異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

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1回戦 Sランク冒険者ゲーム2

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「やったぁっ! 冒険者だ! 冒険者になれる!」

 右目に眼帯をつけて左手首に包帯を巻いた男子、小説家くんが飛び跳ねるようにしてそう叫んだ。予選開始前には金儲けの方法として、真っ先に冒険者と言っていただけあって、冒険者に憧れがあるらしい。

「たった1人でいいから、俺達の中の誰かがピラクリウム星チームより先にSランク冒険者になれば、俺達の勝ちなんだな?」

 俺は小説家くんをスルーしてそう訊いた。

「はいー」
「Sランク冒険者になるっていうのは、どれくらいの難易度なんだ?」
「質問が抽象的すぎますー。もっと具体的に質問してくださいー」

 相変わらず、魔法生命体との会話は疲れるな。どうやって具体的に質問したらいいのだろう、と悩んでいると。

「過去100年間にアジャイル星でSランク冒険者になった人は、何人いるんだ?」

 前髪眼鏡くんがそう訊いた。
 的確な質問サンクス! っていうか……あれ? さっきは気付かなかったけど、前髪眼鏡くん、何だか8日前に見たときと雰囲気が違っていないか? 何が違うのかとよく観察すると、前髪が短くなっていた。アルカモナ帝国で散髪をしたらしい。でも、今さらただの眼鏡くんと呼ぶのは変な気がするから、これからも心の中では前髪眼鏡くんと呼ばせてもらおう。

「581人いますー」

 1年に6人くらいがSランク冒険者になっているのか。

「現時点でSランク冒険者は何人いるんだ?」
「13人いますー」

 前髪眼鏡くんの質問に、ザイリックはそう答えた。
 あれ? 1年に6人くらいがSランクになっているのに、現時点ではたったの13人しかいないのか? 計算が合わなくないか? ……いや、死亡率と引退率のどちらか、あるいは両方が高いということなのかもしれない。

「その13人の中に、冒険者を始めてから64日以内にSランクになった人は、何人いるんだ?」
「3人いますー」

 それなら、俺達か敵チームの中で、64日以内にSランク冒険者になれる奴がいてもおかしくないのか。

「そんなことより、魔法は? 僕も魔法が使えるようになるのか?」

 小説家くんが、前髪眼鏡くんとザイリックの間に割り込むようにしてそう訊いた。

「我々が皆さんに職業ジョブを付与すれば、何らかの魔法かスキルを使えるようになりますー」
「やったぁ! じゃあ、早速、僕に職業を付与してくれ!」
「ちょっと待て! こいつだけじゃなくて、全員に1度に職業を付与することはできるか?」

 俺は慌ててザイリックにそう訊いた。1人ずつやるより、32人を1度に済ませた方が早いだろう。

「できますー」
「じゃあ、全員に1度に職業を付与してくれ」

 俺がそう言うと、俺達1人1人の足下に赤い魔方陣が出現した。転移のときとは違う、シンプルなデザインの魔方陣だった。

 ホワァァ、という感じの効果音と共に、魔方陣が赤く輝く。

 俺にも魔法かスキルが使えるようになるのか……。

 そう思うと、こんなクソゲーの真っ最中ではあっても、ワクワクしてしまった。

 第1希望は勇者、第2希望は賢者、第3希望は攻撃系の魔術師でお願いします!

 心の中でそう祈りながら、職業が与えられるのを待った。

 そして魔方陣が消えたが、特に何の変化もないように思えた。
 もしかして、失敗か? まさか無職になってしまったのか?

「何も変わった気がしないんだけど、成功したの?」

 心愛が周囲を見回しながらそう訊いた。

「はいー。成功しましたー。あなた達全員に何らかの職業を与えましたー」
「その職業は、どうやって確認すればいいの?」
「『ステータスオープン』と念じれば、ステータス画面が現れますー。そこにご自分の職業が表示されているはずですー」

 早速、ステータスオープン、と心の中で念じてみると、予選のときのウィンドウ画面によく似たものが目の前に出現した。

【名前:烏丸九郎(15歳) 種族:ヒューマン 職業:複製師Lv.1 経験値:0
基礎レベル:1 HP:9/9 MP:6/6
筋力:5 魔力:6 敏捷:6 器用:8 運:3】

 そう表示されていた。

 おおおお! めっちゃゲームっぽい! RPGっぽい! テンションが上がるな。でも、職業の複製師って何だろう? 複製師の右の「Lv.」は「レベル」の略称だと思うんだけど。

 もしもこれが地球の一般的なゲームと同じ仕様なら、HPはヒットポイントの略で、これの数字が0になると死んでしまうのだろう。MPはマジックポイントの略で、特殊能力を使うために消費するもののことだろう。

 しかし……複製師かあ。

 何か弱そうだな……。

「ねえ、烏丸Pは何の職業になったの?」

 近くにいた七海が俺に話しかけてきた。その周囲には、有希と心愛と浅生律子と青山もいた。魔空間に転移した後、石原達に外套を恵んでやったとき以外、殆ど動いていないから当然なのだが。

 他のクラスメート達も、予選のときのグループごとに話し合っている様子だった。

「俺は複製師だった」
「ふくせいし? 何それ?」

 七海は首を傾げた。

「俺にもよく分からん……」
「分からないことがあるなら、ザイリックに訊けばいいじゃん」

 心愛はそう言うと、ザイリックに向かって「ふくせいしって何なの?」と訊いた。

「個別の職業に関する質問は、禁則事項ですー」
「禁則事項? 何それ?」
「その質問には答えてはいけないと、運営によって定められているということですー」
「要するに、知ってるけど教えてくれないってこと?」
「そういうことですー」
「感じ悪っ」

 心愛はふてくされたようにそう言った。

「俺は火魔術師になったんだけど、魔法ってどうやって発動させればいいんだ?」

 石原でも取り巻きABでも巨漢くんでもない首都班の中の1人が、ザイリックに向かってそう訊いた。

「その質問は禁則事項ですー」
「スキルはどうやって発動させればいいの?」

 腹黒地味子ちゃんがそう訊いた。

「その質問は禁則事項ですー」

 アジャイル星に転移してから調べろ、ということだろうか。

「お前らは何の職業になったんだ?」

 俺は七海達に向かってそう訊いた。

「私は歌手だったよ」

 七海はそう答えた。

 そして、有希は美容師、心愛は踊り子、浅生律子は演奏家、青山は料理人だと、それぞれが教えてくれた。

 こうやって見ると、それぞれのイメージや適正に合致した職業になっているのが分かるな。
 歌が上手い七海は歌手に、美容に興味のある有希は美容師に、ダンスが上手い心愛は踊り子に、楽器の演奏が天才的な浅生律子は演奏家に、料理が得意な青山は料理人になっている。

 となると、余計に俺の複製師が際立つというか、微妙な雰囲気の職業に思えてくる。

「ふくせいしって、どんな漢字なんだ?」

 青山は心配そうな表情でそう訊いた。

「複数の複に、製造業の製に、師匠の師だ」
「複製師か……。複製って、コピーっていう意味だよな? 何かをコピーする職業ってことなんじゃないか?」

 青山は腕を組みながらそう言った。

「ってことは、生産職っぽいね」

 七海が少し悲しげな表情をしてそう言った。その表情はどういう意味なんだろう?

「生産職って何?」

 心愛がそう訊くと、七海がスラスラと解説する。

「この手のゲームだと、職業は戦闘職と非戦闘職に分けることが多いんだよ。
 その中でも、戦闘職は前衛職、後衛職に分けることが多いかな。前衛職は、戦闘のときにモンスターに接近して戦う職業で、後衛職はモンスターから離れて戦う職業。
 で、非戦闘職は戦闘のときにはあまり役に立たないけど、普段の生活では役に立つ職業で、生産職と採取職に分けることが多いかな。生産職は、武器とか防具とかアイテムとか、色んなものを作る職業だよ。採取職は、色んな資源やアイテムを採取する職業。
 もちろん、これはざっくりとした説明だから、色々と例外もあるけどね」

 七海のやつ、詳しいじゃないか。さてはこいつ、俺と同じくゲームが好きなタイプだな。
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