかった。

 冒険者は常に死と隣り合わせなんだ。
 それは、この仕事を選んでいる以上、みんなが覚悟していることだって思う。

「って言っても、スライムとクインペリーはかなりの数狩っちゃったけど」

 あとで【グラキエス氷窟】の魔獣が減っているって騒がれそうだけど、冒険者の目的は魔光石の採取にあるわけだし、そこまで大きな問題にはならないはず。気にしないことにしよう。

 ビッグデスアントのLPを吸い取った後は、《瞬間移動》を習得してダンジョンから脱出した。

 《瞬間移動》を使ってしまうと、《投紋》で目印を残しながらダンジョンから帰還していたのがバカらしく思えてくるよね。
 今後、いろいろな場面で重宝しそうな魔法だ。

「……あ、そうだ。忘れないうちにお金を金庫にしまっておかないと」

 自室へ戻ると、6枚の銀貨を金庫の中へしまう。

「これで、来月分の家賃とノエルの生活費は確保できた」

 が、すぐに所持金がまたカツカツになっていることに気付く。

 現在の持ち金は1万5千アロー。
 日々アイテムを購入していたら、またすぐにお金は底を尽きてしまうに違いない。

「次からはE級ダンジョンをクリアしても、初回クリア報酬は貰えないし……」

 また、E級魔光石を採取したところで、換金時に貰えるのはたったの1万アロー。
 それに次回も運良くE級ダンジョンが空いているとは限らない。

(なら、初回クリア報酬を目当てに、D級ダンジョンに挑んで……)

 一瞬そう思うも、すぐに思い留まる。

「待った。今のステータスなら、ひょっとしてC級ダンジョンもソロでクリアできちゃうんじゃないか?」

 C級魔光石の換金額は100万アロー。
 D級ダンジョンの初回クリア報酬に貰えるクリスタルキングクローと同じ価値だ。

 しかも、C級ダンジョンをクリアした際の初回クリア報酬であるヴァルキリーの聖弓は、なんと1,000万アローに換金することができる。

 同じ時間をかけるなら、飛び級してC級ダンジョンに挑んだ方が賢いと言えた。

「仮に1,000万アローなんて大金が手に入ったら、一気にお金の悩みから解放されるよね」

 グレー・ノヴァ公国へ行って、魔法大公の神聖治癒を受けるには1億アロー必要だ。
 C級ダンジョンをクリアすれば、夢だった1億アローも現実的な数字になってくる。

 将来の蓄えを作る意味でも、上を目指すことは悪いことじゃない。

(大丈夫……。僕には、<アブソープション>と<バフトリガー>があるんだ)

 1日休息を取って休んだら、冒険者ギルドに顔を出して、C級ダンジョンに空きがあるか確認してみることにしよう。
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