異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

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予選41

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「活版印刷について、知り合いの出版社であるオリヴァーさんに相談したところ、オリヴァーさんが『1の3』のファンであることや、彼女達の語った物語を本にしたいと考えていることを知りましてね。こうして一緒にクロウさん達に会いに来たのです」

 エドワードはそう説明した。

「サンプルを見せてもらったが、あれは凄いアイデアだな。思いつきそうで思いつかなかった。活版印刷を実用化すれば、今までよりも遥かに安いコストで本を印刷できる。その第1弾を、ナナミちゃん達の話した物語にしたいんだ」

 オリヴァーは気持ちが先走るようにそう言った。

「ちょっと待ってください。あれらの話を本にするのはいいですけど、原稿を書く時間がないんですけど……」

 七海は申し訳なさそうにそう言った。

「それなら大丈夫だ。うちの出版社お抱えの作家に、『1の3』のライブを見せるだけでいい。そいつが速記して原稿にしてくれる。他にも、休憩時間中にあらすじを説明してくれれば、そいつがそのあらすじを元に完成原稿に仕上げてくれる。口述筆記というやつだな」

 オリヴァーは自信ありげにそう語った。俺の知っている口述筆記とは意味が違う気がするが、翻訳魔法がそう訳したのだから仕方がない。

 しかしよく考えると、日本でもいわゆる「タレント本」なんかは、そうやって作られることも多いだろうから、あながち間違っていないのかもしれない。アイドルが自分の本を「まだ読んでいない」と発言してしまった事件なんかもあったし。

 また、小説家にあらすじを口頭で説明して、アイデア料をとるというのは、もともとの異世界で金儲けをする計画に含まれていたものだったので、俺達にとっては渡りに船だった。

「それって、俺がやってもいいんですか? 今まで七海達が語った物語は、俺も知ってますけど」

 口述筆記なら七海達の負担は少ないが、さらに休憩時間中の負担を少なくしようと思い、俺はそう申し出た。青山もそうだけど、どう考えても七海達は働きすぎだからな……。アイドル班の中で俺が1番時間に余裕がある。

「ああ、別にきみでも構わない。ただし、著者の名前はナナミちゃん、ユキちゃん、ココアちゃんの3人だけの共著にして欲しい」

 オリヴァーは髭を撫でながらそう言った。

 全くの無名である俺の名前で出版するのと、すでにウォーターフォールで有名になった七海達の名前にするのでは、売上が大きく違うのだろう。

 俺はオリヴァーの提案を了承し、交渉して、本の印税は著作権を買い取ってもらう形にした。
 この世界だと、普通は本が出版されて実際の売上が判明した後で、著者に印税が支払われる形式である。それだと予選期間内に間に合わないので、事前に印税を支払ってもらう代わりに、重版する際の印税は無しとする契約にしたのだ。
 今週末までに銀行口座に振り込んで欲しいと頼むと、オリヴァーは頷いた。

「いずれオリヴァー出版から本を出すっていうことも、ライブの中で宣伝してもらえるか?」
「ええ、いいですよ」

 俺は快諾した。すでにゼリーとグミのステマもやった後だし、特に抵抗はない。

「それじゃあ明日の午前中のライブから、作家を裏口から入れて欲しい。――店長さん、いいですか?」

 オリヴァーは、最後の質問は店長の方を見てそう訊いた。店長の許可をとる手間を省くために、オリヴァーはエドワードと一緒にやってきたのだろう。

「ああ、別に構わんぞ。ただし、最初に入店するときは『1の3』の誰かと一緒にしてくれよ」
「ええ、もちろんですとも。ありがとうございます」

 オリヴァーはそう言って店長に頭を下げた。

「続いては、ボードゲームについてのお話です」

 エドワードはそう言い、布袋から俺がエドワードに貸していたリバーシや将棋などのサンプルを取り出して、テーブルの上に並べた。

「お前ら、こんなことまでやってたのか。ゼリーやグミも売ってたし、本当に旅の楽団なのか?」

 店長が首を傾げているが、そう思うのも無理はないだろう。俺は苦笑するしかなかった。

「商会内で試遊して検討した結果、残念ですが、将棋とチェスはルールが複雑過ぎるので、商品化を見合わせることになりました。申し訳ありません」

 エドワードはそう謝り、俺に頭を下げた。今朝サンプルを貸したときには、判断に2、3日かかるようなことを言っていたが、随分と早く結論が出たらしい。

「いえ。気にしないでください」

 落胆しなかったと言えば嘘になるが、確かに将棋もチェスもアルカモナ人には難しすぎるだろう。どちらも、駒の動かし方を覚えればそれだけでゲームができるというものではないしな。将棋の場合は、成駒とか千日手とか、二歩の禁止とか、打ち歩詰めの禁止とか、そういうのを説明書に記載するのが大変だった。チェスも、プロモーションとかアンパッサンとかキャスリングとか、説明しにくい特殊なルールがあって大変だった。

「ただし、リバーシとトランプは商会内でも好評で、商品化させてもらうことにしました。早速デザイナーにリデザインさせたものが、こちらになります」

 エドワードはそう言い、布袋からさらにサンプルを取り出した。

「リバーシの駒が、四角い!」

 俺は思わずそう叫んでしまった。あの見慣れた丸い駒が、正方形になっていたのだ。

「はい。コスト削減のために、駒を四角くしました」

 エドワードはこともなげにそう言った。

 確かに言われてみると、手作業で駒を作るなら、丸い駒より四角い駒の方が人件費が安く済みそうだ。しかし、リバーシの駒を四角くするという発想は日本人の俺には絶対に出てこないものだったので、斬新に感じられた。
 また、駒の黒い面は黒く塗られていたが、白い面は木の素材の色のままだった。

 トランプも、カードの四隅にマークと数字の判子が押されているだけで、中央部には模様が全くないデザインになっていた。唯一の例外はジョーカーで、中央部には『1の3』のロゴマークが手描きで描いてあった。

「えっと、これは?」

 俺はジョーカーを指さして訊いた。

「はい。『1の3』の知名度を活かすため、こういうデザインになりました。トランプは『1の3』の公式グッズ扱いとして、本と同じくライブで宣伝していただきたいのです」
「ああ、そういうことですか。分かりました」

 俺は快諾した。

 リバーシとトランプは、今週末の野外ライブまでに一定数を用意し、販売することになった。

 たった数日でそんなに数を用意できるのかと驚いたが、エドワードによると、首都を含めて他の都市では絶対にそんなに早く商品化することはできないそうだ。職人を総動員して作らせるらしい。工業都市ウォーターフォールの底力を見たような気がした。

 続いて、アイデア料の交渉に入る。リバーシは483万ゼン、トランプは1057万ゼンで、権利を買い取ってもらえることになった。金額が中途半端なのは、交渉が熾烈なものになったせいだった。

 うおおおおおおお、マジか! 合計で約1500万ゼン!

 と叫びたい衝動に駆られた。

 交渉がまとまり、エドワードとオリヴァーはお礼を言って帰っていった。俺も店長に楽屋を貸してくれたお礼を言って、『エンジェルズ』を出た。今日のギャラは俺の銀行口座に振り込んでもらうことにした。というか、昨日の時点からそうすればよかった。

 いつものように孤児院までヘンリーに送ってもらった後、俺と女子4人は青山に夜食を作ってもらって食べた。その途中――。

「みんな、画面を見て!」

 七海が恐怖にかすれたような声でそう叫んだ。

 慌ててウィンドウ画面を呼び出すと、プレイヤー別の所持金ランキングの下の方が真っ赤に染まって、こう表示されていた。

【岡村章太(死亡):-2000000ゼン
篠宮翼(死亡):-2000000ゼン
高橋寛二(死亡):-2000000ゼン
根岸智史(死亡):-2000000ゼン
南颯真(死亡):-2000000ゼン
石原伸介(死亡):-100010000ゼン】

 いつの間にか、首都班の6人全員が死んでいた。
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