異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

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予選68

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 1回戦でのルールがどういうものになるかは分からないが、お金があって困ることはないだろう。

 俺はそう考えながら、まずは野外フェスの会場に行ったが、もぬけの殻だった。
 続いて、問屋街にあるアイス商会の本部のロビーに行くと、そこにエドワードがいた。

「皆さん、勢揃いでどうしました? 待ち合わせの時間を勘違いしてましたかな?」

 エドワードは不思議そうな顔でそう訊いた。換金用の高価なアクセサリーが欲しいことを伝えると、エドワードは大喜びし、応接室に案内してくれた。

【1位 239番 地球代表チーム      :100103598ゼン
 2位 229番 スサノー星代表チーム   :58391170ゼン
 3位 232番 ラクライン星代表チーム  :49895124ゼン
 4位 233番 ポリゴウム星代表チーム  :45554900ゼン
 5位 240番 ンジャイロ星代表チーム  :28782938ゼン】

 ウィンドウ画面にはそう表示されていた。地球チームの所持金が1億ゼンを超えていた。石原達が作った借金を除いて考えると、地球チームは26人で2億ゼンも稼いだことになる。改めて考えると、途方もない数字だ。

 しかもこれには、チャリティーで稼いだお金が含まれていない。チャリティーで集めたお金はちゃんと計算して、お別れ会のときにすでに院長に渡してあった。じゃないと、詐欺扱いになって、その2倍の金額が所持金から引かれてしまう可能性があるからな。

「念のために余裕を見ても、4000万ゼンくらいまでなら使っても大丈夫だよな?」

 俺が青山達5人に確認すると、みんな了承してくれた。

 4000万ゼンと聞いて、エドワードの頬がピクピクと動いた。

「すぐにご用意いたします!」

 エドワードはそう言い、引っ込んだ。

 問屋街にも宝飾店はいくつもあるが、わざわざエドワードから買うことにしたのは、少し心配していることがあったからだった。
 今、この国には合計516人もの異世界人が来ている(そのうちかなりの数が死んだり奴隷になったりしていると思われるが)。その516人が、青山が作ったのと全く同じ料理の製法をこの国に持ち込んでいたとしたら、そのレシピを1350万ゼンで購入したエドワードは大損してしまうだろう。また、リバーシやトランプのロイヤリティの約1500万ゼンも、地球チームの他の班が別の都市で別の商会に売っている可能性が高い。
 そう考えると、エドワードに無用のリスクを背負わせてしまったので、こうやってアクセサリーを買うことでリスクを減らしてあげようと思ったのだ。

 エドワードが部下達を連れて、ケースに入ったアクセサリーを運んできた。

 女子達は目を輝かせながら、ブローチや髪飾りやイヤリングやネックレスや腕輪や指輪など、様々なアクセサリーを選んでいった。宝石は世界によって価値が大きく変動する可能性があるので、宝石の大きさよりも、地金じがねが金や銀であり、その比率が高いことを重要視して選んでもらった。

 俺と青山も、服の下に隠せる目立たないネックレスを買っておいた。

 あまり高価すぎるものだと売りにくいので、ほどほどの価値の物をたくさん買った。

 しかし……1つ1つは上品なデザインであっても、これだけジャラジャラとたくさん身につけると、成金っぽくて下品だな、と俺は女子達を見て思ったが、黙っておいた。

 この街では、問屋街の中にある銀行の本店は、週末に限って夜遅くまで開いている。俺とエドワードだけ銀行に行き、俺の口座からアイス商会の法人口座に代金を振り込んでおいた。手持ちのお金は全て口座に預け、再びアイス商会へ戻った。

 そして、青山達とエドワードとヘンリーと一緒に、野外フェスのステージ横のテントに移動した。

 孤児院の院長と、『エンジェルズ』の店長と、オリヴァーの3人はすでに来ていた。そこにエドワードとヘンリーを加えた5人に、俺達は異世界から来たことや、今はデスゲームの真っ最中であり、その予選を勝ち抜くためにお金を稼いでいたことや、俺達は本当は旅の楽団ではなく、ただの学生であることなど、「本当のこと」を話した。

 ウィンドウ画面を見るとタイムリミットが迫っていたので、結構急ぎ足だったが、ちゃんと話すことができたと思う。ランキングの順位は1位のままだった。

 異世界という概念に関しては、天国や地獄に該当する概念がこの世界にも存在していたため、割とすんなりと理解してもらえた。受け入れてもらえるかどうかは別問題だが。

「それって、次に出版する本のストーリーか?」

 オリヴァーが顎髭を撫でながらそう訊いた。

「いえ、全部本当のことです。信じられないのも無理はありませんが……」

 俺は苦笑しながらそう言った。

「私は信じますよ。あの斬新な音楽の数々は、異世界のものなのだとすると腑に落ちます」

 ヘンリーはそう言ってくれた。

「俺も信じるぞ。じゃないと、『1の3』があんなに大人気なのに、この街を出て行くわけがないからな。それに俺は何日も前から、お前らは本当に旅の楽団なのかと疑ってたし」

 店長もそう言ってくれた。

「私も信じます。クロウさん達は、ストリートチルドレンを救うという、今まで誰もできなかったことをやってのけました。それは、この世界の人間ではなかったからなのだとすれば、納得できます」

 院長もそう言ってくれた。

「私も信じました。あの未知の技術によって作られた服も、見たことも聞いたこともない料理やゲームの数々も、異世界のものだったからなのですね」

 エドワードはそう言って頷いた。

「お、俺だって信じてるぞ! ただ、異世界に行くって言うんじゃ、2度とナナミちゃんに会えなくなるから、信じたくなかっただけだ!」

 オリヴァーが慌てた様子でそう言った。

「オリヴァーさん、お元気で」

 七海がそう言ってオリヴァーと握手をすると、オリヴァーは泣きそうな顔になった。

「ヘンリーさん。次の世界には持って行けないと思うし、よかったら、これを差し上げます」

 浅生律子はそう言い、7日前に楽器店で購入した弦楽器を差し出した。

「えっ! い、いいんですか?」

 ヘンリーは感激した表情でそう訊いた。

「はい。売ればそれなりのお金になるはずですから、生活費の足しにしてください」
「あ、はい……。ありがとうございます……」

 これを私だと思って、的な言葉を期待していたであろうヘンリーは、落胆した顔で楽器を受け取った。

「皆さん、お世話になりました。本当にありがとうございました!」

 残り1分を切ったところで、俺はそう言って頭を下げた。青山と七海と有希と浅生律子も、口々にお礼を言った。心愛も『ありがとう』と書いた紙を掲げていた。
 それに対し、ヘンリー、エドワード、店長、院長、オリヴァーの5人が、こちらこそ、とか、生き残ってください、とか言っているうちに、タイムリミットとなった。

 多層構造の青い魔方陣が、地面の上に出現した。テントの中にある様々なものが青白く光り輝いた。ヘンリー達が驚きの声を上げる中、ひときわ強く魔方陣が光る。

 次の瞬間には、俺と青山と七海と有希と心愛と浅生律子の6人は、宇宙空間のような場所にいた。
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