異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

文字の大きさ
上 下
83 / 126

1回戦 Sランク冒険者ゲーム15

しおりを挟む
「でも、銃の構造なんて知ってるの?」

 安来鮎見は疑わしそうな目つきでそう訊いた。

「俺は知らないけど、鈴本くんはどうだ?」
「まあ、少しくらいなら知ってるよ。凄く原始的な構造の奴ならね」
「さすがは鈴本くんだな。――で、そうやって銃を作れば、もしもこの世界に銃が存在しなかった場合、俺達でも無双してSランク冒険者になれるかもしれない」
「魔法と現代知識チートを組み合わせた作戦ってことだな。それなら、ダイナマイトとか地雷とかを魔法で再現するという方法も使えるかもしれないな」

 鈴本連は眼鏡のズレを直しながらそう言った。

「それなら、僕でもSランク冒険者になれるかも……」

 小説家くんこと米崎陽人は、希望を見出したようにそう呟いた。

「というわけで、以上が2つめの作戦だ」

 俺はそう締め括った。

「3つめの作戦は?」

 有希がそう促した。

「ルールの穴を突く作戦だな。例えば、どっかのド田舎の小さい冒険者ギルドを乗っ取って、俺達がSランク冒険者になったことにさせるとか」
「乗っ取るって……どうやって?」

 有希は当然の疑問を口にした。

「それはまあ、ギルドの職員達をお金で買収したり、人質をとって脅迫したりして、だな」

 俺は言葉を選びながらそう言った。

「私達の誰かがギルドの職員になった後、自分以外の職員達を皆殺しにして乗っ取ったり、ね」

 俺があえて言わなかったことを、夏目理乃が言いやがった。何でこいつはわざわざ悪役っぽい発言をしたがるのだろう……。

「デスゲームとは無関係の、罪のない人を殺すなんて駄目。そんなやり方、私は反対」

 朝倉夜桜はキツネのコンちゃんから目を離し、夏目理乃の方を見てそう言った。

「まあ、私も積極的にその案を採用したいと思っているわけじゃないから。あくまでも、そういう方法もある、っていう話だから」

 夏目理乃はそう補足した。

「分かった……。それならいい……」

 朝倉夜桜は右手のコンちゃんを見ながらそう言った。コンちゃんがうんうんと頷く。

 それにしても朝倉夜桜は、こんなにツッコミどころの多いキャラのくせに、他人と会話をするときはツッコミ役ポジションに納まろうとするのが図々しいんだよな……。

「俺のアイデアはもう出尽くしたんだけど、他にアイデアがある奴はいるか?」

 俺はみんなの顔を見回してそう訊いた。

「ギルドがどういう方法で冒険者のランクの管理をしているのかは分からないけど、もしも魔法のパソコンみたいなものでデータ管理をしているのなら、クラッキングしてデータを書き換えることでSランク冒険者になったことにする、という方法を思いついた」

 鈴本蓮は眼鏡のズレを直しながらそう言った。

「クラッキングって何?」

 安来鮎見がそう訊いた。

「この場合のクラッキングは、ネットワークへ不正に侵入して、データを改竄する行為のことだ」

 鈴本蓮は簡潔にそう答えた。

「私は、Sランク冒険者を雇って、その功績を自分達のものとしてギルドに報告する、っていう方法を思いついたよ」

 夏目理乃がそう言った。

「Sランク冒険者を雇って功績を奪うって……そんなことできるのかな?」

 米崎陽人は首を傾げてそう言った。地球で言うと、格闘技の世界チャンピオンに八百長をやらせるようなものだからな。実現は難しそうな作戦だ。

「まあ、やってみないと分かんないよ。穏便に『雇う』っていう表現をしたけど、Sランク冒険者の家族を誘拐して言うことを聞かせるような方法だってあるわけだし」

 夏目理乃がそう言うと、朝倉夜桜が何か文句を言いたそうな顔をした。だが、先ほどの夏目理乃とのやり取りを思い出したのか、朝倉夜桜はキツネのコンちゃんの毛繕いをし始めた。

「何か、理乃って発想が基本的に悪役っぽいよね……」

 有希は呆れた表情でそう言った。

「私の職業は商人だからね」

 なぜか夏目理乃は照れくさそうにそう言った。

 謝れ。世界中のまっとうな商売をしている商人達に謝れ、と思ったが黙っておいた。

 レストランのドアが開いて、数人の客が入店してきた。他の客がいるとデリケートな話がしにくいし、作戦も出尽くしたようだし、もう全員が食べ終わったのにいつまでも長居するのも店に迷惑だからと、俺達は会計をして退店した。

 冒険者ギルドを目指して、その近くにあるという南門に向かって歩き始める。

「烏丸くん、さっきは八つ当たりしてごめんね」

 少し歩いたところで、安来鮎見が近寄ってきて、そう言った。

「さっきって?」
「ほら、さっき階段を下りたときの話」
「ああ、あれか。デスゲームが始まってからというもの、俺に八つ当たりをしたのは安来さんで4人目だから、気にしなくていいよ。もう慣れたから」

 心愛、七海、石原の3人の顔を思い浮かべながら、俺はそう言った。石原の八つ当たりは、予選で石原達の首都への転移が失敗した責任を俺に押しつけようとしたことである。

「きみ、そんなに八つ当たりされてるんだ……」

 安来鮎見は呆れたようにそう言った後、千野圭吾の方を見て「今回の話し合いには、私もちゃんと参加したからね」と言った。
 なるほど。あまり積極的なタイプには見えないのに、レストランで安来鮎見の口数が多いように感じたのは、先ほど千野圭吾に「話し合いに参加しなかったきみに、話し合いをしていた人達を非難する権利なんかない」と言われていたからだったのか。

 しかし、当の千野圭吾は自分の発言を忘れてしまっていたのか、曖昧に頷いただけだった。

「ところで、みんなはレベル上がった?」

 夏目理乃がそう訊いた。

「レベル? あ、そうか。角ウサギを何匹か倒したから、経験値が入ったのか」

 俺はそう言いながら、ステータス画面を呼び出した。1回戦開始前の説明時には、どこに転移するか判断するのに邪魔だったからステータス画面を消して、そのままになっていたのだ。

【名前:烏丸九郎(15歳) 種族:ヒューマン 職業:複製師Lv.1 経験値:18
基礎レベル:2 HP:12/12 MP:7/7
筋力:6 魔力:7 敏捷:8 器用:10 運:3
残りスキルポイント:3
〈アイテム複製〉[0/100]
〈スキルツリー複製〉[0/100]】

 現在はそう表示されていた。

 1回戦開始前に見たステータスは、

【名前:烏丸九郎(15歳) 種族:ヒューマン 職業:複製師Lv.1 経験値:0
基礎レベル:1 HP:9/9 MP:6/6
筋力:5 魔力:6 敏捷:6 器用:8 運:3】

 だったから、経験値が18入って、基礎レベルが2に上がったことになる。運以外のパラメーターも微増していたし、その下に以前は表示されていなかったステータスが増えていた。

「俺はレベル2になったぞ」

 俺はそう報告した。他のみんなも口々に報告したが、基礎レベルが上がっていたのは俺と青山と千野圭吾の3人だけで、3人全員がレベル2だった。

 また、職業の右のレベルは全員が1のままだった。

「ところで、さっき見たときはなかった【残りスキルポイント】とか、〈アイテム複製〉〈スキルツリー複製〉っていうのも表示されてるんだけど」

 俺はステータス画面を見ながらそう言った。

「ウチはそんなの表示されてないよ」

 有希はそう報告した。そして全員の話を聞いて検証すると、基礎レベルが2に上がった奴は残りスキルポイントなどが表示されていたが、基礎レベルが1のままの奴は表示されていないと判明した。

 さらに、俺の残りスキルポイントは3だが、青山と千野圭吾は4になっていて、個人差があった。また、青山には〈調理〉と〈解体〉というものが、千野圭吾には〈鍛治〉というものが表示されているそうだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。

佐々木サイ
ファンタジー
異世界の辺境貴族の長男として転生した主人公は、前世で何をしていたかすら思い出せない。 次期領主の最有力候補になるが、領地経営なんてした事ないし、災害級の魔法が放てるわけでもない・・・・・・ ならばっ! 異世界に転生したので、頼れる相棒と共に、仲間や家族と共に成り上がれっ! 実はこっそりカクヨムでも公開していたり・・・・・・

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...