復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ

文字の大きさ
上 下
9 / 49

第9話

しおりを挟む
「あっ、お兄ちゃん! おかえりぃっ♪」

「ただいま……」

「ひぇっ!? その傷っ! どうしたのお兄ちゃん!?」

「へ? あ、あぁ……うん。ちょっと魔獣にやられちゃって」

「待ってて! 今ポーション持ってくるから……!」

 救急かごに入ったポーションをノエルが急いで持って来てくれる。
 それを体にふりかけると、傷がみるみる回復していく。

「どう? 痛いところない?」

「ありがとうノエル。もう大丈夫だよ」

「はぁ……よかったぁ~。お兄ちゃんが死んじゃうって思ったよぉ……」

「僕はノエルがいる限り死んだりはしないよ」

 って、かっこつけたこと言ってるけど、今日は本当に危なかった。
 生還できたのは、奇跡と言ってもいいかもしれない。

「だ、だよね! お兄ちゃんが死んじゃうなんて……ごめんなさい。縁起でもないこと言っちゃって……」

「ううん。こんな格好で帰ってきたら心配になるよね。これからは気をつけるよ」

「う、うんっ……」

 僕はノエルの髪をゆさゆさと撫でる。
 すると、ノエルは嬉しそうにぱぁっと笑顔をこぼした。



 ◇



 夕食を終えてノエルを寝かしつけると、僕は自分の部屋に戻って今一度ステータスを確認した。

「やっぱりLP2のままだ……」

 水晶ディスプレイのバグでないのなら、本当に僕のLPは増えたってことになる。

「スライムのLPを<アブソープション>で吸い取ったってことなのかな。でも、本当にそんなことが……」

 未だにLPが増えたって事実は信じられなかったけど、現に僕のLPはこうして増えている。
 
 もう一生LP値は変わらないって諦めていたけど……。
 このスキルがあれば、冒険者シーカーとしてここから這い上がっていくこともできるかもしれない。

 ひとまず、このLPが本当に消費できるものなのかを確認する必要があるかな。
 水晶ディスプレイを指で弾くと、【補助系スキル】の一部を表示させる。

-----------------

分析アナライズ/消費LP1
内容:魔獣のステータスを確認することができる
消費MP0

投紋キャスティング/消費LP1
内容:ダンジョン内に光の輪を残して目印を付けることができる
消費MP0

調薬ディスペンス/消費LP1
内容:回復アイテムを調合して新しいアイテムを生成する
消費MP0

陽動デモンストレーション/消費LP1
内容:敵の注意を引いて狙われやすくなる
消費MP0

◆ディフェンスダウン/消費LP50
内容:敵1体の防御力を少し下げる
消費MP6

◆ディフェンスクラッシュ/消費LP100
内容:敵1体の防御力を大きく下げる
消費MP12

◆高速詠唱/消費LP100
内容:魔法の詠唱を高速化することができる
消費MP0

-----------------

 前半4つのスキルは、冒険者必須のスキルって言われている。
 消費LPも1とためらいなく習得できることから、とても人気のスキルだ。

「うん。まずはこの4つの中から試しに習得できるか確認してみよう」

 ひとまず、一番上の《分析》の項目をタップしてみる。
 すると……。

 『LP1を消費して《分析》を習得します。よろしいですか(Y/N)?』

「うぇっ、マジ……?」

 これまでは、どの項目をタップしても『LP不足のため習得できません』ってアナウンスが表示されるだけだった。
 このアナウンスが表示されたってことは、つまり……。

 おそるおそる(Y)を選択してみる。

 『《分析》を習得しました』

「おぉ……!」

 本当に覚えることができちゃった!?
 すぐにステータス画面に戻って確認する。

-----------------

[ナード]
LP1
HP50/50
MP0/1
攻1
防1(+5)
魔攻1
魔防1
素早さ1
幸運1
ユニークスキル:
<アブソープション【スロットα】>
<バフトリガー【OFF】>
属性魔法:
無属性魔法:
攻撃系スキル:
補助系スキル:《分析》
武器:
防具:毛皮の服
アイテム:
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:8,800アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥バードオブリベリオン
討伐数:E級魔獣1体
状態:

-----------------

間違いない……! 
LPが1消費されて《分析》を習得しているっ!

「ははは……やった。やったぞっ……!」

 これはひょっとすると、簡単にLPを増やすことができるかもしれない。

 また明日も試しに使ってみよう。
 こんなワクワクした気分になるのは、冒険者になって初めてのことだった。

「明日が楽しみだなぁ~!」

 この日の夜は、久しぶりに熟睡することができた。



 ◇



「お兄ちゃん、今日もがんばって~♪」

「うん。行ってくるよ」

 2日目。
 僕はノエルに見送られて【グラキエス氷窟】へと向かった。

 ノエルには、未だにセシリアのパーティーを抜けたことを打ち明けられていなくて、後ろめたさがあったけど、今はなるべくそのことは考えないようにした。
 いつか必ず、自分1人の力でダンジョンをクリアできるようになったって、ノエルに報告しよう。

 そのためにも、まずはLPを増やして僕が強くなる必要がある。

「LPが増えたなんて……まだ上手く信じられないけど」

 でも事実なんだ。
 昨日、僕は<アブソープション>を使ってスライムのLPを吸い取った。
 他の人に言ったら、絶対に信じてもらえないに違いない。

「っと、見えてきた」

 そんなことを考えながらシルワ平原を進んでいると、いつの間にか【グラキエス氷窟】の前までやって来たようだ。

 昨日と同じようにビーナスのしずくで辺りを照らしながら、足元に気をつけてゆっくりとダンジョンへ入っていく。
 そのまましばらく中を進むと、氷柱の影に隠れた黒色の物体が目に飛び込んできた。

 スライムに違いない。

 昨日の教訓を活かすため、まずは十分に距離を取る。
 スライムは僕よりもかなり素早かったから、一気に距離を詰められる可能性があった。

(この辺りで大丈夫かな……)

 相手との距離を確認しながら、水晶ディスプレイをスライムの方へ向けて、《分析》をタップする。

 すると、スライムのステータスが表示された。

-----------------

[スライム] 
LP1
HP20/20
MP2/2
攻6
防3
魔攻1
魔防1
素早さ4
幸運2

-----------------

(……LP1。やっぱり、思った通りだ)

 これで<アブソープション>の性能に疑いはない。
 あとはもう一度これを使ってみるだけ。

 そんな風に水晶ディスプレイに視線を落としていると、スライムが柱の影からゆっくりと姿を現してくる。
 
(気付かれた?)

 明りを点けたままだったから、こちらの存在に気付いたのかもしれない。
 
 スライムの素早さは4。つまり、こっちの4倍の速さだ。
 また、昨日と同じように下敷きにされてマウントを取られたら逃げられない。

(襲って来る前にやるしかないっ……)

 両手を前にかざすと、僕は大声でスライムに向けて唱えた。

「〝アブソープション〟!」

 その瞬間、スライムは光に包まれて、僕の手のひらへと吸い込まれていく。

「や……やったの……?」

 すぐに自分のステータスを確認する。

-----------------

[ナード]
LP2
HP50/50
MP0/1
攻1
防1(+5)
魔攻1
魔防1
素早さ1
幸運1
ユニークスキル:
<アブソープション【スロットα】>
<バフトリガー【OFF】>
属性魔法:
無属性魔法:
攻撃系スキル:
補助系スキル:《分析》
武器:
防具:毛皮の服
アイテム:
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:8,800アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥
討伐数:E級魔獣2体
状態:

-----------------

「おっ! LP2になってる!」

 見間違いでもなんでもない。もうこれで確定だ。
 <アブソープション>は、本当に相手のLPを吸い上げて自分のものにすることができるんだ!

「これ、とんでもないスキルだよ」

 これまでの歴史が覆ってしまうほどの大発見だ。
 それが分かると、脚が少しだけ震えてしまう。

「こんなスキル、僕が持っていていいのかな……」

 一瞬、弱気になるけど、すぐに思い直した。
 これがあればLPを増やし続けて、A級ダンジョンをクリアすることだってできるかもしれない。

(それに……)

 これまでずっと僕を騙し続けてきたセシリアに復讐することだって可能かもしれなかった。
 
 僕は拳にギュッと力を込めた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...