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1回戦 Sランク冒険者ゲーム8
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七海や心愛や浅生律子も含めて、後衛達も角ウサギの死体を盾にして防御姿勢をとりながら、角ウサギを殴りつけている。その後ろにいる生産職も、必死に石で殴りつけている。
しかし、完全にジリ貧だった。いや、ジリ貧どころか、敗北は決定的だった。
防ぎきれなかった角ウサギの角が、七海の左腕に突き刺さった。
「――――っ!」
七海が声にならない悲鳴を上げた。俺は、七海の左腕に突き刺さっている角ウサギの頭を石で思いきり殴りつけた。その間に、別の角ウサギが七海のお腹に突進した。七海の身体が俺にぶつかってきて、俺は体勢を崩してしまった。
「七海!」
心愛が叫んだ。その心愛にも、大勢の角ウサギが角を突き立てた。
「心愛っ!」
今度は有希がそう叫んだ。有希は心愛の身体に刺さった角ウサギを抜こうとして、逆に自分が負傷してしまった。
さらに、別の角ウサギが七海の胸に角を突き刺した。俺は石を持った右手でその角ウサギの頭を殴ろうとしたが、その俺の右手に、さらに別の角ウサギの角が刺さった。激痛が走る。角は骨に当たって止まり、貫通しなかった。俺は自分の腕に刺さった角ウサギを自分の左手で掴み、勢いよく持ち上げて、背後の城壁に叩きつけて殺した。その間に、七海の身体は半分以上が角ウサギの群れに飲み込まれてしまっていた。
浅生律子は、ちょっと目を離した隙に血だらけになっていた。浅生律子は身体に刺さった大量の角ウサギを抜くこともできずに、背後の青山にもたれかかっていた。青山は角ウサギの頭部をへし折り、その頭部の角を武器として戦っていた。だが、複数の角ウサギに同時に跳びかかられると、そのうちの1匹しか倒すことはできず、他の角ウサギの攻撃を喰らってしまっていた。
俺の身体にも、どんどん角が刺さって、身動きが取れなくなってきた。全身が痛くて、その痛みでショック死してしまうんじゃないかと思った。
「誰か! 助けてくれ!」
俺は、恥も外聞もなくそう叫んだ。
そのとき。
頭の左上の方から赤い光線が迸った。光線が角ウサギの群れに当たると、そこで爆発が起こり、角ウサギたちが黒焦げになって吹っ飛んだ。
さらに、赤い光線が出現した方向から、大量の矢が角ウサギに降り注ぐのが見えた。
俺はそちらの方向を見たが、角度的な問題で人影は見えなかった。しかし、城壁の上で戦っている人がいるのは確実だろう。
「みんな! 城壁の上に人がいる! 俺が『せーの』って言ったら、それに合わせて一斉に『助けて!』って叫べ! いくぞ、せーの!」
俺はそう合図を出した。
「「「助けて!」」」
生き残っている全員がそう叫んだ。
赤い光線や矢が地上に降り注ぐ場所から、兜を被った男が頭を出して下を覗き込むのが見えた。
「ここだ! 助けてくれ!」
俺はそう叫びながら、血まみれの両手を振った。
城壁の上にいる男の顔が、俺の方を向いた。そして、すぐに引っ込んでしまった。
駄目だったか? 見捨てられてしまうのだろうか?
そう考えながら、再び角ウサギとの応戦に戻ると、頭上から振ってきた何かが俺の頭に当たった。
降ってきたのは、ロープだった。城壁の上にいた人達が、俺達のいる場所に何本もロープを落としてくれたのだった。
「みんな! ロープを上れ!」
角ウサギとの戦闘に必死でロープに気付いていないクラスメートもいるようだったので、俺はそう叫んだ。何人かがロープを上り始める。ロープを上るために無防備な背中を見せたクラスメート達にも、角ウサギは容赦なく攻撃をしていた。
「七海! ロープを上れ!」
俺はそう言いながら、俺に寄りかかっていた七海の身体を起こそうとした。
そして、変わり果てた七海の顔を一目見て、手遅れだと悟った。七海の胸に何本も角ウサギが刺さっている。七海は、すでに事切れていた。
七海が……死んだ? マジで?
今まで経験したこともないような、精神的に激しい衝撃を受けた。このまま気を失ってしまいたくなった。しかし、この状況での気絶は死を意味する。俺は気力を振り絞って、現実と向き合うことにした。
「浅生さんはもう駄目だ」
浅生律子を助けようとしていた青山が、感情を押し殺した声でそう言った。
「七海もだ」
俺は短く報告した。
心愛と有希は?
有希は、心愛と抱き合うようにして倒れていた。俺は、彼女達の上に覆い被さっていた角ウサギをどかし、2人の生死を確認する。
心愛は両眼を見開いたまま固まっていた。心愛の首に角が刺さっていて、どうしようもなかった。
有希は意識がないが、かろうじて息をしているようだった。有希も全身に多数の角が刺さっているが、有希の前にいた心愛が身を挺して庇ってくれたおかげで、上手く急所を守ることができたのかもしれない。
「青山! 有希の身体をロープに結びつけるのを手伝ってくれ!」
俺はそう言いながら、さっき俺の頭に当たったロープを引っ張った。数メートルくらいの余裕がある。青山と協力し、血だらけの有希の脇の下にロープを通し、上半身にロープを巻いて結んだ。
「おーい! このロープを引っ張り上げてくれ! 自力じゃ上れないんだ!」
俺は有希の身体に結んだロープを激しく揺らしながら、城壁の上に向かってそう叫んだ。
「分かった!」
男の叫び声が頭上から降ってきた。有希の身体を結んでいたロープがピンと張り詰める。俺は、有希の身体に刺さった角ウサギを抜き、少しでも軽くしようとした。さらに、有希を力を込めて持ち上げようとする。有希の身体が、城壁に擦られながらも持ち上がり、少しずつ浮かんでいった。
「烏丸! お前も早く上がれ!」
青山は別のロープにしがみつきながらそう叫んだ。
俺は角ウサギに刺されながらも、さっきまで有希がいた場所に垂れていたロープを掴んだ。ロープには数十センチおきに結び目があり、それに手足を引っかけて上ることができるようになっていた。
壁に足をつけながら、ロープを引っ張って上る。背中に角ウサギが何匹も刺さったが、その直後に、角ウサギは重力に負けて落下していった。
手の皮が剥けるのを感じながら、俺は必死にロープを上った。角ウサギの攻撃が届かなくなったところで、足を城壁から離して結び目に引っかけた。
城壁は、ほんの十数メートルくらいの高さだった。しかし、その十数メートルが永遠のように長く感じられた。
数本離れたロープを上っていた男子が、途中で力尽きたのか、ロープから手を離してしまった。地面に落下したその男子の上に角ウサギが群がり、すぐに見えなくなった。俺はその男子に何もしてやることができなかった。自分がその男子の二の舞にならないようにするだけで精一杯だった。
やっと、城壁の上まで手が届いた。金属製の防具を身につけた、がっしりとした体格の中年の男が、俺の手を掴んで引っ張り上げてくれた。
城壁の上は、2メートルくらいの幅の通路になっていた。身を隠して攻撃できるように、城壁の外側に1メートル四方くらいの大きさの壁が等間隔に並んでいた。その壁にロープの端が結びつけられていた。
青山も含めて、通路の上にボロボロになったクラスメート達が座り込んだり、倒れていたりしていた。だが、その中に有希の姿はなかった。
「さっき、引っ張り、上げて、もらった、女の子は、どこ、ですか?」
俺は膝と両手を通路の床の上につき、肩で荒い息をしながらそう訊いた。全身が痛い。苦しい。息をするだけで、身体のあちこちに激痛が走る。それでも、いま城壁の上にいるクラスメート達の中では、俺が1番元気そうだった。
「その子なら、重傷だったから臨時の治療院に運んでもらったよ」
さっき俺の手を掴んで引っ張り上げてくれた中年の男が、そう答えた。治療院というのは、病院みたいな場所のことだろうか?
しかし、完全にジリ貧だった。いや、ジリ貧どころか、敗北は決定的だった。
防ぎきれなかった角ウサギの角が、七海の左腕に突き刺さった。
「――――っ!」
七海が声にならない悲鳴を上げた。俺は、七海の左腕に突き刺さっている角ウサギの頭を石で思いきり殴りつけた。その間に、別の角ウサギが七海のお腹に突進した。七海の身体が俺にぶつかってきて、俺は体勢を崩してしまった。
「七海!」
心愛が叫んだ。その心愛にも、大勢の角ウサギが角を突き立てた。
「心愛っ!」
今度は有希がそう叫んだ。有希は心愛の身体に刺さった角ウサギを抜こうとして、逆に自分が負傷してしまった。
さらに、別の角ウサギが七海の胸に角を突き刺した。俺は石を持った右手でその角ウサギの頭を殴ろうとしたが、その俺の右手に、さらに別の角ウサギの角が刺さった。激痛が走る。角は骨に当たって止まり、貫通しなかった。俺は自分の腕に刺さった角ウサギを自分の左手で掴み、勢いよく持ち上げて、背後の城壁に叩きつけて殺した。その間に、七海の身体は半分以上が角ウサギの群れに飲み込まれてしまっていた。
浅生律子は、ちょっと目を離した隙に血だらけになっていた。浅生律子は身体に刺さった大量の角ウサギを抜くこともできずに、背後の青山にもたれかかっていた。青山は角ウサギの頭部をへし折り、その頭部の角を武器として戦っていた。だが、複数の角ウサギに同時に跳びかかられると、そのうちの1匹しか倒すことはできず、他の角ウサギの攻撃を喰らってしまっていた。
俺の身体にも、どんどん角が刺さって、身動きが取れなくなってきた。全身が痛くて、その痛みでショック死してしまうんじゃないかと思った。
「誰か! 助けてくれ!」
俺は、恥も外聞もなくそう叫んだ。
そのとき。
頭の左上の方から赤い光線が迸った。光線が角ウサギの群れに当たると、そこで爆発が起こり、角ウサギたちが黒焦げになって吹っ飛んだ。
さらに、赤い光線が出現した方向から、大量の矢が角ウサギに降り注ぐのが見えた。
俺はそちらの方向を見たが、角度的な問題で人影は見えなかった。しかし、城壁の上で戦っている人がいるのは確実だろう。
「みんな! 城壁の上に人がいる! 俺が『せーの』って言ったら、それに合わせて一斉に『助けて!』って叫べ! いくぞ、せーの!」
俺はそう合図を出した。
「「「助けて!」」」
生き残っている全員がそう叫んだ。
赤い光線や矢が地上に降り注ぐ場所から、兜を被った男が頭を出して下を覗き込むのが見えた。
「ここだ! 助けてくれ!」
俺はそう叫びながら、血まみれの両手を振った。
城壁の上にいる男の顔が、俺の方を向いた。そして、すぐに引っ込んでしまった。
駄目だったか? 見捨てられてしまうのだろうか?
そう考えながら、再び角ウサギとの応戦に戻ると、頭上から振ってきた何かが俺の頭に当たった。
降ってきたのは、ロープだった。城壁の上にいた人達が、俺達のいる場所に何本もロープを落としてくれたのだった。
「みんな! ロープを上れ!」
角ウサギとの戦闘に必死でロープに気付いていないクラスメートもいるようだったので、俺はそう叫んだ。何人かがロープを上り始める。ロープを上るために無防備な背中を見せたクラスメート達にも、角ウサギは容赦なく攻撃をしていた。
「七海! ロープを上れ!」
俺はそう言いながら、俺に寄りかかっていた七海の身体を起こそうとした。
そして、変わり果てた七海の顔を一目見て、手遅れだと悟った。七海の胸に何本も角ウサギが刺さっている。七海は、すでに事切れていた。
七海が……死んだ? マジで?
今まで経験したこともないような、精神的に激しい衝撃を受けた。このまま気を失ってしまいたくなった。しかし、この状況での気絶は死を意味する。俺は気力を振り絞って、現実と向き合うことにした。
「浅生さんはもう駄目だ」
浅生律子を助けようとしていた青山が、感情を押し殺した声でそう言った。
「七海もだ」
俺は短く報告した。
心愛と有希は?
有希は、心愛と抱き合うようにして倒れていた。俺は、彼女達の上に覆い被さっていた角ウサギをどかし、2人の生死を確認する。
心愛は両眼を見開いたまま固まっていた。心愛の首に角が刺さっていて、どうしようもなかった。
有希は意識がないが、かろうじて息をしているようだった。有希も全身に多数の角が刺さっているが、有希の前にいた心愛が身を挺して庇ってくれたおかげで、上手く急所を守ることができたのかもしれない。
「青山! 有希の身体をロープに結びつけるのを手伝ってくれ!」
俺はそう言いながら、さっき俺の頭に当たったロープを引っ張った。数メートルくらいの余裕がある。青山と協力し、血だらけの有希の脇の下にロープを通し、上半身にロープを巻いて結んだ。
「おーい! このロープを引っ張り上げてくれ! 自力じゃ上れないんだ!」
俺は有希の身体に結んだロープを激しく揺らしながら、城壁の上に向かってそう叫んだ。
「分かった!」
男の叫び声が頭上から降ってきた。有希の身体を結んでいたロープがピンと張り詰める。俺は、有希の身体に刺さった角ウサギを抜き、少しでも軽くしようとした。さらに、有希を力を込めて持ち上げようとする。有希の身体が、城壁に擦られながらも持ち上がり、少しずつ浮かんでいった。
「烏丸! お前も早く上がれ!」
青山は別のロープにしがみつきながらそう叫んだ。
俺は角ウサギに刺されながらも、さっきまで有希がいた場所に垂れていたロープを掴んだ。ロープには数十センチおきに結び目があり、それに手足を引っかけて上ることができるようになっていた。
壁に足をつけながら、ロープを引っ張って上る。背中に角ウサギが何匹も刺さったが、その直後に、角ウサギは重力に負けて落下していった。
手の皮が剥けるのを感じながら、俺は必死にロープを上った。角ウサギの攻撃が届かなくなったところで、足を城壁から離して結び目に引っかけた。
城壁は、ほんの十数メートルくらいの高さだった。しかし、その十数メートルが永遠のように長く感じられた。
数本離れたロープを上っていた男子が、途中で力尽きたのか、ロープから手を離してしまった。地面に落下したその男子の上に角ウサギが群がり、すぐに見えなくなった。俺はその男子に何もしてやることができなかった。自分がその男子の二の舞にならないようにするだけで精一杯だった。
やっと、城壁の上まで手が届いた。金属製の防具を身につけた、がっしりとした体格の中年の男が、俺の手を掴んで引っ張り上げてくれた。
城壁の上は、2メートルくらいの幅の通路になっていた。身を隠して攻撃できるように、城壁の外側に1メートル四方くらいの大きさの壁が等間隔に並んでいた。その壁にロープの端が結びつけられていた。
青山も含めて、通路の上にボロボロになったクラスメート達が座り込んだり、倒れていたりしていた。だが、その中に有希の姿はなかった。
「さっき、引っ張り、上げて、もらった、女の子は、どこ、ですか?」
俺は膝と両手を通路の床の上につき、肩で荒い息をしながらそう訊いた。全身が痛い。苦しい。息をするだけで、身体のあちこちに激痛が走る。それでも、いま城壁の上にいるクラスメート達の中では、俺が1番元気そうだった。
「その子なら、重傷だったから臨時の治療院に運んでもらったよ」
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