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1回戦 Sランク冒険者ゲーム22
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【お知らせ】
最近、保存せずにすぐ公開していたせいか、昨日は予約投稿をミスってしまって、更新できませんでした。すみません。その代わり、本日は2回更新します。
――――――――――――――――――――――――――
朝倉夜桜の裁縫師には、〈被服〉と〈人形〉の2つのスキルツリーがあった。
〈被服〉は、魔法耐性や物理耐性や魔力上昇やHP上昇など、様々な能力がある衣服を作れるようになるスキルツリーだ。〈被服〉で作ったインナーの能力は、千野圭吾の〈鍛治〉で作った鎧や兜などの能力と重複するので、重要な能力だった。
〈人形〉は、文字通り人形を作れるようになるスキルツリーだ。人形作製スキルで作った人形は、作製者が手に持っている状態なら、自由に動かすことができる。また、人形と糸で繋がっていれば、同じように自由に動かすことができる。
「これ、強いんじゃないか? 自分で作った人形限定とはいえ、自由に動かせるのなら、遠距離攻撃が可能ってことだろう?」
青山は期待するような口調でそう言った。
「そうね。糸で繋がっていないといけないってことは、糸を切られたら動かせなくなってしまうってことだけど、奇襲攻撃には最適ね」
夏目理乃は、朝倉夜桜の右手に嵌められたキツネのハンドパペットを見ながらそう言った。
立花光瑠の農家には、〈栽培〉のスキルツリーしかなかった。植物の生長を促進させたり、品種改良したりする魔法や、鍬や鎌を武器として使うスキルを覚えるらしい。
安来鮎見の釣り人も〈釣り〉のスキルツリーしかなかった。釣り針を遠くまで正確に飛ばしたり、狙っている魚介類がいる場所を探ったりするスキルを覚えるらしい。
有希の美容師には〈美容〉と〈健康〉の2つのスキルツリーがあった。美容と健康は切っても切れない関係ということだろう。日本のドラッグストアでも、薬売り場と化粧品売り場は近くにあったしな。
〈美容〉は、髪を切ったり、メイクをしたり、肌や髪や爪を美しくしたり、脱毛したりする魔法を覚えるそうだ。化粧品や石鹸やシャンプーやリンスなどの調合もできるらしい。
〈健康〉は、レベル4までのヒールを覚えることができる。また、解毒などの状態回復魔法や、ポーションのような回復薬も作ることができるらしい。本人の希望も聞いてみなければならないが、〈健康〉を伸ばせば後衛としても活躍できるから、できれば〈健康〉を優先して伸ばして欲しいところだ。
「美容師は、錬金術士と回復魔術師の中間っぽい職業みたいだな。美容師にしかできないこともあるけど」
俺はそう感想を言った。職業が不明の米崎と、すでに自分のスキルツリーを把握することができた俺と青山と千野圭吾を除いて、これで12人全員の職業とスキルツリーが判明したことになる。
だが、鈴本蓮は俺の職業の複製師について書かれたページを開いた。
「……さっきサーシャさんが複製師について何か言いたそうだったから調べてみたけど、複製師だった人は過去に3人しかいなかったそうだ。そして、その3人全員が非業の死を遂げている」
鈴本蓮は引きつった顔でそう言った。
俺は『職業大辞典』を鈴本蓮から奪い取るようにして、そのページから抜粋して朗読した。
1人目の複製師の男は、最初は〈アイテム複製〉のスキルツリーを伸ばしていたそうだ。しかし、商人をしている妻の仕事を手伝おうと、途中で〈スキルツリー複製〉を伸ばし、妻の〈対物鑑定〉と〈計算〉のスキルツリーを複製した。
夫婦揃って商人の便利なスキルを使えるようになったことで、商売は繁盛した。しかしある日、突然妻から複製した〈対物鑑定〉と〈計算〉が使えなくなってしまった。不審に思って調べると、妻の浮気が発覚した。妻が夫のことを「信頼」しなくなったことで、妻のスキルツリーが使えなくなってしまったのだ。
最終的に1人目の男は妻と離婚し、数年後に別の女と結婚した。そして新しい妻のスキルツリーである〈美容〉と〈健康〉を複製したが、やはり数年後に新しい妻が浮気し、使えなくなってしまった。それと同じようなことがさらにもう1回あり、1人目の男は人間不信になって人付き合いを避けるようになり、やがて山奥の掘っ立て小屋で孤独死ししてしまったそうだった。
2人目の複製師である男は、〈アイテム複製〉を使い、炭を原材料にしてダイヤモンドを作るようになった。炭とダイヤモンドがどちらも炭素原子からできていることは地球では比較的知られているが、この2人目の男は自力でそのことに気付いたそうだ。炭素なんて空気や植物にも含まれているから、別に炭じゃなくても良さそうなものだが、そこらへんは濃度や純度など、説明に書かれていない要素も関係してくるのかもしれない。
とにかく2人目の男はダイヤモンドを作りまくり、そのせいでダイヤモンドは流通量が大幅に増加した結果、価値が暴落してしまった。それがハイパーインフレの引き金となり、男のいた国と近隣諸国では大恐慌が発生した。国家を運営している王族や、ダイヤモンドをコレクションしていた貴族達の反感を買い、2人目の男は国家転覆罪の汚名を着せられ死刑となったそうだった。
3人目の複製師である女は、それ以前に複製師になった2人の男達を反面教師にしようとした。〈アイテム複製〉は封印し、〈スキルツリー複製〉を伸ばした。恋人はいつか裏切ると考えた3人目の女は、絶対に自分を裏切らないであろう両親と兄弟のスキルツリーを複製しようとした。しかし、誰のスキルツリーも複製することはできなかった。誰も自分のことを信頼していないという現実を突きつけられた3人目の女は、誰のことも信頼できなくなり、やがて発狂して自殺したそうだった。
「これは……。全員、能力に振り回されて不幸になってしまった、ってことか」
4人目の複製師である俺は、ゾッとしながらそう言った。
青山や佐古くんも心配そうな顔をしていた。
しかし、中には違った感想を持った人物もいたようだった。
「そっか。ダイヤモンドかあ。その手が合ったか、って感じね。烏丸くんがいれば、お金の心配はしなくていいね」
夏目理乃は満面の笑みを浮かべてそう言った。
「夏目さん? 話をちゃんと聞いてたか?」
俺は不安になってそう確認した。
「ええ。価値が下がりすぎない程度に調整すればいいっていう教訓的な話でしょう?」
夏目理乃は満面の笑みを浮かべてそう言った。
まあ、そういう解釈もできなくはないが……。
その後、まだ読書を続けたいと言った鈴本蓮だけ図書室に残し、俺を含めて他の9人は受付に戻った。
俺はサーシャに、Fランクに昇格する条件を確認した。
「角ウサギ、ゴブリン、青スライムの3種類の魔物を、それぞれ10体以上討伐してください。それと、Gランクの依頼を3件以上、評価Aでクリアしてください」
その条件だと、今日は達成不可能だな……。角ウサギのスタンピードのせいで街の外に出ることができないし、通常の依頼は取り下げられてしまっているし。
また、スタンピードへの対処に関する依頼は、すでに応募人数に達したせいで募集を締め切ったそうだった。
「さっき逃げ出した男は、戻ってきませんでしたか?」
武器屋の場所を訊いた後、俺は米崎が戻ってきてないか確認した。
「戻ってません」
「そうですか……」
「今日は、私達の他に冒険者登録をしに来た人はいますか?」
国吉文絵がそう訊いた。
「いいえ。本日登録をしに来たのは、クロウ様達だけです」
そう答えたサーシャに、俺達はお礼を言って冒険者ギルドを出た。
「さっきの質問って、この街に敵チームが来ていないかの確認か?」
ギルドの建物の前で、俺は国吉文絵の方を見てこう訊いた。
最近、保存せずにすぐ公開していたせいか、昨日は予約投稿をミスってしまって、更新できませんでした。すみません。その代わり、本日は2回更新します。
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朝倉夜桜の裁縫師には、〈被服〉と〈人形〉の2つのスキルツリーがあった。
〈被服〉は、魔法耐性や物理耐性や魔力上昇やHP上昇など、様々な能力がある衣服を作れるようになるスキルツリーだ。〈被服〉で作ったインナーの能力は、千野圭吾の〈鍛治〉で作った鎧や兜などの能力と重複するので、重要な能力だった。
〈人形〉は、文字通り人形を作れるようになるスキルツリーだ。人形作製スキルで作った人形は、作製者が手に持っている状態なら、自由に動かすことができる。また、人形と糸で繋がっていれば、同じように自由に動かすことができる。
「これ、強いんじゃないか? 自分で作った人形限定とはいえ、自由に動かせるのなら、遠距離攻撃が可能ってことだろう?」
青山は期待するような口調でそう言った。
「そうね。糸で繋がっていないといけないってことは、糸を切られたら動かせなくなってしまうってことだけど、奇襲攻撃には最適ね」
夏目理乃は、朝倉夜桜の右手に嵌められたキツネのハンドパペットを見ながらそう言った。
立花光瑠の農家には、〈栽培〉のスキルツリーしかなかった。植物の生長を促進させたり、品種改良したりする魔法や、鍬や鎌を武器として使うスキルを覚えるらしい。
安来鮎見の釣り人も〈釣り〉のスキルツリーしかなかった。釣り針を遠くまで正確に飛ばしたり、狙っている魚介類がいる場所を探ったりするスキルを覚えるらしい。
有希の美容師には〈美容〉と〈健康〉の2つのスキルツリーがあった。美容と健康は切っても切れない関係ということだろう。日本のドラッグストアでも、薬売り場と化粧品売り場は近くにあったしな。
〈美容〉は、髪を切ったり、メイクをしたり、肌や髪や爪を美しくしたり、脱毛したりする魔法を覚えるそうだ。化粧品や石鹸やシャンプーやリンスなどの調合もできるらしい。
〈健康〉は、レベル4までのヒールを覚えることができる。また、解毒などの状態回復魔法や、ポーションのような回復薬も作ることができるらしい。本人の希望も聞いてみなければならないが、〈健康〉を伸ばせば後衛としても活躍できるから、できれば〈健康〉を優先して伸ばして欲しいところだ。
「美容師は、錬金術士と回復魔術師の中間っぽい職業みたいだな。美容師にしかできないこともあるけど」
俺はそう感想を言った。職業が不明の米崎と、すでに自分のスキルツリーを把握することができた俺と青山と千野圭吾を除いて、これで12人全員の職業とスキルツリーが判明したことになる。
だが、鈴本蓮は俺の職業の複製師について書かれたページを開いた。
「……さっきサーシャさんが複製師について何か言いたそうだったから調べてみたけど、複製師だった人は過去に3人しかいなかったそうだ。そして、その3人全員が非業の死を遂げている」
鈴本蓮は引きつった顔でそう言った。
俺は『職業大辞典』を鈴本蓮から奪い取るようにして、そのページから抜粋して朗読した。
1人目の複製師の男は、最初は〈アイテム複製〉のスキルツリーを伸ばしていたそうだ。しかし、商人をしている妻の仕事を手伝おうと、途中で〈スキルツリー複製〉を伸ばし、妻の〈対物鑑定〉と〈計算〉のスキルツリーを複製した。
夫婦揃って商人の便利なスキルを使えるようになったことで、商売は繁盛した。しかしある日、突然妻から複製した〈対物鑑定〉と〈計算〉が使えなくなってしまった。不審に思って調べると、妻の浮気が発覚した。妻が夫のことを「信頼」しなくなったことで、妻のスキルツリーが使えなくなってしまったのだ。
最終的に1人目の男は妻と離婚し、数年後に別の女と結婚した。そして新しい妻のスキルツリーである〈美容〉と〈健康〉を複製したが、やはり数年後に新しい妻が浮気し、使えなくなってしまった。それと同じようなことがさらにもう1回あり、1人目の男は人間不信になって人付き合いを避けるようになり、やがて山奥の掘っ立て小屋で孤独死ししてしまったそうだった。
2人目の複製師である男は、〈アイテム複製〉を使い、炭を原材料にしてダイヤモンドを作るようになった。炭とダイヤモンドがどちらも炭素原子からできていることは地球では比較的知られているが、この2人目の男は自力でそのことに気付いたそうだ。炭素なんて空気や植物にも含まれているから、別に炭じゃなくても良さそうなものだが、そこらへんは濃度や純度など、説明に書かれていない要素も関係してくるのかもしれない。
とにかく2人目の男はダイヤモンドを作りまくり、そのせいでダイヤモンドは流通量が大幅に増加した結果、価値が暴落してしまった。それがハイパーインフレの引き金となり、男のいた国と近隣諸国では大恐慌が発生した。国家を運営している王族や、ダイヤモンドをコレクションしていた貴族達の反感を買い、2人目の男は国家転覆罪の汚名を着せられ死刑となったそうだった。
3人目の複製師である女は、それ以前に複製師になった2人の男達を反面教師にしようとした。〈アイテム複製〉は封印し、〈スキルツリー複製〉を伸ばした。恋人はいつか裏切ると考えた3人目の女は、絶対に自分を裏切らないであろう両親と兄弟のスキルツリーを複製しようとした。しかし、誰のスキルツリーも複製することはできなかった。誰も自分のことを信頼していないという現実を突きつけられた3人目の女は、誰のことも信頼できなくなり、やがて発狂して自殺したそうだった。
「これは……。全員、能力に振り回されて不幸になってしまった、ってことか」
4人目の複製師である俺は、ゾッとしながらそう言った。
青山や佐古くんも心配そうな顔をしていた。
しかし、中には違った感想を持った人物もいたようだった。
「そっか。ダイヤモンドかあ。その手が合ったか、って感じね。烏丸くんがいれば、お金の心配はしなくていいね」
夏目理乃は満面の笑みを浮かべてそう言った。
「夏目さん? 話をちゃんと聞いてたか?」
俺は不安になってそう確認した。
「ええ。価値が下がりすぎない程度に調整すればいいっていう教訓的な話でしょう?」
夏目理乃は満面の笑みを浮かべてそう言った。
まあ、そういう解釈もできなくはないが……。
その後、まだ読書を続けたいと言った鈴本蓮だけ図書室に残し、俺を含めて他の9人は受付に戻った。
俺はサーシャに、Fランクに昇格する条件を確認した。
「角ウサギ、ゴブリン、青スライムの3種類の魔物を、それぞれ10体以上討伐してください。それと、Gランクの依頼を3件以上、評価Aでクリアしてください」
その条件だと、今日は達成不可能だな……。角ウサギのスタンピードのせいで街の外に出ることができないし、通常の依頼は取り下げられてしまっているし。
また、スタンピードへの対処に関する依頼は、すでに応募人数に達したせいで募集を締め切ったそうだった。
「さっき逃げ出した男は、戻ってきませんでしたか?」
武器屋の場所を訊いた後、俺は米崎が戻ってきてないか確認した。
「戻ってません」
「そうですか……」
「今日は、私達の他に冒険者登録をしに来た人はいますか?」
国吉文絵がそう訊いた。
「いいえ。本日登録をしに来たのは、クロウ様達だけです」
そう答えたサーシャに、俺達はお礼を言って冒険者ギルドを出た。
「さっきの質問って、この街に敵チームが来ていないかの確認か?」
ギルドの建物の前で、俺は国吉文絵の方を見てこう訊いた。
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