異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

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予選50

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「ってことは、もしかして私達、有名人?」

 七海はハッと気付いたようにそう訊いた。

「そうだな。間違いなく有名人だ。地球に戻った後、積極的にマスコミの取材に応じてアイドル志望だと伝えれば、すぐに芸能事務所からスカウトされると思うぞ」

 俺は苦笑しながらそう言った。

「望んでいた形とは違うけど、そういうデビューの仕方もありかもね」

 七海は真剣な表情でそう言った。

「コウダ先生とユウキ先生は、何も悪いことしてないのに災難だったよな」

 青山は溜め息混じりにそう言った。

「そうね。2人とも集団失踪事件に関与しているかもしれないと、痛くもない腹を探られているかもしれないわね」

 浅生律子が同情するように言ったが、俺は話題についていけなかった。

「コウダ先生とユウキ先生って、誰だ?」

 俺がそう訊くと、「担任と副担任だよ!」と青山が突っ込んだ。
 逆によく憶えてるな、と俺は感心してしまった。自己紹介で一瞬聞いただけだし、デスゲームを生き抜くのには必要のない情報だから、完全に頭から抜け落ちていた。

「そう言えばそんな名前だったかも。まあいいや。今日はもう遅いし、そろそろ順番に風呂に入って寝よう。俺は明日の早朝、河川敷で野外ステージの設営について打ち合わせがあるから、起こして欲しい」

 俺は立ち上がり、食器を片付けながらそう頼んだ。

 今日は3日に1回の、孤児院のお風呂が使える日だった。青山はすでに入っていたので、女子4人が先に入り、俺が最後ということになった。

 そして、予選5日目の朝が来た。

 青山に起こされた俺は、目をこすりながら朝食をとった。

 女子4人の中で唯一起きていた浅生律子が、楽器を持って河川敷についてきてくれた。
 一口に河川敷と言っても、とても広い。端から端まで何キロもあるだろう。川の近くは水音がうるさいので、できるだけ川から離れていて、市場や繁華街から近い場所を会場に選ぶことにした。浅生律子に楽器を鳴らしてもらい、どこまで音が聞こえるか確かめながら、場所を絞り込んでいった。

「私も音の響きを確かめたいから、烏丸P、ここに立って歌ってくれない?」

 突然、浅生律子がそんなことを言い出した。

「俺、歌にはあまり自信がないぞ」
「別に歌を聴きたいわけじゃないわ。音がどう響くかを聞きたいだけだから」
「うっ……。分かった」

 そういうことなら歌わないわけにはいかないが、何を歌おうか……。流行の曲を歌うのが恥ずかしかったので、『夕焼け小焼け』にしておいた。

 浅生律子の許可も出て、ようやくステージを設営する場所が決まった。

 ステージの大きさや方向を指定すると、大工が地面に杭を打ったり線を引いたりして、印をつけていった。俺と浅生律子は大工にお礼を言い、孤児院の方に歩き始めた。

「烏丸P、いつもありがとう。烏丸Pがこういう裏方の仕事をやってくれてるおかげで、私達は随分と楽ができてるわ」

 途中、浅生律子が改まったような表情でそう言った。
 俺は何と答えればいいのか分からず、気にするな、とか、大したことはしてない、とか言っておいた。

 場所が決まったので、孤児院に戻った俺は野外フェス告知のポスターを作った。1枚見本が完成すると、すでに起きていた七海、有希、心愛、それと浅生律子や字の上手い年長の子ども達にも手伝ってもらい、何百枚も書き写した。

 それを持って、ゼリーとグミを販売するときに告知をした。週末は野外フェスでゼリーとグミを売ると伝えると、多くの人達が興味を持ってくれた。昨日は雨のせいで客が少なかったが、今日は一昨日と同じくらいに復活していたので安堵した。

 鍛冶屋で金属の判子を受け取り、木工職人のところに行って、その判子に合わせた大きさの木片を用意して紐を通す穴を開けてもらえるように頼んだ。

 それから、あちこちで野外フェスの告知ポスターを貼らせてもらいながら、野外フェスのスポンサーを集めていった。

 Cプランのスポンサーは、1万ゼンで野外フェス会場に10枚まで宣伝用ポスターを貼ることができる。ライブの開始時に、『1の3』から「この野外フェスは○○と○○と○○の提供で開催しています」などと名前を読み上げてもらうこともできる。
 Bプランは5万ゼンで、Cプランの内容に加え、100文字以内で企業が用意した文章を『1の3』が読み上げてくれる。
 Aプランは10万ゼンで、CプランとBプランの内容に加え、サイン会およびグッズ販売のときに、企業が用意したチラシを『1の3』が客に手渡ししてくれる。

 そういったことを説明すると、アイス商会とオリヴァー出版は店内にポスターを貼らせてくれただけではなく、迷わずAプランでスポンサーになってくれた。

 エドワードは、出店する予定の屋台にもポスターを配っておくと言ってくれたので、俺はポスターを数十枚渡しておいた。

「企業向けのプランだけじゃなくて、個人向けのプランはないのか?」

 オリヴァーにそう訊かれて、俺は急遽考えた。

 個人向けのプランは、1万ゼンで、ライブの前に推しの子が「このライブは○○さんと○○さん○○さんにスポンサーになってもらっています。○○さん、○○さん、○○さん、ありがとうございます!」などと大勢の観客に向けてお礼を言ってもらえる、という内容だ。さらに、普通のグッズ販売では買えない限定グッズまでもらえる。

 そう伝えると、オリヴァーは個人向けのスポンサーにもなってくれた。

 いつも大量購入している文具店や、衣装の製作を頼んだ服飾店はCプランのスポンサーになってくれた。

 残念ながらスポンサーにはなってくれなかった場所も、ポスターは気前よく貼らせてくれる場所が多かった。

 その後、俺は1度孤児院に戻り、女子4人と『エンジェルズ』に移動した。

 まだ午前中の早い時間帯だったが、『1の9』の最終オーディションを受ける女の子達15人は、すでに到着して出番を待っていた。

 全員の審査を終えた俺と浅生律子とヘンリーと店長は、ああでもないこうでもないと話し合い、最終的に6人を創設メンバーとして選んだ。

『エンジェルズ』の女性スタッフからは、ミリアを含めて3人が選ばれた。一般応募からは、最初に『1の3』に加入したいと申し出て、『1の9』創設のきっかけとなった女の子も含めて、3人が選ばれた。

『エンジェルズ』出身の女の子の比率が多いようにも思えるが、もともと踊ったり歌ったりするのを仕事にしていたのだから、そうなってしまうのは仕方がないだろう。店長一押しの借金奴隷のミリアだって、コネではなく実力で選ばれていた。

 落選した9人は落ち込んでいたが、2期生の募集について伝え、またオーディションに参加して欲しいとお願いして帰ってもらった。

 合格した6人は喜ぶ暇もなく、『1の3』のメンバーによる指導が始まった。心愛もちゃんと先輩らしく振る舞ってダンスの指導をしていて、俺は安心した。

 昼過ぎのライブでは、『1の9』のメンバー全員に、改めて『1の3』のパフォーマンスを見学してもらうことにした。

 また、今日は『1の3』の新しい衣装のお披露目の日でもあった。衣装自体は昨日の夕方に届いていたのだが、昨日は団扇の販売もあったから、1日ずらしておいたのだ。毎日何らかのサプライズがあった方が、お客さんも飽きないからな。
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